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W3 その4
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金子は治美と雅人に向かって説明を続けた。
「私たちはみんな未来世界からタイムスリップする前日にコミックグラスが自宅に送られてきました。横山さんは2019年、私は2021年、望月さんは2023年、最後の小森さんは2025年のことです。誰から送られたのか送り主は不明でした。みなさん、そうでしたよね?」
横山たちは皆、無言で頷いた。
「しかしただ一人、治美さんだけは違いました。治美さんのコミックグラスはお祖父さん、つまり雅人さんからのバースデープレゼントです。間違いありませんね」
治美はコクリとうなずいた。
「そうよ。このコミックグラスはわたしの十七歳の誕生日の贈り物だったの。おじいちゃんはわたしに毎年プレゼントを贈ってくれていたわ」
「となると結論はひとつです。私たちのコミックグラスもみんな、未来世界の雅人さんが送った物なんですよ!」
金子は呆気に取られている雅人を指さして言った。
「お、俺がみんなにコミックグラスを送るのですか!?」
「雅人さん、あなたしかいないんですよ。あなただけが我々全員のタイムスリップする日時と住所を知っています」
動揺して頭が真っ白になった雅人に治美は気楽に話しかけた。
「わたしは別に驚かないわよ。言われてみれば確かにおじいちゃん、わたしがタイムスリップすることを知っていたような気がするの。幼い頃からわたし、おじいちゃんにいろんなこと教わったわ。おじいちゃんの北野町の実家のことやおばあちゃんとの馴れ初めとか。いつか役に立つからしっかり覚えていろって。そっか!そう言うことだったのね!」
「ちょ、ちょと待ってくれ!話が急すぎて理解が追い付かない!」
「ねぇねぇ!わたしが十七歳の時、雅人さんは何歳になるの?」
「えーと、お前が生まれるのが2001年なんだろう。だったら俺は2017年には八十才だな」
「一番最後の章子さんがタイムスリップするのが2025年よね。だったら雅人さんは少なくとも八十八才まで長生きするってことよ。米寿だよ、米寿!よかったわね!おじいちゃん!」
「いやいや!わからへんで。もしかしたら雅人の代わりにうちがみんなに未来メガネを送ってるのかもしれへん」
エリザが真顔でそう言うと雅人は憤慨した。
「なんだと!?どういう意味だよ!?俺がその頃死んでるっていうのか!」
「手塚家のみなさん!そんな話は後にして下さい。私は重要な話をしているのですよ」
話がすっかりそれてしまったので金子がもどかしげに言った。
「はい。すみません…」
治美たちはションボリとうなだれた。
「そこで治美さんと雅人さんに質問です。PINコードは何番だと思いますか?」
「そんなこと今の俺達に聞かれてもわかりませんよ」
「私の推理が正しければ雅人さんがPINコードを登録したのだと思います。そして、その数字はいざという時に治美さんも思いつくような数字にしていると思います」
「俺と治美がすぐに思いつく数字ですか……」
「わたしの誕生日かしら…」
そう言うや否や、「20010423」と治美が入力してみたが反応はなかった。
「治美さん!ロックがかかりますよ!もっと慎重にお願いします」
「すみません!」
金子に叱られて治美が肩をすくねた。
「俺の性格からして誕生日なんて単純な数字は選ばないと思う。でも治美でも思いつくような簡単な数字だと思う」
「―――わたしもそう思うわ。きっと何かの日付ね」
「俺と治美の二人に関係のある日付……」
治美と雅人の二人は目を閉じ、腕組みをして考え込んだ。
周囲のみんなはそんな二人を息を押し殺して見守っている。
「そうか!」
「そうだわ!」
二人は同時に何か数字を思いついたようだった。
「いいかしら?せーの…!」
「290424!」
「290424!」
治美と雅人の二人は同時に同じ六桁の数字を叫んだ。
金子は急いでその数字を自分のコミックグラスの画面に打ち込んだ。
コミックッグラスには「初期化を始めますか? Yes or No 」とメッセージが表示された。
金子は震える人差し指で空間に浮かんだ「Yes」の文字を押した。
「正解です!初期化が始まりました!!」
金子がそう叫ぶと全員が歓喜の声を上げた。
「やった!」
「一体これは何の数字ですか!?」
みんなが興奮して治美と雅人に尋ねた。
二人は同時に答えた。
「平成29年4月24日。私がタイムスリップした日よ!」
「昭和29年4月24日。治美がタイムスリップした日だ!」
金子のコミックグラスの初期化が終了し、自動的にシャットダウンした。
金子はコミックグラスを顔から外すとメガネケースに丁寧にしまった。
「これで次にこのコミックグラスを掛けた人間が認証されて正式な所有者になります」
「おおっ!素晴らしい!」
「それで、ほかのみなさんはどうしますか?」
金子が治美たちにコミックグラスを初期化するのか尋ねた。
