83 / 170
第83話
しおりを挟む
由紀side
ある日を境に、二海くんと茉弘がギクシャクし始めた。
正確に言うなら、買出しを行った日から。
私の時は行かないって言ってたくせに、茉弘にはついて行った、あの日から。
いつもなら同じ電車で来るはずなのに1本ずらして来るようになった茉弘。
授業前の時間も会話はなし。
二海くんが何かを話そうとしても、茉弘は逃げていくか無視をしていた。
理由はわかんないけど、好機だと思った。
茉弘と二海くんの仲が悪くなった今なら、私を見てくれるかもしれない。
そう、思ってたのに。
今日、普通に話をし始めた。
昨日までは本人に話しかけることすら敬遠してたはずなのに。
なんで・・・?
なんて元に戻ってるの?
ギクシャクしたままでいてよ。
そうじゃないと・・・!!
あのまま、ギクシャクし続けてれば良かったのに・・・!
そんなことを思いながら、楽しそうに話す2人を睨みつける。
二海くん、嬉しそう・・・あんな奴のどこがいいの?
私の方が可愛いし、スタイルだっていい。
髪の毛だって気を使ってるし、いい匂いのするコロンだって使ってる。
それなのに・・・。
「あの、三島さん」
私を呼ぶ声にビクッと身体を震わせた。
モサっとした前髪に、分厚いメガネ・・・えっと、名前は確か・・・。
「え、っと──山崎くん、どうしたの?」
慌てて笑顔を作り、山崎を見る。
確か、前に茉弘がヤンキーに突き落とされた時に酷く心配してたヤツだ。
「ちょっとお話があるんだけど、一緒に来てくれますか?」
私、これから二海くんのところに行って話しようと思ってたんだけどな。
でも、断る訳には行かないよね・・・モサ男、キョーミないんだけどな。
「うん、いいよ~」
いつものように笑顔を作る。
正直、相手なんかしたくない。
けど、機械科のマドンナって言われるぐらいになれたんだ。
こんなことでそのブランドを手放す訳には行かない。
「ありがとう。ここじゃなんだから場所、変えさせて?」
「いいよ」
山崎のあとをついていくと、人気のない廊下に連れてこられた。
これ、まさか告白じゃないよね。
いや、雰囲気的にそんな感じがする。
そんなに絡みなかったじゃん・・・どうしてそんなんで告白成功すると思ってんの?
「それで、話って?」
どうせ断るんだし、さっさと済ませよう。
そんな気持ちで相手の言葉を待つ。
「あの・・・俺、好きな人がいて・・・」
うわ、来たー・・・王道パターン。
あなたなんですけど、俺に希望ありますかって聞くやつじゃん。
残念ながら夢も希望もありませーん。
自分の顔面見直してから来いって感じ。
それに、こんなモサい奴に告られても迷惑なだけなんですけど。
「・・・こんなモサい奴に告られてもメーワクなだけなんだけど、って思っただろ、今」
「!!」
なに・・・心読まれた!?
しかも、今、なんかさっきまでと印象違うんだけど。
「当たってただろ?お前、意外と気ぃ抜くと表情に出るよな。面白いぐらいにわかりやすいぜ」
「・・・」
確かに、私は気を抜くと表情に出やすいタイプではある。
でも、今はそんなに気を抜いてなかった。
じゃあ、なんで。
「・・・なんで、そう思うの?」
気付いたら、声のトーンが下がっていた。
だけど、山崎はそんなことを気にせず髪の毛をかきあげてメガネを取った。
「俺に似てるからね、そりゃわかるさ。どうせ好きなやつは二海なんだろ?」
晒された山崎の素顔は正直カッコイイものだった。
切れ長な目に整った顔立ち・・・普通にしてればモテそうな容姿をしている。
なんでモサい格好してるのか。
そして、なんで私と似てると言ったのか。
答えはひとつだ。
「・・・なるほど、アンタも猫被ってるってわけ」
私は猫をかぶるのをやめた。
同類に猫をかぶったって、ただの痛い人だ。
猫被り続けるのもしんどいし、息抜きしたかったし。
「ま、告る気なんてさらさらねぇけどな、俺が好きなの辻本さんだし」
