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01-Introduction
005話-勢揃い
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どう見ても中学生ぐらいの見た目の少女、リーチェに「同い年ぐらい」と言われ、自分の体を見下ろす。
だが自分の視点からの範囲だけだと、今にも折れそうな少年のような下半身と両手しか見えない。
(くっ……鏡は無いのか……!)
「あれ? どうしたの? どっか痛い?」
「いえ、大丈夫です……」
「もー、そんな商人みたいなかたっ苦しい喋り方しなくても良いよー。気楽に行こう? ね?」
リーチェが自分の片耳の根元を指で摘み、耳先をポンポンと俺の頭にぶつけてくる。
色々と不安はあるのだが、今のところ出会った人たちが全員いい人なのが救いだった。
(いい人っていうか、いい人すぎる……)
「じゃぁ座長、みんな練習終わった頃だと思うから呼んで来ますね」
「あぁ、よろしく頼む」
木べらを片手に持ったままリーチェが一番大きな馬車の反対側へ走っていく。
その後ろ姿――腰の部分に髪色と同じ薄茶色の毛玉のようなものが着いているのが見えた。
(尻尾……!?)
「先に伝えておくと、みんな周辺の警戒をしながら舞台の練習をしているから、変わった服装しているけれどびっくりしないでね」
俺がリーチェの後ろ姿をじっと見ていると、座長さんが苦笑いをしながら俺に伝えてくる。
だがそう言われても、俺としてはどれが普通でどれが普通ではないのかがわからない。
座長さんは白髪交じりの黒髪短髪に、ファンタジー作品でよく見るような街人のような格好をしている。
俺が返答に困っていると「この服装が一般的な普段着だから」と苦笑いで伝えてくれた。
俺はそのままアイリスさんに連れられ、広場に並べられた丸太へ腰を下ろす。
アイリスさんがそのまま隣に座り、反対側にはエイミーさんが座った。
(こんな美人に挟まれて……緊張する……!)
普段からアイドルの若い子たちに囲まれて仕事をしているが、それとこれとは別だった。
仕事は完全に仕事と割り切って、仲良くもなるが一定以上の線引はしている。
だが、アイリスさんもエイミーさん、それにアイナさんやリーチェ、全員がスタイル抜群の女の子だった。
正直目のやり場に困る上に、仕事ではない……むしろ違う世界だ。
正直まだ脳内の整理が終わっていない状況もあって、この女性たちとの距離感がつかめない。
「おまたせー! 今日はリーチェの特製スープだよー」
小走りで戻ってくるなり、竈の大きな鍋の元へと戻るリーチェ。
そしてリーチェが現れた馬車の反対側からゾロゾロとこちらへと向かってくる来る人影が見えた。
「皆さんお疲れ様です。この子、目が覚めたから紹介しますね」
「あら、目が覚めたのね、元気そうで良かったわ」
そのうちの1人がジッと俺を見下ろしながら呟いた。
(こわ……というか、すごい服装だな……ゴスロリ系というか……この世界ではこういう服装も普通にあるんだろうか)
俺は慌てて立ち上がろうとすると、エイミーさんが肩を押さえて「座ってていいよ」とニッコリ微笑む。
「ユキくん、全員は覚えられないと思うけれど、一度紹介するね。はい、みんな並んであげて」
そう言って座長さんが俺の後ろに立ち、一人ずつ紹介される。
「こっちのブロンドの子がクルジュナね」
「……よろしく」
「その隣がケレス」
「やっほー、よろしくね」
「その一番大きな男がサイラス」
「元気になって良かったなボウズ」
「あと二人居るけれど、そっちは夜番で今は寝ているから今度紹介するよ」
「は、はい。あ、あのっ、ユキと言います、しばらくお世話になることになりました。よろしくお願いします」
最初に紹介されたクルジュナさんは金髪ロングで、ダークレッドのゴスロリ服のような服装だった。
名前はともかく普段からこの服装だとしたら、すぐに覚えられそうなほどインパクトがある。
ケレスさんは黒とダークレッドのチェック、ツートンカラーのボンテージ衣装のような上に、同じ柄のショートパンツ。
しかも頭の左右から羊の角のようなものが生えていた。
