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アルフレッドの呟き
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今日はトーナメント当日。
今までと違うのは、世間では女嫌いと言われている俺が、女性を招待したと言う事だ。
同僚の反応を見る限りきっとユーリは注目されてしまうんだろうな。
エドにはからかわれるし…。
そういやエドがいない?
さっきまでそこにいたはずなのに…
「アルフレッド、婚約者がお待ちだぞ!」
テントの入口からエドが大声で言う。なんてこった!静かに合流するつもりだったのに…
とりあえずエドに1発お見舞いしてからユーリに会いに行く。
ユーリは可愛いからな。本当は他の奴らの目に触れさせたくないけど…そういう訳にもいかないしな。
ヤバい顔が熱くなってきた!
とりあえずこの場からユーリを連れ出さなくては。
俺は急いでユーリの手を取り観覧席へ連れていく。
「ユーリ悪かったな。エドのせいで……」
きっと注目されて居心地悪かったよな?
ユーリはといえば…
「大丈夫です。こちらこそすみません。忙しい中ありがとうございます。アルはいつ出ますか?」
ユーリが謝る事なんてないのに気を遣わせてしまった。
試合は自分が2番目でエドが3番目に出る事を伝えた。別にエドの情報なんていらなかったけど、自分だけ言うのも気恥ずかしくて……って俺は乙女か!
でもユーリが可愛く応援してくれるから頑張れそうだよ。にやけないようにするのを一生懸命堪えた。
いつまでもユーリのそばに居たかったが、観覧席はギラギラした視線に晒され居心地が悪いので仕方なく退散する。
ユーリが心配だ。
試合は無様に負けるのは御免だから集中して取り組んだ。
ユーリの心配そうな顔が途中で見えた。
無事に勝った時は嬉しそうな顔が見れて安心した。
俺がこんな風に誰かを気にするなんて少し前までは考えもしなかったな。
エドの試合も心配そうに見ているユーリにちょっと嫉妬してしまったのは内緒だ。
第1試合をストレート勝ちしたところで、本部より殿下がお見えになったことを聞く。
今日はユーリと会いたいと言われていたのでセッティングしなくてはならない。
まさか殿下が直々にユーリに会いたいと言うとは全く思っていなかっただけに少し心配もある。
ユーリを連れて行くために観客席へ向かう。
殿下の護衛もあるのでエドワードも一緒だね。
あいつもすぐにユーリにちょっかいをかけようとするから要注意だ。
ってかこいつは何故愛想を振りまきながら歩くんだ?
まぁユーリいじりをされるよりはマシかな?
ユーリの元へ辿り着く。
とりあえず感想を聞いてみたくなり声を掛けると、剣さばきを褒められ、見惚れたと!
思わずにやけそうになる顔の筋肉を緩めなかった自分を褒めてやりたい。
そうそう、俺はこんな事をしている場合じゃなかったんだ!
殿下を待たせていた事を思い出し、ユーリ達を殿下のいる建物へ誘導する。
王立騎士団で何かが起こる確率はかなり低いが、エドと充分に警戒する。
「ユーリ、君と僕で入るよ。…」
殿下と会えるのはユーリのみ。
周りの護衛をエドに頼み部屋に入る。
ユーリと言えば、心配していたのがなんだったんだというくらい自然に殿下の前で立派に挨拶をしていた。
殿下はユーリに名前を呼ぶ事を許可されたし、アロマが余程気に入ったようだ。
そりゃ妖精の加護を受けたユーリのアロマの効果はすごいからな。
そんな時殿下が
「…ユーリに是非やってもらいたい物だな。」
もう反射的に
「殿下!」
と言っていた。
自分がからかわれたとわかったのは殿下の表情をみて悟った。
「アルフレッド、冗談だよ!君の大事な姫を取り上げたりしないよ。」
なんて事を殿下は言うんだ!
「アルフレッドがこんなに取り乱すとは、ユーリはすごいな!」
もう穴があったら入りたいくらいだ。
ユーリを見れば恥ずかしそうに
「いえ、恐縮です。」
とだけ答えていた。
それから2人はアロマの話で盛り上がっているようだが、俺は自分の失態に撃沈していた。
殿下が試合を見ていくと仰ったので、俺もいつまでもダメージを受けていてはダメだよな。
ユーリを観客席へ送り次の試合の為に精神統一に入る。
次の試合は第2部隊のブライアンだ。
容姿もだが経歴も派手な男だ。
最近聞いた話は魔物討伐に行って四体同時に戦って勝ったとか…
でも負けられない!
