湖の町。そこにある学校

朝山みどり

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07 本物の映画スター

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都会の子をみた興奮が冷めて、日常に戻った。いつもの人が見学に来ている。普段通りの一日が半分過ぎた頃。

「素晴らしいわ。うわさを聞いたから見に来たの」と声がした。ちょうど音楽が止んだ時のせいか、声質のせいかさほどの大声じゃないのに全員がその声を聞いた。

小奇麗なおばさんが立っていた。

見学していたおばさんたちが、口を押さえて「えーーーー!! うそーー!!」「うそーーー!!」「あーー」とか騒いでいるし、エリカ先生も両の拳を口に当てていた。

わたしたちは、おたがいに顔を見合わせて「なに?」と小声で話した。

「コジカ・マドカ・・・マドカさんですか?もしかして」とそばに行ったエリカ先生が話しかけた。

「ええ、そうです。よかった覚えてる人がいて」とにこやかにその人は答えた。

そのとき、これがオーラなんだ。と思った。その人は特別な人だった。

その人がわたしたちを指導してくれた。お姉さまに教わっている場面なので、テンポも早くステップも複雑だけど、わたしたちはこなしていた。エリカ先生の振り付けがちょっと物足りないから回転数を上げようなんて話している所だったのに、そのコジカは

「そこ速すぎるわ。この位の速さがいいわ。ステップも踏みすぎじゃない?」とか言って、ふったぬるい踊りに変えていった。

エリカ先生はなんと言うか、魅せられたように

「そうですね」としか言わなかった。見学の人たちも何度もうなづいていた。

終わりの時間になると、見学の人たちがコジカを取り囲み、なんか昔の映画の名前を出しては感動したとか最高の映画と言っている。

話が途切れた所で

「わたしも皆様を見て感動しました。こんなに暖かく迎えてくれて、ありがとう。そして素晴らしい指導者と素晴らしい若さあふれる若者。お手伝いさせて下さい。明日も参ります。いえいえありがとう。船がありますから」

と家に泊まるように進められて断り、素晴らしい歯をみせて笑って言った。


若さあふれる若者のわたしたちは、あまり嬉しくなく練習を終えた。

家に帰って鏡のまであの笑い方をやってみたが、出来なかった。多分映画スターは歯が多いのだろう。あんなに歯を強調できなかった。


翌日、コジカはもう学校にいた。見学者がすごく増えて、いつもよりおしゃれしているのがわかった。

いっそこの人のソロで稼げば?ってちょっとだけ思ってしまって、密かに落ち込んだ。


「指導できて光栄ですわ」彼女はお礼を言われる度にこのセリフを言う。

今日は、おばあちゃんのパートをやってるけど、コジカ曰く最初から手直しとか・・・

サチヨと彼女が並んで踊っているんだけど、サチヨのほうがかっこいい。おばあちゃんの時代だから今よりゆっくりと動くんだけど、それで余計にコジカがのそのそして見える。

そのあと、全員で練習したけどいつもほど楽しくなかった。

「やっぱり指導に来てよかったわ」とコジカが言った。歯が目立っていた。




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