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1章
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結論から言うと、僕はこの人についていくことにした。上手く言いくるめられたようで釈然としないけど、まあいいだろう。
「よし、じゃあ君の妹さんのところに行こうか」
「はい。……あ、すみません、その前にちょっと寄りたいところがあるんですが……大丈夫ですか?」
白木さんは少し不思議そうな顔をしたけど、軽く了承してくれた。
ホッとして、僕は来た道を彼と戻っていく。
どこだろう、もしかしてもう家に────
「……あ」
……いた。見つけた。でも家ではなく、さっき僕が少年を投げたところから動いていなかった……というか、のびていた。
「マジか……」
慌てて少年のところに走っていき、その小さな肩を揺さぶる。
「おい!おい!……起きて!!」
やはり、強く投げすぎたのだろうか。夢中だったからわからなかったけど、頭をぶつけたのかもしれない。ごめん少年。
「起きてって!」
可哀想だけど僕はその子の頬をベシベシ叩く。するとようやく少年の目がうっすらと開かれた。
「……う……?」
よかった、起きた。
ホッとしたのも束の間、少年はいきなり目を見開いてガバッと跳ね起きた。ふむ、寝起きがいい。
「お、お前……あれ?だ、大丈夫……生きてるの?」
「生きてる。落ち着いて」
「え、な、なんで……いやていうかそいつは……誰……」
「そいつ」のところで少年の手が後ろで笑っている白木さんを指す。
「この人が助けてくれたんだ。なんかさっきみたいな怪物を倒す仕事をしてるらしい」
唖然とする少年。
「……え、じゃあ、お、お前は?大丈夫なのか?」
「ああうん、俺はなんともない。」
むしろ投げられたこいつの方が全然ダメージでかいだろうけど、まあそれは言わなくていいだろう。
「……うん、無事みたいだし、それじゃあな」
僕はスッと立ち上がる。次は家に行かないと。しかし、背を向けたその瞬間、僕の足がはたと止まる。……少年が、僕の片足をガッシリ掴んでいるからだ。
「……何?」
「いや、お前どこいくんだよ」
「え……」
どこって……
「……僕の、家だけど。」
答えてやると、何故か少年が顔をしかめる。そして後ろの白木さんと僕を交互に見る。
「……そいつも連れて?」
……ああ、なるほど。
「えっとまあ、実は……細かい説明は省くけど、俺もこの人職場で働くことになったんだ。誘われて色々話を聞いてるうちに行った方がいいかもなって……」
「はあ!?」
少年が素っ頓狂な声をあげる。
「いやいや、そんないきなり会った奴についていくとか大丈夫かよ……」
自分よりそこそこ歳下の子供に心配されてしまった。
「……いや、まあ正直僕も不安だけど」
ちらりと背後を見ると、へらへら笑っている白木さんと目が合った。
「まあ、話を聞いてるとどうやら大丈夫みたいだし…」
「……」
少年は疑いのある目で僕と白木さんを見比べる。
「……もしかして、職場ってあの怪物の討伐とか、そういうことか?」
「うん、まあ」
唖然とした顔の少年が僕を見、そして上を仰ぎ、更に俯く。……そして、バッと顔を上げた。
「?何────」
「俺も行く」
「え?」
「俺もそれについていく」
「……は?」
いやいや、こいつは何を……
「お、君も来るの?いいよ」
「ダメでしょ!」
背中越しに聞こえる呑気な声に怒鳴る。何言ってんだこの人は。
白木さんが不服そうに言う。
「だからさっきも言ったけど、こんなところに一人放っておく方が危険だって」
「どっちが危険にしても俺も行く。」
足元の少年までキッパリそんなことを言う。
……この様子じゃ、何を言ってもついてくるだろう。
「……はあ、まあ俺に言う権利もないしな……」
首の後ろをカリカリとかく。白木さんが「決まりだね」と声を弾ませた。
……まあ、僕は止めたし、いくら一度は助けたとはいえそこまでは面倒も見切れない。
というわけで、僕は後ろに二人を引き連れて家まで行くことにした。
