気がついたら無理!絶対にいや!

朝山みどり

文字の大きさ
24 / 68

第24話 え?知ってるの

しおりを挟む
帰りは馬を飛ばして港に着くのは早かった。

ラズベリーが船でアリスの手入れをするというので化粧品をたくさん買い込んだ。

服も買いたかったが、アリスがいらないというので我慢した。店ごとだって買ってやるのにとアレクが、がっかりしていると

「国に戻って注文すればいいだろう。似合いそうなやつとか、お前の色のやつとか」とデイビスが慰めた。

夕食はまた海のものを食べようと出かけた。

今回は少し冒険してアレクは生魚のカルパッチョを頼んだ。

「これ、好きです」と白身の魚の薄切りを見てアリスはそう言った。

「この辛口の白ワインもいい選択ですね」と笑うアリスに驚いて

「生魚を食べるとは、なかなかだね」とアレクが言うと

「わたくし、お刺身好きですよ。米で作ったお酒と一緒に食べると最高です」とアリスはさらりと言った。アリスの返事を聞いてデイビスが

「刺身? 食べた?」と言うと

「はい、海の一族との会食に出席してましたので」とあっさり答えた。

『海の一族』『会食』と二人は重大な情報を得たと理解したが、興奮を押さえて

「へーー会食って?」と相槌を打った。

「本当は王妃が出るんですよ。王妃殿下はわたくしの伯母様ですけど、父の姉ですので・・・会食はとても大事な公務らしく、今後の為にってわたくしを連れて行ったんですが、途中で王妃は体調を崩してわたくしが一人で出席したんです。そして伯母が姪を派遣したって説明したら歓迎してくれて・・・

以来ずっとわたくしが出席してます。伯母は途中までは来ますけど・・・毎回体調が悪くなります。多分刺身がいやなんでしょうね。
刺身以外も美味しいものが出るんですよ。焼き魚、煮魚、茶碗蒸し、美味しいですよ。キッシュとは違う美味しさです。お酒も美味しいし。お米の料理もいいですよ。たくさん食べられないのを理解してくれるから、一口ずつ食べてました。
お米のお酒以外に梅のお酒もいけますよ。

これからあの会食に行けなくなるのは、寂しいですね」とカルパッチョを食べて白ワインを飲みながら、アリスは言った。

『ほんとに拾いものだ』と二人は思った。

その後の料理も美味しそうに食べて、デザートのリンゴのゼリーを食べ終わるとアリスは

「美味しかった」と息を吐いた。


宿に戻って二人はまた話し合った。

「いやぁ参ったな。アリスの価値が上がってしまった」と嘆くアレクに

「アリスがいればあの国いらないね」とデイビスが返した。

「いや、あの国は滅ぼせないよ。アリスが目立ってしまう」

「そうだな・・・」とデイビスが呆れた声で言った。



帰りの船では髪や肌の手入れの合間にアリスは本を読み、ビザン帝国で気がついたことをまとめた報告書を書いて過ごした。

アレクとしてはアリスがなにを気にして、どんなことを考えたのか知りたい。それを大げさに仕事だと言ったわけだが

「アリス、ちょっといいか?」とアレクは前日にアリスが提出した報告書を持ってやって来た。

そこにはラズベリーがいて

「ですから、買っていただけば良かったんです」と言っていた。

「だって、背が伸びるって信じられなかったんですもの」とアリスが言っていた。

アリスはあのピンクの服を着ていた。

「背が伸びて丈が短くなって」と言いながらラズベリーは裾を調べて

「少し、伸ばしましょう。他のものも調べなくては」と言った。

アレクはそれを聞いて

「やっぱり、そうかなと思ったんだ。だから買おうって言ったんだ」と言ったが、ラズベリーに睨まれて

「いや、なんとなくね。伸びたかなって」と笑って誤魔化した。

「でもラズベリー、もうすぐ十八よ。伸びると思わないでしょ」とアリスが言うと

「伸びる機会がなかったから伸びなかったんですよ」とラズベリーが言い切った。

「降りたらすぐに買いに行こう。ラズベリー手間をかけなくていいぞ」とアレクは言ったがラズベリーは服を全部持って出て行った。

「ビザンの服が好きなのに。流行ればいいな」とアリスは言って

「あれ?アレク様、御用ですか?」と聞いた。

「あぁこの報告書のことで」とアレクはそれを見せながら

「このビザン帝国は自らが外に出るのではなく、外からの人や物を受け入れて良さを吸収して発展して来たように思えるってところどうしてこう考えたの?」

「深く考えたわけではないですが、ビザンって国内にすべてそろっているでしょう。わざわざ外にでなくても手に入る。国は広く豊か。万が一港が封鎖されてもビザンは困らない。そういったところから、連想しての感想です。外国からの商人も多かったし、多分留学生も多いのでは? いや、恥ずかしいです。深く考えてる人から見たら・・・それに旅行中、国の人が親切でした。親切だけど外国の人は可哀想だな。って思われているようにも感じました。船に乗って国をでようとするのを気の毒がられているような・・・確かに全部ある国ですが、ここに住んでるだけの人がそういう考えになるも奇妙だと感じました・・・いろんな纏まらない考えを無理にまとめたのがそれです。文才がなくて・・・」

