《用無し》と放り出された私と、過保護な元《聖騎士》様の旅路

望月 或

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126.再会




「――母さんっ!!」


 私は脇目も振らず、母さんの胸に飛び込みます。

「会いたかった、会いたかったよっ! 母さん……母さんっ!!」
「あらあら、そんなに泣いちゃって。まだまだ子供ねぇ」

 母さんはふふっと笑って、私の頭を撫でてくれました。

「――あ、そうそう、ラインありがとうね。柚月のくれたラインの通り、桜の木がある丘の上に行ったら、久し振りに神様に会えたのよ。もう一度お礼が言えて良かったわ」
「そうなんだね、神様に――あっ、そうだ! 母さんは願い事何にしたの? こっちの世界に来る際に、神様に一つだけ叶えてもらえるんでしょ?」
「えぇ、神様にそう聞かれて悩んだのよねぇ。最近老眼が始まってるから、それを治してもらいたいなとか、白髪も少しずつ増えてきたから、それを取ってもらいたいなとか、肩コリがひどいから、それを治してもらいたいなとか――」

 え、えぇっ!? 神様への願い事ってそんなんでいいの、母さんっ!? 神様もビックリだよソレッ!?

「でね、一つに決められなくてアレコレ悩んでたら、神様が『分かった分かった、若返らせれば全て一発で解決する話じゃな』って笑って仰ってね、お母さんが決める前に問答無用で十歳も若返らせてくれたのよ」
「十歳もっ!? 通りで前より随分若く見えるなーって思ってた! 気の所為じゃなかった――ってことは、今の母さんの年齢は三十二歳!? じゃあ父さんと同じ年になっ――」


 ……あっ!
 もしかして神様、父さんのことを考えてくれたの……?
 私はハッとなって辺りをキョロキョロと見回します。
 父さんは? 父さんはどこに――


「――あら?」


 どうやら、私より先に母さんが父さんを見つけたようです。
 母さんの視線の先を見ると、父さんが呆然とした顔で固まって、こちらをじっと見つめていました。
 母さんが、父さんに向かってふわりと笑みを浮かべます。


「……お久しぶりね、あなた。髪と目の色は【闇堕ち】の名残かしら? 金色も良かったけど、わたしと柚月とお揃いで嬉しいわ。あなたもよく似合ってる。……あら? もしかして年を取っていないの? あの頃と同じで何だか懐かしいわ、ふふっ」
「…………」

 父さんが無言のまま、ぎこちない動きで、こちらに近付いてきます。

「ね、あなた。柚月にラインで頼まれて、この子の小さい頃から今までの写真をたくさん持ってきたのよ。ビデオカメラも持ってきたけど……こちらで動画は見られるかしら? ふふっ、あとでみんなで見ましょうね。楽しみだわ」
「……かっ、母さん! その前に、私が先に選出させて!? お願いっ!!」
「あらあら、大丈夫よ? みんな柚月のかわいい写真ばかりだから……うふっ」
「母さんの『かわいい』は凄絶にヘンなのも含まれるからアテにならないの!! 絶対父さんに先に見せないでよね!? からかわれること間違いナシだから!!」
「あらあら、どうしようかしら? ふふっ」

 父さんが私達のもとまで歩いてくると、膝を折り、母さんの顔を間近でじっと見つめます。
 そして、小刻みに震える手を伸ばすと、母さんの頬をそっと触り、優しく撫でました。

「……あたたかい……」
「えぇ。この通り、ちゃんと生きてるわ。あなたも無事で良かった」

 父さんの呟きに母さんはふわりと笑い、頬に置かれた大きな手に、自分の小さな手を重ねて答えます。

「ねぇ、あなた。柚月、とても良い子に育ったでしょ?」
「あぁ……。本当に、自慢の娘だよ。最高の……」
「ふふっ、でしょ? だってあなたとわたしの子供ですから。そうそう、笑顔があなた似なのよ? 笑うと、本当にあなたの笑顔ソックリで……。気付いていたかしら?」
「あぁ……。それを見る度、『あぁ、オレの娘だ』って実感して、嬉しくなって――」

 ――えっ、そうなの? 自分の笑ってる顔って自分じゃなかなか見ないから全然知らなかった……。父さんの遺伝子は、ちゃんと確かに私の中にあったんだ……。
 微笑む母さんを見つめる父さんの両目から、堪え切れず涙が溢れてきます。

「あっ……いけない。わたしったら、これを言うのが先だったわね。――また会えてとても嬉しいわ、あなた。呼んでくれてありがとう」
「……蕾……っ!!」

 父さんが流れる涙をそのままに、震える声で母さんの名前を呼ぶと、私ごと母さんを強く抱きしめてきました。

「会いたかった……すごく……すごく会いたかった、蕾……っ! ゴメンな、守ってやれなくて本当にゴメンな……っ!!」
「あらあら、あなたもそんなに泣いちゃって……。ふふっ、泣き顔も親子ソックリね。それに、謝らなくていいのよ。この子からの伝言、聞いたでしょう?」
「……ネギ料理だけは勘弁してくれ……」
「うふふっ。あなたに食べてもらえるように、あれからネギ料理も上達したのよ? ネギでデザートも作れるようになったの。今度お披露目するわ。楽しみにしててね?」
「……ね、ネギゼリーだけは勘弁してくれ、蕾……」
「あらあら、具体的ね? ――そうそう柚月、トリケラトプスチーズたっぷりハンバーグ、ずっと楽しみにしてたのよ。お父さんとお母さんに近い内に作ってね♡」
「……せ、せめて“恐竜のようなもの”にして、母さん……」
「あらあら、今度は抽象的ね? 二人とも注文が多いんだから、もう……ふふっ」

 母さんは目を細めてクスリと笑うと、私と父さんを優しく抱きしめ返してくれます。

「わたしも会いたかったわ。あなた、柚月。――愛しているわ、二人とも」
「……わ、私も……っ」
「お……オレも……っ」

 私と父さんは見事なほど泣きまくってて、そう返事をするのがやっとでした……。


 やがて周りから盛大な拍手が沸き起こり、何事かと泣きながら顔を上げると、住民の皆さんがもらい泣きをしながら全員拍手をしていました。
 イシュリーズさん達は微笑みながら私達を見ていて、召喚士さんは、人目憚らず声を出して大号泣していて……。
 中には感涙しながら万歳三唱している人も――


「…………っっ!!」


 そこで私はここが公共の場だったと今更ながらに思い出し、ブラックホールに潜り込みたい気持ちで一杯になってしまったのでした……。



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