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05-Chorus
065話-首都エイスティンへ
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アペンドの街を出発して、ガラガラと馬車を走らせること一ヶ月。
俺たちはやっと首都エイスティンへと到着した。
一座のみんなからすると、一ヶ月ちょいぶりの首都エイスティンへととんぼ返り。
ここまで来る道中はあまり大変なことは起きなかったのが救いだった。
天気もいい。
魔獣もほとんど出ない。
馬車も順調で、食糧もバッチリ。
アイナ、エイミー、ケレスとの距離感をどうすればいいのか、はじめのうちはかなり気を使ったが今の所はいつもどおりに接することが出来ている気がする。
「ユキ、どうする? アイナに先行してもらう?」
「そうだね、お願いしてくるよ」
「私が行ってくるよ! ユキはゆっくりしてて」
元気いっぱい系女子のアイナは相変わらずだが、ケレスがかなり女の子らしくなったことにはびっくりした。
(俺と話してる時だけだけど……)
結局あの日、教会に戻った俺たちはリーチェとクルジュナに速攻疑われ、自白させられたのだった。
自惚れではないけれど、あれ以来リーチェとクルジュナの距離感もかなり近くなった気がする。
リーチェはもともと近かったからあまり気にならないのだが、たまにゴミを見るような目を向けてきていたクルジュナは最近少し潤んだ視線を向けてくることがある。
(これがハーレム……って奴なのか……鑑定したら解るのかなぁ……)
一度アイナとエイミー、リーチェには魔技を手に入れたときに一度鑑定系の魔技『真実の鏡』を使っているのだが、他のメンバーにはまだ使っていない。だが最近のクルジュナの様子やケレスの変わり様を見ていると気になって仕方がない。
しかし今の俺が使うと色々と見えすぎてしまい申し訳なく思ってしまう……というのは自分への言い訳で、見るのが怖くて使っていない。
何しろスリーサイズから好きな人や家系、今考えていることまで表示されてしまうのだ。
これではプライバシーなんてあってないようなものだ。
魔技を使った回数が原因なのか、間柄の距離感かわからないが称号という項目も見れるようになったし、以前は表示されていなかったがスリーサイズのような項目も表示されてしまう。
本人も知らないような個人情報満載となってしまった手帳が他人から見えない仕様で良かったとつくづく思う。
俺が使うことで効果の変化しているのなら、他の魔技も効果がおかしなことになっているかもしれないが生憎まだ試す機会は訪れていない。
この鑑定の魔技に関しては気持ちの問題的に仲間には使いづらい。だが、これを利用して魔技を持っている人物を探し、その人の幻影を出して俺が魔技を習得するという素敵なコンボはどんどんと使っていきたいと思う。
(どうせ他人だし、俺も他人のプロフィールには興味ないし)
「どうしたの? ユキ」
「ん……いや、ちょっと色々あるなぁって」
ケレスが前の馬車へと向かったのでリーチェと二人きりで残されているのだが、色々と考え込んでしまった。
俺が前に戻るついでにアイナに伝えるつもりだったが、ここに残る空気になってしまい戻れずにいる。
「そーいや、ユキはまだ記憶戻んないんだよね」
「んん……うん、まぁ……」
「そっかぁ……記憶ないのって辛いよね……困ったことがあったらいつでも聞いてね?」
リーチェが御者台の上に足を乗せ、膝に顔をコテンと乗せてじっと視線を向けられる。
重力に従ってぺろんと垂れ下がった耳が可愛らしい。
触りたいがこの世界だと触ると色々と問題なパーツだそうなのでぐっと我慢する。
「生まれ故郷ぐらいは思い出したいよね……故郷だもんね」
「……リーチェは、出身はどこ?」
「私……? 私もわかんない……ほら私の種族ってアレだからさ、えへへっ」
苦笑を浮かべるリーチェを見て地雷を踏んだ気がして冷や汗が出る。
「ごめん、聞いちゃいけない事だった?」
「んー、あぁそっか、知らないんだったね、ごめんね? 私の種族って愛玩動物として飼われてたんだ。戦争が終わってからはみんな解放されたんだけど……そんなだから故郷っていうのは無いんだ」
「ごめん……」
リーチェの口から出たのは想像以上に重い話だった。
愛玩動物として……飼われてたというのは、この世界だと、奴隷とか下働きという意味ではなく、文字通り飼われており養殖されていた種族という事だった。
アペンドから持ってきた歴史書にそんなことが書かれていたのを一瞬で思い出し、同時に申し訳ない気持ちでいっぱいになる。
