ステータスを好きにイジって遊んでたら、嫁たちが国造りを始めました

内海

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第3章 異世界召喚

第99話 世界をかけての交渉

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「そうだな、国王をやっている」

 その言葉で一同は目が点になり、少しの間をおいて大声が上がる。

「「「ええーーーーー!!!」」」

「しゅ、シュウト君って国王様だったの!?」

「流石はご主人様……想像以上の大物でした」

 アイカとヴァージニアは喜んでいるが、他の者は戸惑いの方が大きいようだ。
 
「お、おめぇ~が国王様だぁ~? 国民全員奴隷かぁ? あ~ん?」

「逆に興味があるな。どんな国なのか」

「ま、まさか国王だったとは……は! では聖騎士パラディンとして私はどちらに仕えればいいのだ!?」

 そんな感じで楽しんでいるが、そこで困ったのがカイリ王女だ。
 他の世界とはいえ、国王であることが分かった以上、不用意な発言は身を滅ぼしてしまうのだから。
 場合によっては先程のように兵を召喚し、攻めてくる可能性すらある。

 しかも魔王という不穏な名前も出ていた。

「それではシュウト陛下とお呼びした方がよろしいでしょうか?」

「呼び方は気にしていない。前と同じでいい」

「そうですか? それではシュウト様、大魔王軍を滅ぼし人間らしき者ヒューマノイドを滅ぼし、自分の世界へ帰るとおっしゃいましたが、あなたの望みは破壊でしょうか?」

「それはさっきも言ったな。俺の物ならば守る、敵対したら破壊する。この世界は俺を、俺達勇者を大魔王軍に差し出す生贄として召喚したんだろう? ならば敵だ」

「お、お待ちください! 生贄として召喚する事は、各国が賛成している訳ではありません! むしろ反対意見の方が多いのです! 異世界の方に世界の命運を委ね、あまつさえ生贄とするなど、許される事では無いのですから! あなた方の味方の方が遥に多いはずです!」

 カイリ王女は必死に弁解している。
 勇者が生贄だと言う事は公然の秘密とはいえ、勇者本人に伝える事ではない。
 それをすでに知っていると言う事は、修斗の先ほどの言葉通りならばこの世界の全てを敵視している……と言う事になってしまう。

 修斗達の本当の能力は分かっていない。
 999を超える能力を確認できるのは、999を超える能力を持った者にしか出来ないからだ。
 今は自己申告や、表示される前3桁のみでの判断になる。
 特に修斗の能力に関しては、勇者5人が従順にしている事からも、その上をいくと想像される。

 5人の勇者の能力は2000~3000超えは確定している。
 その上をいくとなると、修斗の表示されるステータス110は、1100と言う事は無い。
 11000が最低ラインとなる。

 人間らしき者ヒューマノイドではどうあがいても勝ち目がない。
 いまカイリ王女が選択を誤れば、世界は修斗によって滅ぼされるのだ。

「だがお前は俺達を利用しようとしていたな。随分と回りくどい言い方をして、俺達からどんな言葉を引き出したかったんだ? 『俺達が協力して差し上げますよ』か?」

 カイリ王女は性格が悪いわけではない。
 王族として外交もしていたカイリ王女は、他国と交渉する場合、相手から譲歩を引き出す事をよく行っていた。
 これは自国の弱点を見せない為の、体に染みついた行動だったのだ。

 それがこの場では仇となってしまった。

「そ、その様な事は……不快に思われたのなら、謝罪をさせて頂きます。申し訳ありませんでした」

 立ち上がり、修斗に向けて深く頭を下げる。
 その表情は見えないが、体は小刻みに震えているのが分かる。

「ね、ねぇシュウト君、私、世界を滅ぼすなんて怖い事……ヤダよ」

 張りつめた空気に耐えられなくなったのか、アイカが修斗にしがみ付く。
 どうやらヴァージニアも同じで、滅ぼさないでと言わんばかりに見つめている。

「しかしな、お前達はついこの間まで、生贄として大魔王軍に差し出される運命だったんだぞ? いったい何をされるか分からないのに、許せるのか?」

「それは……嫌だけど」

「でもご主人様が……助けて下さいました。ご主人様は……最初から生贄になんてなりません。ご主人様は……王としての貫禄を……見せつける事が出来ます」

 今まで虐げられてきた者としての同情なのか、それとも修斗に虐殺者になってほしくないからなのか、それは分からない。
 しかし珍しくヴァージニアは必死に修斗に訴えかけている。

 男勇者3人も滅ぼす事には反対らしく、真剣な目で修斗を見ている。

「はぁ~……なんだよ、これじゃ俺が悪者じゃないか。生贄として呼ばれたのは俺達なんだぞ?」

「おめぇ~わよぅ、はなっから生贄になるタマじゃねぇ~からなぁ。世界を救った英雄としてぇ、元の世界に戻ってもいいんじゃ~ねぁ~かぁ? あ~ん?」

「そ、そうだよシュウト君! 私もシュウト君の世界に一緒に行って、証人になるから!」

「むぅご主人様……私も付いて行きます」

「分かった、分かったから落ち着けお前ら」

 今まで頭を下げていたカイリ王女が、腰は曲げたまま顔だけを起こす。
 その顔には怯えこそないが、まだ不安そうだ。

「許して……いただけるのですか?」

「ああ、世界を滅ぼすのはやめだ」

「ありがとう、ありがとうございます!」

「ただし条件がある」

 ソファーに座ろうとしたが、慌てて姿勢を正す。

「勇者召喚に賛成していた国王を1か所に集めろ。全員で俺達に頭を下げたら許してやる」

「そ、それは……」

「なんだ? 謝罪すら出来ない奴を助けると思っているのか?」

「時間を……時間を頂けませんか? 各国に書状を送るだけでも時間はかかりますし、各国の王を集めるとなると、それなりの場所を用意しなくてはいけません。警備や護衛の問題も……」

「ほぉ? 俺に滅ぼされるよりも、国王を護る事が優先か?」

「そ、そうではなく! しゃ、謝罪後の国を背負うのは、やはり国王です。国王が居なくなっては、国が混乱してしまいますから」

「まあいい。それで、どれだけの時間が必要だ?」

「最も遠い国へは早馬でも10日以上はかかります。更に国王が移動するのにも時間を要しますから……30日はいただきたいと……」

「分かった。それでは俺は30日で大魔王軍を滅ぼしてくる。30日後、俺はここに戻ってこよう」

「あ、ありがとう……ございます。それまでには、準備を……整えておきます」

 修斗は席を立ち部屋を出ると、カイリ王女はその場に崩れ落ちた。
 極度の疲労と緊張、死の恐怖から解放された安心からだ。
 しかしカイリ王女は理解していなかった。
 修斗の力と、人間らしき者ヒューマノイドの事を。
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