127 / 134
126.再会
「――母さんっ!!」
私は脇目も振らず、母さんの胸に飛び込みます。
「会いたかった、会いたかったよっ! 母さん……母さんっ!!」
「あらあら、そんなに泣いちゃって。まだまだ子供ねぇ」
母さんはふふっと笑って、私の頭を撫でてくれました。
「――あ、そうそう、ラインありがとうね。柚月のくれたラインの通り、桜の木がある丘の上に行ったら、久し振りに神様に会えたのよ。もう一度お礼が言えて良かったわ」
「そうなんだね、神様に――あっ、そうだ! 母さんは願い事何にしたの? こっちの世界に来る際に、神様に一つだけ叶えてもらえるんでしょ?」
「えぇ、神様にそう聞かれて悩んだのよねぇ。最近老眼が始まってるから、それを治してもらいたいなとか、白髪も少しずつ増えてきたから、それを取ってもらいたいなとか、肩コリがひどいから、それを治してもらいたいなとか――」
え、えぇっ!? 神様への願い事ってそんなんでいいの、母さんっ!? 神様もビックリだよソレッ!?
「でね、一つに決められなくてアレコレ悩んでたら、神様が『分かった分かった、若返らせれば全て一発で解決する話じゃな』って笑って仰ってね、お母さんが決める前に問答無用で十歳も若返らせてくれたのよ」
「十歳もっ!? 通りで前より随分若く見えるなーって思ってた! 気の所為じゃなかった――ってことは、今の母さんの年齢は三十二歳!? じゃあ父さんと同じ年になっ――」
……あっ!
もしかして神様、父さんのことを考えてくれたの……?
私はハッとなって辺りをキョロキョロと見回します。
父さんは? 父さんはどこに――
「――あら?」
どうやら、私より先に母さんが父さんを見つけたようです。
母さんの視線の先を見ると、父さんが呆然とした顔で固まって、こちらをじっと見つめていました。
母さんが、父さんに向かってふわりと笑みを浮かべます。
「……お久しぶりね、あなた。髪と目の色は【闇堕ち】の名残かしら? 金色も良かったけど、わたしと柚月とお揃いで嬉しいわ。あなたもよく似合ってる。……あら? もしかして年を取っていないの? あの頃と同じで何だか懐かしいわ、ふふっ」
「…………」
父さんが無言のまま、ぎこちない動きで、こちらに近付いてきます。
「ね、あなた。柚月にラインで頼まれて、この子の小さい頃から今までの写真をたくさん持ってきたのよ。ビデオカメラも持ってきたけど……こちらで動画は見られるかしら? ふふっ、あとでみんなで見ましょうね。楽しみだわ」
「……かっ、母さん! その前に、私が先に選出させて!? お願いっ!!」
「あらあら、大丈夫よ? みんな柚月のかわいい写真ばかりだから……うふっ」
「母さんの『かわいい』は凄絶にヘンなのも含まれるからアテにならないの!! 絶対父さんに先に見せないでよね!? からかわれること間違いナシだから!!」
「あらあら、どうしようかしら? ふふっ」
父さんが私達のもとまで歩いてくると、膝を折り、母さんの顔を間近でじっと見つめます。
そして、小刻みに震える手を伸ばすと、母さんの頬をそっと触り、優しく撫でました。
「……あたたかい……」
「えぇ。この通り、ちゃんと生きてるわ。あなたも無事で良かった」
父さんの呟きに母さんはふわりと笑い、頬に置かれた大きな手に、自分の小さな手を重ねて答えます。
「ねぇ、あなた。柚月、とても良い子に育ったでしょ?」
「あぁ……。本当に、自慢の娘だよ。最高の……」
「ふふっ、でしょ? だってあなたとわたしの子供ですから。そうそう、笑顔があなた似なのよ? 笑うと、本当にあなたの笑顔ソックリで……。気付いていたかしら?」
「あぁ……。それを見る度、『あぁ、オレの娘だ』って実感して、嬉しくなって――」
――えっ、そうなの? 自分の笑ってる顔って自分じゃなかなか見ないから全然知らなかった……。父さんの遺伝子は、ちゃんと確かに私の中にあったんだ……。
微笑む母さんを見つめる父さんの両目から、堪え切れず涙が溢れてきます。
「あっ……いけない。わたしったら、これを言うのが先だったわね。――また会えてとても嬉しいわ、あなた。呼んでくれてありがとう」
