史上最低最凶の錬金術師~暗黒カエル男のサバイバル&ハーレムもの~

櫃間 武士

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第2章「深淵/アビス」

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 夜明け前、俺は(たまたまだったが)要救助者を3人も見つけ、意気揚々と拠点の小屋に戻ってきた。

 以前の俺だと「ロック リーフよ!私は帰って来た!」とかアニパロのセリフを言って、自分ひとりでウケる所だ。

 しかし、パロディはマヤに禁止されたし、古いアニパロのギャグは誰も分かってくれないし、俺自身ももう飽きてきたのでごく普通に帰ることにした。

 小屋の扉を開けると(少し寂しかったのだが)俺はこう言った。

「ただいま!」

 ふ、普通だ!

 扉を開けると同時に、マヤが喜色満面で俺の胸に飛び込んできた。

「おかえりなさい!カエル男さん!」

 マヤの背中を抱きしめながら、俺は思った。

(しょうーもないギャグを言わなくてよかった!)


 彩香先生も俺が生徒を連れ帰ったことに気づき、小躍りして喜んだ。

「カエル男くん、みんなを見つけて来たのですね!よくぞやり遂げましたね!素晴らしいことだわ!」

「綾瀬先生。こちら2年生のドゥ・レイモン・ジュリエットさんだよ」

「フランスからの留学生ね。あなたも大変な目に遭いましたね。お気の毒に」

 ジュリアは前に出て、綾瀬先生に手を合わせながらお辞儀をした。

「ハイ!日本はホント、不思議な国デス!」

「あと、この双子は1年の………。お前ら、自己紹介しろよ!」

「なんや、カエル男!うちらの名前、まだ覚えてへんのやな!」

「ほんま、ムカつくやっちゃな!」 

「うちは1年1組、姉の岩田 菜々いわた ななや!」

「うちは1年2組、妹の岩田 萌々いわた ももや!」


 彩香先生はニコニコしながら、うなずいた。

「カエル男くん!もうひとつうれしいお知らせがあるのよ!」

 彩香先生がそう言うと、先生の背後から、セーラー服姿の髪の長い女生徒が現れ、俺に向かって話しかけてきた。

「カエル男君。どうせ覚えていないでしょうが、私はあなたの同級生の西 香菜子にし かなこよ」

 突然、西 香菜子にし かなこが現れて正直、俺は驚いた。

「西さんか!?いや。覚えてるよ。あんたは俺の隣の席だったろ。西さんまで、異世界に転移していたのか」

「あら。ろくに学校に来ていなかったくせに、私のこと、覚えていたの?」

 西 香菜子にし かなこはクールで気品があって、キリッとした美しさが魅力的な「クールビューティな女性」だった。

 いつも隣の席から俺のことを冷たい目で見下し、たまに口を開けば棘のある言葉を投げかけていた。

 俺はそんな扱いは慣れっこだったし、男に媚びない凛とした態度には好感を抱いていた。



「カエル男くんが出かけた後、西さんがこの小屋を見つけて自分でやってきましたのよ」

「カエル男さんが立てた砂の塔のおかげだね」

 彩香先生とマヤは大分打ち解けたようで、二人とも笑いながら顔を見合わせていた。


「ひい、ふう、みい………。全部で7人か」

「カエル男はん。ちょっと、この小屋、狭くないか!」

 双子がさっそく不満を漏らし始めた。

 確かに俺も小屋の狭さは感じていた。

 だが、小屋の建材はまだいくらでも持っているから、建て増せばすむことだ。

 それよりも俺は食料のことを心配していた。

 俺は地底に降りる時はマヤと二人きりだったので、7人分の食料なんてもともと用意していない。


「なあなあ!カエル男はん!なんとかならへんの」

 双子の片割れが俺の腕を取り、左右に揺すりながら言った。

 俺はその手を払いのけた。

「そんなことよりお前ら二人、なんか見分ける方法はないのか?」

「ホクロがある方が姉の菜々ななやで」

 俺は双子の顔をマジマジと見比べたが、ホクロは見当たらなかった。

「ん?どこにホクロがあるんだ?」

「左のオッパイにあるんや。見せたろか?」

 菜々ななはからかうような口調でそう言うと、ポロシャツの胸元を開ける振りをした。

 菜々と萌々はケラケラと顔を見合わせて、笑い転げた。

「ああ!見せて貰おうじゃねぇか!高一男子の性欲、なめんじゃねぇぞ!」

 俺は菜々の胸倉に掴みかかった。

「キャーッ!セクハラや!」

「助けてぇな!センセー!」

 双子は彩香先生の背後に大騒ぎしながら逃げて行った。


「あら、あら!みんな、すっかり明るくなったわね」

「先生!明るくないデス。まわりは暗いデス」

「違うよ、ジュリア。彩香先生は、みんなの気分が明るくなったと言っているんだ」

「Oui !でも、やっぱり周り暗くて、怖いデス」

「暗いと不平を言うよりも、すすんで灯りをつけましょう!ねぇ、カエル男くん!」

 彩香先生達女性陣が一斉に俺の方をジーと見つめた。

「―――えっ!?またあ!?」
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