気がついたら無理!絶対にいや!

朝山みどり

文字の大きさ
37 / 68

第37話 秘密

アリスは野菜の皮をむくと言うことを知らなかった。
「自信たっぷりにスープを作ったら美味しかった」とか言ったのに。

海の一族はがっかりするアリスを慰めながら、皮を向いて切った。

アリスも切るくらいは出来た。アレクが手出ししようとするのをデイビスとラズベリーが止めていると三人とも台所から追い出された。

ちなみにアリスは野菜を洗うと皮が取れると思っていたとかで、それを聞いた一族は優しく微笑んだ後、アリスのいない所で爆笑した。

鍋に野菜を入れて混ぜるのは慣れているから出来るとアリスが主張して、周りをハラハラさせたが、アリスのスープは出来上がった。

味見して一族は意外に美味しくて驚いた。食事に出すには少ないということで、おやつの時間に並べられた。

最初に長老のもとに運ばれた。バターを塗ったカリカリトーストと一緒に得意満面のアリスが運んだ。

「長老様、出来ました。手伝って貰いましたが。やっとお礼が出来ます。ここに来て『食べろ、食べろ』って言って貰えてほんと、嬉しかったです」とアリスがちょっと涙ぐんでお礼を言うと

「うん、アリちゃん。アリちゃんの気持ちはよくわかってた」と長老も涙をこぼした。
「いかん、いかん、せっかくだ楽しく食べよう」とスープとパンを食べて

「美味しいね。アリちゃん。上手に」と言うと残りは黙って食べて

「美味しかった。アリちゃんはどこか行きたいところあるかい?」と聞いた。

「ビザンの天の山に登りたい」とすぐにアリスは答えた。

「天の山」と長老はつぶやくと

「確かに行ってみたいな」とアリスに言った。

「でしょ、そこの果物を持って来たかったけど遠くてね」とアリスが言うと長老は優しく微笑んだ。


長老のところから戻って来たアリスに
「アリス、マグロが取れたって、今日も一緒に食べよう」と誘いが来た。

「あぁ美味しそう。だけどアレク様は忙しいから」とアリスが断っている頃

アレクは長老に呼ばれて部屋を訪ねていた。

緊張して部屋に入ったアレクを

「アレク殿、アリス様を助けていただいたお礼をしたいと思いまして」と長老が迎えて
「どうもありがとうございました。アリちゃんはほんとに可愛くて、家族です。娘であり妹であり孫です。感謝しております」と言うと深く頭を下げた。

やがて頭を上げた長老はアレクに椅子をすすめ自分も腰掛けた。そして後ろに立っている若者を孫だと紹介した。孫は頭を下げたが名乗らなかった。

「アリちゃんは天の山に登りたいそうだ」と長老がいきなり言った。

「そうですか!思ったよりあそこが気に入ったのですね。もう、体力は人並みですが、女性が登るのは無理ですね。でももう一度見に行こうかな」とアレクが答えると

「連れていけると言えば?」

「え?」

「川を上って行ける。我らは出来る」

「我らは水を操れる」

「気がつかなかったか? ビザンからの帰り」

「あーー穏やかだった」とアレクは思い当たった。

「アリちゃんがビザンに行ったのは気づかなかった。どういう事情か、教えて貰っても?」

「ある雨の夜、アリスを拾った」とアレクは話し始めた。


「なるほど、アリちゃんを海の上に連れて行ったのはよかった。多分、少し回復が早かっただろう。アリちゃんは我らと一緒に食事をとった。我らはアリちゃんに元気を出して欲しいといつも思っていた。そしてそんな思いを込めてお土産を渡していた。

アリちゃんは美味しかったとお礼を言うし、アリちゃんの面倒を見てる男にも分けていると言っていたな。そいつらも美味しいと言っているとお礼を言っていると・・・

そして、今回アリちゃんはお礼をくれた。思いを込めてくれた。ご馳走してくれた。海の一族と深く結びついた。
我らを使って良い。使ってくれ。天の山に行こう」と長老が言うと

「その、河を遡ることが出来るのか?」とアレクが震える声で言うと

「出来るぞ・・・そうだ・・・出来る。使っていいぞ?」と長老が目を細めて言うとアレクは

「軍を運べるのか?」とつぶやいた。

「運べるぞ」と長老がそのつぶやきを拾って答えた。

「そのときは・・・頼む」とアレクが言った。こめかみから汗が落ちた。

「あぁやるべき時にやれるようだな。アリちゃんを頼むに足る男だ」

「任せてくれ」とアレクは答えたが、自分の声が掠れているのに驚いた。


その夜もアレクとデイビスは酔い潰され、翌朝、得意顔のアリスに朝食の味噌汁をすすめられた。

なんとか、味噌汁と白いご飯を食べた二人は、海の一族と別れて王都に戻った。

アレクは特務部からの報告を聞くだけの、のんきな生活を送り、余った時間をアリスと遠乗りに行ったり町を歩いたり楽しく過ごした。


北の町で火事が起きた。その知らせを聞いて国王が炊き出しを命じた。次の順番はダイナ公爵家。ポーレットの実家だった。

感想 284

あなたにおすすめの小説

初夜に暴言を吐いた夫は後悔し続ける──10年後の償い【完結】

星森 永羽(ほしもりとわ)
恋愛
王命により、辺境伯ロキアのもとへ嫁いだのは、金髪翠眼の美しき公爵令嬢スフィア。 だが、初夜に彼が告げたのは、愛も権限も与えないという冷酷な宣言だった。噂に踊らされ、彼女を「穢れた花嫁」と罵ったロキア。 しかし、わずか一日でスフィアは姿を消し、教会から届いたのは婚姻無効と慰謝料請求の書状──。 王と公爵の怒りを買ったロキアは、爵位も領地も名誉も奪われ、ただの補佐官として生きることに。 そして十年後、運命のいたずらか、彼は被災地で再びスフィアと出会う。 地位も捨て、娘を抱えて生きる彼女の姿に、ロキアの胸に去来するのは、悔恨と赦しを乞う想い──。 ⚠️本作はAIの生成した文章を一部に使用しています。

虐げられてる私のざまあ記録、ご覧になりますか?

