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なんだかデートみたい

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鳥の鳴き声で意識が浮上する。
陽の光が差し込んで来るのを感じる。
窓から風が入って来る。

あれ?私窓を開けて寝たかしら?

少しずつ目を開けると…見慣れない天井が目に入る。
「ユーリ様おはようございます。よく眠れましたか?」
そこにはサリーがいました。

彼女をみて思い出す…私異世界に来たんだっけ。
「おはようございますサリー。風が気持ち良いわね」
窓を開けてくれたサリーにお礼を言うと、サリーはにっこり笑う。綺麗な人だわ。

いつもならこれから急いで支度をして仕事に向かうんだけど…なんだか変な感じだわ。
そう言えば、昨日誰かと話をする夢を見ていた様な…

「今日はアルフレッド様と街へお出掛けと聞いております。外出用のドレスにしましょうね。」
思考途中にサリーが言う。
「外出?アルと?」
「はい。昨日マリーがユーリ様が香りがお好きだとアルフレッド様にお話ししたら本日お出掛けになると言われたそうですよ。」
なるほど!じゃあ色々な香りに出会えるかも?楽しみだわ。

そう言えば、夢の内容なんだったかしら?
あ~綺麗な妖精が出てきたような…
あっ!妖精の加護がどうとか言っていたよね。
あれって夢?

ドアがノックされ、アルが入ってくる。
「おはようユーリ。昨日はよく眠れたかい?」
キラキラした笑顔が眩しいです。
「はい。お陰様で、夢の内容が余り思い出せないくらいグッスリ眠りました。」

環境が変わってもよく眠れる私はなかなか図太いのかもしれない。

「今日は街に出掛けよう。マリーから君が香りに興味があると聞いたからコースは任せてくれよ。」
お得意の?ウインクをされる。
どんなところへ連れて行ってくれるのかしら?

またドアがノックされる。
現れたのはセバス。
「アルフレッド様、馬車の用意が出来ました。」

馬車に乗るなんて初めてだわ!

アルと馬車に乗り込むと、ドアが閉められ出発する。窓からは昨日馬の上から見た風景が見える。

「ユーリ、まずは朝食を食べよう。パンケーキは好きかな?」
アルが素敵な提案をしてくれる。
「パンケーキ?大好きです!」
すぐに返事をする私。だってパンケーキは甘くて美味しいものじゃない?笑
しばらく進むとゆっくり馬車が止まる。
どうやら着いたみたい。

馬車を降りるととても甘~い匂いが漂ってくる。
『ベアーハント』
って名前らしい…
可愛い外見のお店だけど…
ネーミングはなかなか…笑
きっと蜂蜜たっぷりのパンケーキなのね!

中に入りメニューとにらめっこ!
アルはオーソドックスなハニーパンケーキ。
私は…おすすめのベアーハントスペシャルパンケーキ!
アルがオススメするから。

出てきてビックリ!
パンケーキの上に木の実や干した果物が散らしてあってその隣にはスノークリームって多分生クリーム?がパンケーキの横に山を作っている!
それらの上からたっぷりの蜂蜜がかかっている!
もう夢のパンケーキ!笑
甘くて美味しいパンケーキを2人で堪能した後は2人で街を歩く。
今日は外出用のドレスなので、まぁまぁ動きやすい格好の私。
普段はパンツばっかりだったから、ワンピースやドレスを着る私はちょっと恥ずかしい。
でも恥ずかしいけど半分嬉しい。
ヒラヒラ揺れるドレスをつい見てニマッとしてるところ、アルが見ているのにふと気付いて赤面する。
「ユーリは見ていて飽きないな。俺が女性と出歩く日が来るなんて思っても無かったよ。」
アルが照れながら言う。
これってもしかしてもしかして~デート??
異世界にきてよっぽどリア充じゃない?笑
そんな事思ってたらどうやら目的地に到着したらしい。
大きな門があって、そこを入ると広い公園のような庭が広がっている。色とりどりの花とハーブが咲いている。
まるで植物園のような場所。
素敵な香りがあちらこちらから香っている。
石畳を歩いて行くと石造りの建物がある。

