ステータスを好きにイジって遊んでたら、嫁たちが国造りを始めました

内海

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第4章 学園支配

第129話 死を運ぶ天使

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 生徒会長フランチェスカが血を吐いて倒れるのを見て、修斗はすぐさま空間を繋げてフランチェスカの元へと移動する。
 倒れたフランチェスカを抱き起すと、すでに息は止まっていた。

「おいシュウト! 一体何があった! 生徒会長は、フランチェスカは無事なのか!?」

 生徒会の大男ローガスが駆け寄り、他にも沢山の者が集まってくるが、その目に映るのは、すでにこと切れた生徒会長だった。

(体内の魔力反応無し、神界天技しんかいてんぎの反応は……わずかに残っているな。やはり神に属するクラスの者が手を出したのか)

 フランチェスカのステータスを確認すると『内部破損』と書いてある。
 内部破損、詳しく調べると消化器・呼吸器・循環器・生殖器など、胴体に収まっている物がミンチのようになっていた。
 この時代では解剖学という物が無く、口から血を吐いたら毒や病気が疑われてお終いだ。

 つまり競技を終えたばかりのフランチェスカは、病死という事になってしまう。

「おいシュウト! そこをどけ、急いで医務室に……!!!」

 大男ローガスは修斗の肩に手をかけたが、その怒りに満ちた表情を見て動けなくなる。
 



 フランチェスカは競技を終え、ステージに一礼して後にする。
 それと同時に、またしても高周波音が鳴り響く。
 しかし随分と遠く、その音に気が付く者は極わずかだった。

(見つけたぞ)

 


「ぐああああ! なんだいまの音は! おい! 召喚したんだからしっかり仕事をしろよ!」

 競技場から随分と離れた森の中で、1人の男が耳を押さえて苦しんでいる。
 そのかたわらには天使の彫像が置いてある。
 真っ白い彫像だが、どうやら生きているようで、翼が静かに動いているようだ。

「それで、今度はどうなんだ! 成功したんだろうな!!!」

【失敗した】

「なんだと!? おまえ、どれだけ苦労して呼び出したか分かってるのか!!!」

【来るぞ】

「は?」

 何も無い空間に穴が開き、競技場から修斗が移動をしてきた。
 修斗は男を見て、そして天使の彫像を眺めると、空間に開いた穴は閉じていく。

「お前か? 俺とお気に入りを狙ったのは」

「なんだ、お前……は! まさかシュウトか! ザナドゥ王国の国王で、お忍びでアカデミーに入っているシュウトだな!」

 そう言って男は天使の彫像の後ろに隠れる。

「へへっ! 向こうから来てくれるなんてついてる。おい! 今度は失敗するなよ!」

【……やってみよう】

 天使の彫像は翼を広げると、少しだけ地面から浮き上がる。
 そして体に巻き付けてあった布を脱ぐと、その体には無数の目と口が付いていた。
 その全ての目が修斗を見、全ての口が揃って開く。

【お前の罪を裁く。お前は今までに犯した罪により……死刑だ】

「おいおい、せめて名を名乗れよ。俺の事は知っているんだろう? 不公平じゃないか」

【……私はアズライール。人を裁く天使だ】

「アズライールか、聞いた事がある。確か……下っ端の天使だ」

【人の身で天使を愚弄するか。誰の祝福を受けたのか知らないが、私が直接手を……なに?】

 アズライールは両手を前に出し、修斗に何かをしようとしたのだが……腕が無い。
 それもそのはず、アズライールの両腕はすでに千切られていたのだ。
 彫刻のように見えるが、どうやら肉体に近い状態の様で、千切られた腕からは青い液体がしたたり落ちている。

「直接手を、なんだ?」

 アズライールの腕が生えて来る。
 ズルリと腕が再生し、その指で修斗を差して顔の口が開く。

【死になさい】

 また高周波音が鳴り響く。
 近くにいた男は耳を押さえ地面をのたうち回っているが、修斗とアズライールは顔色を変えないで立っている。

【なぜ……なぜ使えるのだ】

「なぜ? 決まっているだろうそんな事」

 一呼吸開けて、修斗は天使を睨みつける。

「俺の方が上位の存在だからさ」

 アズライールの顔が吹き飛ぶ。
 体がよろけ後ろに倒れそうになるが、見えない手で支えられるように止まり、何も無かったかのように体を起こし、顔が生えて来る。

【人の身で、私より上位とは……片腹痛い。ん? どこへ行った】

 目の前には修斗の姿はなく、後ろから強い力で押さえつけられる。
 修斗は天使の背後に周り、片方の翼を掴み、引き抜こうとしているのだ。

「天使ってのは痛みはあるのか?」

 ブチブチと音がして、翼は肉と共に骨も引きはがし、背中の肉と一緒に引き抜かれた。
 しかしすぐさま再生を開始し、翼も肉も元通りになってしまう。

【痛みとは、下界の存在の感覚だ。私達にはない物だ】

 何事もなかったかのように振り向き、修斗の首に手をかける。
 しかし首を絞めるつもりはない様で、逃がさないために掴んでいるようだ。

【直接触れていれば大丈夫だろう。し――】

「死ね」

 天使の言葉にかぶせるように、修斗が死ねと命令をする。
 するとどうだろう、アズライールの顔は恐怖におののき、修斗を掴んでいた手を離して後ずさりする。

【あ、あり得ない! 私は天使、天界にその身を置く存在だぞ! それが人間に……下等な生き物に!!!】

 空を飛び逃げ出すが、直ぐにその体が崩れ始める。
 足が崩れ落ち、腰、腹、腕が落ちていく。

【や、やめろ……やめてくれ!】

 その叫びもむなしく、全身が崩れ落ち、地面に落ちた破片は消滅していった。

「なんだ、跡形も残らないのか。どういう構造なのか調べようと思ったのに。まあいい、おいお前……意識を失っていたか」

 男の頭を掴み、力を入れると指が頭の中に入っていく。
 男の体は痙攣し、口をパクパク動かし目があらぬ方向を向いている。

 この日の夜。
 とある国の国王の寝室に、男の死体が飾られていた。
 顔以外の肉を削ぎ落され、骨がむき出しの状態で両手を広げ、羽ばたくようなポーズをしている。
 削ぎ落された血肉は、丁寧にベッドの上に置かれていた。

 だが残念な事に、騒動はこれで収まるわけでは無かった。
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