「……蕾……っ!!」
父さんが流れる涙をそのままに、震える声で母さんの名前を呼ぶと、私ごと母さんを強く抱きしめてきました。
「会いたかった……すごく……すごく会いたかった、蕾……っ! ゴメンな、守ってやれなくて本当にゴメンな……っ!!」
「あらあら、あなたもそんなに泣いちゃって……。ふふっ、泣き顔も親子ソックリね。それに、謝らなくていいのよ。この子からの伝言、聞いたでしょう?」
「……ネギ料理だけは勘弁してくれ……」
「うふふっ。あなたに食べてもらえるように、あれからネギ料理も上達したのよ? ネギでデザートも作れるようになったの。今度お披露目するわ。楽しみにしててね?」
「……ね、ネギゼリーだけは勘弁してくれ、蕾……」
「あらあら、具体的ね? ――そうそう柚月、トリケラトプスチーズたっぷりハンバーグ、ずっと楽しみにしてたのよ。お父さんとお母さんに近い内に作ってね♡」
「……せ、せめて“恐竜のようなもの”にして、母さん……」
「あらあら、今度は抽象的ね? 二人とも注文が多いんだから、もう……ふふっ」
母さんは目を細めてクスリと笑うと、私と父さんを優しく抱きしめ返してくれます。
「わたしも会いたかったわ。あなた、柚月。――愛しているわ、二人とも」
「……わ、私も……っ」
「お……オレも……っ」
私と父さんは見事なほど泣きまくってて、そう返事をするのがやっとでした……。
やがて周りから盛大な拍手が沸き起こり、何事かと泣きながら顔を上げると、住民の皆さんがもらい泣きをしながら全員拍手をしていました。
イシュリーズさん達は微笑みながら私達を見ていて、召喚士さんは、人目憚らず声を出して大号泣していて……。
中には感涙しながら万歳三唱している人も――
「…………っっ!!」
そこで私はここが公共の場だったと今更ながらに思い出し、ブラックホールに潜り込みたい気持ちで一杯になってしまったのでした……。
あなたにおすすめの小説
誘拐された公爵令嬢ですが、なぜか皇帝に溺愛されています』
富士山麓
恋愛
舞踏会で王太子から婚約破棄を告げられそうになった瞬間――
目の前に現れたのは、馬に乗った仮面の皇帝だった。
そのまま攫われた公爵令嬢ビアンキーナは、誘拐されたはずなのに超VIP待遇。
一方、助けようともしなかった王太子は「無能」と嘲笑され、静かに失墜していく。
選ばれる側から、選ぶ側へ。
これは、誰も断罪せず、すべてを終わらせた令嬢の物語。
呪われた王子さまにおそわれて
茜菫
恋愛
ある夜、王家に仕える魔法使いであるフィオリーナは第三王子フェルディナンドにおそわれた。
容姿端麗、品性高潔と称えられるフェルディナンドの信じられない行動に驚いたフィオリーナだが、彼が呪われてることに気づき、覚悟をきめて受け入れる。
呪いはフィオリーナにまで影響を及ぼし、彼女の体は甘くとろけていく。
それから毎夜、フィオリーナは呪われたフェルディナンドから求められるようになり……
全36話 12時、18時更新予定
ムーンライトノベルズにも投稿しています。
【番外編完結】聖女のお仕事は竜神様のお手当てです。
豆丸
恋愛
竜神都市アーガストに三人の聖女が召喚されました。バツイチ社会人が竜神のお手当てをしてさっくり日本に帰るつもりだったのに、竜の神官二人に溺愛されて帰れなくなっちゃう話。
山に捨てられた元伯爵令嬢、隣国の王弟殿下に拾われる
しおの
恋愛
家族に虐げられてきた伯爵令嬢セリーヌは
ある日勘当され、山に捨てられますが逞しく自給自足生活。前世の記憶やチートな能力でのんびりスローライフを満喫していたら、
王弟殿下と出会いました。
なんでわたしがこんな目に……
R18 性的描写あり。※マークつけてます。
38話完結
2/25日で終わる予定になっております。
たくさんの方に読んでいただいているようで驚いております。
この作品に限らず私は書きたいものを書きたいように書いておりますので、色々ご都合主義多めです。
バリバリの理系ですので文章は壊滅的ですが、雰囲気を楽しんでいただければ幸いです。
読んでいただきありがとうございます!