「へぇ・・・茉弘の事好きなんだ、意外」
ほかの女の子からもモテそうなのに、茉弘なんだ。
そんなことを思っていると、自分で外したメガネを見つめ出す山崎。
「裏表なく変装してる俺に接してくれたから。俺、こう言っちゃなんだけど中学ん時からモテすぎて、面食いのやつとか大っ嫌いでさ。この格好してるのも面食いに相手されないため。・・・お前も面食いだよな」
「安心してよ、アンタに興味ない」
私が好きなのは二海くんただ1人。
それ以外の男は論外だ。
「だから声かけたんだろ」
ふん、と鼻を鳴らす山崎。
「そんなわけで、提案。俺は辻本さんを落としたいけど二海が邪魔、お前は二海を落としたいけど辻本さんが邪魔・・・だったら、お互いがお互いの邪魔な相手を落とそうぜって話」
その言葉で、ハッとする。
確かに二海くんを落とすのに茉弘は邪魔だ、利害は一致してる。
「・・・そうね。二海くんを手に入れるためには茉弘が邪魔だったの。いいわよ。その提案、乗ってあげる」
「ふっ、心強いぜ。頑張ってくれよ、機械科のマドンナさん」
そう言って、山崎は前髪を戻してメガネをかけて教室へと戻っていく。
私も、何事も無かったかのように教室へと戻った。
ある日を境に、二海くんと茉弘がギクシャクし始めた。
正確に言うなら、買出しを行った日から。
私の時は行かないって言ってたくせに、茉弘にはついて行った、あの日から。
いつもなら同じ電車で来るはずなのに1本ずらして来るようになった茉弘。
授業前の時間も会話はなし。
二海くんが何かを話そうとしても、茉弘は逃げていくか無視をしていた。
理由はわかんないけど、好機だと思った。
茉弘と二海くんの仲が悪くなった今なら、私を見てくれるかもしれない。
そう、思ってたのに。
今日、普通に話をし始めた。
昨日までは本人に話しかけることすら敬遠してたはずなのに。
なんで・・・?
なんて元に戻ってるの?
ギクシャクしたままでいてよ。
そうじゃないと・・・!!
あのまま、ギクシャクし続けてれば良かったのに・・・!
そんなことを思いながら、楽しそうに話す2人を睨みつける。
二海くん、嬉しそう・・・あんな奴のどこがいいの?
私の方が可愛いし、スタイルだっていい。
髪の毛だって気を使ってるし、いい匂いのするコロンだって使ってる。
それなのに・・・。
「あの、三島さん」
私を呼ぶ声にビクッと身体を震わせた。
モサっとした前髪に、分厚いメガネ・・・えっと、名前は確か・・・。
「え、っと──山崎くん、どうしたの?」
慌てて笑顔を作り、山崎を見る。
確か、前に茉弘がヤンキーに突き落とされた時に酷く心配してたヤツだ。
「ちょっとお話があるんだけど、一緒に来てくれますか?」
私、これから二海くんのところに行って話しようと思ってたんだけどな。
でも、断る訳には行かないよね・・・モサ男、キョーミないんだけどな。
「うん、いいよ~」
いつものように笑顔を作る。
正直、相手なんかしたくない。
けど、機械科のマドンナって言われるぐらいになれたんだ。
こんなことでそのブランドを手放す訳には行かない。
「ありがとう。ここじゃなんだから場所、変えさせて?」
「いいよ」
山崎のあとをついていくと、人気のない廊下に連れてこられた。
これ、まさか告白じゃないよね。
いや、雰囲気的にそんな感じがする。
そんなに絡みなかったじゃん・・・どうしてそんなんで告白成功すると思ってんの?
「それで、話って?」
どうせ断るんだし、さっさと済ませよう。
そんな気持ちで相手の言葉を待つ。
「あの・・・俺、好きな人がいて・・・」
うわ、来たー・・・王道パターン。
あなたなんですけど、俺に希望ありますかって聞くやつじゃん。
残念ながら夢も希望もありませーん。
自分の顔面見直してから来いって感じ。
それに、こんなモサい奴に告られても迷惑なだけなんですけど。
「・・・こんなモサい奴に告られてもメーワクなだけなんだけど、って思っただろ、今」
「!!」
なに・・・心読まれた!?
