174 / 373
第5章 世界大戦
第173話 お気に入りでも格差はあるのです
しおりを挟む
フランチェスカとラグズは早々に出発し、商隊の護衛という名の冒険者ギルド本部への旅が始まった。
特に車はこの世界には類を見ない発明であり、荷物を満載した馬車サイズの車が高速で移動するという前代未聞の珍事には、見物客がたくさん集まっていた。
ザナドゥ王国の力を誇示する事も出来るし、商人や職人が新しい商売として目をつけるだろう。
「凄いですねラグズさん、馬が全力で走る速度なのに、全然お尻が痛くならないのですね」
「ラグでいいッスよ。フランチェスカさんの方が年上ですし、ラグはあんまりお兄さんの役に立ってないッスからね」
ラグズが運転し、その隣にフランチェスカが座っているのだが、どうにもラグズは自分の評価が低いようだ。
ザナドゥ王国では家庭に1つは蛇口があり、上下水道が完備され、ガスコンロに近い魔道コンロまで普及させたのはラグズ本人である。
ザナドゥ王国の生活水準を底上げし、一大産業を興したラグズは大きな功績を上げているのだ。
どうやら職人気質が強いらしく、作る事に興味はあるが売る事には興味がないようで、その成果は売った人の物だ、と考えているらしい。
「じゃあ私もフランチェスカで良いわ。ラグとは年も近いから、もっと仲良くなりたいの」
「へへ、ラグもッス。重鎮の皆さんは優しいしいい人なんスけど、凄すぎて気後れしてしまうッスからね」
「同感だわ」
お互いの良さは知っているが、上を見たら気が遠くなってしまうため、自分に丁度合った立場の者同士という事だろうか。
確かに上を見たら『建国の母』だったり、一騎当千どころか『国家戦力』とまで言われるのが9人の悪夢の騎士だ。
うむ、2人では到底手も足も出ない。
「でも何故かしら、シュウト君にはそこまでの畏怖は感じないのよね」
「そうなんスよね~。お兄さんって9人の悪夢の騎士よりも凄い人なのに、タメ口でも良かったり、全然緊張しないで話せるんスよね」
「でも他の国からは恐れられているのよね……まるで別人でも見ている感じだわ」
そんな話しをしながら車は進み、昼前にはザナドゥ王国を出て次の国に到着していた。
「は、早すぎない!? 馬でも1日はかかる距離なのよ!?」
「へへへ、それだけ車がスゴイってことッスよ」
フランチェスカだけでなく、護衛対象の商人達も驚いている。
馬車での移動となればさらに遅くなり、途中で1泊しないといけなかったからだ。
それが快適な上に早く移動が出来るなんて……夢でも見ている様な感じだろう。
入国の受付の際、馬のいない馬車の事を不審がられてしまった。
車の事を説明しても理解してもらえなかったが、実際に走っている所を見せると『魔法だ!』などと喜んでいた。
まぁ魔法でも間違いではないが。
入国後も『馬のいない馬車』である車は注目の的だった。
どこを走っても人々から注目を浴び、更には冒険者ギルドに顔を出すと、Aランク冒険者が来た! と更に騒ぎが大きくなっていく。
Aランク冒険者は世界に200名もおらず、国に数名居る程度だ。
なのでAランクが来るだけでお祭り騒ぎになるのだが、さらに美少女と来たら大変なものだ。
しかもラグズまで居るため、ギルドの男共は色めきだっている。
「ようこそいらっしゃいましたフランチェスカ様! ぜひフランチェスカ様にお願いしたい依頼が……あ、すでに依頼を受けていらっしゃるんですね……」
受付嬢の上がってから下がるペースが速い!
その落ち込みようを見たら、フランチェスカでなくても手を貸したくなるほどだ。
「あ、あの、今日はこの街に泊まりますので、1日で終わる依頼なら何とかなると思うのだけれど」
ようは明日の朝出発するから、それまでに終われば問題は無いのだ。
とは言え依頼次第でもある。
「本当ですか!?!? ではこれとこれと、こんなのもあります!!!」
ズラリとカウンターに並べられた依頼書の数々。
どうやら厄介な依頼が溜まっていたようだ。
2、3枚選び、受付に渡して依頼を受けようとすると、便乗して一緒に受けようとする冒険者パーティーがいくつも現れる。
「ここら辺は不案内だろ? 俺達が案内してやるよ!」
「いやいや、この依頼だったら俺達が適任さ」
「女同士のアタシらの方が安心じゃないかい?」
などなど、Aランク冒険者と仲良くなろうとする魂胆が丸見えである。
とは言え確かに地理に詳しいわけではなく、案内があるのならあった方が早いだろう。
「へ~、フランチェスカは魔法学園に居たんだね。ウチにも1人魔法使いが居るよ」
結局女冒険者パーティーと一緒に行動する事にした。
フランチェスカとラグズ、そして女冒険者4人の6人パーティーだ。
今は馬に乗って山道を走っている。
「フフフフランチェスカさんの魔法を見てみたいですぅ!」
魔法使いはまだ若く14歳ほどだ。
小柄な体に大きな魔法の杖を持ち、部分的な革鎧を装備している。
リーダーの女はBランク、それ以外の3人はCランクのようだ。
「それで最初の依頼だけれど、対象の群れは山の頂上に居るのね?」
「ああ間違いないね。あいつ等は何年も頂上に居ついてやがるのさ。まるでアタシらをバカにしているようにね」
最初の依頼は魔物の討伐依頼・ヒュージスパイダーの群れ討伐だ。
ヒュージスパイダーは全長5~10メートルを超え、蜘蛛の糸で罠を張り獲物を捕獲している。
それが群れで生活をしているとなると、その山には入る事が出来なくなるだろう。
そんな厄介な相手を6人で倒せるのかという疑問が『サクッ』と倒してしまった。
前ぶりの意味……。
他に受けた依頼もササッと終わらせ、日が傾く前に街に戻ってこれた。
街に帰ってきたフランチェスカとラグズはご機嫌だが、女パーティーはゲッソリしていた。
どうやら2人の動きに付いて行けず、走り回るだけ走り回って終わったようだ。
翌朝には出発し、次の町を目指すのだが……そこにはAランク冒険者が待ち構えているのだった。
特に車はこの世界には類を見ない発明であり、荷物を満載した馬車サイズの車が高速で移動するという前代未聞の珍事には、見物客がたくさん集まっていた。
ザナドゥ王国の力を誇示する事も出来るし、商人や職人が新しい商売として目をつけるだろう。
「凄いですねラグズさん、馬が全力で走る速度なのに、全然お尻が痛くならないのですね」
「ラグでいいッスよ。フランチェスカさんの方が年上ですし、ラグはあんまりお兄さんの役に立ってないッスからね」
ラグズが運転し、その隣にフランチェスカが座っているのだが、どうにもラグズは自分の評価が低いようだ。
ザナドゥ王国では家庭に1つは蛇口があり、上下水道が完備され、ガスコンロに近い魔道コンロまで普及させたのはラグズ本人である。
ザナドゥ王国の生活水準を底上げし、一大産業を興したラグズは大きな功績を上げているのだ。
どうやら職人気質が強いらしく、作る事に興味はあるが売る事には興味がないようで、その成果は売った人の物だ、と考えているらしい。
「じゃあ私もフランチェスカで良いわ。ラグとは年も近いから、もっと仲良くなりたいの」
「へへ、ラグもッス。重鎮の皆さんは優しいしいい人なんスけど、凄すぎて気後れしてしまうッスからね」
「同感だわ」
お互いの良さは知っているが、上を見たら気が遠くなってしまうため、自分に丁度合った立場の者同士という事だろうか。
確かに上を見たら『建国の母』だったり、一騎当千どころか『国家戦力』とまで言われるのが9人の悪夢の騎士だ。
うむ、2人では到底手も足も出ない。
「でも何故かしら、シュウト君にはそこまでの畏怖は感じないのよね」
「そうなんスよね~。お兄さんって9人の悪夢の騎士よりも凄い人なのに、タメ口でも良かったり、全然緊張しないで話せるんスよね」
「でも他の国からは恐れられているのよね……まるで別人でも見ている感じだわ」
そんな話しをしながら車は進み、昼前にはザナドゥ王国を出て次の国に到着していた。
「は、早すぎない!? 馬でも1日はかかる距離なのよ!?」