「ここには花や木の匂いがする液体が売っているらしいぞ。」
アルが説明してくれる。
もしかして、もしかして精油かしら?
だったらとっても嬉しいわ!胸をドキドキさせながら扉を開ける。
ふわぁ~っといろんな精油の香りに包まれる。
懐かしい感覚がする。はじめに手に取ったのはローズマリー!
「ローズマリーは落ち込んでいる時や頑張らなきゃならない時に良く使ったわ。はぁ~いい匂い!」
深く吸い込み匂いを堪能する私。
「こっちのユーカリはリフレッシュしたい時や喉や鼻が炎症したときなんかに良いわよ。ティーツリーもユーカリと似てるけど、殺菌作用もあるし皮膚に直接使えるから便利なのよ。そしてベルガモット!
柑橘系の香りら食欲がない時なんかにいいわよ~!」
あっ、思わず興奮して1人ではしゃいじゃった。
「ユーリは香りに詳しいんだね。こんなに喜んでくれるとは!来てよかったよ!」
お店の奥から年配の女性がくる。
「お嬢さん、精油が好きなんだね。それによく勉強されてるようね。」
「恐れ入ります。まだまだですが…好きな物はやはり知りたいですからね。あっバラの精油もあるんですね!あぁ、いい匂い!それに希釈するオイルもあるんですね!素敵だわ~。」
精油の匂いに舞い上がっている私をアルはあたたかい目で見守っていてくれたみたい。
お店の人と熱く語り合って気が付けばお昼になっていた。
また来る事を約束してお店を後にする。
お店の前に馬車が待っていた。
幸せな気分のまま馬車に乗り込む私、少ししてアルが遅れて馬車に乗り込んできた。
「ここは気に入った?」
「はい!ありがとうございます!もう大満足です!」
私は即答するとアルは嬉しそうに笑う。
「それは良かった!マリーに感謝だな。」
「そうですね。私もマリーに感謝です!素敵な時間が過ごせました。アルも貴重なお休みを私の為に使って下さりありがとうございます。」
「俺も有意義な時間だったよ。香りにいろんな効果がある事も、ユーリのおかげで知れたし。」
「そう言っていただけるのは嬉しいです。そのうち役に立てると良いのですが…」

そんな話をしている間に馬車が止まる。
どうやらアルの邸宅に着いたらしい。
「アルフレッド様、ユーリ様おかえりなさいませ。お昼の支度が出来ています。お二人ともなんだか良い匂いがしますね。」
セバスに言われ2人で顔を見合わせると、思わず笑ってしまう。
「楽しいお出掛けだったようで何よりです。」
と一言。…ちょっと恥ずかしい。
お昼は2人でお庭で食べる事に…
アルのお家のお庭も本当に素敵でなんだかとっても元気になれる。
石でできたテーブルと、椅子があってそこに飲み物やサンドイッチに果物なんかが置かれている。まるでピクニックみたい。
「俺は明日からまた仕事に行かなくてはならないから昼間はユーリと居られないよ。大丈夫?」
アルがちょっと心配そうに聞いてきた。
もちろん不安はあるけれど、子どもじゃないから大丈夫!
「もちろん大丈夫です。いない間にこの国の事をちょっとでも学ばないとね?」
そう言うとアルは嬉しそうに笑う。
「一緒にいる間は俺が教えるよ。色々とね。」
アルは忙しいはずなのに…本当に親切なのね。
「ありがとうございます。」
笑顔でお礼をいう。
庭に爽やかな風が通る。自然の中にいるのがこんなに気持ちが良いものだとは今まであまり感じなかったな。空を仰いで花から空気を吸い込むと花の香り、木の香り、大地の香りを感じる。
なんだか満たされる感覚がする。

不思議な感覚だわ。

「そろそろ部屋へ戻ろう。朝から出掛けたから疲れただろう?」
アルが優しくいう。
「いいえ。とっても楽しいお出掛けでした。ありがとうございます。逆に元気になった気がします。」
「それは良かった。また夕飯時に迎えに来るよ。」
部屋の前でアルと別れる。
なんだか本当にデートのようだったなぁ。
今更赤面しながらドアを開ける。
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