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第4章 学園支配
第149話 機転を効かせても通用しない相手
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「それでは両校とも指定の位置に就いてください。試合開始は通常通り花火を上げますので、それまでは指定範囲内から出ないように」
審判団に言われて山に入り、フラッグを固定範囲内で固定する。
約10分後には音だけの打ち上げ花火で試合開始だ。
「それでは予定通り基本形で動くが、今回は防衛4、前衛4、後衛2で行く。問題は無いな?」
全員が首を縦に振る。
相手が何をして来るか分からないが、だからと言って自分たちも不正をする気はないし、1人に頼り切った試合もしたくない。
特に3年生は、たとえ負けても全力を出し切りたいのだろう。
「すまないシュウト。我がままばかり言ってしまって……」
「構わんさ。だが俺は負けるつもりはないからな、最後の最後まで気を抜くなよ」
大男ローガスが軽く頭を下げる。
我儘というのは今回の事だけではない様だが。
「さあみんな! 色々あった7抗戦もこれで最後よ! 練習通りに全力で行きましょう!」
「「おー!!!」」
花火の音が鳴り響く。
一斉に敵陣地へ向かって走り出す。
10人の選手に迷いの表情は無く、この1戦を全力でやり遂げるという決意が見て取れる。
走り出して数分後、木々の合間から相手が見え始める。
その数……なんと10人。
防御を捨てて総攻撃を仕掛けてきたのだ。
6対10という数的不利を強制されたが、数では劣っていても能力では負けていない。
後衛が素早く防御魔法を展開して相手の攻撃に備えると、前衛も魔法攻撃を開始する。
相手も防御魔法を展開……する事は無く、全身に魔力をまとわせて肉弾戦を挑んできた。
魔法攻撃自体は発動して相手に命中したが、全くひるむ様子はなく、唸り声をあげて殴り掛かってくる。
その攻撃力は恐ろしく、展開された魔法防御の壁にひびを入れたのだ。
「な!? ど、どういう事!!! そんな簡単に破れる術は使っていないわよ!?」
「落ち着けフランチェスカ。相手は何かを使って能力を向上させているのだ、これくらいは予想の範囲内だ」
「そうだったわね。ごめんなさいローガス、取り乱してしまったわ」
修斗と同じく後衛にいるフランチェスカだが、自分の魔法防御が破られそうになって焦ったようだ。
ポリンは前衛にいて、相手を雷や氷柱で的確に撃ち抜こうとしているが、恐ろしい程の反射神経と身体能力で避けている。
なかなか当たらないうえ、当たっても怯まない。
前試合までの相手ならば能力的には互角以上だったが、流石に全勝している相手は優秀らしく、かなり押されている。
「相手に付き合う必要は無い。防御魔法を強化するから、こちらは魔法で射撃をし続けろ」
接近してくる相手には身体強化魔法を使い、格闘戦に魔法攻撃を混ぜるのが定番だ。
しかしどうやら相手の方が身体能力は上の様で、数も少ない修斗側は不利だろう。
「フランチェスカさん! 相手を拘束できませんか!?」
「! わかった、今やるわ!」
修斗が防御魔法を受け持つ間、フランチェスカは相手の動きを止めるべく、拘束魔法を使用する。
最初は木を利用して根や枝を使ったのだが、何と相手は力で引きちぎり、直ぐに動き出してしまう。
なので直接魔力で拘束する方法に移行し、足や腕を動かなくする。
しかしそんな事は相手も分かっているのだ、あまり時間をかける事なく解除してしまった。
「ど、どうしろって……! みんな! 一瞬のスキをついて!」
フランチェスカが叫ぶと、相手選手は次々に転び始める。
よく見ると足元に木の根が出っ張っており、それに足が引っ掛かったのだろう。
直接の拘束は無理でも、相手にスキを与える事が出来れば魔法が当たる。
次々に魔法攻撃が命中し、流石の相手も動きが鈍くなる。
そう、鈍くなるだけなのだ。
本来ならば意識を失う攻撃でも、今の相手には大したダメージにはならない。
まだダメージの軽い相手が高く飛び、上空から襲い掛かる。
今使っている防御魔法は防御壁タイプで、目に見えない魔法の壁を帯状にしてグルリと囲っている状態だ。
なので上からの攻撃は防げない。
そこで機転を利かしたのがフランチェスカだ。
さっきは拘束できなかった木の根だが、縛るのではなく根を鞭のように使い弾き飛ばしたのだ。
それを見ていた数名がマネをする。
射撃魔法から踊る鞭へと変更、魔力の鞭で打撃攻撃を開始した。
これは中々に効果的だった。
1撃目をかわしたかと思えば死角から回り込んで命中し、しかも1人で2本も3本も操れるため、確実に相手にダメージを与えている。
「ははっ! これはいい、おイタをする子にはお仕置きが必要だからな!」
踊る鞭を使える者は順次切り替え、使えない者はそのまま射撃を行う。
この連携は中々有効で、鞭に気を取られていたら射撃が、射撃をかわせば鞭が、という具合によく当たる様だ。
だが……有効打をいくら決めても、相手の攻撃が止む事は無い。
一体いつまでこれが続くのか、相手を倒せるまで魔力が持つのか? そんな不安がよぎった頃に、会場に大声が響き渡る。