「……ただいま」
「おかえり。ご飯……え、後ろの、誰それ?」
帰ってくるなり妹に疑いっぽく歪んだ顔で見られた。悲しい。
「ええと、細かい説明は省くんだけど、この人な、昔父さんが言ってた怪物を倒す仕事をしてるらしくて。それに俺が誘われたから行こうかなって……」
「……?」
意味が分からないという風に妹が首を傾げる。でもしばらくじっと考えた後、「それで?」と続きを促してきた。安心して、僕は続ける。
「ああそれで、お前をこんな所に一人残しておくのも何かと危ないだろ。向こうはある程度の安全が保証されるって聞いたから、お前も一緒にどうかって……」
「……それ、信用できるの?」
「……」
ぶっちゃけ、僕にもまだ分からない。
何も言えない僕の後ろから、白木さんが顔を覗かせる。
「あ、はいはい。俺名刺持ってるよ。見る?」
手をブンブン振る白木さんに、妹が頷く。
手渡された名刺をじっと見る。そして、手に持っていた本を一度二度見返し、もう一度頷いた。
「いいよ。行く」
「え!?」
自分で言ったことだけど、思わず大きい声が出てしまう。
「え、い、いいの?なんで?」
「お兄ちゃんが言ったんでしょ。……ていうか、これ。見てないの?」
妹が自分の持っている本をかざす。
「それ……」
確か、生前父さんが僕らにくれた本だ。「一度は読んどけよ」と渡された本だけど、そういったものに興味のなかった僕は、中身を軽くペラペラ見ただけで放置していた。
「これ。書いてあるでしょ」
彼女が指したページ。確かに、そこには名刺と同じ番号と、「イント討撃仕法・強襲措置におけるポルワー情報手引」と書かれた文字があった。
「……イントって何?」
何やら物々しい響きの言葉が後ろに続いているけど、最初の三文字は聞いたことがない。ポルワーというのは、多分白木さんが最初に言っていた怪物のことだろう。
「それはこれにも書いてないし、私も知らない」
淡々と答える妹。これ以上何か言う気はなさそうだ。
「だから、私も行く。ある程度の自衛はできるようになりたいし」
「……そ、そっか」
こくっと頷く妹を見た白木さんが、嬉しそうに手を叩いた。
「よし、じゃあ行こうか。」
「よし、じゃあ君の妹さんのところに行こうか」
「はい。……あ、すみません、その前にちょっと寄りたいところがあるんですが……大丈夫ですか?」
白木さんは少し不思議そうな顔をしたけど、軽く了承してくれた。
ホッとして、僕は来た道を彼と戻っていく。
どこだろう、もしかしてもう家に────
「……あ」
……いた。見つけた。でも家ではなく、さっき僕が少年を投げたところから動いていなかった……というか、のびていた。
「マジか……」
慌てて少年のところに走っていき、その小さな肩を揺さぶる。
「おい!おい!……起きて!!」
やはり、強く投げすぎたのだろうか。夢中だったからわからなかったけど、頭をぶつけたのかもしれない。ごめん少年。
「起きてって!」
可哀想だけど僕はその子の頬をベシベシ叩く。するとようやく少年の目がうっすらと開かれた。
「……う……?」
よかった、起きた。
ホッとしたのも束の間、少年はいきなり目を見開いてガバッと跳ね起きた。ふむ、寝起きがいい。
「お、お前……あれ?だ、大丈夫……生きてるの?」
「生きてる。落ち着いて」
「え、な、なんで……いやていうかそいつは……誰……」
「そいつ」のところで少年の手が後ろで笑っている白木さんを指す。
「この人が助けてくれたんだ。なんかさっきみたいな怪物を倒す仕事をしてるらしい」
唖然とする少年。
「……え、じゃあ、お、お前は?大丈夫なのか?」
「ああうん、俺はなんともない。」
むしろ投げられたこいつの方が全然ダメージでかいだろうけど、まあそれは言わなくていいだろう。
「……うん、無事みたいだし、それじゃあな」
僕はスッと立ち上がる。次は家に行かないと。しかし、背を向けたその瞬間、僕の足がはたと止まる。……少年が、僕の片足をガッシリ掴んでいるからだ。
「……何?」
「いや、お前どこいくんだよ」
「え……」
どこって……
「……僕の、家だけど。」