ユーリに無様な試合は見せられないからな。
俺は今までトーナメントでは怪我をする事もさせる事もなく勝利してきた。
それは自分で決めたルールだった。
理由としては、明日からの騎士の仕事に影響しない為だ。
なのに…今日に限って俺は両方のルールを破ってしまった。
それ位ブライアンは強く、俺を本気にさせたんだ。
痛みを遠くで感じながも、決着をつけなければと再度集中する。
一瞬の隙を見つけブライアンの背後をとりなんとか勝利する。
テントに戻るとしばらく放心してしまった。
頭からタオルを掛けられる。
「お疲れ!」
エドから一言。
多分俺の気持ちをわかってくれているようだ。
しばらくしてユーリが気になり立ち上がる。
足の傷が痛んだが無視してテントを出る。
ユーリが居る観客席を見るとユーリの姿は無かった。
ユーリは俺の試合どう見たのかな?気になるが…
足を見ると血が流れていて痛々しい。
「これじゃ会えないか。」
小さく呟き救護テントに行くことにする。
重い足取りで救護テントに入ると、そこにはユーリと侍女2人がいた。
「ユーリ!ここにいたの?席にいないから…」
探していたユーリが居たので思わず大きな声が出てしまった。
「心配した?私は貴方が怪我をしたから居ても立っても居られないからすぐに救護室を2人と探してきたのよ。」
ユーリを心配させた事に胸が痛む。
「そうか。悪かったな。」
更に落ち込む。
「怪我をするつもりもさせるつもりもなかったのにな…」
思わず心の声を口にしてしまう。
ユーリには俺の心境が見えたのだろうか?
「お疲れ様。アル、傷口を見せてちょうだい。洗うわね。」
そう言って傷の手当てをしてくれる。
ユーリが切り替えてくれたので俺もそれ以上考えるのをやめることが出来た。
「早く良くなりますように!」
ユーリが触れた部分からチリチリした痛みが引いていく。治癒されているのが体感できた。
「ユーリありがとう。…そう言えばブライアンは…」
怪我をしたのは自分だけじゃない事を今更ながら思い出し口にすると、
「ブライアン様は先程こちらに来られてユーリ様がちゃんと治療されましたよ。」
マリーが何故か嬉しそうに報告してきた。
「えっ?ユーリが治療したの?」
自分でも驚く程低い声だった。
「はい。頼まれましたので…いけませんでしたか?あっ、私部外者でしたわね。」
ユーリが慌てているのがわかる。
マリーは青ざめた顔をしていた。
俺は瞬時に理解した。
自分が嫉妬している事に…
「いや、いいんだ。…俺の心が狭いからいけないんだ。」
ユーリは多分わかってないようだったが、侍女達は俺が嫉妬している事がわかっているようだった。
28にもなって俺はなんてガキなんだ…。
でも瞬間的にユーリがブライアンの治療をしているシーンを想像して嫌な気持ちになってしまったんだ。そしてブライアンがユーリに関心を持つんじゃないか?と…
しかし、ユーリはヒーラーだ。
人を癒すのが仕事な訳で、当たり前に治療を行なっただろう。これからもあるだろうし…理解しなきゃな…。
再度気持ちを切り替えてユーリをお昼ごはんに誘った。
しかし、俺が心配した予感は的中したようだ。
侍女達が気を利かせて2人きりでランチを食べるようにしてくれた。
ランチを取りにいく間、ユーリに席で待っていてもらっていた。
1人にしたのがいけなかった…
食べ物を受け取りテーブルを見ると、ユーリの隣に金髪の男が座っているのが遠目で見えた!
近づいていくと、ユーリは少し困った顔をしていたが赤くなっているようだった。
金髪の男、ブライアンは明らかに口説きモードで名前を聞いているところだった。
「…美しい貴女のお名前を伺っても良いですか?」
血が沸く感覚だった。
「よろしくない!」
勢いよく割って入った。
「これはこれはアルフレッドじゃないか。」
驚いているようだから、ユーリが俺の婚約者とは知らなかったようだ。
「ブライアン、ここで何をしているんだ!」
思わず問い詰めると、
「アル、彼は手当てのお礼に来てくれていたのよ?
