ずれてる転移者

朝山みどり

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大村の屋敷

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管理部の部屋にはいると先月の帳簿を見せた。

「これは、あれ?消耗品?え?」

「どうしましたか?」

「いえ、なにも」

「修一殿には計算をお願いしようと思いまして」

「なるほど」

「それだけでいいんですね」

「はい、それだけで充分です」

「敏も一緒にお願いできますか?」

「敏は護衛にと思ってますが・・・・」

「敏に聞いてみないと」

戻ろうとした修一の体がぐらりと揺れた。

支えた青鷹が

「修一殿、足が痛いようですが・・・・うちで治療をして下さい。私の目から見てかなりひどい。失礼」

そういうと抱き上げた。

「このまま修一殿の部屋でお連れします。敏も呼びますね」

「ちょっとこれでは、歩けますので下ろしてください」

「いえ、無理をしてはいけません。暴れるとあぶない。じっとして」


「そんなぁ」

恥ずかしいのか胸に顔をくっつけて隠そうとする修一がおかしいし、こうやって抱き寄せるとなぜかしっくりと体が馴染むのが、不思議なようで知っていたような感覚・・・・その正体は?と思っていると修一の部屋に着いた。

少しがっかりしながら、青鷹は修一を寝椅子に下ろした。

「すぐに医者がやって来ます。お茶でも飲んでいましょう。残念ながらあの水ではありませんが当屋敷の湧水です」

「いえ、そんなにこだわっているわけでは」

と修一が申し訳なさそうに答えていると

「白沢様がお見えです」の声と共に一人の青年が入ってきた。

修一が医者という言葉で連想するよりの大柄で肩幅の広く若い男だった。

「初めまして白沢・満長です。見せて下さい」

「はい、修一です。お願いします」

「満長頼むぞ」

「まかせろ、青鷹」

「ちょっと見せてもらいますね」と修一のズボンをまくった。

骨折したのは右足だが、修一は聞かれないので黙ってじっとしていた。

足首をそっとさわり、たまにぐっと押されると痛みが走る。我慢しようと思いつつも体がぴくっと動くのを止められなかった。

「治療のまえに少しほぐす必要がありますね。今日から入浴のときに薬草を入れてよく温めましょう。浴室で転ぶと大変ですので、入浴には付き添います」

「いえ、お風呂はひとりで入れますので・・・・歩けないってことはありませんので・・・」

「これ以上、こじれると時間がかかってしまいますので、医者の言うことを聞いてください」

修一は言葉もなくうなだれていたが

「敏は?」

「もうすぐ来ますよ」


やがて部屋に来た敏は護衛の訓練に参加することと部屋を引き払ってこちらに来ると告げると帰って行った。

敏が部屋を出ると青鷹は、敏は訓練に専念するからしばらく会えないと告げた。

「それは困ります。居場所は常に教えておいて下さい」

「そうだね、この近所にある大村の半民の場所にいるよ」

「なるほど、敏の事、お願いします」



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