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第4章 学園支配
第157話 伯爵夫人宅にて
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ベルベット元伯爵夫人……確か冒険者として依頼を受けていた時、盗賊団の砦を壊滅させ、奴隷となっていた女達を助けた時、その中にいた女だ。
「ベルベット……誰だ?」
もちろんそんな事は覚えていなかった。
なにぶん助けた時は酷い状態で、臭い上に40歳以上のオバサンだと思っていたのだ。
確か当時は20代だったはず。
数年間奴隷扱いをされていたので、すっかり老けてしまったのだろう。
「そ、そのベルベット元伯爵夫人なのですが、シュウト様にお願いがあると依頼を出されていたのです」
「なんで俺なんだ? 他にもAランク冒険者はいるだろう?」
「私は簡単な内容しか聞いておりませんが、この内容であれば確かにシュウト様が適任かと思います」
依頼書が渡され、その内容を確認する。
~依頼書~
内容:オークターガースからザナドゥへの護衛
ベルベット元伯爵夫人とお供が乗る馬車を護衛し
ザナドゥ王国まで連れて行って欲しい。
報酬:金貨20枚
期限:受注後1ヶ月以内
オークターガースは隣にある国で、修斗が冒険者登録をした国だ。
そして恐らくはベルベット元伯爵夫人が住む街でもある。
金貨20枚は約200万円程で、国を1つまたぐ護衛としてはかなり多いだろう。
それにしてもなぜザナドゥ王国へ向かうのか、そしてなぜ『元』伯爵夫人なのか。
「オークターガース首都からザナドゥまでは馬車でも2日程度だ、随分と太っ腹じゃないか?」
「それだけあなたを信用なさっての事なのでしょう。それにシュウト様への指名依頼なので、他の冒険者は知らない依頼です」
「そういえばAランクは指名がほとんどだったな。まぁ俺としては構わないが、お前達はどうだ? 護衛なんていう地味な仕事だが」
ソファーに並んで座っていた4人に訊ねてみる。
ちなみに4人は冒険者らしい革鎧やマントを装備しており、魔法の使用を妨害しないような出で立ちだ。
修斗は……普通の町にいるような私服だ。
「私は構わないわよ。護衛って冒険者らしいもの」
「私も大丈夫。初めての依頼だけど、シュウト君がいるから安心だし」
ローガスとルミナも首を縦に振っている。
2人は少し不安そうだったが、修斗がいれば大丈夫だろう、と考えている。
「では受けよう。ところで、どうして『元』伯爵夫人なんだ? 離婚でもしたのか?」
「それに関しては……私の口からは言えませんので、ご本人に聞いてみてください」
どうやら他人の口づてに聞く内容ではなさそうだ。
依頼自体は受理されたので、そのままオークターガースへと向かう事となった。
空間を移動し、オークターガースの首都へと到着した。
まずは冒険者ギルドへ向かい、ベルベット元伯爵夫人の居場所を確認すると、今はまだベルベット伯爵邸に住んでいるようで、いつでもいいから伯爵邸へと迎えに行って欲しい、との事だった。
場所を聞いて向かうと、首都の中心部から少しだけ離れた場所にベルベット伯爵邸はあった。
3階建てのレンガ造りで、横1列の建物の両端だけ半円形に出っ張っている。
鉄でできた柵の門を通り門番に用事を伝えると、門番の1人が慌ただしく走り出した。
少し待つように言われ、門の脇にある石のイスに座って待っていると、黒塗りで金色の縁取りがされた趣味の悪い豪華で大きな馬車と、貴族宅には不釣り合いな質素な4人乗り馬車の2台が現れた。
質素な方の馬車から1人の女性が降りてきて修斗に挨拶をする。
