神子の余分

朝山みどり

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07 広間の掃除

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広間に向かうにつれ神官や神官見習いとすれ違ったが、皆敵意を示して来た。

オオヤナギは神子に付き合ってほとんど彼らと接触がないというのに、視線を避ける為に背を丸め下を向いて歩き続けた。


広間で待っていたのは前に殴ってきた神官見習い達だった。ちょっと体が固くなったが立ち止まった。

彼らは持っていた掃除道具をオオヤナギに向かって放り出すと

「きれいにしろよ。親切に道具を持って来てやったんだからな」と言うと笑いながら去って行った。

魔法で水を出すかわりに、井戸へ水を汲みに行った。



壁をこすってから、床の水拭きを始めたが、なかなか終わらなかった。

そこに見習い神官たちがやって来るとバケツを倒して去って行った。

オオヤナギが惨めな所を見る為に、そろそろミツルギが来るだろう。


「まだ終わらないのか」と王子の声がした。

「ハロルド、オオヤナギは頑張っています」とミツルギが言うと、

「またそんなことを神官見習いが言っておったろう。彼らが掃除した所にバケツをこぼしたと」

「まさかと思い見に来たら、この有様だ」

「でも」とミツルギは王子の顔を見上げる。まったくみっともないとオオヤナギは思ったが、下を向いて黙っていた。

「いくらお前が、のろまでも、一晩かければきれいにできるだろう。行こう」とミツルギの腰を引き寄せたが、

「神子様、今晩は神殿です。ここで王子殿下とはお別れです」さっと出てきた神官が言うと、他の神官がミツルギを取り囲んだ。

「ハロルド、神官長が怒ってるみたいだから、今日は神殿で」とミツルギはハロルドに言うと、神官にうながされて歩み去った。


「おい、余分・・・・・お前なんか追い出してやるからな」と王子は言うと護衛と一緒に去って行った。



人の気配がしなくなると、オオヤナギは床の水をホールで回収した。窓からそれを捨てると、次に掃除道具を回収した。

それから、掃除道具置き場を探して部屋を出たが、立ち止まった。なにかを探すように首をかしげたが、背を丸めゆっくり歩み去った。

それを見送ったのはマイル神官だった。信じられなかった。魔力のない余分と言われた彼がすまして水を処理して掃除道具を・・・・収納した。

マイル神官はすぐにブラウン神官を訪ねた。

ノックももどかしく

「マイルです」と声をかけた。ドアを閉めるのももどかしく

「オオヤナギは高度な魔法を使えます」と言った。あっと口を押さえて、マイル神官はドアをきちんと閉めた。


ちょうどブラウン神官と話そうとミツルギがやって来ていた。ミツルギはマイル神官の言葉を聞いて固まったが、すぐにドアに近づくと耳を付けた。

「オオヤナギがですか?」とブラウン神官が言うと

「そうです。この目で見ました。床の水を魔法で窓から捨てました。それから掃除道具を収納すると部屋をでました。たぶん片付けるつもりでしょう」

「そうだとして、何故隠すのでしょう」

「余分と言われれば・・・・・」とマイル神官が言うと

「あぁわたしはなんと心無い言葉を彼に・・・」ブラウン神官がこめかみを押さえた。

「彼は背をまるめ、いつも伏し目がちです。あんな素晴らしい才能があるのに・・・・」とマイル神官も続けた。

「彼と話をしなければ・・・・」

「騒ぎにするのは良くないですね」とマイル神官が続け

「王宮、王子殿下には当分内緒ですね」とブラウン神官は、ため息とともに言った。

「わたしは彼が無事に掃除道具の片付け場所を見つけたか確認します。失礼します」とマイル神官がドアを開けた時にはミツルギは物陰に隠れていた。

ミツルギはオオヤナギが神官見習いをいじめていると、言いに来たのだったが、それどころでは、なくなった。

そっと部屋に戻ると、これからどうするか考えた。



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