そして両手とも二の腕までの長い手袋をしている。
(えっと……羊……というより悪魔的な角……? かっこよすぎる……)
サイラスさんはムキムキの巨漢で身長は2メートルは超えてそうだ。
素肌にベストのような服と着ており、いかにもな感じのおじさんだ。
カイザル髭とニカッと笑った顔が少し怖いが、悪い人ではなさそうだ。
これで総勢七人、俺を入れても八人しかいない。
夜番とやらの二人を入れても十人だった。
座長の説明だと、このメンバーであちこちの街を巡って大道芸を披露しながら日銭を稼いで回っているらしい。
「はい、熱いから気をつけてね」
俺が必死に名前を覚えようとしていると、リーチェが木製のお椀とスプーンを持ってきてくれた。
俺はその木椀を両手で受け取り膝へ乗せる。
「おいしそう……」
今まで何も感じていなかったが、食べ物を見た途端に空腹感が襲ってきた。
「では頂こうか」
「はーい」
「リーチェ、いつもありがとう」
「いただきます」
座長の一言で全員が出されたスープを頬張り始める。
野菜と何かの肉を煮込んだだけのスープ。
スプーンで恐る恐る口へと運ぶと、思ってた以上に香辛料の香りが口内へ広がり、その後に野菜の旨味がしっかりと効いてくる。
「……おいしい」
「あははっ、良かった! パンもあるからたくさん食べてね」
アイリスさんの隣に座っていたリーチェが、手のひらに乗る大きさの丸パンを手渡してくるので、ありがたく受け取る。
「ねーねー、君って、ユキくん? ユキちゃん?」
「――っ!? ごほっ、ごほっ、えっ、えっと、男です……けど」
向かい側に座っているケレスさんに質問され、質問内容に思わず咳き込んでしまう。
「ほえー……女の子みたいだ」
「みんな、食べながらでいいから聞いてね。ユキくんは魔獣に襲われたショックで記憶がいくつか無くなっている。一般常識もいくつか忘れている可能性があるから、変な質問をされても教えてあげて欲しい」
「はーい」
「わかりました……」
「なんと、それは不便であろう……かわいそうに」
「でも元気になって良かったわ。死んじゃったら何も残らないもんね」
座長さんの説明にそれぞれが納得した顔をする。
(ほんとこの人、気遣いが凄いな……この人たちに助けてもらって良かった)
部屋で寝て起きたらここに居た記憶しかないので、助けてもらったという実感もあまりないが、それでも心の中で感謝しておく。
「ユキくん、お変わりは?」
「もう大丈夫です、ありがとうございます」
リーチェに食事のお礼を伝え、お椀を返す。
以前なら到底足りないような量だったが、体が小さくなったせいか、かなりの満腹感だった。
俺は折角なので気になっていたことを座長さんに聞いてみることにした。
「あの、鏡……ミラーとかありますか?」
「鏡ね、大丈夫だよ。クルジュ、貸してあげてくれる?」
「……わかりました」
素っ気ない感じで返事をしたクルジュナさんは、お椀を座っていた丸太へ置くと近くの馬車へと入っていく。
そしてすぐに木の板のようなものを持って馬車から飛び降りると、俺の目の前までやってきた。
「……はいこれ。明日までに返してくれれば良いから」
少し視線を逸らしながら鏡を手渡され、俺が両手で受け取るとすぐに踵を返すクルジュナさん。
目元がなぜか少しだけ赤くなっていた。
(……照れ屋さん?)
本人にそんなことを聞けるはずもなく、お礼を言って渡された鏡を顔の前に持ってきて自分の姿を確認した。
(おいおい……誰だこの女の子……)
鏡に写っていたのは耳の上半分が隠れるぐらいまで伸びたシルバーの髪をした、女の子と間違えそうな顔。
少し明るい赤色をした瞳にくりくりとした大きな目。
自分の記憶にある姿とは似ても似つかないその顔立ちに、鏡ではなくモニターを見ているのではないかと錯覚してしまう。
「ユキくん、どうしたの?」
「いえ……その、自分の顔を改めて確認しようかと……」
心配そうにしてくれるアイリスさんに無難な返事を返し、じっと鏡に写る自分を見つめる。
片目を閉じたり、ニコッと笑ってみたりするが、俺の知っている俺の面影は微塵もなくなっていたのだった。
だが自分の視点からの範囲だけだと、今にも折れそうな少年のような下半身と両手しか見えない。
(くっ……鏡は無いのか……!)