」
ユーリの鈍感さに初めてイラッとした。
「ユーリ、お前鈍感すぎだろ。こいつはお前を口説いているんだよ!」
ユーリに怒るなんてお門違いだったよな。気付いた時には遅く、
「アルフレッド、君は女性への扱いがなっていないな。君のお陰で名前も知れたし、良かったよ。」
ブライアンが余裕の表情で俺に言う。
そして余裕な表情でユーリを口説き出す。
もう完全に俺は冷静さを欠いていた。
「ブライアン!ユーリは……渡さないよ。」
激しい口調で俺はブライアンに言った。
そこでユーリがキレタ!
「あの私、犬猫じゃないです。2人とも場外試合は程々にしてください」
珍しくユーリが怒っていた。
「ブライアン様、アルを挑発するのはおやめください!」
物怖じせずブライアンにも意見する。
「アル、少し冷静になって下さい!らしくありませんよ?」
窘められてしまった。
俺カッコ悪くないか?
ユーリの発言にいち早く反応したのはブライアンだった。
「ユーリ、すまなかった。貴女が余りに素敵だから声をかけてしまったんだ。見る限りまだ私の入る隙がありそうだからね。諦めないよ。」
ブライアンはユーリに謝り、口説きながら、同時に俺への牽制もしてくる始末だ。
俺はもう余裕が無かった。
ブライアンはすべてを言い切り笑いながら去っていった。
俺と言えば…
「あいつ……」
もう言葉も出なかった。
しばらくは無言でランチを食べるしかなかった。
だが、このままでいいのか?と自問自答した時に、良くない!ってなって吹っ切れた。
ユーリのそばに居るのは今間違いなく俺だ。しかしこんな腑抜けた俺ではダメだ!ユーリのそばに居れる男でいなくてはならないよな!
「ユーリ、決勝戦必ず勝つから!」
気合を入れてユーリに言うと、少し面食らったような顔をしていたが、
「はい。頑張って下さいね。あの、もうお怪我はしないで下さいね?」
と可愛い顔で言われた。
もちろん決勝戦は勝利だ!
これからもユーリと一緒にいるためには努力は惜しまないと誓おう。
ライバルに取られるのは真っ平御免だからな。
ユーリの馬車を見送りやっとホッとした。
長い1日だったな。
今までと違うのは、世間では女嫌いと言われている俺が、女性を招待したと言う事だ。
同僚の反応を見る限りきっとユーリは注目されてしまうんだろうな。
エドにはからかわれるし…。
そういやエドがいない?
さっきまでそこにいたはずなのに…
「アルフレッド、婚約者がお待ちだぞ!」
テントの入口からエドが大声で言う。なんてこった!静かに合流するつもりだったのに…
とりあえずエドに1発お見舞いしてからユーリに会いに行く。
ユーリは可愛いからな。本当は他の奴らの目に触れさせたくないけど…そういう訳にもいかないしな。
ヤバい顔が熱くなってきた!
とりあえずこの場からユーリを連れ出さなくては。
俺は急いでユーリの手を取り観覧席へ連れていく。
「ユーリ悪かったな。エドのせいで……」
きっと注目されて居心地悪かったよな?
ユーリはといえば…
「大丈夫です。こちらこそすみません。忙しい中ありがとうございます。アルはいつ出ますか?」
ユーリが謝る事なんてないのに気を遣わせてしまった。
試合は自分が2番目でエドが3番目に出る事を伝えた。別にエドの情報なんていらなかったけど、自分だけ言うのも気恥ずかしくて……って俺は乙女か!
でもユーリが可愛く応援してくれるから頑張れそうだよ。にやけないようにするのを一生懸命堪えた。
いつまでもユーリのそばに居たかったが、観覧席はギラギラした視線に晒され居心地が悪いので仕方なく退散する。
ユーリが心配だ。
試合は無様に負けるのは御免だから集中して取り組んだ。
ユーリの心配そうな顔が途中で見えた。
無事に勝った時は嬉しそうな顔が見れて安心した。
俺がこんな風に誰かを気にするなんて少し前までは考えもしなかったな。
エドの試合も心配そうに見ているユーリにちょっと嫉妬してしまったのは内緒だ。
第1試合をストレート勝ちしたところで、本部より殿下がお見えになったことを聞く。
今日はユーリと会いたいと言われていたのでセッティングしなくてはならない。
まさか殿下が直々にユーリに会いたいと言うとは全く思っていなかっただけに少し心配もある。
ユーリを連れて行くために観客席へ向かう。
殿下の護衛もあるのでエドワードも一緒だね。
あいつもすぐにユーリにちょっかいをかけようとするから要注意だ。
ってかこいつは何故愛想を振りまきながら歩くんだ?
