ステータスを好きにイジって遊んでたら、嫁たちが国造りを始めました

内海

文字の大きさ
183 / 373
第5章 世界大戦

第182話 最後の攻撃

しおりを挟む
「ちょっと……ドラゴンだからって、何でもアリはいけないと思うわ」

 聖魔法で完全回復した氷結龍フロストウィルムを前に、フランチェスカは呆然としていた。
 今の一連の攻撃は渾身の一撃ともいえる連携で、それを食らったうえで全回復されてしまった。
 フランチェスカも回復魔法で回復をするが、MPマジックポイントの減少が激しく、すでに5分の1を切っていた。

「ドラゴンは魔法も大して使っていなかったし、本格的な魔法戦になったら負けね……」




 フランチェスカが苦戦していたころ、ザナドゥ王国では動きがあった。

「お前様、ベフラウィングに動きがあったようじゃ」

「ほぅ、今度は何だ? 参加国が20を超えたのか?」

 珍しくバルコニーで1人でお茶を飲み、のんびりと街の景色を眺めていた修斗は、エルノヴァの訪問によって久しぶりに口を開いた。

「ベフラウィングじゃがな、漆賢人しちけんじんが関わっておるようじゃぞ」

「……なんだと? 漆賢人とは冒険者ギルドの漆賢人の事か?」

「そうじゃ。どうも漆賢人とやらは、あちこちに顔を出しておる気がするのじゃが……気のせいかのぅ」

 エルノヴァが修斗の隣のイスに座ると、側に控えていたメイドがエルノヴァの分の紅茶を用意する。
 小さなお菓子を1つ口に含み、紅茶で流しこむと続いて話をした。

「11カ国経済同盟をしっておるじゃろ?」

「大国11国でつくられた、世界経済を上手く回すための組織だったか?」

「そうじゃ。それの設立にも漆賢人が関わっておるようじゃ」

「……偶然同じ名前の奴らが存在した、なんてことは無いんだろうな」

「そんな偶然ありゃせんわい。むしろ我は納得してしまったぞ?」

「納得するのは構わないが、だとしたらフランチェスカが危ないかもしれないな」

「ん? なぜじゃ」

「冒険者としてはザナドゥ王国との関りは薄いが、経済的にみるとダルアートン国とザナドゥの繋がりは強い。とくにバカロバートの家からは毎月かなりの額が贈られてきているからな、フランチェスカに調査させているのがバレているかもしれん」

「バレていたら、どうなるのじゃ?」

「俺なら殺すな」




 氷結龍フロストウィルムが防御だけでなく、攻撃にも魔法を使い始めた。
 口からは氷の槍を飛ばし、魔法も複数個同時に使用している。
 どれもこれも当たれば即死する威力だ。

相殺そうさいは! あなただけの! 専売! 特許じゃ! 無いのよぉ! キャア!」

 氷結龍フロストウィルムにならい、相反する魔法で相殺していたのだが、どうやらドラゴンはMPが豊富にあるようで、強力な魔法をいくつも使ってくる。
 その内の一つがフランチェスカの体をカスり、地面に落ちてしまったのだ。

「ゲフッ! ごほごほ! な、なんで?……防御魔法は使ってるのに、全然防御できてないじゃない」

 背中から地面に衝突し、一瞬呼吸が出来なくなるのだが、必死に呼吸を整えて体を転がし、氷結龍フロストウィルムの氷の槍をかわす。

「それはつまり、私と氷結龍フロストウィルムの魔法スキルに差があり過ぎて、防御しきれていない、という事かしら?」

 その通りだった。
 氷結龍フロストウィルムの魔法スキルはレベルが高く、フランチェスカは低い。
 なので氷結龍フロストウィルムの魔法を防御魔法で防ぎぎれないのだ。

 そしてそれは魔法使いにとって、勝てないのと同義であった。

「は、ははは、やっちゃったわね。順調にAランクになったモノだから、調子に乗っちゃってたみたいだわ」

 BランクからAランクに上がるのに要した時間は1年と数ヶ月。
 修斗を除けばトップクラスであり、依頼の受け方で判断すると調子になど乗ってはいなかった。
 むしろ堅実に、可能な物のみを受けていたのだ。

 だが今回の事は、まるで誰かに仕組まれたかのようなタイミングで魔物の大行進が起こり、その中に成体アダルトドラゴンが入っていたのだ。
 あまりにもタイミングが悪かった。
 
 体力も魔力も残り少なく、回復ポーションの類はとっくになくなっている。

「ふん。図体は大きくても、こんな小さな人間を殺すのに苦労するなんて、ドラゴンって大した事ないわね」

(殺される殺される殺される! いやだ、いやだよシュウト君。どうしたら……逃げる? 逃げ切れない。戦う? 勝てない)

 鎧の属性を防御に回し、氷結龍フロストウィルムの攻撃を軽減させる事にした様だ。
 自前の魔法防壁では氷結龍フロストウィルムの魔法攻撃を防げないため、鎧の属性防御を使うのだろう。

 何とか立ち上がるが、どうやら左肩を痛めたらしく動かない。
 氷結龍フロストウィルムは悠々と、地面に着地して歩いて来る。
 わしの様な足は前は少し細く、後ろ脚は太い。

