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第5章 世界大戦
第182話 最後の攻撃
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「ちょっと……ドラゴンだからって、何でもアリはいけないと思うわ」
聖魔法で完全回復した氷結龍を前に、フランチェスカは呆然としていた。
今の一連の攻撃は渾身の一撃ともいえる連携で、それを食らったうえで全回復されてしまった。
フランチェスカも回復魔法で回復をするが、MPの減少が激しく、すでに5分の1を切っていた。
「ドラゴンは魔法も大して使っていなかったし、本格的な魔法戦になったら負けね……」
フランチェスカが苦戦していたころ、ザナドゥ王国では動きがあった。
「お前様、ベフラウィングに動きがあったようじゃ」
「ほぅ、今度は何だ? 参加国が20を超えたのか?」
珍しくバルコニーで1人でお茶を飲み、のんびりと街の景色を眺めていた修斗は、エルノヴァの訪問によって久しぶりに口を開いた。
「ベフラウィングじゃがな、漆賢人が関わっておるようじゃぞ」
「……なんだと? 漆賢人とは冒険者ギルドの漆賢人の事か?」
「そうじゃ。どうも漆賢人とやらは、あちこちに顔を出しておる気がするのじゃが……気のせいかのぅ」
エルノヴァが修斗の隣のイスに座ると、側に控えていたメイドがエルノヴァの分の紅茶を用意する。
小さなお菓子を1つ口に含み、紅茶で流しこむと続いて話をした。
「11カ国経済同盟をしっておるじゃろ?」
「大国11国でつくられた、世界経済を上手く回すための組織だったか?」
「そうじゃ。それの設立にも漆賢人が関わっておるようじゃ」
「……偶然同じ名前の奴らが存在した、なんてことは無いんだろうな」
「そんな偶然ありゃせんわい。むしろ我は納得してしまったぞ?」
「納得するのは構わないが、だとしたらフランチェスカが危ないかもしれないな」
「ん? なぜじゃ」
「冒険者としてはザナドゥ王国との関りは薄いが、経済的にみるとダルアートン国とザナドゥの繋がりは強い。とくにバカロバートの家からは毎月かなりの額が贈られてきているからな、フランチェスカに調査させているのがバレているかもしれん」
「バレていたら、どうなるのじゃ?」
「俺なら殺すな」
氷結龍が防御だけでなく、攻撃にも魔法を使い始めた。
口からは氷の槍を飛ばし、魔法も複数個同時に使用している。
どれもこれも当たれば即死する威力だ。
「相殺は! あなただけの! 専売! 特許じゃ! 無いのよぉ! キャア!」
氷結龍にならい、相反する魔法で相殺していたのだが、どうやらドラゴンはMPが豊富にあるようで、強力な魔法をいくつも使ってくる。
その内の一つがフランチェスカの体をカスり、地面に落ちてしまったのだ。
「ゲフッ! ごほごほ! な、なんで?……防御魔法は使ってるのに、全然防御できてないじゃない」
背中から地面に衝突し、一瞬呼吸が出来なくなるのだが、必死に呼吸を整えて体を転がし、氷結龍の氷の槍をかわす。
「それはつまり、私と氷結龍の魔法スキルに差があり過ぎて、防御しきれていない、という事かしら?」
その通りだった。
氷結龍の魔法スキルはレベルが高く、フランチェスカは低い。
なので氷結龍の魔法を防御魔法で防ぎぎれないのだ。
そしてそれは魔法使いにとって、勝てないのと同義であった。
「は、ははは、やっちゃったわね。順調にAランクになったモノだから、調子に乗っちゃってたみたいだわ」
BランクからAランクに上がるのに要した時間は1年と数ヶ月。
修斗を除けばトップクラスであり、依頼の受け方で判断すると調子になど乗ってはいなかった。