「あれ? どうしたの? どっか痛い?」
「いえ、大丈夫です……」
「もー、そんな商人みたいなかたっ苦しい喋り方しなくても良いよー。気楽に行こう? ね?」
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色々と不安はあるのだが、今のところ出会った人たちが全員いい人なのが救いだった。
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その後ろ姿――腰の部分に髪色と同じ薄茶色の毛玉のようなものが着いているのが見えた。
(尻尾……!?)
「先に伝えておくと、みんな周辺の警戒をしながら舞台の練習をしているから、変わった服装しているけれどびっくりしないでね」
俺がリーチェの後ろ姿をじっと見ていると、座長さんが苦笑いをしながら俺に伝えてくる。
だがそう言われても、俺としてはどれが普通でどれが普通ではないのかがわからない。
座長さんは白髪交じりの黒髪短髪に、ファンタジー作品でよく見るような街人のような格好をしている。
俺が返答に困っていると「この服装が一般的な普段着だから」と苦笑いで伝えてくれた。
俺はそのままアイリスさんに連れられ、広場に並べられた丸太へ腰を下ろす。
アイリスさんがそのまま隣に座り、反対側にはエイミーさんが座った。
(こんな美人に挟まれて……緊張する……!)
普段からアイドルの若い子たちに囲まれて仕事をしているが、それとこれとは別だった。
仕事は完全に仕事と割り切って、仲良くもなるが一定以上の線引はしている。
だが、アイリスさんもエイミーさん、それにアイナさんやリーチェ、全員がスタイル抜群の女の子だった。
正直目のやり場に困る上に、仕事ではない……むしろ違う世界だ。
正直まだ脳内の整理が終わっていない状況もあって、この女性たちとの距離感がつかめない。
「おまたせー! 今日はリーチェの特製スープだよー」
小走りで戻ってくるなり、竈の大きな鍋の元へと戻るリーチェ。
そしてリーチェが現れた馬車の反対側からゾロゾロとこちらへと向かってくる来る人影が見えた。
「皆さんお疲れ様です。この子、目が覚めたから紹介しますね」
「あら、目が覚めたのね、元気そうで良かったわ」
そのうちの1人がジッと俺を見下ろしながら呟いた。
(こわ……というか、すごい服装だな……ゴスロリ系というか……この世界ではこういう服装も普通にあるんだろうか)
俺は慌てて立ち上がろうとすると、エイミーさんが肩を押さえて「座ってていいよ」とニッコリ微笑む。
「ユキくん、全員は覚えられないと思うけれど、一度紹介するね。はい、みんな並んであげて」
そう言って座長さんが俺の後ろに立ち、一人ずつ紹介される。
「こっちのブロンドの子がクルジュナね」
「……よろしく」
「その隣がケレス」
「やっほー、よろしくね」
「その一番大きな男がサイラス」
「元気になって良かったなボウズ」
「あと二人居るけれど、そっちは夜番で今は寝ているから今度紹介するよ」
「は、はい。あ、あのっ、ユキと言います、しばらくお世話になることになりました。よろしくお願いします」
最初に紹介されたクルジュナさんは金髪ロングで、ダークレッドのゴスロリ服のような服装だった。
名前はともかく普段からこの服装だとしたら、すぐに覚えられそうなほどインパクトがある。
ケレスさんは黒とダークレッドのチェック、ツートンカラーのボンテージ衣装のような上に、同じ柄のショートパンツ。
しかも頭の左右から羊の角のようなものが生えていた。
そして両手とも二の腕までの長い手袋をしている。
(えっと……羊……というより悪魔的な角……? かっこよすぎる……)
サイラスさんはムキムキの巨漢で身長は2メートルは超えてそうだ。
素肌にベストのような服と着ており、いかにもな感じのおじさんだ。
