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ヒーラー兼ドラゴンの契約者です
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「ユーリ、この状況……説明してくれるかな?」
私達がお庭でワイワイとハクと遊んでいると、アルが帰ってきました。
そして第一声です。
「えっとですね、空から降ってきました。」
そう言うと、
「えっ?ちょっと理解できない。1から説明してくれる?」
あら?アルさんちょっと不機嫌?
「アルが報告に行ってからですね……ランチをお庭でしていたら…この子が突然降ってきたんです。それでですね、名前が無いと呼びにくいって話になってハクって名付けたら、ハクが突然光りだしてその光が私に飛んできて……どうやら契約者になってしまったようです。」
アルが頭を抱えてます。
「えっとアル?私、不味いことしちゃいました?」
「ん~これを俺はどう説明したらよいのか悩んでる。正直、ドラゴンとの契約は特別なことだから……国レベルの管轄に置かれる可能性もあるんだよ。……ただ、ホワイトドラゴンが子ドラゴンだから戦力にならないと判断されれば今のところ免除される可能性はあるが……ただ、ユーリ、君はヒーラーである事実も隠しているのに、契約者となれば隠し通せないかもしれないな…。」
アルの表情が曇る。
「誰に説明しなくてはならないのですか?」
「今回の件は殿下に報告したところだよ。」
「では…近いうちにすべてを殿下にお話して、どうしたらよいか相談させてもらうのはいかがでしょうか?私もこちらに来てもう随分になります。多少慣れてきましたし、お役に立てることがあれば協力したいと思います。」
これは正直な気持ちだ。
本来ならヒーラーとして働かなければならなかっただろう時間を随分とアルのおかげで自由にさせてもらえたし。
「ユーリ、本当に良いのか?殿下に話してしまったらもう後戻りは出来いんだぞ?」
「そうですね。それでもこれ以上迷惑をかける訳には行きませんし。いつかはこんな日が来るとどこかで考えていました。まさかドラゴンの契約者になるとは夢にも思ってもいませんでしたけどね!」
最後は明るく言う。
「ユーリ、迷惑だなんて思ってないから。君は僕のフィアンセだろ?」
「アル…ありがとう。」
「ユーリ様、私達はこの数ヶ月とても楽しく過ごさせていただきました。これからもそばにいさせていただきたいです!ですから最終的には戻ってきてくださいね!」
サリーが目をうるうるさせている。
うっかりもらい泣きしそうになる。
「まだどこかへ行くって話にもなってないのに…でもありがとう。私もここがとても好きよ。」
「アル、近いうちに殿下と会わせて貰えるかしら?」
覚悟を決めなきゃね。
「では、非公式で会えるよう殿下に相談してみるよ。俺もフィアンセをみすみす手離したくないし……」
急にアルが私を抱きしめる。アルの不安をちょっと感じ取ってしまった。心配させてるんだよね。
「アル、色々ごめんなさい。でも私から離れる事は無いから安心して?」
そう言うとますます強く抱きしめられた。
しかし…マリーとサリーの前だったと慌てる。
でも気が付けば2人は少し離れた場所で不自然に背を向けている。
そしてまた
「キュウ~ン!」
と上からハクが降ってくる!
私とアルの間に割って入って来たのでした。
「お前、わざとだな…。」
アルがハクに言うと
「キュウ?」
とひと鳴きして私に抱っこされに来た。
ちょっと重いけど座ってならなんとか?
「今度はドラゴンがライバルか?」
アルがボヤいていました。
--------------------
その夜、私は久しぶりに彼女と会うことにした。
部屋には私とハクだけがいる。
「フィーリー。」
そうつぶやくと空間に光が集まり出す。
ハクが興味津々って感じで見ている。
そして金髪美少女が現れた。
「お久しぶり~!ってホワイトドラゴン?」
彼女の第一声は驚きからでした。(笑)
「フィーリー、お久しぶりですね。実はね……」
そうしてここ最近の私の活動をかいつまんで話していく。
そしてしばらくフィーリーは静かに聞いてくれていた。
「……で、今日ハクとは偶然契約しちゃったのよね?」
ハクを見ながら言う。
「偶然ね~。それにしてもユーリは私が思う以上の事をするわね!予測不可能だわ!」
何故かフィーリーにしみじみ言われる。
「で、ヒーラーとして、ホワイトドラゴンの契約者として殿下に名乗る予定って話よね?」
「はい。そうです。」
フィーリーが確認する。
「実際あなたは王宮でお抱えのヒーラーとして働く事は望んでいるの?」
「王宮で……いえ、出来れば今の生活を手放したいとは思っていないです。でも……もう隠し通すことは、アルにも迷惑をかけてしまうので難しいと思います。」
フィーリーには正直に話した。
「ユーリ、ではその話をする時に私を呼びなさい。きっとその方が殿下の理解もはやいでしょう。」
フィーリーが提案する。
「フィーリーはいいの?妖精は余り人前に現れないんでしょ?」
「今回は特別よ。なるべくあなたが望む形で事が進むよう祈っているわ。」
フィーリーはそう言って消えました。
フィーリーは何を考えているのかしら?