むしろ堅実に、可能な物のみを受けていたのだ。
だが今回の事は、まるで誰かに仕組まれたかのようなタイミングで魔物の大行進が起こり、その中に成体ドラゴンが入っていたのだ。
あまりにもタイミングが悪かった。
体力も魔力も残り少なく、回復ポーションの類はとっくになくなっている。
「ふん。図体は大きくても、こんな小さな人間を殺すのに苦労するなんて、ドラゴンって大した事ないわね」
(殺される殺される殺される! いやだ、いやだよシュウト君。どうしたら……逃げる? 逃げ切れない。戦う? 勝てない)
鎧の属性を防御に回し、氷結龍の攻撃を軽減させる事にした様だ。
自前の魔法防壁では氷結龍の魔法攻撃を防げないため、鎧の属性防御を使うのだろう。
何とか立ち上がるが、どうやら左肩を痛めたらしく動かない。
氷結龍は悠々と、地面に着地して歩いて来る。
鷲の様な足は前は少し細く、後ろ脚は太い。
今までは遊んでいただけで、少し本気を出したらこうなるんだ、そう言っているように氷結龍は首をもたげる。
右手で杖を構え、火炎魔法を放つ。
しかし氷の槍で相殺され、溶けた氷が水蒸気を発生させる。
「もう……体力もMPも無いのよ。最後の攻撃を受けてもらうわよ」
杖のステータスを表示させて記憶させる魔法を変更し、すぐに攻撃を開始する。
記憶させた魔法は……極大火炎弾10こ。
10この極大火炎弾を氷結龍の上から降らせ、最後の攻撃が始まった。
しかし疲労からかコントロールが上手く行かず、氷結龍の命中ルートにあるのは1つだけで、他の9つは氷結龍の周りの地面に吸い込まれてしまった。
命中ルートの1つも相殺され、9つは不発だったのか地面に吸い込まれてしまった今、フランチェスカに打つ手はない。
それを理解している氷結龍は、ゆっくりと1歩前進する。
が、地響きが起こる。
少しバランスを崩すも、氷結龍はもう1歩踏みだしそして……自分がいる場所の地面が真っ赤になっているのを見て動きが止まる。
慌てて飛び立とうとするが時すでに遅し、地面が大爆発を起こし、大量のマグマが氷結龍を包み込んでいく。
聖魔法で完全回復した氷結龍を前に、フランチェスカは呆然としていた。
今の一連の攻撃は渾身の一撃ともいえる連携で、それを食らったうえで全回復されてしまった。
フランチェスカも回復魔法で回復をするが、MPの減少が激しく、すでに5分の1を切っていた。
「ドラゴンは魔法も大して使っていなかったし、本格的な魔法戦になったら負けね……」
フランチェスカが苦戦していたころ、ザナドゥ王国では動きがあった。
「お前様、ベフラウィングに動きがあったようじゃ」
「ほぅ、今度は何だ? 参加国が20を超えたのか?」
珍しくバルコニーで1人でお茶を飲み、のんびりと街の景色を眺めていた修斗は、エルノヴァの訪問によって久しぶりに口を開いた。
「ベフラウィングじゃがな、漆賢人が関わっておるようじゃぞ」
「……なんだと? 漆賢人とは冒険者ギルドの漆賢人の事か?」
「そうじゃ。どうも漆賢人とやらは、あちこちに顔を出しておる気がするのじゃが……気のせいかのぅ」
エルノヴァが修斗の隣のイスに座ると、側に控えていたメイドがエルノヴァの分の紅茶を用意する。
小さなお菓子を1つ口に含み、紅茶で流しこむと続いて話をした。
「11カ国経済同盟をしっておるじゃろ?」
「大国11国でつくられた、世界経済を上手く回すための組織だったか?」
「そうじゃ。それの設立にも漆賢人が関わっておるようじゃ」
「……偶然同じ名前の奴らが存在した、なんてことは無いんだろうな」
「そんな偶然ありゃせんわい。むしろ我は納得してしまったぞ?」
「納得するのは構わないが、だとしたらフランチェスカが危ないかもしれないな」
「ん? なぜじゃ」
「冒険者としてはザナドゥ王国との関りは薄いが、経済的にみるとダルアートン国とザナドゥの繋がりは強い。とくにバカロバートの家からは毎月かなりの額が贈られてきているからな、フランチェスカに調査させているのがバレているかもしれん」
「バレていたら、どうなるのじゃ?」
「俺なら殺すな」
氷結龍が防御だけでなく、攻撃にも魔法を使い始めた。
口からは氷の槍を飛ばし、魔法も複数個同時に使用している。
どれもこれも当たれば即死する威力だ。
「相殺は! あなただけの! 専売! 特許じゃ! 無いのよぉ! キャア!」
氷結龍にならい、相反する魔法で相殺していたのだが、どうやらドラゴンはMPが豊富にあるようで、強力な魔法をいくつも使ってくる。
その内の一つがフランチェスカの体をカスり、地面に落ちてしまったのだ。
「ゲフッ! ごほごほ! な、なんで?……防御魔法は使ってるのに、全然防御できてないじゃない」
背中から地面に衝突し、一瞬呼吸が出来なくなるのだが、必死に呼吸を整えて体を転がし、氷結龍の氷の槍をかわす。
「それはつまり、私と氷結龍の魔法スキルに差があり過ぎて、防御しきれていない、という事かしら?」
その通りだった。
氷結龍の魔法スキルはレベルが高く、フランチェスカは低い。
なので氷結龍の魔法を防御魔法で防ぎぎれないのだ。
そしてそれは魔法使いにとって、勝てないのと同義であった。
「は、ははは、やっちゃったわね。順調にAランクになったモノだから、調子に乗っちゃってたみたいだわ」
BランクからAランクに上がるのに要した時間は1年と数ヶ月。
修斗を除けばトップクラスであり、依頼の受け方で判断すると調子になど乗ってはいなかった。
むしろ堅実に、可能な物のみを受けていたのだ。
だが今回の事は、まるで誰かに仕組まれたかのようなタイミングで魔物の大行進が起こり、その中に成体ドラゴンが入っていたのだ。
あまりにもタイミングが悪かった。
体力も魔力も残り少なく、回復ポーションの類はとっくになくなっている。
「ふん。図体は大きくても、こんな小さな人間を殺すのに苦労するなんて、ドラゴンって大した事ないわね」
(殺される殺される殺される! いやだ、いやだよシュウト君。どうしたら……逃げる? 逃げ切れない。戦う? 勝てない)
鎧の属性を防御に回し、氷結龍の攻撃を軽減させる事にした様だ。
自前の魔法防壁では氷結龍の魔法攻撃を防げないため、鎧の属性防御を使うのだろう。
何とか立ち上がるが、どうやら左肩を痛めたらしく動かない。
氷結龍は悠々と、地面に着地して歩いて来る。
鷲の様な足は前は少し細く、後ろ脚は太い。
今までは遊んでいただけで、少し本気を出したらこうなるんだ、そう言っているように氷結龍は首をもたげる。
右手で杖を構え、火炎魔法を放つ。
しかし氷の槍で相殺され、溶けた氷が水蒸気を発生させる。
「もう……体力もMPも無いのよ。最後の攻撃を受けてもらうわよ」
杖のステータスを表示させて記憶させる魔法を変更し、すぐに攻撃を開始する。
記憶させた魔法は……極大火炎弾10こ。
10この極大火炎弾を氷結龍の上から降らせ、最後の攻撃が始まった。
しかし疲労からかコントロールが上手く行かず、氷結龍の命中ルートにあるのは1つだけで、他の9つは氷結龍の周りの地面に吸い込まれてしまった。
命中ルートの1つも相殺され、9つは不発だったのか地面に吸い込まれてしまった今、フランチェスカに打つ手はない。
それを理解している氷結龍は、ゆっくりと1歩前進する。
が、地響きが起こる。
少しバランスを崩すも、氷結龍はもう1歩踏みだしそして……自分がいる場所の地面が真っ赤になっているのを見て動きが止まる。
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