答えてやると、何故か少年が顔をしかめる。そして後ろの白木さんと僕を交互に見る。
「……そいつも連れて?」
……ああ、なるほど。
「えっとまあ、実は……細かい説明は省くけど、俺もこの人職場で働くことになったんだ。誘われて色々話を聞いてるうちに行った方がいいかもなって……」
「はあ!?」
少年が素っ頓狂な声をあげる。
「いやいや、そんないきなり会った奴についていくとか大丈夫かよ……」
自分よりそこそこ歳下の子供に心配されてしまった。
「……いや、まあ正直僕も不安だけど」
ちらりと背後を見ると、へらへら笑っている白木さんと目が合った。
「まあ、話を聞いてるとどうやら大丈夫みたいだし…」
「……」
少年は疑いのある目で僕と白木さんを見比べる。
「……もしかして、職場ってあの怪物の討伐とか、そういうことか?」
「うん、まあ」
唖然とした顔の少年が僕を見、そして上を仰ぎ、更に俯く。……そして、バッと顔を上げた。
「?何────」
「俺も行く」
「え?」
「俺もそれについていく」
「……は?」
いやいや、こいつは何を……
「お、君も来るの?いいよ」
「ダメでしょ!」
背中越しに聞こえる呑気な声に怒鳴る。何言ってんだこの人は。
白木さんが不服そうに言う。
「だからさっきも言ったけど、こんなところに一人放っておく方が危険だって」
「どっちが危険にしても俺も行く。」
足元の少年までキッパリそんなことを言う。
……この様子じゃ、何を言ってもついてくるだろう。
「……はあ、まあ俺に言う権利もないしな……」
首の後ろをカリカリとかく。白木さんが「決まりだね」と声を弾ませた。
……まあ、僕は止めたし、いくら一度は助けたとはいえそこまでは面倒も見切れない。
というわけで、僕は後ろに二人を引き連れて家まで行くことにした。
「……ただいま」
「おかえり。ご飯……え、後ろの、誰それ?」
帰ってくるなり妹に疑いっぽく歪んだ顔で見られた。悲しい。
「ええと、細かい説明は省くんだけど、この人な、昔父さんが言ってた怪物を倒す仕事をしてるらしくて。それに俺が誘われたから行こうかなって……」
「……?」
意味が分からないという風に妹が首を傾げる。でもしばらくじっと考えた後、「それで?」と続きを促してきた。安心して、僕は続ける。
「ああそれで、お前をこんな所に一人残しておくのも何かと危ないだろ。向こうはある程度の安全が保証されるって聞いたから、お前も一緒にどうかって……」
「……それ、信用できるの?」
「……」
ぶっちゃけ、僕にもまだ分からない。
何も言えない僕の後ろから、白木さんが顔を覗かせる。
「あ、はいはい。俺名刺持ってるよ。見る?」
手をブンブン振る白木さんに、妹が頷く。
手渡された名刺をじっと見る。そして、手に持っていた本を一度二度見返し、もう一度頷いた。
「いいよ。行く」
「え!?」
自分で言ったことだけど、思わず大きい声が出てしまう。
「え、い、いいの?なんで?」
「お兄ちゃんが言ったんでしょ。……ていうか、これ。見てないの?」
妹が自分の持っている本をかざす。
「それ……」
確か、生前父さんが僕らにくれた本だ。「一度は読んどけよ」と渡された本だけど、そういったものに興味のなかった僕は、中身を軽くペラペラ見ただけで放置していた。
「これ。書いてあるでしょ」
彼女が指したページ。確かに、そこには名刺と同じ番号と、「イント討撃仕法・強襲措置におけるポルワー情報手引」と書かれた文字があった。
「……イントって何?」
何やら物々しい響きの言葉が後ろに続いているけど、最初の三文字は聞いたことがない。ポルワーというのは、多分白木さんが最初に言っていた怪物のことだろう。
「それはこれにも書いてないし、私も知らない」
淡々と答える妹。これ以上何か言う気はなさそうだ。
「だから、私も行く。ある程度の自衛はできるようになりたいし」
「……そ、そっか」
こくっと頷く妹を見た白木さんが、嬉しそうに手を叩いた。
「よし、じゃあ行こうか。」
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