リオール
恋愛
両親に虐げられ 姉に虐げられ 妹に虐げられ そして婚約者にも虐げられ 公爵家が次女、ミレナは何をされてもいつも微笑んでいた。 虐げられてるのに、ひたすら耐えて笑みを絶やさない。 それをいいことに、彼女に近しい者は彼女を虐げ続けていた。 けれど彼らは知らない、誰も知らない。 彼女の笑顔の裏に隠された、彼女が抱える闇を── そして今日も、彼女はひっそりと。 ざまあするのです。 そんな彼女の虐げざまあ記録……お読みになりますか? ===== シリアスダークかと思わせて、そうではありません。虐げシーンはダークですが、ざまあシーンは……まあハチャメチャです。軽いのから重いのまで、スッキリ(?)ざまあ。 細かいことはあまり気にせずお読み下さい。 多分ハッピーエンド。 多分主人公だけはハッピーエンド。 あとは……

婚約者は妹のような幼馴染みを何より大切にしているので、お飾り妻予定な令嬢は幸せになることを諦めた……はずでした。

待鳥園子
恋愛
伯爵令嬢アイリーンの婚約者であるセシルの隣には『妹のような幼馴染み』愛らしい容姿のデイジーが居て、身分差で結婚出来ない二人が結ばれるためのお飾り妻にされてしまうことが耐えられなかった。 そして、二人がふざけて婚姻届を書いている光景を見て、アイリーンは自分の我慢が限界に達そうとしているのを感じていた……のだけど!?

【今さら遅い】毒で声を失い公爵に捨てられた私。妹では精霊が応えず国は滅びへ。ですが隣国皇帝に溺愛される私に、今さら縋ってきても遅いです

唯崎りいち
恋愛
国一番の歌姫だった私は、妹に毒を盛られ声を失い、婚約者に捨てられた。 すべてを奪われた私を救ったのは、隣国の皇帝。 「お前の歌がなければ国は滅びる」と言われた私の歌は、精霊に届く“本物”の力を持っていて―― 一方、私を追放した国は偽物の歌では加護を失い衰退。 今さら元婚約者が縋ってきても、もう遅い。

文句を言わない婚約者は、俺の愛する幼馴染みを許していなかった【完結】

星森 永羽(ほしもりとわ)
恋愛
幼馴染を優先しても、婚約者アウローラは何も言わない。だから、これからも幼馴染みとイチャイチャできる── 侯爵令息トリスタンは、そんな甘い幻想を信じていた。 だが婿入りした瞬間、彼の“軽んじた態度”はすべて清算される。 アウローラは冷徹に、トリスタンの傲慢と欲望を1つずつ暴き、労働と屈辱を与える。 そして最後に残ったのは、誰にも必要とされない現実だけ。 「どうして……俺は、こんなにも愚かだったんだ」 これは愛を勘違いし、身分を過信し、自分の価値を見誤った男の終焉を描くダークドラマ。 ⚠️ 本作は AI の生成した文章を一部に使っています。過激ざまぁタグあります。 4/1「エステルに対する殺意」の内容を一部変更しました。

全てを捨てて、わたしらしく生きていきます。

彩華(あやはな)
恋愛
3年前にリゼッタお姉様が風邪で死んだ後、お姉様の婚約者であるバルト様と結婚したわたし、サリーナ。バルト様はお姉様の事を愛していたため、わたしに愛情を向けることはなかった。じっと耐えた3年間。でも、人との出会いはわたしを変えていく。自由になるために全てを捨てる覚悟を決め、わたしはわたしらしく生きる事を決意する。

完結 この手からこぼれ落ちるもの   

ポチ
恋愛
やっと、本当のことが言えるよ。。。 長かった。。 君は、この家の第一夫人として 最高の女性だよ 全て君に任せるよ 僕は、ベリンダの事で忙しいからね? 全て君の思う通りやってくれれば良いからね?頼んだよ 僕が君に触れる事は無いけれど この家の跡継ぎは、心配要らないよ? 君の父上の姪であるベリンダが 産んでくれるから 心配しないでね そう、優しく微笑んだオリバー様 今まで優しかったのは?

【完結済】後悔していると言われても、ねぇ。私はもう……。

木嶋うめ香
恋愛
五歳で婚約したシオン殿下は、ある日先触れもなしに我が家にやってきました。 「君と婚約を解消したい、私はスィートピーを愛してるんだ」 シオン殿下は、私の妹スィートピーを隣に座らせ、馬鹿なことを言い始めたのです。 妹はとても愛らしいですから、殿下が思っても仕方がありません。 でも、それなら側妃でいいのではありませんか? どうしても私と婚約解消したいのですか、本当に後悔はございませんか?