婚約破棄をされて、王子と言い合いになりましたが

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突き放すことは当然のこと。
そして、それをヒロインの少女がためらいもなく許すことで、悪役令嬢の慈悲深さが際立つ。
そして、最後に、婚約破棄して置き去りにしてきた悪役令嬢が、無事に王都にたどり着いて、その事実を王子とヒロインに告げたところで、物語は幕を閉じるのだ。
『君とは、もう婚約破棄だ』
『わたくし、殿下と結婚する気など最初からございませんでしたわ』
『はっ!? なにを言っている! では、この一連の騒動はいったいなんのために...................』
『あら、知りませんの? わたくしの父が、最近、過労で倒れたようですの。国王陛下に泣きつかれた父が、婚約者であるわたくしに、王都までの同行を命じたのです』
『そ、そんな.............そんなくだらない理由で...................』
『あら、くだらないですの? それはよかった』
『よかった?』
『ええ。陛下も王太子殿下も、わたくしが悪役令嬢であることは、すべて知っているはずですもの。お二人がわたくしのことを信じきれずにこのような茶番劇を企てたというのなら、陛下のお心を疑ってしまうところでしたけれど....................』
『そんな、父上は、そんなお方では.......................!』
『あら、ならばわたくしとの婚約を破棄しても問題ないでしょう?』
『なっ!? ....................君と婚約するくらいなら、他の女性と婚約する方がまだマシだ!』
『まあ、まさか殿下から婚約破棄していただけるなんて.......................! こんな幸せなことはありませんわ!』
『そうだ、私が君との婚約を破棄する。君のような女性など、こちらから願い下げだ!』
『ええ。ええ! 国王陛下と王太子殿下にお伝えいたしますわ! でも.................本当によろしいんですの?』
『かまわん! もう婚約などうんざりだ!』
『国王陛下と王太子殿下のご命令であれば、わたくしも殿下のお役に立てるように励みます。でも、殿下は婚約破棄されたら大変なのではございませんこと?王位継承権はく奪、および貴族位も剥奪され、殿下は市井に追放されてしまうってもっぱらの噂ですけれど.................』
『なんだと!?』
『それに.........................わたくしと結婚するよりはマシだと仰いましたけれど.....................わたくしと一緒になるのでは、幸せにはなれないとも仰いましたわね。まあ、よろしいんですの?』
『それは、言葉の綾で..................................!』
『あらあら? まさか、国王陛下と王太子殿下の命令に異議を唱えるおつもりですか?』
みるみる焦っていく彼を見ると、私はもっと意地悪をしたく思い、次の言葉を紡いだ。
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