カイザル髭とニカッと笑った顔が少し怖いが、悪い人ではなさそうだ。
これで総勢七人、俺を入れても八人しかいない。
夜番とやらの二人を入れても十人だった。
座長の説明だと、このメンバーであちこちの街を巡って大道芸を披露しながら日銭を稼いで回っているらしい。
「はい、熱いから気をつけてね」
俺が必死に名前を覚えようとしていると、リーチェが木製のお椀とスプーンを持ってきてくれた。
俺はその木椀を両手で受け取り膝へ乗せる。
「おいしそう……」
今まで何も感じていなかったが、食べ物を見た途端に空腹感が襲ってきた。
「では頂こうか」
「はーい」
「リーチェ、いつもありがとう」
「いただきます」
座長の一言で全員が出されたスープを頬張り始める。
野菜と何かの肉を煮込んだだけのスープ。
スプーンで恐る恐る口へと運ぶと、思ってた以上に香辛料の香りが口内へ広がり、その後に野菜の旨味がしっかりと効いてくる。
「……おいしい」
「あははっ、良かった! パンもあるからたくさん食べてね」
アイリスさんの隣に座っていたリーチェが、手のひらに乗る大きさの丸パンを手渡してくるので、ありがたく受け取る。
「ねーねー、君って、ユキくん? ユキちゃん?」
「――っ!? ごほっ、ごほっ、えっ、えっと、男です……けど」
向かい側に座っているケレスさんに質問され、質問内容に思わず咳き込んでしまう。
「ほえー……女の子みたいだ」
「みんな、食べながらでいいから聞いてね。ユキくんは魔獣に襲われたショックで記憶がいくつか無くなっている。一般常識もいくつか忘れている可能性があるから、変な質問をされても教えてあげて欲しい」
「はーい」
「わかりました……」
「なんと、それは不便であろう……かわいそうに」
「でも元気になって良かったわ。死んじゃったら何も残らないもんね」
座長さんの説明にそれぞれが納得した顔をする。
(ほんとこの人、気遣いが凄いな……この人たちに助けてもらって良かった)
部屋で寝て起きたらここに居た記憶しかないので、助けてもらったという実感もあまりないが、それでも心の中で感謝しておく。
「ユキくん、お変わりは?」
「もう大丈夫です、ありがとうございます」
リーチェに食事のお礼を伝え、お椀を返す。
以前なら到底足りないような量だったが、体が小さくなったせいか、かなりの満腹感だった。
俺は折角なので気になっていたことを座長さんに聞いてみることにした。
「あの、鏡……ミラーとかありますか?」
「鏡ね、大丈夫だよ。クルジュ、貸してあげてくれる?」
「……わかりました」
素っ気ない感じで返事をしたクルジュナさんは、お椀を座っていた丸太へ置くと近くの馬車へと入っていく。
そしてすぐに木の板のようなものを持って馬車から飛び降りると、俺の目の前までやってきた。
「……はいこれ。明日までに返してくれれば良いから」
少し視線を逸らしながら鏡を手渡され、俺が両手で受け取るとすぐに踵を返すクルジュナさん。
目元がなぜか少しだけ赤くなっていた。
(……照れ屋さん?)
本人にそんなことを聞けるはずもなく、お礼を言って渡された鏡を顔の前に持ってきて自分の姿を確認した。
(おいおい……誰だこの女の子……)
鏡に写っていたのは耳の上半分が隠れるぐらいまで伸びたシルバーの髪をした、女の子と間違えそうな顔。
少し明るい赤色をした瞳にくりくりとした大きな目。
自分の記憶にある姿とは似ても似つかないその顔立ちに、鏡ではなくモニターを見ているのではないかと錯覚してしまう。
「ユキくん、どうしたの?」
「いえ……その、自分の顔を改めて確認しようかと……」
心配そうにしてくれるアイリスさんに無難な返事を返し、じっと鏡に写る自分を見つめる。
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