しかも、今、なんかさっきまでと印象違うんだけど。
「当たってただろ?お前、意外と気ぃ抜くと表情に出るよな。面白いぐらいにわかりやすいぜ」
「・・・」
確かに、私は気を抜くと表情に出やすいタイプではある。
でも、今はそんなに気を抜いてなかった。
じゃあ、なんで。
「・・・なんで、そう思うの?」
気付いたら、声のトーンが下がっていた。
だけど、山崎はそんなことを気にせず髪の毛をかきあげてメガネを取った。
「俺に似てるからね、そりゃわかるさ。どうせ好きなやつは二海なんだろ?」
晒された山崎の素顔は正直カッコイイものだった。
切れ長な目に整った顔立ち・・・普通にしてればモテそうな容姿をしている。
なんでモサい格好してるのか。
そして、なんで私と似てると言ったのか。
答えはひとつだ。
「・・・なるほど、アンタも猫被ってるってわけ」
私は猫をかぶるのをやめた。
同類に猫をかぶったって、ただの痛い人だ。
猫被り続けるのもしんどいし、息抜きしたかったし。
「ま、告る気なんてさらさらねぇけどな、俺が好きなの辻本さんだし」
「へぇ・・・茉弘の事好きなんだ、意外」
ほかの女の子からもモテそうなのに、茉弘なんだ。
そんなことを思っていると、自分で外したメガネを見つめ出す山崎。
「裏表なく変装してる俺に接してくれたから。俺、こう言っちゃなんだけど中学ん時からモテすぎて、面食いのやつとか大っ嫌いでさ。この格好してるのも面食いに相手されないため。・・・お前も面食いだよな」
「安心してよ、アンタに興味ない」
私が好きなのは二海くんただ1人。
それ以外の男は論外だ。
「だから声かけたんだろ」
ふん、と鼻を鳴らす山崎。
「そんなわけで、提案。俺は辻本さんを落としたいけど二海が邪魔、お前は二海を落としたいけど辻本さんが邪魔・・・だったら、お互いがお互いの邪魔な相手を落とそうぜって話」
その言葉で、ハッとする。
確かに二海くんを落とすのに茉弘は邪魔だ、利害は一致してる。
「・・・そうね。二海くんを手に入れるためには茉弘が邪魔だったの。いいわよ。その提案、乗ってあげる」
「ふっ、心強いぜ。頑張ってくれよ、機械科のマドンナさん」
そう言って、山崎は前髪を戻してメガネをかけて教室へと戻っていく。
私も、何事も無かったかのように教室へと戻った。
0
あなたにおすすめの小説
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
ママと中学生の僕
キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。
隣に住んでいる後輩の『彼女』面がガチすぎて、オレの知ってるラブコメとはかなり違う気がする
夕姫
青春
【『白石夏帆』こいつには何を言っても無駄なようだ……】
主人公の神原秋人は、高校二年生。特別なことなど何もない、静かな一人暮らしを愛する少年だった。東京の私立高校に通い、誰とも深く関わらずただ平凡に過ごす日々。
そんな彼の日常は、ある春の日、突如現れた隣人によって塗り替えられる。後輩の白石夏帆。そしてとんでもないことを言い出したのだ。
「え?私たち、付き合ってますよね?」
なぜ?どうして?全く身に覚えのない主張に秋人は混乱し激しく否定する。だが、夏帆はまるで聞いていないかのように、秋人に猛烈に迫ってくる。何を言っても、どんな態度をとっても、その鋼のような意思は揺るがない。
「付き合っている」という謎の確信を持つ夏帆と、彼女に振り回されながらも憎めない(?)と思ってしまう秋人。これは、一人の後輩による一方的な「好き」が、平凡な先輩の日常を侵略する、予測不能な押しかけラブコメディ。
ちょっと大人な体験談はこちらです
神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な体験談です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。
あるフィギュアスケーターの性事情
蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。
しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。
何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。
この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。
そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。
この物語はフィクションです。
実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。
久々に幼なじみの家に遊びに行ったら、寝ている間に…
しゅうじつ
BL
俺の隣の家に住んでいる有沢は幼なじみだ。
高校に入ってからは、学校で話したり遊んだりするくらいの仲だったが、今日数人の友達と彼の家に遊びに行くことになった。
数年ぶりの幼なじみの家を懐かしんでいる中、いつの間にか友人たちは帰っており、幼なじみと2人きりに。
そこで俺は彼の部屋であるものを見つけてしまい、部屋に来た有沢に咄嗟に寝たフリをするが…
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる