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第三章 ある破局

01 新婚の夫はいらいらする

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訓練場に響く剣の音にいらいらした感情を感じて団長のフレデリック・レッドウッドは窓から見下ろした。
いつものようにエドワード・ストーンが稽古をつけている。団員も当のエドワードも気づいていないようだが・・・・原因に心当たりがあったフレデリックはそういうものなのかと軽く笑ってそれを流した。

エドワードは春の初めに結婚したのだが、花嫁の美しさは町のうわさになるほどで彼の耳にもはいっているし、婚約者の自慢をしすぎてからかわれている場面にも何度も遭遇していた。

早く帰りたいのだろうと、今日は事件が起きないといいなとフレデリックは思った。



エドワードは急いで家に戻るとドアを開けた。

出迎えたのは期待した新妻のエリサではなく妹のマギーだった。

「なんでまだいるんだよ。帰るって言ってなかったか?おふくろとおやじが待っているんじゃないか?」

「それがね、手紙の返事にゆっくりしておいでって書いてあったの。だからもう少しここにいるわ」

「手紙?」

「うん、もっと兄さんのとこにいていいかって書いたの?」

「そしたら好きなだけいていいって。だから、帰らない」

「エリサが嫌がるだろ」『すまん、エリサ憎まれ役にして』

「そんなの兄さんがバシっと言えばいいのよ」

「エリサは?」

「デザートの用意してなかったから、買いに行かせた」


エドワードは着替えるとマギーと並んでソファに座ってエリサを待った。


その日の夕食はひとりだけ上機嫌に喋るマギーに、エリサが相槌をうっているうちに終わった。
夕食が終わりデザートを食べながら兄と妹がお茶を飲んでいる間、エリサはひとりで片付けた。終わって戻ってくるとマギーが

「お姉様、あたしの滞在を嫌がっているそうですね」

エリサはエドワードを見ると

「そんなことないわよ」と答えた。

「なら、良いけど・・・・友達が・・・・普通はもっと気を使ってくれるはずって言うから・・・気になって・・・・こういう事って親身になって注意してくれる人ってあまりいないでしょ。だからあたしが心を鬼にして・・・」


「気をつけますね」そういうとエリサは寝室に去っていった。

「どう、あの態度。兄さん。ちゃんと奥さんをしつけなきゃ」

と言うとテーブルを片付けもせず占領している客間に行った。



テーブルを片付けてエドワードが寝室に行くとエリサはベッドに入り背を向けていた。

「ごめん、今度ちゃんと言うよ。帰れって」と背中に抱きつきながら言ったが

「静かにしないと、うるさかったって言われるのはわたしですよ」と返事が返ってきた。


翌朝、洗濯物を干しているエリサにお隣のダリル夫人が声をかけてきた。

「まだ寝てるの?帰れって言えれば苦労しないけどね」
「ほんとに」
「早くお茶したいよね。刺繍も教えて欲しいのに」
「そうだ。待ってて」そういうとエリサは家にもどり皿を持って出てきた。
「これ少しだけど味見してみて」と焼き菓子を渡した。
「いつもありがとね。じゃがいも食べて。持ってくるね」と言うとダリル夫人はじゃがいもをかごに入れた。

「わたしなら、とっとと帰れって追い出すけどね。あの子は優しいから・・・」と言う夫人のつぶやきはじゃがいもだけが聞いていた。


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