でも……本当にアルやマリー、サリー達と一緒に居られたらいいな。
そしてハクとも……
「ハク、一緒に寝よっか?」
「キュウ~ン」
そう言うとベッドに入って丸まります。
可愛いです。
安心したのか朝までぐっすりでした。
朝は早くに目が覚めました。
ハクとお庭の散歩に出ました。
ハクは翼を広げ空へ向かって飛び出します。そして私の頭上をくるくると回っています。
背後から人の気配がして振り向くと、そこにはアルのお母様がいらっしゃいました。
「おはようございます。お早いですね。」
そう言うとにっこり笑って
「ユーリおはよう。あの子がホワイトドラゴンね?」
そう言って飛んでいるハクを見上げています。
「そうです。ハクって言います。アルから聞きましたか?」
「えぇ。それに色々とね…。ユーリあなたはいづれ『アルフレッドのお嫁さん』よ必ず戻ってきてね。」
あぁ待っていてくれる人がここにもいるのね。
「ありがとうございます。こんな私を認めて下さり…本当にありがとうございます。」
「あのアルフレッドがこんなに大事にできる女の子だもの。逃がせないわ!」
そう言って笑いながらお母様は屋敷に戻っていきました。
私なんかが嫁でいいのかしら?
ていうか嫁?私が?いやいやだってプロポーズだってまだだし?ってかまだとか!
ちゃんとそういう事考えたことなかったな。はじめ婚約者のフリから始まった訳だし…
一人で勝手に考えていると、サリーが呼びに来てくれた。
「ユーリ様!ここにいらっしゃったんですね。お部屋に行ったらいらっしゃらなかったので驚きました。」
「ごめんなさいね。ハクのお散歩に来てたのよ。」
そして朝の運動を終えたハクも戻ってきた。
「朝食にしましょう。」
朝食は久しぶりに揃って食ベることに。
お父様もお母様もアルもいてハクもいる。
この光景は今の私にとっての「幸せ」なんだなって素直に思う。
朝食が終わり、アルが出勤する時、
「ユーリ、明後日アロマの納品に行く日だよな?その帰りに殿下と会う事になると思う。」
少し硬い表情のアル。
「わかりました。心構えしておきます。」
いよいよです。
そして納品日です。
正直今日まではとっても忙しくて
余計な事を考える余裕はありませんでした。
そのお陰で作業は素晴らしく進みました。
新商品も頑張りました!
「ユーリ様、きっとこの化粧水もよく売れると思いますよ!」
マリーが言う。
「気に入って貰えると嬉しいわね。」
そしてマリアさんに新商品の説明をしつつ棚に並べていく。
「ユーリ嬢、色々ありがとう。」
突然お礼を言われる。
「なんですか?急に!」
「あなたが来てからすごいことが起こりっぱなしよ。アロマがこんなに普及するようになったのも、殿下の目に止まったことも。」
「私だけの力じゃないです!私こそ働く場を与えて下さって感謝しています。」
帰り際、マリアさんの目にはキラリと光るものを見た気がする。
そんなに泣かすような事を言った覚えは無いのだけれどね。
そして馬車で指定の場所へ向かう。
その場所は森の中にある一軒家。
着くとそこには既にアルと数人の騎士団の方がいて私とハクは扉の中へ案内される。
マリーとサリーは馬車でお留守番です。
中へ入ると殿下とブライアンがいる。
後ろからはアルが入ってきて扉が閉められる。
「ユーリ、こんなところまですまぬな。余り人に聞かれたくない話ゆえこんな場所での話し合いとなった。」
殿下が謝るところではないのに…
「いえ、私こそ無理をお願いして申し訳ありませんでした。」
殿下はハクを見てもあまり驚いていないようなのできっとアルからある程度話しているのかもしれないわね。
「まず、ユーリからの話を聞いても良いか?」
殿下のお言葉から、本題へのスタートの合図だった。
「殿下お話の前に、この場に呼びたい者がいます。お許しいただけますか?」
「今からか?」
「直ぐです。」
そう言うと殿下が
「許す。」
「ありがとうございます。」
殿下にお礼を言ってから、
「フィーリー。」
そう言うと、宙に光が集まり金髪美女のフィーリーが現れる。
「これは…」
殿下もアルもブライアンも驚いている様子だ。
「お初におめにかかります。エルフの妖精フィーリーと申します。今日のこの場に立ち会わせていただきますわ。」
そう言って宙に浮かびながら礼をする。
そして私が話す番。
「まずは殿下、私の境遇から話をさせていただきます。私はまずこの世界の人間ではありません。
ある日突然ソフィーの森で倒れていた所をアルに助けていただきました。そしてなぜこの世界に来たのか?と言う謎の答えはフィーリーが鍵でした。