「へへへ、それだけ車がスゴイってことッスよ」
フランチェスカだけでなく、護衛対象の商人達も驚いている。
馬車での移動となればさらに遅くなり、途中で1泊しないといけなかったからだ。
それが快適な上に早く移動が出来るなんて……夢でも見ている様な感じだろう。
入国の受付の際、馬のいない馬車の事を不審がられてしまった。
車の事を説明しても理解してもらえなかったが、実際に走っている所を見せると『魔法だ!』などと喜んでいた。
まぁ魔法でも間違いではないが。
入国後も『馬のいない馬車』である車は注目の的だった。
どこを走っても人々から注目を浴び、更には冒険者ギルドに顔を出すと、Aランク冒険者が来た! と更に騒ぎが大きくなっていく。
Aランク冒険者は世界に200名もおらず、国に数名居る程度だ。
なのでAランクが来るだけでお祭り騒ぎになるのだが、さらに美少女と来たら大変なものだ。
しかもラグズまで居るため、ギルドの男共は色めきだっている。
「ようこそいらっしゃいましたフランチェスカ様! ぜひフランチェスカ様にお願いしたい依頼が……あ、すでに依頼を受けていらっしゃるんですね……」
受付嬢の上がってから下がるペースが速い!
その落ち込みようを見たら、フランチェスカでなくても手を貸したくなるほどだ。
「あ、あの、今日はこの街に泊まりますので、1日で終わる依頼なら何とかなると思うのだけれど」
ようは明日の朝出発するから、それまでに終われば問題は無いのだ。
とは言え依頼次第でもある。
「本当ですか!?!? ではこれとこれと、こんなのもあります!!!」
ズラリとカウンターに並べられた依頼書の数々。
どうやら厄介な依頼が溜まっていたようだ。
2、3枚選び、受付に渡して依頼を受けようとすると、便乗して一緒に受けようとする冒険者パーティーがいくつも現れる。
「ここら辺は不案内だろ? 俺達が案内してやるよ!」
「いやいや、この依頼だったら俺達が適任さ」
「女同士のアタシらの方が安心じゃないかい?」
などなど、Aランク冒険者と仲良くなろうとする魂胆が丸見えである。
とは言え確かに地理に詳しいわけではなく、案内があるのならあった方が早いだろう。
「へ~、フランチェスカは魔法学園に居たんだね。ウチにも1人魔法使いが居るよ」
結局女冒険者パーティーと一緒に行動する事にした。
フランチェスカとラグズ、そして女冒険者4人の6人パーティーだ。
今は馬に乗って山道を走っている。
「フフフフランチェスカさんの魔法を見てみたいですぅ!」
魔法使いはまだ若く14歳ほどだ。
小柄な体に大きな魔法の杖を持ち、部分的な革鎧を装備している。
リーダーの女はBランク、それ以外の3人はCランクのようだ。
「それで最初の依頼だけれど、対象の群れは山の頂上に居るのね?」
「ああ間違いないね。あいつ等は何年も頂上に居ついてやがるのさ。まるでアタシらをバカにしているようにね」
最初の依頼は魔物の討伐依頼・ヒュージスパイダーの群れ討伐だ。
ヒュージスパイダーは全長5~10メートルを超え、蜘蛛の糸で罠を張り獲物を捕獲している。
それが群れで生活をしているとなると、その山には入る事が出来なくなるだろう。
そんな厄介な相手を6人で倒せるのかという疑問が『サクッ』と倒してしまった。
前ぶりの意味……。
他に受けた依頼もササッと終わらせ、日が傾く前に街に戻ってこれた。
街に帰ってきたフランチェスカとラグズはご機嫌だが、女パーティーはゲッソリしていた。
どうやら2人の動きに付いて行けず、走り回るだけ走り回って終わったようだ。
翌朝には出発し、次の町を目指すのだが……そこにはAランク冒険者が待ち構えているのだった。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
友人(勇者)に恋人も幼馴染も取られたけど悔しくない。 だって俺は転生者だから。
石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていた魔法戦士のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもない状態だった。
だが、此の状態は彼にとっては『本当の幸せ』を掴む事に必要だった
何故なら、彼は『転生者』だから…
今度は違う切り口からのアプローチ。
追放の話しの一話は、前作とかなり似ていますが2話からは、かなり変わります。
こうご期待。
セクスカリバーをヌキました!
