ステータスを好きにイジって遊んでたら、嫁たちが国造りを始めました

内海

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第3章 異世界召喚

第85話 騎士団、進軍

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 訓練中の騎士団長は相手をしていた騎士数名を叩き伏せ、それでもまだまだ余裕を感じさせる。
 
「団長、勇者様一行をご案内しました」

「ん? お前達が勇者か?」

 さげすむような、哀れみのような目で勇者たち6人を見ている。
 全身を覆う鎧は金色の縁取りがされた豪華なもので、大きな盾、大きな剣を持つ偉丈夫だ。
 白髪のロングストレートをオールバックにし、口ひげを携えた姿は堂々としている。

「そうだ。騎士達は随分と弱いが、こんなんで大魔王軍の砦を攻めれるのか?」

「……心配はない、こいつらは新人だからな。砦攻略には熟練した騎士を連れて行く」

「そう願いたいもんだ。足手まといは御免だからな」

 騎士団長の目が細くなる。
 無理もないだろう。勇者と言えば生贄として差し出される存在だったのだ。
 しかも能力が低く、護衛がいなければ森に入る事も出来ない。
 そんな勇者から足手まといと言われたのだ。

「安心しろ、勇者の迷惑にはならん。俺達だけいれば十分だからな」

 どうやらかなりイラ付いているようだ。
 むしろイラ付かせるために、修斗はあんな言い方をしたのだろう。

「そうか、なら俺達は見学していよう。騎士様たちの雄姿を見させてもらうぞ」

「随分と強気じゃないか。マーマンを倒したくらいで、いい気になられても困るんだがな」

「マーマン? マーマンってなんだ?」

「ほらシュウト君、ダムが作られてた所で魚釣りをしたじゃない」

「ああ、あの魚か。美味かったな」

 随分と話が変わっているが、もちろん事前に、にすると打ち合わせをしての事だ。
 しかしなぜ騎士団に喧嘩を売る様な真似をするのだろうか。

 騎士団長の眉がピクピクと震えている。
 
「明日の早朝に出立する! 遅れた者は置いて行くから、寝坊しましたでは済まされんぞ!」

 騎士団員に怒鳴りつけるように言い捨てて、騎士団長は建物に入って行った。
 騎士団員も建物に戻っていくのだが、全員が勇者を睨んでいく。
 それはそうだろう、喧嘩を売られたのだ、しかも、だ。




 明朝、太陽が山間やまあいから姿を見せた時、すでに騎士団は出発準備が出来ていた。
 修斗達勇者組みは……姿が見えない。

「ふん! 所詮は勇者だな、決められた時間にも集まれんとは、情けない」

 騎士団長はスッと剣を抜いて天に掲げる。

「全員! 乗馬!」

 一斉に騎士団は馬にまたがり、騎士団長も馬に乗る。
 100名程の騎士が、一糸乱れぬ動きで乗馬をするさまは壮観だ。
 それだけで訓練の度合いが分かるというものだ。

「まだ早朝だ、住民に迷惑をかけないよう常歩じょうほ(馬で歩く)でいくぞ!」

 騎士としての教示だろうか、保護対象である住民に対してはしっかりと気配りが出来るようだ。
 100もの騎馬が歩いているのだが、町中はとても静かだ。
 ひづめの音も小さく、寝ている者が起きる事は無いだろう。

 ちなみに通常の騎士団の鎧は、金の縁取りがされていない。
 騎士団長のみのようだ。

 町中を抜け、門番に敬礼をして町の外へ出る。
 するとそこには4台の馬車が止まっていた。

「ご主人様……やっと騎士団が来ました」

「ん? やっと来たか。おーい、遅いぞお前ら。置いて行くところだったぞ」

 馬車の外で待っていたヴァージニアの報告を受け、修斗は馬車の窓から顔を出した。
 どうやら修斗達、夜明け前には既に準備が終わり、門の外で待っていたようだ。

「貴様等……なぜこんな場所にいる」

「早朝の街中を馬車で移動したらうるさいだろう?」

「そもそも馬車で! ……いやいい、出発するぞ、付いてこい」

 騎士団長は途中で言葉を止め、諦めたように馬を進める。
 馬車では馬には付いて行けない。
 しかし小型の馬車を使い、更に3頭引きさせる事で遅れはほぼ無かった。

 町を出発して3日が経ち、そろそろ森が深くなってきた。
 これ以上は馬で進むのは難しいだろう。

「馬での移動はここまでだ! 各自馬を降り、徒歩で移動する!」

 騎士達は馬を降り、馬は訓練された通り自分たちで町へと戻っていく。

「それではシュウト様、我々は森を出たところで待っております」

「ああ。危なくなったら直ぐに逃げるんだぞ」

「かしこまりました。お気をつけて行ってらっしゃいませ」

「ウェズっち、わたしが浮気する前に帰っといでよ」

「ウィークエンドさん、怪我をしないでくださいね」

「ラングんぐ……ちゅば、ん、ぷはぁ、もう、いつもいきなりキスするんだから」

 各馬車の御者とメイドが修斗に挨拶し、男勇者たちも別れを済ませると、馬車は森を出て行った。
 先に進んでいる騎士団を追いかけ、騎士団に付いて行く。



 森はかなり深く、以前マーマンと戦った場所よりも生い茂っている。
 しかし騎士団の隊列は規則正しく、森を進んでいるのに乱れる事がほぼ無い。
 そこまで規則正しく進む必要があるのだろうか。
 あるいは騎士団長の教育方針だろうか。

 そろそろ日が暮れ、森の中を進むのが難しくなってきた。

「よし、今日はここでキャンプをする。各自準備を始めろ!」

 少し開けた場所を見つけると、騎士団長の合図で騎士達がテントを張り始める。
 テントが見る見るできていき、土と石を使ったかまども作っている。
 それを横目に、修斗達もテントを張るのだが……以前適当に作った無限収納袋の中には、すでに完成されたテントが複数個入っており、それを取り出して固定するだけだった。

「シュウト様……今晩は何が食べたいですか?」

「そうだな、お前とアイカは食後に楽しむとして、今日は唐揚げが食いたいな」

「分かりました……準備します」

 無限収納袋から調理機材一式と、食材を取り出すヴァージニア。
 おおよそ戦地に向かうとは思えない機材が並び、騎士達は目を丸くして見ている。
 騎士達の夕食は、チーズと塩漬けの肉、焼いて硬くなったパンを肉の煮汁にひたした物だ。

 修斗達はイスに座り、テーブルには町の飲食店で食べるような食事が並んでいる。
 騎士団からはジッと見つめられているが、気にせず食事をする勇者たち。

 しかし食事が終わったら終わったで、騎士達は更に困惑する事になる。

「ああ! シュウト君、シュウト君! だめ、イっちゃう、イっちゃう~~!!!」

「ご主人様……あ! あ! あぁ!」

 テントの中は見えないが、シルエットと声だけでナニをしているのかが想像できる。
 男勇者3人は慣れているのか、各自のテントで爆睡している。
 だが騎士達は……本当の敵は誰なのだろうか。
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