しばらくして彼女が夢に現れ、現実に話すことで、理由がわかりました。」
「それは……」
「それは私が試しに召喚してしまったからよ。」
そこからフィーリーが説明を変わる。
「私がお試しで召喚してしまった為に彼女は元の世界へ戻れなくなってしまったわ。
この世界で生きていくために、私はヒーラーとしての能力を、女神の加護を授けたの。
でも彼女は非公式の召喚であった為今日まで公にしてきませんでした。
しかし、女神の加護の影響か、ホワイトドラゴンに気に入られてしまい契約者となってしまった。
彼女はいづれ自分がヒーラーである事が公になる事を悟りこの様に殿下へ報告する決意をした訳です。」
「ユーリ、そうか、よく話してくれたね。そしてフィーリー様もありがとうございます。」
そう言って更に
「実は、ユーリに何らかの力がある事は薄々気付いていたよ。」
「えっ?アルからですか?」
「いや、君の作るアロマを使い続けていたからね。アルフレッドは一切その件に触れていないよ。」
アルが頭をかいている。微妙な立場の中申し訳なかったわね。
「それにブライアンも……」
「ブライアン様も?」
「いや、君の使うアロマに秘密があるんじゃないかと前にも言ったと思うが…まさかヒーラーとまでは知らなかったよ。」
そっか……やっぱり不自然に早い治癒だとバレるわよね。
「そしてユーリ、ヒーラーでありホワイトドラゴンの契約者であることを告白した訳だが、何を望む?」
殿下が目を細めながら私に尋ねる。
私達がお庭でワイワイとハクと遊んでいると、アルが帰ってきました。
そして第一声です。
「えっとですね、空から降ってきました。」
そう言うと、
「えっ?ちょっと理解できない。1から説明してくれる?」
あら?アルさんちょっと不機嫌?
「アルが報告に行ってからですね……ランチをお庭でしていたら…この子が突然降ってきたんです。それでですね、名前が無いと呼びにくいって話になってハクって名付けたら、ハクが突然光りだしてその光が私に飛んできて……どうやら契約者になってしまったようです。」
アルが頭を抱えてます。
「えっとアル?私、不味いことしちゃいました?」
「ん~これを俺はどう説明したらよいのか悩んでる。正直、ドラゴンとの契約は特別なことだから……国レベルの管轄に置かれる可能性もあるんだよ。……ただ、ホワイトドラゴンが子ドラゴンだから戦力にならないと判断されれば今のところ免除される可能性はあるが……ただ、ユーリ、君はヒーラーである事実も隠しているのに、契約者となれば隠し通せないかもしれないな…。」
アルの表情が曇る。
「誰に説明しなくてはならないのですか?」
「今回の件は殿下に報告したところだよ。」
「では…近いうちにすべてを殿下にお話して、どうしたらよいか相談させてもらうのはいかがでしょうか?私もこちらに来てもう随分になります。多少慣れてきましたし、お役に立てることがあれば協力したいと思います。」
これは正直な気持ちだ。
本来ならヒーラーとして働かなければならなかっただろう時間を随分とアルのおかげで自由にさせてもらえたし。
「ユーリ、本当に良いのか?殿下に話してしまったらもう後戻りは出来いんだぞ?」
「そうですね。それでもこれ以上迷惑をかける訳には行きませんし。いつかはこんな日が来るとどこかで考えていました。まさかドラゴンの契約者になるとは夢にも思ってもいませんでしたけどね!」
最後は明るく言う。
「ユーリ、迷惑だなんて思ってないから。君は僕のフィアンセだろ?」
「アル…ありがとう。」
「ユーリ様、私達はこの数ヶ月とても楽しく過ごさせていただきました。これからもそばにいさせていただきたいです!ですから最終的には戻ってきてくださいね!」
サリーが目をうるうるさせている。
うっかりもらい泣きしそうになる。
「まだどこかへ行くって話にもなってないのに…でもありがとう。私もここがとても好きよ。」
「アル、近いうちに殿下と会わせて貰えるかしら?」
覚悟を決めなきゃね。
「では、非公式で会えるよう殿下に相談してみるよ。俺もフィアンセをみすみす手離したくないし……」
急にアルが私を抱きしめる。アルの不安をちょっと感じ取ってしまった。心配させてるんだよね。
「アル、色々ごめんなさい。でも私から離れる事は無いから安心して?」
そう言うとますます強く抱きしめられた。
しかし…マリーとサリーの前だったと慌てる。
でも気が付けば2人は少し離れた場所で不自然に背を向けている。
そしてまた
「キュウ~ン!」
と上からハクが降ってくる!
