気がついたら無理!絶対にいや!

朝山みどり

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第11話 王国では

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さて、アリスが寝込んでいる時、リーブル王国の王宮で騒ぎが始まりだした。
バートとヘドラーが休み明けで執務室にやってきたのはピクニックの三日後だった。
二人は成り行きでアリスの手伝いをしているが、正式な部所は別のところだった。臨時の手伝いに来てそのままだ。

正確に言うと王妃の書類を処理できるのは王妃が代行を正式に依頼したアリスだけだ。
王太子の書類も正式な代行のアリスのみが処理できる。たまに混じる宰相の書類も国王の書類も同じだ。

国王の書類も最初は複雑な資料と情報の整理を手伝って欲しいとこっそり依頼されて手伝ったら段々仕事が増えて宰相にも内緒で正式に代行されて今の状態になった。

まだ幼かったアリスは能力があっても、知恵がなかった。それと誰も守ってくれなかったのも悪かったのだろう。

バートとヘドラーは最初驚いて、宰相に報告したが、業務が流れているのでもう少しの間だけ目を瞑ってくれと頼まれた上にアリスを見捨てて職場に戻れずに・・・それに怒ったり文句を言う暇に仕事を片付けていたら、二人もアリスも麻痺してしまったのかなぁと積み上がった書類を見ながら人ごとのような感想を漏らしていた。

「今日はアリス様がいないのでこの書類を代行で処理できません」と書類を返しに行くのが今日の二人の仕事だった。
書類を返して部屋に戻ると書類がまた戻って来ていたと言うことがあり、二人は部屋に鍵をかけて書類を返しに行った。
その翌日はマスターキーで部屋を開けられ書類が置かれていた。二人は腹を立て書類を放置した。書類は際限なく積み上がって行った。そしてその状態の部屋にアリスの父親のメイナード侯爵が訪ねて来た。そして騒動が始まった。

「アリス、いるかい?」とメイナード侯爵がドアを開けると部屋は無人で、机三つに書類が積み上がっていた。
その書類を見てメイナード侯爵は驚いた。最高機密とは思えないが、王妃の書類だ。

「姉上、なにをしているんだ」とメイナード侯爵は呟いた。彼の目は他の二つの机の書類をふわふわと見た。見てはいけないと思いつつ隣りの机の書類を手に取ると、薄目で見た。次の瞬間しっかりと見た。王の書類だ。資料を精査した後結論を出す必要がある面倒な書類だ。はっと次の書類をみると王太子と妹のバーバラが孤児院を慰問して寝具を買いなおす約束をした報告書だ。予算の計上をアリスに任せると明記して王太子が署名していた。

「あの野郎・・・勝手なことを。アリスは婚約してるだけだぞ」と思ったが、ふと思い出した。いつものように王宮で夕食を済ませたアリスが食後のお茶が終わった頃帰宅してすぐにバーバラに向かって
「いい加減にして、慰問先で約束はやめてって言ったでしょ」
「だって、お姉様。孤児の服はどれも色あせているのよ。髪に結ぶリボンもないのよ。それくらい良いじゃない。なにも高いリボンを買えって言ってるわけじゃないのよ」とバーバラが答え
「わたしは予算を問題にしているの」とアリスが言うのを聞いて・・・自分は
「アリス、固いことを言うんじゃないよ。物事は柔軟にやらないといけないよ。要望を出せばいいんだよ。バーバラの優しい気持ちを大切にしてやりなさい。王妃に慈悲は必要だ。アリスはバーバラを見習ったほうがいいね」と言ったんだった。
そして要望書をバーバラにかかせてアリスに署名させてこう言ったのだ。

「ほら、アリス助かるだろう。バーバラに礼を言いなさい」

アリスは黙ってバーバラに頭を下げていた。そして自分は少し険悪になった二人の機嫌をとるように、ことさら明るく
「ほら、これを明日、提出すればいいだろ」とアリスに渡したんだった。
あれはどう処理されたんだ?第一誰に渡すのだ。侯爵は自分の胃から体がどんどん冷えて行くような気がした。

「アリス。アリス・・・」と侯爵は王太子の執務室へ行った。

「アリス?今日も休みですか?侯爵は娘に甘いですからね。ほんとバーバラはよく手伝ってくれるんですがね」と王太子が言うのに
「なにを言っている。アリスはずっと城にいるだろう」とメイナード侯爵は答えた。
「違いますよ。アリスは・・・アリスは・・・どこに」といいながら王太子はアリスの部屋に向かって走り出した。

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