「シュウト様でいらっしゃいますね? この度は依頼を受けて頂き感謝いたします。門の中ではベルベット元伯爵夫人です。門をくぐれば……プリシラ・パーカーとなります」
少し金のある商人の娘の様な、ドレスではないが袖に大きなフリルがあり、側面と背中が青く正面だけが少し茶色っぽいワンピースだ。
胸元から腰に掛けて紐を交差させて、サイズ調整が出来るようだ。
薄く赤みのある髪は左右に分けられフワリと肩に乗っており、落ち着いた衣装と同様に化粧も薄く、どちらかというとおっとりした雰囲気がある。
「そうか。それでは早速ザナドゥ王国へ行――」
「そこの娘たち! どうだ? 冒険者などやめてワシの元に来んか? ん~?」
趣味の悪い馬車の方から、丸々と太り白髪混じりの茶色いロン毛、短いひげを生やした小男が降りてきた。
50近い男だろうか、顔にしわが多いが、どこか幼く感じる。
「おい聞こえているのか! そこの3人の娘たちに言っておるのだぞ!!!」
フランチェスカたち3人を指差しているが、逆に本人たちは戸惑っている。
まさか自分たちの事だとは思っていなかったし、初対面の人間に言われる言葉でもない。
しかし過敏に反応した者が居る。
修斗だ。
修斗の表情が見る見る変わり、怒りに満ち溢れてしまった。
慌ててポリンがおさえるのだが、フランチェスカが男の元に近づいて行く。
「失礼ながら、私達は冒険者として彼と行動を共にしております。あなたの元へ行く事は出来ない事をご理解ください」
丁寧に頭を下げるのだが、男は全く聞く耳を持っていない。
フランチェスカのあごを持ち上げ、品定めするように顔を近づける。
「んふ~んふ~、なに気にするな。ワシはベルベット伯爵だ、知っているだろう? オークターガースにその人ありと言われたベルベット伯爵だ。冒険者などやめて、ワシの元に来ればいい思いをさせてやれるぞ?」
流石のフランチェスカもいきなり顔を触られて驚く。
しかしどうやらそれだけではなく、男の口が臭かったようで、顔を離そうと必死だが両手で持たれて逃げられなくなってしまった。
そして……修斗がブチ切れた。
「ベルベット……誰だ?」
もちろんそんな事は覚えていなかった。
なにぶん助けた時は酷い状態で、臭い上に40歳以上のオバサンだと思っていたのだ。
確か当時は20代だったはず。
数年間奴隷扱いをされていたので、すっかり老けてしまったのだろう。
「そ、そのベルベット元伯爵夫人なのですが、シュウト様にお願いがあると依頼を出されていたのです」
「なんで俺なんだ? 他にもAランク冒険者はいるだろう?」
「私は簡単な内容しか聞いておりませんが、この内容であれば確かにシュウト様が適任かと思います」
依頼書が渡され、その内容を確認する。
~依頼書~
内容:オークターガースからザナドゥへの護衛
ベルベット元伯爵夫人とお供が乗る馬車を護衛し
ザナドゥ王国まで連れて行って欲しい。
報酬:金貨20枚
期限:受注後1ヶ月以内
オークターガースは隣にある国で、修斗が冒険者登録をした国だ。
そして恐らくはベルベット元伯爵夫人が住む街でもある。
金貨20枚は約200万円程で、国を1つまたぐ護衛としてはかなり多いだろう。
それにしてもなぜザナドゥ王国へ向かうのか、そしてなぜ『元』伯爵夫人なのか。
「オークターガース首都からザナドゥまでは馬車でも2日程度だ、随分と太っ腹じゃないか?」
「それだけあなたを信用なさっての事なのでしょう。それにシュウト様への指名依頼なので、他の冒険者は知らない依頼です」
「そういえばAランクは指名がほとんどだったな。まぁ俺としては構わないが、お前達はどうだ? 護衛なんていう地味な仕事だが」
ソファーに並んで座っていた4人に訊ねてみる。
ちなみに4人は冒険者らしい革鎧やマントを装備しており、魔法の使用を妨害しないような出で立ちだ。