私とアルの間に割って入って来たのでした。
「お前、わざとだな…。」
アルがハクに言うと
「キュウ?」
とひと鳴きして私に抱っこされに来た。
ちょっと重いけど座ってならなんとか?
「今度はドラゴンがライバルか?」
アルがボヤいていました。
--------------------
その夜、私は久しぶりに彼女と会うことにした。
部屋には私とハクだけがいる。
「フィーリー。」
そうつぶやくと空間に光が集まり出す。
ハクが興味津々って感じで見ている。
そして金髪美少女が現れた。
「お久しぶり~!ってホワイトドラゴン?」
彼女の第一声は驚きからでした。(笑)
「フィーリー、お久しぶりですね。実はね……」
そうしてここ最近の私の活動をかいつまんで話していく。
そしてしばらくフィーリーは静かに聞いてくれていた。
「……で、今日ハクとは偶然契約しちゃったのよね?」
ハクを見ながら言う。
「偶然ね~。それにしてもユーリは私が思う以上の事をするわね!予測不可能だわ!」
何故かフィーリーにしみじみ言われる。
「で、ヒーラーとして、ホワイトドラゴンの契約者として殿下に名乗る予定って話よね?」
「はい。そうです。」
フィーリーが確認する。
「実際あなたは王宮でお抱えのヒーラーとして働く事は望んでいるの?」
「王宮で……いえ、出来れば今の生活を手放したいとは思っていないです。でも……もう隠し通すことは、アルにも迷惑をかけてしまうので難しいと思います。」
フィーリーには正直に話した。
「ユーリ、ではその話をする時に私を呼びなさい。きっとその方が殿下の理解もはやいでしょう。」
フィーリーが提案する。
「フィーリーはいいの?妖精は余り人前に現れないんでしょ?」
「今回は特別よ。なるべくあなたが望む形で事が進むよう祈っているわ。」
フィーリーはそう言って消えました。
フィーリーは何を考えているのかしら?
でも……本当にアルやマリー、サリー達と一緒に居られたらいいな。
そしてハクとも……
「ハク、一緒に寝よっか?」
「キュウ~ン」
そう言うとベッドに入って丸まります。
可愛いです。
安心したのか朝までぐっすりでした。
朝は早くに目が覚めました。
ハクとお庭の散歩に出ました。
ハクは翼を広げ空へ向かって飛び出します。そして私の頭上をくるくると回っています。
背後から人の気配がして振り向くと、そこにはアルのお母様がいらっしゃいました。
「おはようございます。お早いですね。」
そう言うとにっこり笑って
「ユーリおはよう。あの子がホワイトドラゴンね?」
そう言って飛んでいるハクを見上げています。
「そうです。ハクって言います。アルから聞きましたか?」
「えぇ。それに色々とね…。ユーリあなたはいづれ『アルフレッドのお嫁さん』よ必ず戻ってきてね。」
あぁ待っていてくれる人がここにもいるのね。
「ありがとうございます。こんな私を認めて下さり…本当にありがとうございます。」
「あのアルフレッドがこんなに大事にできる女の子だもの。逃がせないわ!」
そう言って笑いながらお母様は屋敷に戻っていきました。
私なんかが嫁でいいのかしら?
ていうか嫁?私が?いやいやだってプロポーズだってまだだし?ってかまだとか!