「私そんなに気にしていない話だからユキが落ち込まなくていいんだよーもぅ、ほら元気出して」
「――ユキ、ただいまっ! 受付お願いしてきたよ」
いったいどこからジャンプしたのか、アイナが馬車の屋根の上に音もなく着地してきた。
「アイナ、お帰り。いつもありがとう」
「ふふっ、どういたしまして」
先に街の門まで行き、俺たちが到着することを伝えてきてくれたアイナ。
こうしておくことである程度の馬車の集団の場合、荷物チェックの体制を用意してくれるために街に入るのが早くなる。
「それはそうと、ケレスはまだ前かな?」
「うん、戻ってきてないからエイミーと話ししてるんじゃないかな」
「そっか、じゃあ私も行ってこようかな」
ぴょんと屋根の上へと飛びあがり前の馬車へと移っていくアイナを見送りながら『貪欲な貝』から巻物を出す。
この座長から受け取った巻物は『荒野の星』の運営マル秘帳だと聞いていたのに、この国エイスティンでの営業許可証も入っていたのだった。
基本的にどこで大道芸をやってようと怒られることはないのだが、これがあると大都市などの中央広場のような大きな広場を借りることができるのだ。
「アイナ、変わったよね」
「え? どうしたのリーチェ、そんな唐突に」
「んー、あの日からなんだか変わったなって。綺麗になったというか……性格が丸くなったというか」
リーチェがいう『あの日』というのはもちろんアペンドであの夜のことだ。
俺的には最初からあまり変わっていないように思えるのだが、リーチェが言うには俺が『荒野の星』へ入ってから徐々に好戦的ではなくなってきていて、それが加速した……という感じの説明をされた。
「俺にはよくわからないなぁ……最初からあんな感じだったと思うんだけど」
「じゃあケレスならわかる?」
「あ、それはわかる」
ケレスもアイナとよく似た感じだったが、アイナほどスキンシップはなく一線引いているような感じだった。
それが最近はやたらと甲斐甲斐しいというか、いいお姉さんという感じなのだ。
「やっぱり、好きな人ができると変わるんだねぇ~いいなぁ~」
ぐっと伸びをしながらチラリと向けてくる視線に気づかないふりをしながら、アイテムボックスから身分証を取り出してポケットへとしまう。
いまだに日本での常識が離れず、アイナたち三人だけでも『ほんとこれ大丈夫なのか』と思っているのに更に自分から彼女を増やすなんて度胸は俺にはないのだ。
(でも向こうから来たら俺はあっさり流されちゃうんだろうな)
そんなことを思いながら、前の馬車について大きく左右に伸びる石壁の中央に設けられた門へと馬車を走らせた。
俺たちはやっと首都エイスティンへと到着した。
一座のみんなからすると、一ヶ月ちょいぶりの首都エイスティンへととんぼ返り。
ここまで来る道中はあまり大変なことは起きなかったのが救いだった。
天気もいい。
魔獣もほとんど出ない。
馬車も順調で、食糧もバッチリ。
アイナ、エイミー、ケレスとの距離感をどうすればいいのか、はじめのうちはかなり気を使ったが今の所はいつもどおりに接することが出来ている気がする。
「ユキ、どうする? アイナに先行してもらう?」
「そうだね、お願いしてくるよ」
「私が行ってくるよ! ユキはゆっくりしてて」
元気いっぱい系女子のアイナは相変わらずだが、ケレスがかなり女の子らしくなったことにはびっくりした。
(俺と話してる時だけだけど……)
結局あの日、教会に戻った俺たちはリーチェとクルジュナに速攻疑われ、自白させられたのだった。
自惚れではないけれど、あれ以来リーチェとクルジュナの距離感もかなり近くなった気がする。
リーチェはもともと近かったからあまり気にならないのだが、たまにゴミを見るような目を向けてきていたクルジュナは最近少し潤んだ視線を向けてくることがある。
(これがハーレム……って奴なのか……鑑定したら解るのかなぁ……)
一度アイナとエイミー、リーチェには魔技を手に入れたときに一度鑑定系の魔技『真実の鏡』を使っているのだが、他のメンバーにはまだ使っていない。だが最近のクルジュナの様子やケレスの変わり様を見ていると気になって仕方がない。
しかし今の俺が使うと色々と見えすぎてしまい申し訳なく思ってしまう……というのは自分への言い訳で、見るのが怖くて使っていない。
何しろスリーサイズから好きな人や家系、今考えていることまで表示されてしまうのだ。
これではプライバシーなんてあってないようなものだ。
魔技を使った回数が原因なのか、間柄の距離感かわからないが称号という項目も見れるようになったし、以前は表示されていなかったがスリーサイズのような項目も表示されてしまう。
本人も知らないような個人情報満載となってしまった手帳が他人から見えない仕様で良かったとつくづく思う。