「なるほど。アリス。やっぱり君を雇ってよかった」とアレクは言うと

「邪魔して悪かった。いい報告だ。ありがとう」と出て行った。






しおりを挟む
感想 284

あなたにおすすめの小説

言い訳は結構ですよ? 全て見ていましたから。

紗綺
恋愛
私の婚約者は別の女性を好いている。 学園内のこととはいえ、複数の男性を侍らす女性の取り巻きになるなんて名が泣いているわよ? 婚約は破棄します。これは両家でもう決まったことですから。 邪魔な婚約者をサクッと婚約破棄して、かねてから用意していた相手と婚約を結びます。 新しい婚約者は私にとって理想の相手。 私の邪魔をしないという点が素晴らしい。 でもべた惚れしてたとか聞いてないわ。 都合の良い相手でいいなんて……、おかしな人ね。 ◆本編 5話  ◆番外編 2話  番外編1話はちょっと暗めのお話です。 入学初日の婚約破棄~の原型はこんな感じでした。 もったいないのでこちらも投稿してしまいます。 また少し違う男装(?)令嬢を楽しんでもらえたら嬉しいです。

【完結】お世話になりました

⚪︎
恋愛
わたしがいなくなっても、きっとあなたは気付きもしないでしょう。 ✴︎書き上げ済み。 お話が合わない場合は静かに閉じてください。

【完結済】後悔していると言われても、ねぇ。私はもう……。

木嶋うめ香
恋愛
五歳で婚約したシオン殿下は、ある日先触れもなしに我が家にやってきました。 「君と婚約を解消したい、私はスィートピーを愛してるんだ」 シオン殿下は、私の妹スィートピーを隣に座らせ、馬鹿なことを言い始めたのです。 妹はとても愛らしいですから、殿下が思っても仕方がありません。 でも、それなら側妃でいいのではありませんか? どうしても私と婚約解消したいのですか、本当に後悔はございませんか?

【完結】わたしの欲しい言葉

彩華(あやはな)
恋愛
わたしはいらない子。 双子の妹は聖女。生まれた時から、両親は妹を可愛がった。 はじめての旅行でわたしは置いて行かれた。 わたしは・・・。 数年後、王太子と結婚した聖女たちの前に現れた帝国の使者。彼女は一足の靴を彼らの前にさしだしたー。 *ドロッとしています。 念のためティッシュをご用意ください。

ある辺境伯の後悔

だましだまし
恋愛
妻セディナを愛する辺境伯ルブラン・レイナーラ。 父親似だが目元が妻によく似た長女と 目元は自分譲りだが母親似の長男。 愛する妻と妻の容姿を受け継いだ可愛い子供たちに囲まれ彼は誰よりも幸せだと思っていた。 愛しい妻が次女を産んで亡くなるまでは…。

虐げられてる私のざまあ記録、ご覧になりますか?

リオール
恋愛
両親に虐げられ 姉に虐げられ 妹に虐げられ そして婚約者にも虐げられ 公爵家が次女、ミレナは何をされてもいつも微笑んでいた。 虐げられてるのに、ひたすら耐えて笑みを絶やさない。 それをいいことに、彼女に近しい者は彼女を虐げ続けていた。 けれど彼らは知らない、誰も知らない。 彼女の笑顔の裏に隠された、彼女が抱える闇を── そして今日も、彼女はひっそりと。 ざまあするのです。 そんな彼女の虐げざまあ記録……お読みになりますか? ===== シリアスダークかと思わせて、そうではありません。虐げシーンはダークですが、ざまあシーンは……まあハチャメチャです。軽いのから重いのまで、スッキリ(?)ざまあ。 細かいことはあまり気にせずお読み下さい。 多分ハッピーエンド。 多分主人公だけはハッピーエンド。 あとは……

聖女に負けた侯爵令嬢 (よくある婚約解消もののおはなし)

蒼あかり
恋愛
ティアナは女王主催の茶会で、婚約者である王子クリストファーから婚約解消を告げられる。そして、彼の隣には聖女であるローズの姿が。 聖女として国民に、そしてクリストファーから愛されるローズ。クリストファーとともに並ぶ聖女ローズは美しく眩しいほどだ。そんな二人を見せつけられ、いつしかティアナの中に諦めにも似た思いが込み上げる。 愛する人のために王子妃として支える覚悟を持ってきたのに、それが叶わぬのならその立場を辞したいと願うのに、それが叶う事はない。 いつしか公爵家のアシュトンをも巻き込み、泥沼の様相に……。 ラストは賛否両論あると思います。納得できない方もいらっしゃると思います。 それでも最後まで読んでいただけるとありがたいです。 心より感謝いたします。愛を込めて、ありがとうございました。

婚約者の幼馴染って、つまりは赤の他人でしょう?そんなにその人が大切なら、自分のお金で養えよ。貴方との婚約、破棄してあげるから、他

猿喰 森繁
恋愛
完結した短編まとめました。 大体1万文字以内なので、空いた時間に気楽に読んでもらえると嬉しいです。

処理中です...