修斗は……普通の町にいるような私服だ。
「私は構わないわよ。護衛って冒険者らしいもの」
「私も大丈夫。初めての依頼だけど、シュウト君がいるから安心だし」
ローガスとルミナも首を縦に振っている。
2人は少し不安そうだったが、修斗がいれば大丈夫だろう、と考えている。
「では受けよう。ところで、どうして『元』伯爵夫人なんだ? 離婚でもしたのか?」
「それに関しては……私の口からは言えませんので、ご本人に聞いてみてください」
どうやら他人の口づてに聞く内容ではなさそうだ。
依頼自体は受理されたので、そのままオークターガースへと向かう事となった。
空間を移動し、オークターガースの首都へと到着した。
まずは冒険者ギルドへ向かい、ベルベット元伯爵夫人の居場所を確認すると、今はまだベルベット伯爵邸に住んでいるようで、いつでもいいから伯爵邸へと迎えに行って欲しい、との事だった。
場所を聞いて向かうと、首都の中心部から少しだけ離れた場所にベルベット伯爵邸はあった。
3階建てのレンガ造りで、横1列の建物の両端だけ半円形に出っ張っている。
鉄でできた柵の門を通り門番に用事を伝えると、門番の1人が慌ただしく走り出した。
少し待つように言われ、門の脇にある石のイスに座って待っていると、黒塗りで金色の縁取りがされた趣味の悪い豪華で大きな馬車と、貴族宅には不釣り合いな質素な4人乗り馬車の2台が現れた。
質素な方の馬車から1人の女性が降りてきて修斗に挨拶をする。
「シュウト様でいらっしゃいますね? この度は依頼を受けて頂き感謝いたします。門の中ではベルベット元伯爵夫人です。門をくぐれば……プリシラ・パーカーとなります」
少し金のある商人の娘の様な、ドレスではないが袖に大きなフリルがあり、側面と背中が青く正面だけが少し茶色っぽいワンピースだ。
胸元から腰に掛けて紐を交差させて、サイズ調整が出来るようだ。
薄く赤みのある髪は左右に分けられフワリと肩に乗っており、落ち着いた衣装と同様に化粧も薄く、どちらかというとおっとりした雰囲気がある。
「そうか。それでは早速ザナドゥ王国へ行――」
「そこの娘たち! どうだ? 冒険者などやめてワシの元に来んか? ん~?」
趣味の悪い馬車の方から、丸々と太り白髪混じりの茶色いロン毛、短いひげを生やした小男が降りてきた。
50近い男だろうか、顔にしわが多いが、どこか幼く感じる。
「おい聞こえているのか! そこの3人の娘たちに言っておるのだぞ!!!」
フランチェスカたち3人を指差しているが、逆に本人たちは戸惑っている。
まさか自分たちの事だとは思っていなかったし、初対面の人間に言われる言葉でもない。
しかし過敏に反応した者が居る。
修斗だ。
修斗の表情が見る見る変わり、怒りに満ち溢れてしまった。
慌ててポリンがおさえるのだが、フランチェスカが男の元に近づいて行く。
「失礼ながら、私達は冒険者として彼と行動を共にしております。あなたの元へ行く事は出来ない事をご理解ください」
丁寧に頭を下げるのだが、男は全く聞く耳を持っていない。
フランチェスカのあごを持ち上げ、品定めするように顔を近づける。
「んふ~んふ~、なに気にするな。ワシはベルベット伯爵だ、知っているだろう? オークターガースにその人ありと言われたベルベット伯爵だ。冒険者などやめて、ワシの元に来ればいい思いをさせてやれるぞ?」
流石のフランチェスカもいきなり顔を触られて驚く。
しかしどうやらそれだけではなく、男の口が臭かったようで、顔を離そうと必死だが両手で持たれて逃げられなくなってしまった。
そして……修斗がブチ切れた。
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