鏡の向こうと現実世界

まるはる

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第1章 鏡の向こう側

第1鏡 鏡の世界

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私は亜里亜(ありあ)という名前です。

好きでもない同い年の相手、桜木 羽矢斗(さくらぎ はやと)と結婚することになっている。
父がそう決めたから、変えることなんてできない。私は嫌なのに。何にもわかっちゃいない。

自由になりたい。いつもそう思っていた。




「こんにちは、亜里亜。調子はどうだい?君は嫌いかもしれないけれど、僕は君のことが好きだ。愛してるよ。一生幸せにする。だから、結婚を素直に認めて欲しいんだ。」

羽矢斗は少し早口になりながらも、一生懸命伝えた。 
しかし、心を閉ざしてしまった亜里亜には嘘にしか聞こえなかった。

「そんなこと言ったって、結婚したらあなたは仕事。私は家事、育児をまかせて仕事の日以外はゆうゆうと過ごす気なんでしょ。」

亜里亜は冷たく言い放った。

「そんなわけないよ!しっかり手伝うし、押し付けたりなんかしない!だから……」

「もういいです。帰ってください。これ以上聞いていると、嘘で耳が腐ってしまいそうです。」

「……」「……」
面会が今回で3回目。何回会ったって私の考えは変わらないのに。


少ししてから、父から呼び出された。
「亜里亜、なぜそんなに嫌がるんだね?相手は大手企業の大富豪であってだな、羽矢斗君も優しいだろうし何よりも君を愛しているではないか。幸せが約束された未来だぞ。」

父は自慢げに言い放った。

「好きでもない人と結婚したって、幸せになれるわけないでしょ!お願いお父さん。私に婚約者を選ばせてよ。」

「何回言ったらわかるんだっ!駄目と言っているではないか!そもそもお前みたいな奴、ろくな男を連れてこないだろう!だから、俺が選びに選び抜き、いい男と結婚させてやると言っているんだ。素直に喜べ!」

「お父さんっ……!酷いじゃないっ…」

行き場のない、このふつふつと湧き上がる怒りを、私は抑えきれなかった…。



気がつくと、手には血のついた包丁が握られていた。
父の胸元が紅に染まり、周りには血の池。

「あぁ…嘘でしょ。私…殺したの……?」

急いで駆け寄ると、かろうじて息をしていることが確認できた。
しかし、ここで救急車を呼んでしまったら、殺そうとしたことがバレてしまう。

うまく誤魔化すことができたとしても、今日はあいにく母がいない。
真っ先に疑われるのは私だ。
そもそも父が生きていれば、父が証言者となり、私は刑務所行き………絶対に嫌。


…殺してしまおう。いや、私は殺したんじゃない。
苦しくてたまらない父を、楽にしてやったと思えばいい。

「今までありがとう…。今すぐ楽にしてあげるね。」
今までにないほど美しく、そして不気味な笑顔で父に囁いた。




私は殺してしまった。人としてやってはいけないことを、してしまった。
土には埋めたが、バレるのも時間の問題だ。

もう、嫌だ。私も楽になろう。

そう思い、学校の屋上へ続く階段を上がっていった。その時だった。


踊り場にある鏡が光り出したのだ。
光は強すぎず、弱すぎず、月明かりのような淡い光を放ち、興味を惹かれた。

「とても綺麗…。」

鏡に手をおいた瞬間光に飲み込まれ、視界が白に染まった。



声が聞こえる。たくさんの老若男女の声。

「んん…?ここはどこだろう?すごく立派な建物の中にいるみたいだけれど……。」
意識が少し飛んだかと思いきや、いきなりたくさんの人に囲まれている。

聞き取ろうとしても、何をいっているか理解できない。
まるで異国の言葉を聞いているみたいに。


「☆%☆%%%☆♪☆÷++?」

「へぁっ…!え?なんて言いました?」
話しかけられて少し驚いた。その人が声を出した途端周りが静かになり、なんとなく偉い人なんだなと理解できた。
見た目は、髪が少し長めの…イケメン。


イケメンは困惑した表情を一瞬見せた後、召使い的な人と話し始めた。
「☆→☆%%%♪♪%。」「%%☆÷%%☆+%%」

イケメンが魔法陣を床から発生(?)させた瞬間まばゆい光に包まれ、それと同時に見えない何かに体を軽く押されたような気がした。


「今度はちゃんと通じてるな?おい、生きているか?名はなんて言うんだ。」
炎のように赤く、生き生きとした瞳がこちらを覗き込んだ。


「…えっと、私の名前は亜里亜です。あの、貴方の名前は…?」

「あぁ、俺の名前か。俺はルージュ・ソリディアだ。みんなからはルージュ様ぁ~とか、シンプルに王子って呼ぶ人もいるけどな。まぁ、好きに呼んでくれ。」

王子?このイケメンが?
もっと丁寧な対応をするもんだと思ってた。いや、この王子とやらが特殊なだけか。


王子は構わず言い続けた。
「いきなりだが、君は選ばれし姫なんだ。どうかこの世界を救ってはくれないかくれないか?」
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