母獣列島

櫃間 武士

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派出所

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○派出所。昼。
T「女岩島めいわじま派出所」
 武藤組合長と三好巡査が机を挟んで話している。
三好「組合長!本部の同期に村上 杏奈のことを調べてもらいました」
武藤「おお、そうか!」
三好「村上 杏奈、三十四歳。昨年まで本土の県立病院の内科に勤務しとりました。成績も優秀で、将来を嘱望されとったのですが、ひとつ問題を起こしました」
武藤「何や?もったいぶらんと、よ言わんか!」
三好「す、すみません!不倫です!」
武藤「不倫やと?」
三好「はい。同じ病院の医局長と男女の関係だったのですが、実は相手は妻子持ちだったそうで。病院にまで医局長の妻が乗り込んできて相当派手な修羅場を演じたそうです」
武藤「それで、こんな僻地の診療所に追いやられたちゅうわけやな」
三好「はい。結局、村上杏奈だけが割を食い、相手の医局長の方は何のお咎めもなかったそうです」
武藤「あの女医としては、一刻も早く本土に復帰したいやろうな」
三好「それと、村上医師は最近、村長の奥さんと頻繁に会っていますね」
武藤「そりゃ、村長の娘のあのスベタが診療所に入院しとるからやろ」
三好「いえ。それだけではなく、どうも二人で村の女を集めて婦人会を開くそうですよ」
武藤「なんやと!村長の嫁がまた選挙のための人気取りか」
三好「組合長!あの女医は村長一派と結託しとるんやないですか」
武藤「……考えられるな」
三好「となるとご子息の事件も、村長が組合長を陥れるために起こしたとも考えられます」
武藤「それにあの女医も一枚噛んどるというわけやな!」
 武藤、札入れから万札を数枚取り出すと、三好に手渡す。
三好「(お辞儀をして)こりゃあ、また、どうも!」
 三好、急いで万札を胸ポケットにしまう。
三好「婦人会の方も調べましょうか?」
武藤「いや。そっちは女の方が調べやすいやろ。わしの方で都合をつけるわ」
 武藤、スマホを取り出し通話する。
武藤「おう!わしや!」


○スナック「亜矢子」。
 開店前の薄暗い店内。
 スナックのママ、川島亜矢子がスマホで武藤と話す。
亜矢子「婦人会?それに出ればいいのね。診療所の女医と村長の女房を監視するの?まかせといて!」


○派出所
 武藤、スマホを切る。
武藤「今にみとれよ。あいつらのシッポを掴んで、絶対に雄太の仇を取ったるからな!」
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