番外編5話 掲載開始 2/28
公爵家の秘密の愛娘
ゆきむらさり
恋愛
〔あらすじ〕📝🌹グラント公爵家は王家に仕える名門の家柄。
過去の事情により、今だに独身の当主ダリウス。国王から懇願され、ようやく伯爵未亡人との婚姻を決める。
そんな時、グラント公爵ダリウスの元へと現れたのは1人の少女アンジェラ。
「パパ……私はあなたの娘です」
そう名乗り出るアンジェラ。
◇
アンジェラが現れたことにより、グラント公爵家は一変。伯爵未亡人との再婚もあやふや。しかも、アンジェラが道中に出逢った人物はまさかの王族。
この時からアンジェラの世界も一変。華やかに色付き出す。
初めはよそよそしいグラント公爵ダリウス(パパ)だが、次第に娘アンジェラを気に掛けるように……。
母娘2代のハッピーライフ&淑女達と貴公子達の恋模様💞
✴️設定などは独自の世界観でご都合主義となります。ハピエン💞
✴️稚拙ながらもHOTランキング(最高20位)に入れて頂き(2025.5.9)、ありがとうございます🙇♀️
王宮の万能メイド、偏屈魔術師を餌付けする
葉山あおい
恋愛
王宮で働く勤続八年のメイド、エレナ・フォスター。仕事は完璧だが愛想がない彼女は、いつしか「鉄の女」と呼ばれ恐れられていた。
そんな彼女に下された辞令は、王宮の敷地内にありながら「魔窟」と呼ばれる『北の塔』の専属メイドになること。そこの主である宮廷魔術師団長・シルヴィス・クローデルは、稀代の天才ながら極度の人嫌い&生活能力ゼロの偏屈男だった!
ゴミ屋敷と化した塔をピカピカに掃除し、栄養失調寸前の彼に絶品の手料理を振る舞うエレナ。黄金色のオムレツ、とろける煮込みハンバーグ、特製カツサンド……。美味しいご飯で餌付けされた魔術師様は、次第にエレナへの独占欲を露わにし始めて――?
意地悪な聖女や侯爵夫人のいびりも、完璧なスキルで華麗に返り討ち。平民出身のメイドが、身分差を乗り越えて幸せな花嫁になるまでの、美味しくて甘いシンデレラストーリー。
【完結】愛を知らない伯爵令嬢は執着激重王太子の愛を一身に受ける。
扇レンナ
恋愛
スパダリ系執着王太子×愛を知らない純情令嬢――婚約破棄から始まる、極上の恋
伯爵令嬢テレジアは小さな頃から両親に《次期公爵閣下の婚約者》という価値しか見出してもらえなかった。
それでもその利用価値に縋っていたテレジアだが、努力も虚しく婚約破棄を突きつけられる。
途方に暮れるテレジアを助けたのは、留学中だったはずの王太子ラインヴァルト。彼は何故かテレジアに「好きだ」と告げて、熱烈に愛してくれる。
その真意が、テレジアにはわからなくて……。
*hotランキング 最高68位ありがとうございます♡
▼掲載先→ベリーズカフェ、エブリスタ、アルファポリス
秘密を隠した護衛騎士は、お嬢様への溺愛を抑えきれない
はるみさ
恋愛
伯爵家の令嬢であるアメリアは、少し男性が苦手。ゆくゆくはローゼンタール伯爵を継ぐ立場なだけに結婚を考えなければならないが、気持ちは重くなるばかり。このままでは私の代でローゼンタール家が途絶えてしまうかもしれない……。そう落ち込んでいる時、友人に「あなたの護衛のセドリックで試してみればいいじゃない?」と提案される。
男性に慣れるため、セドリックの力を借りることにしたアメリア。やがて二人の距離は徐々に縮まり、セドリックに惹かれていくアメリア。でも、セドリックには秘密があって……
男性が苦手な令嬢と、秘密を隠し持った護衛の秘密の恋物語。
※こちらの作品は来春までの期間限定公開となります。
※毎日4話ずつ更新予定です。