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櫃間 武士

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第03章 初めてのダンジョン攻略

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 私は宿屋にいた酔客たちの好奇と羨望の視線を一身に受けて気恥ずかしかった。

「エ、エルフだ!?」
「エルフが入ってきた!?」
「俺は本物を初めて見たぜ!」
「なんて美しいんだ!!」

 対人恐怖症の私は人目に晒されるの大の苦手だ。
 とっととチェックインを済ませて部屋に引きこもりたい。
 私はカウンターでニコニコと笑顔で待ち構えている女性の方に向かって行った。

「いらっしゃい!お美しいエルフ様!私はこの宿の主人をしておりますカミオと申します」
「へ、部屋を借りたいのですが、空いてますか?」
「もちろんですわ!お美しいエルフ様!何泊のご予定でしょうか?」
「え、えーと!とりあえず一週間ほど」
「失礼ながら料金は前払いでお願いいたします」
「お、お金ならあります!」

 私は皮袋からイルマ様にもらった金貨を一枚取り出した。
 カミオは金貨を見て目を丸くして驚いた。

「お美しいエルフ様!これでは困ります!」
「た、足りなければもっとあります!」

 私は慌ててカミオの前に金貨をぶちまけた。

「いえ!足りないのではなくこの金貨は古美術品並みにとても高価な品物です。うちでは到底換金できません」
「えっ!?そ、そうなの!?」
「この金貨が十枚もあれば、うちの宿屋ごと買えるぐらいの値打ちがありますよ」

 ようするに私はビジネスホテルで時代劇に出てくるような大判小判を使おうとしていたようだ。

「そ、それじゃあ、私、ここに泊まれないの!?今夜だけでも何とかなりませんか?」
「うーん……。そうですねぇ………」

 世間知らずの哀れなエルフに泣きつかれ、カミオは考え込んだ。



「疲れたよう!眠たいよう!」

 私は誰もいなくなった薄暗い厨房で山積みになった汚れた食器と一人で格闘していた。
 今晩の宿泊代と食事代の代わりに私は宿屋の厨房で皿洗いをやらされることになったのだ。

「イルマ様、皿洗いの魔法ってないのですか?」
『そんな魔法はない!』
「もう私眠たいよう!」
『仕方ないのう……。そうじゃ!繰り返しの魔法リピートを使ってみよ』

 私はイルマ様に教わった通りに呪文を唱えた。

繰り返しの魔法リピート

 すると私の意志とは関係なしに自動的に私の手が皿洗いを続けた。

「おおっ!勝手に私の手が動いて皿を洗ってゆくわ!」
『これは直前に自分がしていた行動を自動的に繰り返す魔法じゃ』
「こういう単純作業にはうってつけの魔法ですね」

 洗い場に立った私の両手は皿を洗い続けた。
 両手が使えないので、私は横に置いたビアジョッキにストローを刺してビールを飲んだ。
 こう見えて私はかなりの酒好きなのだ。
 こうしてすっかり酔っぱらった私は洗い場で皿洗いを続け、いつの間にか立ったまま眠っていた。
 寝ている間も私の手は勝手に動いて皿を洗い続けたのだった。
 翌朝、宿屋の洗い場で目覚めた私は街に飛び出した。
 今日はなんとか仕事を見つけて日銭を稼がないといけない。

「冒険者ギルドはどこにありますか?」
「冒険者ギルド?何ですか、それ?」

「仕事を斡旋してくれるところはないですか?」
「さあ?知らんなあ」

 私は道行く人に尋ねて回ったが、みんな怪訝な顔をして首を横に振った。
 やっぱり魔王が退治され、魔物達が減ったこの世界には冒険者ギルドなんて存在しないのか。
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