【R18】「お前を必ず迎えに行く」と言って旅立った幼馴染が騎士団長になって王女の婚約者になっていた件

望月 或

文字の大きさ
9 / 38

8.そして、王城へと旅立つ

しおりを挟む



「でも困ったわ……。王の命令なら『王命』になるし、必ず従わないといけないのよ。元はと言えば私を捜してこうなってしまったんだし、私が王のもとへ――」
「そんなのダメだよ! お母さんは安静にしてなきゃ! お城への道は長旅になるんだよ? 気力や体力も使うのに、そんな危険なことを身体が弱ってるお母さんには絶対にして欲しくない! 私が呼ばれてるんだから、私が行くよ! お母さんには、ずっと元気に長生きして欲しいの……」

 私は必死になってお母さんを説得する。私の言葉に、コハクも大きく頷いた。

「私もリュシルカと同じ気持ちです。この子が『王命』通りに城に行けば、お母様を捜す追手が来ることは無いし、この村で気兼ねなく療養が出来ます。私がリュシルカに付いて行きますから、お母様は安心して身体を休めて下さい。この子は私が必ず護りますから」
「リュシルカ、コハク……。本当にありがとう」

 お母さんは目を潤ませながら、優しく微笑んだ。

「ただ、お母様を一人残して行くのがとても気掛かりで……」
「それなら何の心配もしなくていいわ。村医師のガトラさんはこの家のご近所に住んでいるし、隣の家にはダンテがいるし。何かあればすぐに助けが呼べるから大丈夫よ」


 ダンテさんは、お母さんの幼馴染の男性だ。お母さんが私を身籠ってこの村に帰って来た時から、身重だったお母さんのことを色々と手伝ってくれていた。
 ダンテさんは寡黙だからあまり話さないけれど、以前、何でこんなに私達家族に良くしてくれるのか訊いたら、

「君のお母さんのことを、ずっと好きだったんだ」

 と、少し赤くなった顔でポツリと言ったんだ。
 言い方は過去形だったけれど、きっと今もお母さんのことが好きなんだと思う。
 証拠に、ダンテさんはホークレイに負けずなかなかの美形で、女性達から今も熱い視線を受けているのに、未だに独身だからだ。

 今までお母さんに告白しないのは、私達家族の邪魔をしたくないと思っているからなのかもしれない。
 ダンテさんは優しい人だから……。


 私とコハクは、ダンテさんとお母さんがくっついて欲しいと思っている。ダンテさんなら、絶対にお母さんを幸せにしてくれる筈だもの。
 私達がお城に行ってる間、ダンテさんはちょくちょくお母さんの様子を見に来ると思うから、二人の仲が一気に深まるかもしれない……!

 ――いや寧ろ、一緒に住んじゃえばもっと……!

 私がコハクの方を振り向くと、彼女も同じ考えをしていたのだろう、目が合うと小さく頷いた。


「ねぇお母さん、私達がお城に行っている間、ダンテさんと一緒に暮らして欲しいな。その方が、万が一何かあった時にすぐに対処出来るし。ダンテさんが一緒なら、私達も安心してお城に行けるよ」
「え、えぇっ? んー……そうね……。あなた達がそれで安心出来るなら、ダンテに訊いてみるわ。彼が嫌じゃ無ければいいけど……」


 大丈夫だよ、お母さん。きっと即答で「一緒に住む」って言うと思うよ! 見えないお尻のシッポをブンブン振り回しながら!


「あの王のことだから、私によく似たあなたを見て、自分の下に置いておきたくて『城に住め』って言うと思うの。でも、王は手に入れるまではしつこいくらいに執着するけれど、手に入れてからは飽きが早いから、暫くしたらあなたのことが飽きてくる筈よ。見向きもしなくなったらさっさと帰って来るのよ。そんなに時間は掛からないと思うわ。それまで、辛抱強く耐えるのよ。辛い思いをさせてごめんね。何も出来ないお母さんを許して……」
「お母さん、そんな……そんなことないよ! 私は大丈夫だから! コハクも一緒にいるし百人力だよ。二人元気にお母さんの所へ帰って来るから、お母さんも元気になって待っててね」
「……えぇ、えぇ。待っているわ、リュシルカ、コハク。二人共大好きよ」