まぁユーリいじりをされるよりはマシかな?
ユーリの元へ辿り着く。
とりあえず感想を聞いてみたくなり声を掛けると、剣さばきを褒められ、見惚れたと!
思わずにやけそうになる顔の筋肉を緩めなかった自分を褒めてやりたい。
そうそう、俺はこんな事をしている場合じゃなかったんだ!
殿下を待たせていた事を思い出し、ユーリ達を殿下のいる建物へ誘導する。
王立騎士団で何かが起こる確率はかなり低いが、エドと充分に警戒する。
「ユーリ、君と僕で入るよ。…」
殿下と会えるのはユーリのみ。
周りの護衛をエドに頼み部屋に入る。
ユーリと言えば、心配していたのがなんだったんだというくらい自然に殿下の前で立派に挨拶をしていた。
殿下はユーリに名前を呼ぶ事を許可されたし、アロマが余程気に入ったようだ。
そりゃ妖精の加護を受けたユーリのアロマの効果はすごいからな。
そんな時殿下が
「…ユーリに是非やってもらいたい物だな。」
もう反射的に
「殿下!」
と言っていた。
自分がからかわれたとわかったのは殿下の表情をみて悟った。
「アルフレッド、冗談だよ!君の大事な姫を取り上げたりしないよ。」
なんて事を殿下は言うんだ!
「アルフレッドがこんなに取り乱すとは、ユーリはすごいな!」
もう穴があったら入りたいくらいだ。
ユーリを見れば恥ずかしそうに
「いえ、恐縮です。」
とだけ答えていた。
それから2人はアロマの話で盛り上がっているようだが、俺は自分の失態に撃沈していた。
殿下が試合を見ていくと仰ったので、俺もいつまでもダメージを受けていてはダメだよな。
ユーリを観客席へ送り次の試合の為に精神統一に入る。
次の試合は第2部隊のブライアンだ。
容姿もだが経歴も派手な男だ。
最近聞いた話は魔物討伐に行って四体同時に戦って勝ったとか…
でも負けられない!
ユーリに無様な試合は見せられないからな。
俺は今までトーナメントでは怪我をする事もさせる事もなく勝利してきた。
それは自分で決めたルールだった。
理由としては、明日からの騎士の仕事に影響しない為だ。
なのに…今日に限って俺は両方のルールを破ってしまった。
それ位ブライアンは強く、俺を本気にさせたんだ。
痛みを遠くで感じながも、決着をつけなければと再度集中する。
一瞬の隙を見つけブライアンの背後をとりなんとか勝利する。
テントに戻るとしばらく放心してしまった。
頭からタオルを掛けられる。
「お疲れ!」
エドから一言。
多分俺の気持ちをわかってくれているようだ。
しばらくしてユーリが気になり立ち上がる。
足の傷が痛んだが無視してテントを出る。
ユーリが居る観客席を見るとユーリの姿は無かった。
ユーリは俺の試合どう見たのかな?気になるが…
足を見ると血が流れていて痛々しい。
「これじゃ会えないか。」
小さく呟き救護テントに行くことにする。
重い足取りで救護テントに入ると、そこにはユーリと侍女2人がいた。
「ユーリ!ここにいたの?席にいないから…」
探していたユーリが居たので思わず大きな声が出てしまった。
「心配した?私は貴方が怪我をしたから居ても立っても居られないからすぐに救護室を2人と探してきたのよ。」
ユーリを心配させた事に胸が痛む。
「そうか。悪かったな。」
更に落ち込む。
「怪我をするつもりもさせるつもりもなかったのにな…」
思わず心の声を口にしてしまう。
ユーリには俺の心境が見えたのだろうか?