「シュウト様ーーー!!! 準備が出来ましたーーー!!! どちらにおいでですかーーー!!!」
元聖女バーバラの大声が会場に響き渡り、自分の場所を教えるために指笛を吹く。
すると何かが修斗の脳内に送られて、それを読み取った修斗はニヤリと笑うのだった。
審判団に言われて山に入り、フラッグを固定範囲内で固定する。
約10分後には音だけの打ち上げ花火で試合開始だ。
「それでは予定通り基本形で動くが、今回は防衛4、前衛4、後衛2で行く。問題は無いな?」
全員が首を縦に振る。
相手が何をして来るか分からないが、だからと言って自分たちも不正をする気はないし、1人に頼り切った試合もしたくない。
特に3年生は、たとえ負けても全力を出し切りたいのだろう。
「すまないシュウト。我がままばかり言ってしまって……」
「構わんさ。だが俺は負けるつもりはないからな、最後の最後まで気を抜くなよ」
大男ローガスが軽く頭を下げる。
我儘というのは今回の事だけではない様だが。
「さあみんな! 色々あった7抗戦もこれで最後よ! 練習通りに全力で行きましょう!」
「「おー!!!」」
花火の音が鳴り響く。
一斉に敵陣地へ向かって走り出す。
10人の選手に迷いの表情は無く、この1戦を全力でやり遂げるという決意が見て取れる。
走り出して数分後、木々の合間から相手が見え始める。
その数……なんと10人。
防御を捨てて総攻撃を仕掛けてきたのだ。
6対10という数的不利を強制されたが、数では劣っていても能力では負けていない。
後衛が素早く防御魔法を展開して相手の攻撃に備えると、前衛も魔法攻撃を開始する。
相手も防御魔法を展開……する事は無く、全身に魔力をまとわせて肉弾戦を挑んできた。
魔法攻撃自体は発動して相手に命中したが、全くひるむ様子はなく、唸り声をあげて殴り掛かってくる。
その攻撃力は恐ろしく、展開された魔法防御の壁にひびを入れたのだ。
「な!? ど、どういう事!!! そんな簡単に破れる術は使っていないわよ!?」
「落ち着けフランチェスカ。相手は何かを使って能力を向上させているのだ、これくらいは予想の範囲内だ」
「そうだったわね。ごめんなさいローガス、取り乱してしまったわ」
修斗と同じく後衛にいるフランチェスカだが、自分の魔法防御が破られそうになって焦ったようだ。
ポリンは前衛にいて、相手を雷や氷柱で的確に撃ち抜こうとしているが、恐ろしい程の反射神経と身体能力で避けている。
なかなか当たらないうえ、当たっても怯まない。
前試合までの相手ならば能力的には互角以上だったが、流石に全勝している相手は優秀らしく、かなり押されている。
「相手に付き合う必要は無い。防御魔法を強化するから、こちらは魔法で射撃をし続けろ」
接近してくる相手には身体強化魔法を使い、格闘戦に魔法攻撃を混ぜるのが定番だ。
しかしどうやら相手の方が身体能力は上の様で、数も少ない修斗側は不利だろう。
「フランチェスカさん! 相手を拘束できませんか!?」
「! わかった、今やるわ!」
修斗が防御魔法を受け持つ間、フランチェスカは相手の動きを止めるべく、拘束魔法を使用する。
最初は木を利用して根や枝を使ったのだが、何と相手は力で引きちぎり、直ぐに動き出してしまう。
なので直接魔力で拘束する方法に移行し、足や腕を動かなくする。
しかしそんな事は相手も分かっているのだ、あまり時間をかける事なく解除してしまった。
「ど、どうしろって……! みんな! 一瞬のスキをついて!」
フランチェスカが叫ぶと、相手選手は次々に転び始める。
よく見ると足元に木の根が出っ張っており、それに足が引っ掛かったのだろう。
直接の拘束は無理でも、相手にスキを与える事が出来れば魔法が当たる。
次々に魔法攻撃が命中し、流石の相手も動きが鈍くなる。
そう、鈍くなるだけなのだ。
本来ならば意識を失う攻撃でも、今の相手には大したダメージにはならない。
まだダメージの軽い相手が高く飛び、上空から襲い掛かる。
今使っている防御魔法は防御壁タイプで、目に見えない魔法の壁を帯状にしてグルリと囲っている状態だ。
なので上からの攻撃は防げない。
そこで機転を利かしたのがフランチェスカだ。
さっきは拘束できなかった木の根だが、縛るのではなく根を鞭のように使い弾き飛ばしたのだ。
それを見ていた数名がマネをする。
射撃魔法から踊る鞭へと変更、魔力の鞭で打撃攻撃を開始した。
これは中々に効果的だった。
1撃目をかわしたかと思えば死角から回り込んで命中し、しかも1人で2本も3本も操れるため、確実に相手にダメージを与えている。
「ははっ! これはいい、おイタをする子にはお仕置きが必要だからな!」
踊る鞭を使える者は順次切り替え、使えない者はそのまま射撃を行う。
この連携は中々有効で、鞭に気を取られていたら射撃が、射撃をかわせば鞭が、という具合によく当たる様だ。
だが……有効打をいくら決めても、相手の攻撃が止む事は無い。
一体いつまでこれが続くのか、相手を倒せるまで魔力が持つのか? そんな不安がよぎった頃に、会場に大声が響き渡る。
「シュウト様ーーー!!! 準備が出来ましたーーー!!! どちらにおいでですかーーー!!!」
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