俺が使うことで効果の変化しているのなら、他の魔技も効果がおかしなことになっているかもしれないが生憎まだ試す機会は訪れていない。
この鑑定の魔技に関しては気持ちの問題的に仲間には使いづらい。だが、これを利用して魔技を持っている人物を探し、その人の幻影を出して俺が魔技を習得するという素敵なコンボはどんどんと使っていきたいと思う。
(どうせ他人だし、俺も他人のプロフィールには興味ないし)
「どうしたの? ユキ」
「ん……いや、ちょっと色々あるなぁって」
ケレスが前の馬車へと向かったのでリーチェと二人きりで残されているのだが、色々と考え込んでしまった。
俺が前に戻るついでにアイナに伝えるつもりだったが、ここに残る空気になってしまい戻れずにいる。
「そーいや、ユキはまだ記憶戻んないんだよね」
「んん……うん、まぁ……」
「そっかぁ……記憶ないのって辛いよね……困ったことがあったらいつでも聞いてね?」
リーチェが御者台の上に足を乗せ、膝に顔をコテンと乗せてじっと視線を向けられる。
重力に従ってぺろんと垂れ下がった耳が可愛らしい。
触りたいがこの世界だと触ると色々と問題なパーツだそうなのでぐっと我慢する。
「生まれ故郷ぐらいは思い出したいよね……故郷だもんね」
「……リーチェは、出身はどこ?」
「私……? 私もわかんない……ほら私の種族ってアレだからさ、えへへっ」
苦笑を浮かべるリーチェを見て地雷を踏んだ気がして冷や汗が出る。
「ごめん、聞いちゃいけない事だった?」
「んー、あぁそっか、知らないんだったね、ごめんね? 私の種族って愛玩動物として飼われてたんだ。戦争が終わってからはみんな解放されたんだけど……そんなだから故郷っていうのは無いんだ」
「ごめん……」
リーチェの口から出たのは想像以上に重い話だった。
愛玩動物として……飼われてたというのは、この世界だと、奴隷とか下働きという意味ではなく、文字通り飼われており養殖されていた種族という事だった。
アペンドから持ってきた歴史書にそんなことが書かれていたのを一瞬で思い出し、同時に申し訳ない気持ちでいっぱいになる。
「私そんなに気にしていない話だからユキが落ち込まなくていいんだよーもぅ、ほら元気出して」
「――ユキ、ただいまっ! 受付お願いしてきたよ」
いったいどこからジャンプしたのか、アイナが馬車の屋根の上に音もなく着地してきた。
「アイナ、お帰り。いつもありがとう」
「ふふっ、どういたしまして」
先に街の門まで行き、俺たちが到着することを伝えてきてくれたアイナ。
こうしておくことである程度の馬車の集団の場合、荷物チェックの体制を用意してくれるために街に入るのが早くなる。
「それはそうと、ケレスはまだ前かな?」
「うん、戻ってきてないからエイミーと話ししてるんじゃないかな」
「そっか、じゃあ私も行ってこようかな」
ぴょんと屋根の上へと飛びあがり前の馬車へと移っていくアイナを見送りながら『貪欲な貝』から巻物を出す。
この座長から受け取った巻物は『荒野の星』の運営マル秘帳だと聞いていたのに、この国エイスティンでの営業許可証も入っていたのだった。
基本的にどこで大道芸をやってようと怒られることはないのだが、これがあると大都市などの中央広場のような大きな広場を借りることができるのだ。
「アイナ、変わったよね」
「え? どうしたのリーチェ、そんな唐突に」
「んー、あの日からなんだか変わったなって。綺麗になったというか……性格が丸くなったというか」
リーチェがいう『あの日』というのはもちろんアペンドであの夜のことだ。
俺的には最初からあまり変わっていないように思えるのだが、リーチェが言うには俺が『荒野の星』へ入ってから徐々に好戦的ではなくなってきていて、それが加速した……という感じの説明をされた。
「俺にはよくわからないなぁ……最初からあんな感じだったと思うんだけど」
「じゃあケレスならわかる?」
「あ、それはわかる」
ケレスもアイナとよく似た感じだったが、アイナほどスキンシップはなく一線引いているような感じだった。
それが最近はやたらと甲斐甲斐しいというか、いいお姉さんという感じなのだ。
「やっぱり、好きな人ができると変わるんだねぇ~いいなぁ~」
ぐっと伸びをしながらチラリと向けてくる視線に気づかないふりをしながら、アイテムボックスから身分証を取り出してポケットへとしまう。
いまだに日本での常識が離れず、アイナたち三人だけでも『ほんとこれ大丈夫なのか』と思っているのに更に自分から彼女を増やすなんて度胸は俺にはないのだ。
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