「お疲れ様。アル、傷口を見せてちょうだい。洗うわね。」
そう言って傷の手当てをしてくれる。
ユーリが切り替えてくれたので俺もそれ以上考えるのをやめることが出来た。
「早く良くなりますように!」
ユーリが触れた部分からチリチリした痛みが引いていく。治癒されているのが体感できた。
「ユーリありがとう。…そう言えばブライアンは…」
怪我をしたのは自分だけじゃない事を今更ながら思い出し口にすると、
「ブライアン様は先程こちらに来られてユーリ様がちゃんと治療されましたよ。」
マリーが何故か嬉しそうに報告してきた。
「えっ?ユーリが治療したの?」
自分でも驚く程低い声だった。
「はい。頼まれましたので…いけませんでしたか?あっ、私部外者でしたわね。」
ユーリが慌てているのがわかる。
マリーは青ざめた顔をしていた。
俺は瞬時に理解した。
自分が嫉妬している事に…
「いや、いいんだ。…俺の心が狭いからいけないんだ。」
ユーリは多分わかってないようだったが、侍女達は俺が嫉妬している事がわかっているようだった。
28にもなって俺はなんてガキなんだ…。
でも瞬間的にユーリがブライアンの治療をしているシーンを想像して嫌な気持ちになってしまったんだ。そしてブライアンがユーリに関心を持つんじゃないか?と…
しかし、ユーリはヒーラーだ。
人を癒すのが仕事な訳で、当たり前に治療を行なっただろう。これからもあるだろうし…理解しなきゃな…。
再度気持ちを切り替えてユーリをお昼ごはんに誘った。
しかし、俺が心配した予感は的中したようだ。
侍女達が気を利かせて2人きりでランチを食べるようにしてくれた。
ランチを取りにいく間、ユーリに席で待っていてもらっていた。
1人にしたのがいけなかった…
食べ物を受け取りテーブルを見ると、ユーリの隣に金髪の男が座っているのが遠目で見えた!
近づいていくと、ユーリは少し困った顔をしていたが赤くなっているようだった。
金髪の男、ブライアンは明らかに口説きモードで名前を聞いているところだった。
「…美しい貴女のお名前を伺っても良いですか?」
血が沸く感覚だった。
「よろしくない!」
勢いよく割って入った。
「これはこれはアルフレッドじゃないか。」
驚いているようだから、ユーリが俺の婚約者とは知らなかったようだ。
「ブライアン、ここで何をしているんだ!」
思わず問い詰めると、
「アル、彼は手当てのお礼に来てくれていたのよ?
」
ユーリの鈍感さに初めてイラッとした。
「ユーリ、お前鈍感すぎだろ。こいつはお前を口説いているんだよ!」
ユーリに怒るなんてお門違いだったよな。気付いた時には遅く、
「アルフレッド、君は女性への扱いがなっていないな。君のお陰で名前も知れたし、良かったよ。」
ブライアンが余裕の表情で俺に言う。
そして余裕な表情でユーリを口説き出す。
もう完全に俺は冷静さを欠いていた。
「ブライアン!ユーリは……渡さないよ。」
激しい口調で俺はブライアンに言った。
そこでユーリがキレタ!
「あの私、犬猫じゃないです。2人とも場外試合は程々にしてください」
珍しくユーリが怒っていた。
「ブライアン様、アルを挑発するのはおやめください!」
物怖じせずブライアンにも意見する。
「アル、少し冷静になって下さい!らしくありませんよ?」
窘められてしまった。
俺カッコ悪くないか?
ユーリの発言にいち早く反応したのはブライアンだった。
「ユーリ、すまなかった。貴女が余りに素敵だから声をかけてしまったんだ。見る限りまだ私の入る隙がありそうだからね。諦めないよ。」
ブライアンはユーリに謝り、口説きながら、同時に俺への牽制もしてくる始末だ。
俺はもう余裕が無かった。
ブライアンはすべてを言い切り笑いながら去っていった。
俺と言えば…
「あいつ……」
もう言葉も出なかった。
しばらくは無言でランチを食べるしかなかった。
だが、このままでいいのか?と自問自答した時に、良くない!ってなって吹っ切れた。
ユーリのそばに居るのは今間違いなく俺だ。しかしこんな腑抜けた俺ではダメだ!ユーリのそばに居れる男でいなくてはならないよな!
「ユーリ、決勝戦必ず勝つから!」
気合を入れてユーリに言うと、少し面食らったような顔をしていたが、
「はい。頑張って下さいね。あの、もうお怪我はしないで下さいね?」
と可愛い顔で言われた。
もちろん決勝戦は勝利だ!
これからもユーリと一緒にいるためには努力は惜しまないと誓おう。
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