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03 いやはや

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わたくしはポーラに優しくして貰うとすっかり気分がよくなった。きっちりと結い上げている髪を下ろすともっと気分が良くなった。

食堂に行くと、心なしかいつもより優しい表情のお父様とお母様が待っていた。

わたくしは、美味しく食事を食べると、王子妃教育の課題をこなす為に部屋に戻った。

真面目に二時間程、それから学院の勉強を一時間程それから入浴して日付が変わる頃ベッドに入った。

いろいろあり過ぎた一日はこうして終わった。


翌日、馬車から降りると殿下が昨日と同じように立っていた。

「おはようございます。殿下」と軽く挨拶して教室へ向かった。

「ウィル、おはよう」と甘い声が後ろで聞こえた。


胸がずきりと痛かったが、頭をいつもよりつんとそらすと痛みが紛れた。

お昼は持参のランチを人のいない裏庭のベンチで食べた。あの個室でウィル、と甘えた声を振りまくランダさんを想像できる自分がいやな人間に思えて仕方なかった・・・だけど・・・ランチが美味しい自分を少し笑えた。


週末、王宮で王子殿下とのお茶会が予定されていたので、王宮に行った。時間になっても王子は現れなかった。

そしてそろそろ終わりの時間だと言う頃、侍従が現れて、王子は急用が出来た。連絡が遅れてすまないとおしゃっていると告げ始めた。

いつもすましている侍従があせりをにじませて告げるのを途中で止めて、

「畏まりました。お知らせ下さいましてありがとうございます」と言うと、案内を断り馬車乗り場に向かった。

ここで散歩なんてすると、あの二人が仲良くお茶しているところを見ちゃうわねと思いながら、さっさと歩いた。


それなのに、わたくしの心を読んだように、二人が寄り添って待っていた。そう来たか・・・と皮肉っぽく思おうとしたが、ちくりとした。わたくしの胸はわたくしが思うより未練がましいようだ。

「ミランダ、すまなかった。ランダが王宮の庭で迷ってしまって探していたら遅くなってしまった。側近ともはぐれてしまって連絡できなかったのだ。伝えることがあったので会いたかったのだが・・・」

返事しようと思った時、

「もう、ウィル。その方にわたしがドジっ子だってばらすなんてひどいわ。わたしがわざと迷ったって思われたら恨まれそうで怖いわ・・・この泥棒猫って思われたらいやだわ」とランダさんは自分の腕を抱きしめて震えながら言った。

「ミランダ。そう思っているのか?」と殿下が声を荒らげた。

なにも言っておりませんが・・・殿下がわたくしを嫉妬のあまりランダさんを罵ると思っている事に胸がちくりとしなかった。

なんというか、殿下が馬鹿に見えた。その殿下にふさわしくと努力している自分も・・・

この二人お似合いだわ。馬鹿には馬鹿がふさわしい。そうよ馬鹿同士仲良くしてと心が叫んだ。あやうく口からも出るところだった。

うっかり馬鹿同士って言葉が出ると大変。この二人をどう表現すればいいのだろう・・・

わたくしは二人を見て考えた。考えた。うーーん、もっと考えろ。考えろーーー 捻り出せーーーー出せーーー


自然体。そう自然体・・・自然体の貴族なんていない。いないけど・・・自然体。いい言葉だわ。

「なに、睨んでいるんだ」と殿下が大声で言うが、わたくしはそう言われないように、首を右90度に固定していたのにね。

普通だったら咎められる行為だが、やってて良かった。

それにしてもいい場所を選んでくれた。やっぱり馬鹿・・・訂正、自然体だわ。目撃者がたくさん!!

自然体最高・・・

まずいと気づいた側近が殿下を止めて、わたくしはとびきり丁寧に、カテーシーをやると、馬車に乗った。




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