母獣列島

櫃間 武士

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保護者

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〇女岩島小中学校、保健室。
育人「無理するなよ、杏奈。俺が自分で血を採ればいいんだろ。やり方を教えてくれ」
杏奈「いえ。育人にそんな危険なことさせられないわ」
育人「たかが採血ぐらいで大げさな!」
あゆみ「先生。自宅で血糖値を測るための市販のキット、あれに採血用の穿刺器具が付いていますよ」
杏奈「ああ!あれなら痛みもほとんどないし安全よね。あゆみさん、ナイスよ!」
あゆみ「えへへへ!」


 あゆみ、ボールペンのような形をした採血用穿刺器具を育人に手渡す。
 あゆみ、育人の手のひらの親指の付け根をアルコール消毒する。
あゆみ「指先より、親指の付け根の方が痛くないからね」
 親指の付け根に採血用穿刺器具の先端を当てる育人。
あゆみ「それじゃあ、穿刺ボタンを押して」
 あゆみ達、見ていられなくて目を逸らす。
 カチッと音がして、育人の親指の付け根に小さな血の粒が現れる。
 杏奈、検査紙で血を一滴すくい取る。
 あゆみ、大急ぎで育人の手に絆創膏を張る。


杏奈「随分と待たせたわね。果乃ちゃん」
 果乃、すっかり怯えている。
果乃「な、何をするの?痛いのいやよ!」
杏奈「大丈夫よ。果乃ちゃん。痛くも痒くもないから」
 杏奈、果乃の腕を取る。
杏奈「さあ、指を出して」
果乃「怖い!」
杏奈「早くしなさい!せっかくの血液が乾燥してしまうわ!」
 杏奈、育人の血を果乃の指先につける。
 ピクッと痙攣する果乃。
杏奈「どんな気分かしら?」
果乃「なんか変!胸が、胸が苦しい!育人お兄ちゃんの顔が頭に浮かんでくる!」
あゆみ「やりました、先生!」
杏奈「成功ね!育人の血には女を母獣にする力があるわ」
果乃「育人お兄ちゃん!」
 泣き顔で育人の名を呼ぶ果乃。
育人「よしよし。大丈夫だ。泣くんじゃない」
 育人、果乃の頭を優しく撫でる。
杏奈「随分と優しいのね」
育人「子供だからな」
杏奈「自分だって子供のくせに」
育人「どうしてこの子達は泣くんだろう?」
杏奈「きっと自分の感情の変化を理解できなくて不安になるのよ」
育人「ふーん……」


○海沿いの道路。夕方。
 診療所の車を運転する杏奈。
 助手席にはまゆみ。
 後部座席に座る育人。
育人(実験は成功した。学校にいた女教師とすべての生徒は俺の保護者ガーディアンだ。
保護者は決して俺を裏切らない。けっして俺を傷つけない)
 物憂げに外の景色を眺めながら物思いに耽る育人。
育人(もっともっと保護者を増やすんだ!島中、いや、日本中の女を俺の保護者にしてやるんだ!)
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