 今までは遊んでいただけで、少し本気を出したらこうなるんだ、そう言っているように氷結龍フロストウィルムは首をもたげる。

 右手で杖を構え、火炎魔法を放つ。
 しかし氷の槍で相殺され、溶けた氷が水蒸気を発生させる。

「もう……体力もMPも無いのよ。最後の攻撃を受けてもらうわよ」

 杖のステータスを表示させて記憶させる魔法を変更し、すぐに攻撃を開始する。
 記憶させた魔法は……極大火炎弾デアース・ファーバ10こ。
 10この極大火炎弾デアース・ファーバ氷結龍フロストウィルムの上から降らせ、最後の攻撃が始まった。

 しかし疲労からかコントロールが上手く行かず、氷結龍フロストウィルムの命中ルートにあるのは1つだけで、他の9つは氷結龍フロストウィルムの周りの地面に吸い込まれてしまった。

 命中ルートの1つも相殺され、9つは不発だったのか地面に吸い込まれてしまった今、フランチェスカに打つ手はない。
 それを理解している氷結龍フロストウィルムは、ゆっくりと1歩前進する。

 が、地響きが起こる。
 少しバランスを崩すも、氷結龍フロストウィルムはもう1歩踏みだしそして……自分がいる場所の地面が真っ赤になっているのを見て動きが止まる。

 慌てて飛び立とうとするが時すでに遅し、地面が大爆発を起こし、大量のマグマが氷結龍フロストウィルムを包み込んでいく。
しおりを挟む
感想 17

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

友人(勇者)に恋人も幼馴染も取られたけど悔しくない。 だって俺は転生者だから。

石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていた魔法戦士のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもない状態だった。 だが、此の状態は彼にとっては『本当の幸せ』を掴む事に必要だった 何故なら、彼は『転生者』だから… 今度は違う切り口からのアプローチ。 追放の話しの一話は、前作とかなり似ていますが2話からは、かなり変わります。 こうご期待。

セクスカリバーをヌキました!

ファンタジー
とある世界の森の奥地に真の勇者だけに抜けると言い伝えられている聖剣「セクスカリバー」が岩に刺さって存在していた。 国一番の剣士の少女ステラはセクスカリバーを抜くことに成功するが、セクスカリバーはステラの膣を鞘代わりにして収まってしまう。 ステラはセクスカリバーを抜けないまま武闘会に出場して……

自習室の机の下で。

カゲ
恋愛
とある自習室の机の下での話。

男女比がおかしい世界の貴族に転生してしまった件

美鈴
ファンタジー
転生したのは男性が少ない世界!?貴族に生まれたのはいいけど、どういう風に生きていこう…? 最新章の第五章も夕方18時に更新予定です! ☆の話は苦手な人は飛ばしても問題無い様に物語を紡いでおります。 ※ホットランキング1位、ファンタジーランキング3位ありがとうございます! ※カクヨム様にも投稿しております。内容が大幅に異なり改稿しております。 ※各種ランキング1位を頂いた事がある作品です!

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

戦場の英雄、上官の陰謀により死亡扱いにされ、故郷に帰ると許嫁は結婚していた。絶望の中、偶然助けた許嫁の娘に何故か求婚されることに

千石
ファンタジー
「絶対生きて帰ってくる。その時は結婚しよう」 「はい。あなたの帰りをいつまでも待ってます」 許嫁と涙ながらに約束をした20年後、英雄と呼ばれるまでになったルークだったが生還してみると死亡扱いにされていた。 許嫁は既に結婚しており、ルークは絶望の只中に。 上官の陰謀だと知ったルークは激怒し、殴ってしまう。 言い訳をする気もなかったため、全ての功績を抹消され、貰えるはずだった年金もパー。 絶望の中、偶然助けた子が許嫁の娘で、 「ルーク、あなたに惚れたわ。今すぐあたしと結婚しなさい!」 何故か求婚されることに。 困りながらも巻き込まれる騒動を通じて ルークは失っていた日常を段々と取り戻していく。 こちらは他のウェブ小説にも投稿しております。

戦場帰りの俺が隠居しようとしたら、最強の美少女たちに囲まれて逃げ場がなくなった件

さん
ファンタジー
戦場で命を削り、帝国最強部隊を率いた男――ラル。 数々の激戦を生き抜き、任務を終えた彼は、 今は辺境の地に建てられた静かな屋敷で、 わずかな安寧を求めて暮らしている……はずだった。 彼のそばには、かつて命を懸けて彼を支えた、最強の少女たち。 それぞれの立場で戦い、支え、尽くしてきた――ただ、すべてはラルのために。 今では彼の屋敷に集い、仕え、そして溺愛している。   「ラルさまさえいれば、わたくしは他に何もいりませんわ!」 「ラル様…私だけを見ていてください。誰よりも、ずっとずっと……」 「ねぇラル君、その人の名前……まだ覚えてるの?」 「ラル、そんなに気にしなくていいよ!ミアがいるから大丈夫だよねっ!」   命がけの戦場より、ヒロインたちの“甘くて圧が強い愛情”のほうが数倍キケン!? 順番待ちの寝床争奪戦、過去の恋の追及、圧バトル修羅場―― ラルの平穏な日常は、最強で一途な彼女たちに包囲されて崩壊寸前。   これは―― 【過去の傷を背負い静かに生きようとする男】と 【彼を神のように慕う最強少女たち】が織りなす、 “甘くて逃げ場のない生活”の物語。   ――戦場よりも生き延びるのが難しいのは、愛されすぎる日常だった。 ※表紙のキャラはエリスのイメージ画です。

処理中です...