 お母さんは潤む目を細め、優しく微笑みながらそう言うと、真面目な顔つきになり私の両手を手に取った。


「――リュシルカ。万が一の時の為にと思って、あなたにやってきたことや教えたこと、ちゃんと覚えてる?」
「うん、勿論だよお母さん」
「それらは、お城にいる時絶対に役に立つわ。忘れないでね。それと、お城の人達は基本信用しちゃ駄目よ。周り全てが敵と思って、油断しないようにね」
「うん、分かったよお母さん」
「肝に銘じておきます」


「えぇ~、ボクは信用して欲しいな~」と後ろから情けない声が飛んできたけれど、申し訳ないけど聞かなかったことにした。



 ――そうして私達は、オズワルドさんと一緒に、父である国王の住むお城へと旅立ったのだった。



 そこで私は、思いもよらない再会を果たすことになる――



しおりを挟む
感想 79

あなたにおすすめの小説

愛された側妃と、愛されなかった正妃

編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。 夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。 連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。 正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。 ※カクヨムさんにも掲載中 ※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります ※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。

【完結】赤ちゃんが生まれたら殺されるようです

白崎りか
恋愛
もうすぐ赤ちゃんが生まれる。 ドレスの上から、ふくらんだお腹をなでる。 「はやく出ておいで。私の赤ちゃん」 ある日、アリシアは見てしまう。 夫が、ベッドの上で、メイドと口づけをしているのを! 「どうして、メイドのお腹にも、赤ちゃんがいるの?!」 「赤ちゃんが生まれたら、私は殺されるの?」 夫とメイドは、アリシアの殺害を計画していた。 自分たちの子供を跡継ぎにして、辺境伯家を乗っ取ろうとしているのだ。 ドラゴンの力で、前世の記憶を取り戻したアリシアは、自由を手に入れるために裁判で戦う。 ※1話と2話は短編版と内容は同じですが、設定を少し変えています。

幼馴染を溺愛する旦那様の前からは、もう消えてあげることにします

睡蓮
恋愛
「旦那様、もう幼馴染だけを愛されればいいじゃありませんか。私はいらない存在らしいので、静かにいなくなってあげます」

転移先で日本語を読めるというだけで最強の男に囚われました

桜あずみ
恋愛
異世界に転移して2年。 言葉も話せなかったこの国で、必死に努力して、やっとこの世界に馴染んできた。 しかし、ただ一つ、抜けなかった癖がある。 ──ふとした瞬間に、日本語でメモを取ってしまうこと。 その一行が、彼の目に留まった。 「この文字を書いたのは、あなたですか?」 美しく、完璧で、どこか現実離れした男。 日本語という未知の文字に強い関心を示した彼は、やがて、少しずつ距離を詰めてくる。 最初はただの好奇心だと思っていた。 けれど、気づけば私は彼の手の中にいた。 彼の正体も、本当の目的も知らないまま。すべてを知ったときには、もう逃げられなかった。 毎日19時に更新予定です。

番を辞めますさようなら

京佳
恋愛
番である婚約者に冷遇され続けた私は彼の裏切りを目撃した。心が壊れた私は彼の番で居続ける事を放棄した。私ではなく別の人と幸せになって下さい。さようなら… 愛されなかった番。後悔ざまぁ。すれ違いエンド。ゆるゆる設定。 ※沢山のお気に入り&いいねをありがとうございます。感謝感謝♡

夫の色のドレスを着るのをやめた結果、夫が我慢をやめてしまいました

氷雨そら
恋愛
夫の色のドレスは私には似合わない。 ある夜会、夫と一緒にいたのは夫の愛人だという噂が流れている令嬢だった。彼女は夫の瞳の色のドレスを私とは違い完璧に着こなしていた。噂が事実なのだと確信した私は、もう夫の色のドレスは着ないことに決めた。 小説家になろう様にも掲載中です

どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします

文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。 夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。 エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。 「ゲルハルトさま、愛しています」 ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。 「エレーヌ、俺はあなたが憎い」 エレーヌは凍り付いた。

敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています

藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。 結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。 聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。 侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。 ※全11話 2万字程度の話です。

処理中です...