アスカ!ふたたび

佐世保人

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【超超巨大宇宙船の中】

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超超巨大な宇宙船の中に、入りました。

入口は存在せず。ただ無限に続く高さの、白銀の塔のように、見えました。

############################

「高さだけで、600mよ」
アスカが、言いました。

600m?634タワーより、少し低い程度。
恐ろしい、途方もない寒さを、感じました。

そして
音もなく、縦長の扉が、開いていきます。

何というテクノロジー、地球との差が億万年にも、思えてきます。

############################

超超巨大宇宙船の中は、途轍もなく広い部屋でした。

その端の方、巨大で無機質な壁の近くに、ベッドがありました。

粗末なベッドです。

地球の病院の病室にあるベッドに比べれば、遥かに贅沢です。

でも、粗末だと、京太郎は思いました。

「Appollo 20の宇宙飛行士が、持っていったのよ。この上で寝ていた、可愛くて悲しい女の子を」

アスカが、言いました。

「その女の子も、この超超巨大宇宙船の奥の、ずっと奥の部屋では、楽しい日々を過ごせていたのだろうか」

京太郎、今さら考えても、仕方のないことを考えています。

「さあ、行きましょう」

出口の。いえ入り口のドアが、音もなく開きます。

アスカを先頭に、4人はドアの中に、飲み込まれるように、消えていきました。

############################

通路は、ずっと向こうまで続いています。

照明は間接照明のようで、暖かい気分になる、淡い光です。
でも、その中に、永遠の輪廻の、たった1人で寂しくて悲しい、永久の冷たさを内包しています。

アスカは、音もなく、綺麗な姿勢で、歩いていきます。

時折り、左に、あるいは右に、扉がありました。
なんのための部屋か、京太郎には分かりません。

時に左に、そして次は右へと、いったん立ち止まって、曲がります。

############################

大きな、とても大きな部屋に、着きました。

そこには、大きな彫像が。いくつもあります。

でも、それらは例外なく、身体の途中で、この宇宙船の冷たい床に、埋もれています。

ある者は、ウルトラマンのように大きく、強く、筋肉隆々です。

ある者は、天使のような羽すら石のように凍らされ、片方の脚の太ももの付け根付近から、床と一体化しています。

「この者たちは、神々よ」
アスカが、言います。

「神々?」

「この超超巨大宇宙船の外にいた、あの大蛇も、その1体よ」

############################

もう、何を言えばいいのか、分かりません。


「京太郎、あの神々を、自由にして、助けてあげましょう」

「この超超巨大宇宙船の、無数の乗組員の中には、悪魔の心を持つ、心の悪い科学者たちがいたのよ」

############################

「こう、するのよ」

アスカはそう言うと、神々の1体に人差し指を向けます。

すると、何ということでしょう。

その神が、無数の光る微粒子になって、淡く光って、消えていきます。

「さあ、京太郎も」

「うん」


京太郎も、似たような姿勢で、心を無にします。
いえ、無と言うより、果てしない輪廻の、その果への、できるだけの悲しみと、強さを込めました。

「京太郎。上手よ」

さっきみたいに、指さした神の1体が、淡く光って、消えていきました。

############################

京太郎とアスカは、何度となく、数え切れないほど、同じことを繰り返します。

・・

やっと、全ての神々が、消滅しました。

何もなくなった部屋は、やたらがらんどうで、空疎に思えました。

でも、良いことをやったという気持ちが、とても良いです。

「ワカ、アスカ様!素晴らしいです。私たちは見てるだけでしたが、何か昔、蜘蛛の巣に架かったオニヤンマを、助けたときを思い出しました!」

サングラスたちが、とても嬉しそうです。

############################


【悲しい、たった1人のミイラ】

それから、また歩き出しました。

何時間も、あるいはたったの数分だったのかも、知れません。

アスカが、また止まりました。

その部屋も、何もありません。ただ、無限の空気だけが、ありました。

############################

アスカは、部屋のずっと先まで、歩いていきます。

そして、止まりました。

「京太郎、サングラスの皆さんも、こちらに来てください」

何だろう?
京太郎は、思いました。

「皆さん、ここにあるのが、本当の私です。何万回も、何十億回も、あるいはそれ以上の回数、転生を繰り返す前。この超超巨大宇宙船の王女だったのが、このミイラです」

「ミイラ・・」

「回復不可能な伝染病で、この超超巨大宇宙船の99.9999999%の人口が失われ、普段は優しく、穏やかだった科学者たちは、正気を失い、この透明なピラミッド型の永久個体に、私の身体を封印しました。その結果が、これです」

一見、ガラス張りにも見える、その透明な物質には、本当にアスカが、封じ込められています。

目の前にいる本物のアスカと、とても似ています。ですが、とても儚く、とても悲しく、億千万の輪廻の恩讐を受け継いだ、たった1人の女の子です。
同時に、限りなく純粋な、女神のようにも見えました。

############################

また、歩いています。ずっと、歩いています。

「皆さん、トイレ行きたくないですか?」

そう言うとアスカは、さっさと女性用らしい部屋に、入っていきました。

サングラスたちも、男性用トイレに入りました。

「おわ・・」

京太郎も、急いで続きます。

############################

トイレの中は、とても広くて、暖かい間接照明で照らされています。

京太郎は、コンパートメントに入りました。

すると何かが、股間の前の壁で小さく光り、何かと思っていると、尿意がスッキリ爽やかに解消されています。

「今の地球の人類とか、何万年科学が進歩しても、同じことやれそうにないなあ」

############################

トイレから出ました。

もう皆んなは終わって、京太郎を待っていました。

「やぁ、済まない」

「あれ?」

アスカが、向こうを向いて、立っています。

サングラスたちは・・

「ワカ、ズボンを膝上まで落ろしたままです!」

「ヒィーーーーー」

京太郎は、必死で服を直しました。

############################

それから、しばらく歩きました。

「皆さん、やっと目的地です。あのドクのディスク。あれを小さいスロットに挿入すれば、月の落下は止まります」

「やった!」

京太郎もサングラスも、そしてアスカも、大喜びで飛び上がっていました。

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