「治美さん。あなたはもう手塚治虫のマネをしなくてもよいのですよ?」
「私たちはみんな未来世界からタイムスリップする前日にコミックグラスが自宅に送られてきました。横山さんは2019年、私は2021年、望月さんは2023年、最後の小森さんは2025年のことです。誰から送られたのか送り主は不明でした。みなさん、そうでしたよね?」
横山たちは皆、無言で頷いた。
「しかしただ一人、治美さんだけは違いました。治美さんのコミックグラスはお祖父さん、つまり雅人さんからのバースデープレゼントです。間違いありませんね」
治美はコクリとうなずいた。
「そうよ。このコミックグラスはわたしの十七歳の誕生日の贈り物だったの。おじいちゃんはわたしに毎年プレゼントを贈ってくれていたわ」
「となると結論はひとつです。私たちのコミックグラスもみんな、未来世界の雅人さんが送った物なんですよ!」
金子は呆気に取られている雅人を指さして言った。
「お、俺がみんなにコミックグラスを送るのですか!?」
「雅人さん、あなたしかいないんですよ。あなただけが我々全員のタイムスリップする日時と住所を知っています」
動揺して頭が真っ白になった雅人に治美は気楽に話しかけた。
「わたしは別に驚かないわよ。言われてみれば確かにおじいちゃん、わたしがタイムスリップすることを知っていたような気がするの。幼い頃からわたし、おじいちゃんにいろんなこと教わったわ。おじいちゃんの北野町の実家のことやおばあちゃんとの馴れ初めとか。いつか役に立つからしっかり覚えていろって。そっか!そう言うことだったのね!」
「ちょ、ちょと待ってくれ!話が急すぎて理解が追い付かない!」
「ねぇねぇ!わたしが十七歳の時、雅人さんは何歳になるの?」
「えーと、お前が生まれるのが2001年なんだろう。だったら俺は2017年には八十才だな」
「一番最後の章子さんがタイムスリップするのが2025年よね。だったら雅人さんは少なくとも八十八才まで長生きするってことよ。米寿だよ、米寿!よかったわね!おじいちゃん!」
「いやいや!わからへんで。もしかしたら雅人の代わりにうちがみんなに未来メガネを送ってるのかもしれへん」
エリザが真顔でそう言うと雅人は憤慨した。
「なんだと!?どういう意味だよ!?俺がその頃死んでるっていうのか!」
「手塚家のみなさん!そんな話は後にして下さい。私は重要な話をしているのですよ」
話がすっかりそれてしまったので金子がもどかしげに言った。
「はい。すみません…」
治美たちはションボリとうなだれた。
「そこで治美さんと雅人さんに質問です。PINコードは何番だと思いますか?」
「そんなこと今の俺達に聞かれてもわかりませんよ」
「私の推理が正しければ雅人さんがPINコードを登録したのだと思います。そして、その数字はいざという時に治美さんも思いつくような数字にしていると思います」
「俺と治美がすぐに思いつく数字ですか……」
「わたしの誕生日かしら…」
そう言うや否や、「20010423」と治美が入力してみたが反応はなかった。
「治美さん!ロックがかかりますよ!もっと慎重にお願いします」
「すみません!」
金子に叱られて治美が肩をすくねた。
「俺の性格からして誕生日なんて単純な数字は選ばないと思う。でも治美でも思いつくような簡単な数字だと思う」
「―――わたしもそう思うわ。きっと何かの日付ね」
「俺と治美の二人に関係のある日付……」
治美と雅人の二人は目を閉じ、腕組みをして考え込んだ。
周囲のみんなはそんな二人を息を押し殺して見守っている。
「そうか!」
「そうだわ!」
二人は同時に何か数字を思いついたようだった。
「いいかしら?せーの…!」
「290424!」
「290424!」
治美と雅人の二人は同時に同じ六桁の数字を叫んだ。
金子は急いでその数字を自分のコミックグラスの画面に打ち込んだ。
コミックッグラスには「初期化を始めますか? Yes or No 」とメッセージが表示された。
金子は震える人差し指で空間に浮かんだ「Yes」の文字を押した。
「正解です!初期化が始まりました!!」
金子がそう叫ぶと全員が歓喜の声を上げた。
「やった!」
「一体これは何の数字ですか!?」
みんなが興奮して治美と雅人に尋ねた。
二人は同時に答えた。
「平成29年4月24日。私がタイムスリップした日よ!」
「昭和29年4月24日。治美がタイムスリップした日だ!」
金子のコミックグラスの初期化が終了し、自動的にシャットダウンした。
金子はコミックグラスを顔から外すとメガネケースに丁寧にしまった。
「これで次にこのコミックグラスを掛けた人間が認証されて正式な所有者になります」
「おおっ!素晴らしい!」
「それで、ほかのみなさんはどうしますか?」
金子が治美たちにコミックグラスを初期化するのか尋ねた。
「治美さん。あなたはもう手塚治虫のマネをしなくてもよいのですよ?」
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