ステータスを好きにイジって遊んでたら、嫁たちが国造りを始めました

内海

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第14話 報われないお姫様

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 引き出しや重い中身を全部出し、1人で廊下に運ぼうとするキャロライン。
 しかし引き出しや書類などは全て出したが、机自体が大きいため一人では遅々として進まない。
 その間に修斗もパメラも仕事を始めている。

 訪問者もひっきりなしに訪れ、キャロラインが重い荷物を運ぼうとしているのを見て驚く。
 中には手伝おうとする者もいるが、修斗が止め、直ぐに仕事の話に入っていく。
 ゆっくりゆっくりと机を動かしているが、キャロラインはふと自分の姿を見る。
 ドレスという物は、少なくとも力仕事をする格好ではない。

 修斗とパメラに断りを入れ、急いで着替えに行く。
 こんな仕打ちをされても勝手な行動を取らない。思ったよりも生真面目で肝が据わっているようだ。

 キャロラインが戻ってきた時、部屋の前に行列が出来ていた。
 修斗とパメラの指示が良かったと評判で、次から次へと相談に現れたのだ。

 部屋に入ったキャロラインは戻った旨を報告し、机の移動を再開する。
 部屋が広いと机の移動が大変だ。しかしキャロラインには秘密兵器があった。
 2台の台車だ。

 机の重い側の足の下にそれぞれ台車を入れ、軽い方を手で持ち上げる。
 この時代の台車はタイヤの向きが変えられないため、重い方に台車を乗せ、軽い方を持ち上げて押す事で何とか移動させ、向きも変えることが出来る。
 さっきまでとは違い、簡単に廊下に机を運び出す事が出来た。

 修斗を訪れた貴族や役人をしり目に、机を廊下に置いて引き出しや書類を元に戻すキャロライン。
 なんとか仕事が出来る状態に戻したころには、すでに就業時間は終わっていた。

 あれだけ並んでいた人は誰もおらず、廊下の窓から見える景色は、すでにたいまつやランタンの灯りで照らされていた。
 しかし修斗とパメラは部屋から出て来ない。
 残業でもしているのかと、扉をノックをする。

「入れ」

 扉をあけたと同時に聞こえてきたのは嬌声。
 服がはだけ、机に両手をつくパメラの後ろから、修斗が激しく腰を打ち付け胸を鷲掴わしづかみにしている。

「ん? なんだお前か。何か用か?」

 キャロラインを見た時だけ腰を止めたが、直ぐに再開する。
 一瞬理解できず、何かの見間違いか勘違いだろうと思いたかったが、パメラの声がそれを否定する。

「な! 何をなさっているのですか!?」

 顔を真っ赤にして止めに入るも、途中まで足を進めて動けなくなる。
 キャロラインは知識こそあれ経験した事は無い。
 それが目の前で、しかも執務室で行われている事に戸惑い、そして目が離せないでいる。

「なにを? ああ、今日はパメラが良く働いたからな、ご褒美だ」

「シュウトぉ、明日も頑張るから、明日もご褒美をおくれよぉ~」

「ああいいぞ。成果を出せば、どれだけでも褒美をやる」

 更に行為が激しくなり、修斗もパメラも声が大きくなっていく。
 顔を手で覆い隠しているが、声が、音が、匂いが、キャロラインを刺激する。
 いても立っても居られず、小走りで部屋を出て扉を乱暴に閉める。

 それから数日間、キャロラインは廊下で仕事をし、修斗達が作成した書類の確認を行っていた。しかし修斗もパメラも書類に間違いはなく、主な仕事は2人への取次とりつぎ……受付業務だった。
 そして業務終了後には必ず2人は行為を行い、場合によってはバーバラ聖女も加わる事もあった。

 悶々とした日々を過ごすし、遂には自分は必要あるんだろうか、という疑問がわいてくる。
 そんな疑問が浮かんでくるのは当たり前で、自分から仕事を探すも、必要な事は全て修斗やパメラが終わらせており、本当に雑用しか残っていなかった。

 そんな時だ、珍しく就業時間中にパメラが執務室から出てきた。

「あ、あのさ、キャロライン? 話が「おい!」ご、ごめんよ。受付嬢さん? コレをやれって、シュウトが」

 途中で修斗に叱られ、キャロライン姫を受付嬢と呼び直し、一枚の書類を渡す。

「これは……?」

「街の隅っこにある区画の上下水工事。範囲が狭いから受付嬢さんがやれってさ」

 目を輝かせるキャロライン。
 仕事を振られた喜びもそうだが、どの時代であっても上下水道の工事は重要な物であり、本来なら上級貴族の息のかかった業者が請け負う物だ。
 その様な重要な仕事が自分に任された……今まで我慢していた甲斐があったという物だろう。

「分かりました! この工事、私がしかと承りました!」

「頼むよ。ああそれと、普段の仕事もしっかりとやるんだよ?」

「もちろんです! この重要なお仕事、しっかりと成果を出して見せます!」

 なぜ重要な仕事をキャロラインに任せたのか。それは修斗にしか分からないが、飴と鞭の使い分けだろうか。
 しかし折れかけていたキャロラインの心を繋ぎとめるには十分であり、本人は意識しないまでも、ご褒美も期待していた。

 キャロラインは過去の工事事例を徹底的に調べ、工事区間の調査も行った。
 普段は物静かな姫が、周りの貴族も役人も巻き込み、誰もが舌を巻く頑張りをしていた。
 その結果は十分な物であり、ひと月という短期間で完成させ、さらに低予算で完成させたため、余った予算はその区画の他の整備に当てられた。
 住民からは感謝され、貴族や業者にも金が回ったため、今までの大人しい姫という評価から、素晴らしい手腕の政治家へと変貌を遂げたのだ。

 その評価を胸に、修斗へ工事完了の報告を行った。

「そうか。ご苦労だったな」

 それだけだった。
 褒められると思っていたキャロラインは肩透かしを食らい……いや、怒りに近い感情が沸き起るも、その感情は直ぐに虚しさに変わった。
 気付いてしまったのだ、ご褒美を期待していたことに。

 それからは机を執務室の中に置くことを許可された。
 しかしソレは更にキャロラインを苦しめる事になる。
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