桂
ファンタジー
とある世界の森の奥地に真の勇者だけに抜けると言い伝えられている聖剣「セクスカリバー」が岩に刺さって存在していた。
国一番の剣士の少女ステラはセクスカリバーを抜くことに成功するが、セクスカリバーはステラの膣を鞘代わりにして収まってしまう。
ステラはセクスカリバーを抜けないまま武闘会に出場して……
JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――
のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」
高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。
そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。
でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。
昼間は生徒会長、夜は…ご主人様?
しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。
「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」
手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。
なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。
怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。
だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって――
「…ほんとは、ずっと前から、私…」
ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。
恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。
戦場帰りの俺が隠居しようとしたら、最強の美少女たちに囲まれて逃げ場がなくなった件
さん
ファンタジー
戦場で命を削り、帝国最強部隊を率いた男――ラル。
数々の激戦を生き抜き、任務を終えた彼は、
今は辺境の地に建てられた静かな屋敷で、
わずかな安寧を求めて暮らしている……はずだった。
彼のそばには、かつて命を懸けて彼を支えた、最強の少女たち。
それぞれの立場で戦い、支え、尽くしてきた――ただ、すべてはラルのために。
今では彼の屋敷に集い、仕え、そして溺愛している。
「ラルさまさえいれば、わたくしは他に何もいりませんわ!」
「ラル様…私だけを見ていてください。誰よりも、ずっとずっと……」
「ねぇラル君、その人の名前……まだ覚えてるの?」
「ラル、そんなに気にしなくていいよ!ミアがいるから大丈夫だよねっ!」
命がけの戦場より、ヒロインたちの“甘くて圧が強い愛情”のほうが数倍キケン!?
順番待ちの寝床争奪戦、過去の恋の追及、圧バトル修羅場――
ラルの平穏な日常は、最強で一途な彼女たちに包囲されて崩壊寸前。
これは――
【過去の傷を背負い静かに生きようとする男】と
【彼を神のように慕う最強少女たち】が織りなす、
“甘くて逃げ場のない生活”の物語。
――戦場よりも生き延びるのが難しいのは、愛されすぎる日常だった。
※表紙のキャラはエリスのイメージ画です。
男女比がおかしい世界の貴族に転生してしまった件
美鈴
ファンタジー
転生したのは男性が少ない世界!?貴族に生まれたのはいいけど、どういう風に生きていこう…?
最新章の第五章も夕方18時に更新予定です!
☆の話は苦手な人は飛ばしても問題無い様に物語を紡いでおります。
※ホットランキング1位、ファンタジーランキング3位ありがとうございます!
※カクヨム様にも投稿しております。内容が大幅に異なり改稿しております。
※各種ランキング1位を頂いた事がある作品です!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる