ステータスを好きにイジって遊んでたら、嫁たちが国造りを始めました

内海

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第30話 騎馬隊vs歩兵

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「団長、僕に作戦があるのですが」

「なんだシュウト、新入りごときが出る幕じゃない! お前も前線で石を投げてこい!」

 団長に作戦を提案しようとした修斗だが、話しすら聞いてもらえなかった。
 この団長は局地戦では指揮能力は高い様だが、全体の局面を見れていないのだ。
 いまここの戦いが長引けば、まだ兵力が集まり切っていない自軍は数で劣るため、包囲されてしまう可能性が高いのだ。

 なので長槍部隊は早急に倒してしまわないと、傭兵の初陣が敗戦になってしまう。
 何よりもそれが一番いやだったのだ。
 傭兵団に居る間は自分の力を隠し、他の連中の戦いを眺めて楽しむつもりだったが、ここにきて負けるのが悔しくなってきたのだ。

 団長が話を聞かない以上は団員を使う事は出来ない。
 かといって負けたくないからと修斗が全力を出しては意味がない。
 なので傭兵団にあって団長に近い指揮権を持つ人物に話を持って行った。

「俺にそんな話をしたという事は、シュウトは俺を頼りにしているのか?」

「もちろんです。グンデュラさんはワルキューレ隊のリーダーですし、実力も申し分ありませんから」

「俺はシュウトに手玉に取られるような女だよ?」

「今晩も手玉に取って差し上げますよ」

「ははっ、嬉しい事を言ってくれるね。よしお前ら! 今晩はシュウトが俺達をいつもより楽しませてくれるってさ! シュウトの作戦に乗るよ!!!」

「おー!」

 ワルキューレ隊全員が拳をあげて行動を開始する。




「ふむ、傭兵風情がよくねばるな」

「隊長、長槍部隊の損害は軽微、敵傭兵はゆっくりとですが数を減らしています」

「ふむふむ、その調子でやってくれ。私達の役目は時間稼ぎ。敵を倒す必要は無いのだからな」

 甲冑を着こんだ男が馬上の男に報告を済ませる。
 この騎馬隊が居るからこそ、傭兵団は長槍部隊の背後に回る事が出来ないのだ。
 騎馬隊の目の届く範囲で、長槍隊に手こずる傭兵団を眺めて少しだけ残念がった。

「ふむむ……それにしてもあの傭兵団に居るというワルキューレ隊、一目見て見たかったものだな」

「隊長、所詮は傭兵団の女ですよ? アマゾネスみたいに筋肉質で可愛げなんてあるわけないですよ」

「ふむぅ、やはりそうかな」

 隊長が納得しかけたころ、騎馬隊の背後が騒がしくなる。
 騎馬隊は約100騎と少数だが、精鋭が揃えられており、頃合いを見て中央に合流する予定だったのだ。
 その精鋭部隊が浮足立っている。

「ふむ? 何かあったのか?」

「報告します! 背後から何者かが襲いかかってきました!!!」

「ふみゅぅ!? バカな! 背後に回り込まれたというのか!!! 一体どうやって!?」

 騎馬隊の背後に現れた人数は約20名。
 先頭を切って大きな剣を振り回しているのは……グンデュラだった。

「おらおら男のくせに情けないねぇ! 女に力比べで負けてるんじゃないぞ!!」

 大剣を振り回すだけで数人が吹き飛ばされる。
 騎馬隊が最も力を発揮できるのは走っている時だ。
 止まっている時に接近されては、敵の姿を探すだけでも時間がかかってしまう。

 だから接近された時は馬から降りて歩兵として戦うのだが……グンデュラの大剣を止められずに翻弄されるばかりだ。
 それだけでも騎馬隊には相性が悪いのに、ワルキューレ隊の女たちは小柄な者も多く、上手く馬に隠れながら襲い掛かってくるためたちが悪い。

「ふむー! 何をやっている! そんな連中はさっさと倒してしまわないか!」

「お前がこの部隊の隊長か?」

「ふむ? いかにも、私が隊長だが……どこにいる、姿を見せぬか!」

 背の低い修斗は馬の真横に居るのだが、隊長からは見えない様だ。
 そして何も言わず馬の腹を下から持ち上げるように触ると、手のひらから一閃の光が天に向かって伸びた。
 光が消えた頃、隊長は何も言わずに馬と共に地面に倒れるのだった。

「隊長は倒したぞ! 後は残党狩りをするだけだ!!!」

 修斗が大声で叫ぶと、ワルキューレ隊は沸き上がり、騎馬隊は逃走を始める。
 すでに戦いらしい戦いは起こらず、ただただ虐殺されるだけだ。

 そして騎馬隊が殲滅したころ、残っていた馬の尻を叩き、長槍隊へ向けて走らせる。
 長槍隊も搭乗者のいない馬に戸惑っているが、何とか馬を通すまいと槍を向けるのだが……体重差という物は簡単に覆す事は出来ない。
 加速の付いた馬を、人が持つ槍で止める事は出来ず、槍は折れ、混乱が発生する。
 混乱は連携を奪い、長槍部隊の中にまで馬が入り込んでしまうと、もう長槍の意味は無くなっていた。

 長槍部隊も……殲滅が完了した。

 大手を振って本体に合流すると、部隊長はふんぞり返っていた。
 
「はっはっは! 私の指揮の賜物だな! お前たちは今後も私の命令をしっかりと聞くように!」

 誰もがあきれ果てて、適当に返事をして次の戦いに備えを始めていた。

 しかしこの部隊長、自分の割り当ての戦いが終わったのに、次の戦いの指示を出さない。
 待機ならば待機、移動なら移動などの指示もなく、ただ中央の戦いを眺めている。

「なぁシュウト、あの穴は一体何だったんだ?」

「あれは空間魔法ですよ。出したい場所に抜け穴を作れるんです」

「あんなに沢山?」

「何個でも」

 ワルキューレ隊が一時戦列から離れ、長槍部隊と騎馬隊の距離と同じ距離が離れた場所で、修斗は抜け穴を複数個あけた。
 穴は騎馬隊の背後に現れ、そこから静かに、しかし一気にワルキューレ隊は襲い掛かったのだ。

 どれだけ背後を気にしていようとも、空間を繋がれては防ぎようがない。
 しかし成果はワルキューレ隊の物であり、修斗は手引きをしただけ、という扱いだ。
 もう少しこの傭兵団で遊んでいたい修斗にはそれで丁度良かった。
 目立ち過ぎると好き勝手に動けなくなるからだ。

「シュウト……お前は何者なんだい? 俺は傭兵だが、魔法の種類くらいは知っている。あんな魔法は聞いた事がない」

「たまたま使えるようになったんですよ。空間魔法は研究が遅れていますからね」

 あまり深く聞くなとばかりに、修斗は背を向けてどこかへ歩いて行く。
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