ちゃんとそういう事考えたことなかったな。はじめ婚約者のフリから始まった訳だし…
一人で勝手に考えていると、サリーが呼びに来てくれた。
「ユーリ様!ここにいらっしゃったんですね。お部屋に行ったらいらっしゃらなかったので驚きました。」
「ごめんなさいね。ハクのお散歩に来てたのよ。」
そして朝の運動を終えたハクも戻ってきた。
「朝食にしましょう。」
朝食は久しぶりに揃って食ベることに。
お父様もお母様もアルもいてハクもいる。
この光景は今の私にとっての「幸せ」なんだなって素直に思う。
朝食が終わり、アルが出勤する時、
「ユーリ、明後日アロマの納品に行く日だよな?その帰りに殿下と会う事になると思う。」
少し硬い表情のアル。
「わかりました。心構えしておきます。」
いよいよです。
そして納品日です。
正直今日まではとっても忙しくて
余計な事を考える余裕はありませんでした。
そのお陰で作業は素晴らしく進みました。
新商品も頑張りました!
「ユーリ様、きっとこの化粧水もよく売れると思いますよ!」
マリーが言う。
「気に入って貰えると嬉しいわね。」
そしてマリアさんに新商品の説明をしつつ棚に並べていく。
「ユーリ嬢、色々ありがとう。」
突然お礼を言われる。
「なんですか?急に!」
「あなたが来てからすごいことが起こりっぱなしよ。アロマがこんなに普及するようになったのも、殿下の目に止まったことも。」
「私だけの力じゃないです!私こそ働く場を与えて下さって感謝しています。」
帰り際、マリアさんの目にはキラリと光るものを見た気がする。
そんなに泣かすような事を言った覚えは無いのだけれどね。
そして馬車で指定の場所へ向かう。
その場所は森の中にある一軒家。
着くとそこには既にアルと数人の騎士団の方がいて私とハクは扉の中へ案内される。
マリーとサリーは馬車でお留守番です。
中へ入ると殿下とブライアンがいる。
後ろからはアルが入ってきて扉が閉められる。
「ユーリ、こんなところまですまぬな。余り人に聞かれたくない話ゆえこんな場所での話し合いとなった。」
殿下が謝るところではないのに…
「いえ、私こそ無理をお願いして申し訳ありませんでした。」
殿下はハクを見てもあまり驚いていないようなのできっとアルからある程度話しているのかもしれないわね。
「まず、ユーリからの話を聞いても良いか?」
殿下のお言葉から、本題へのスタートの合図だった。
「殿下お話の前に、この場に呼びたい者がいます。お許しいただけますか?」
「今からか?」
「直ぐです。」
そう言うと殿下が
「許す。」
「ありがとうございます。」
殿下にお礼を言ってから、
「フィーリー。」
そう言うと、宙に光が集まり金髪美女のフィーリーが現れる。
「これは…」
殿下もアルもブライアンも驚いている様子だ。
「お初におめにかかります。エルフの妖精フィーリーと申します。今日のこの場に立ち会わせていただきますわ。」
そう言って宙に浮かびながら礼をする。
そして私が話す番。
「まずは殿下、私の境遇から話をさせていただきます。私はまずこの世界の人間ではありません。
ある日突然ソフィーの森で倒れていた所をアルに助けていただきました。そしてなぜこの世界に来たのか?と言う謎の答えはフィーリーが鍵でした。
しばらくして彼女が夢に現れ、現実に話すことで、理由がわかりました。」
「それは……」
「それは私が試しに召喚してしまったからよ。」
そこからフィーリーが説明を変わる。
「私がお試しで召喚してしまった為に彼女は元の世界へ戻れなくなってしまったわ。
この世界で生きていくために、私はヒーラーとしての能力を、女神の加護を授けたの。
でも彼女は非公式の召喚であった為今日まで公にしてきませんでした。
しかし、女神の加護の影響か、ホワイトドラゴンに気に入られてしまい契約者となってしまった。
彼女はいづれ自分がヒーラーである事が公になる事を悟りこの様に殿下へ報告する決意をした訳です。」
「ユーリ、そうか、よく話してくれたね。そしてフィーリー様もありがとうございます。」
そう言って更に
「実は、ユーリに何らかの力がある事は薄々気付いていたよ。」
「えっ?アルからですか?」
「いや、君の作るアロマを使い続けていたからね。アルフレッドは一切その件に触れていないよ。」
アルが頭をかいている。微妙な立場の中申し訳なかったわね。
「それにブライアンも……」
「ブライアン様も?」
「いや、君の使うアロマに秘密があるんじゃないかと前にも言ったと思うが…まさかヒーラーとまでは知らなかったよ。」
そっか……やっぱり不自然に早い治癒だとバレるわよね。
「そしてユーリ、ヒーラーでありホワイトドラゴンの契約者であることを告白した訳だが、何を望む?」
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