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第6章 ダンジョンから始まる世界交流
第282話 お姫様は自由奔放。過ぎます
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「ねぇ叔父さん、シュウトへ手紙を書いたからさ、届けて欲しいんだけど」
ある日、フィルヤールは書いた手紙をザナドゥ王国へ届けるように男に差し出した。
それを苦虫を潰すような顔で受け取ると、一応役目として質問をした。
「確認だが、まさかシュウト国王にアイン・アール首長国に来いって内容じゃないよな?」
「まっさか。会いたいから来てねって手紙だよ」
「意味は同じだろうが! 命令かお願いかの違いなんて些末なもんだろうが! ウガー!」
手紙をビリビリにやぶり、フィルヤールに投げ捨てる。
「あー! 何すんのさ! せっかく書いた手紙なのに!」
「お前! 俺達の立場がわかってるのか!? 向こうは大陸の覇者、こっちはしがない小国なんだぞ!」
「え~? だって会ってみたいんだもん」
「それなら最低限こっちから手紙を出して、こっちから会いに行くのが礼儀だろうが」
「そうなの? じゃあ遊びに行くって手紙書くね!」
「ああ、せめてそうしてくれ。それなら俺も準備をしてついて行けるから」
そうしてフィルヤールは手紙を書き直し、男に渡すのだった。
その翌日の事だった。
「フィルヤール、いつまで寝てるんだ? もう食事の時間を随分と過ぎて……あれ?」
男がフィルヤールの部屋に入ると、ベッドには誰も居なかった。
ひょっとして着替えているのかと隣の部屋の扉をノックするも、何の反応もない。
慌てて扉を開けるがやはり誰もおらず、よく見るといくつかの衣装が無くなっていた。
「まさか!」
部屋に戻りベッドを触ると、ベッドはすでに冷えていた。
慌てて部屋の中を見回すと机の上に紙が置いてある。
『シュウトに会いに行ってくるね(ハート)』
「あんのクソガキー!」
「うっわ~! 海ってこんなに広いんだ!」
豪華な木造の客船の甲板で、フィルヤールは手すりを掴んで身を乗り出していた。
一応メイドを2名連れてきたようで、フィルヤールの後ろに控えている。
「お嬢様、本当によろしかったのですか?」
「何が?」
「だまって出て来た事です」
「大丈夫大丈夫、叔父さんにはシュウトに会いに行くって言っておいたし、父上は私に関心がないから」
後ろを向いて、手すりに寄りかかるようにしてメイドと話をしている。
このフィルヤール、1国の第3王女なのだが、随分と自由奔放に生きているようだ。
第3王女ともなれば国としては重要性が低く、誰も自分には期待をしていない。
……と思い込んでいる。
なにぶん判断基準が『自分にふさわしい男を紹介してくれない』なのだが、今までは散々各国の王子が紹介され、しかも切れ者や屈強な男など、それなりの男を紹介されてきた。
本人は気に入らなかったようだが。
「楽しみだな~。シュウトってどんな男なんだろう」
数日の船旅を終え、まずは聖キルリアン教会の港に到着した。
聖キルリアン教会は宗教国家で、キリアム法王(修斗の女)をトップに据える国だ。
元々海の向こうの国とは交易が盛んで、様々な国の船が行きかっている。
「ん~……っ! ふは~、やっと着いた。船は大きかったけど、やっぱり少し窮屈だったなぁ」
船を降りて桟橋に移ると、大きく背伸びをして街を眺める。
交易が盛んなだけあって色々な人種が働いており、フィルヤールの国の人間らしき者もいた。
「何回か来た事あるけど、あれは公務だったから遊べなかったんだよね~」
ふと、以前来た時とは違う空気を感じたのか、違和感を感じて首をひねる。
「ねぇねぇ、何か違うくない? 数年前に来た時のイメージと違うんだけど」
「ああ、それはアレではありませんか?」
メイドの1人が指さした先には、港には珍しい店があった。
武器屋、道具屋など、まるで今から冒険に向かう冒険者のための店が数件並んでいる。
「あれ? なんで武器なんて売ってんの? 海で剣なんて……ひょっとして海賊が多くなった?」
「いえ、あれはダンジョンから出たアイテムです。ランクが高いので、ああやって港でも売られているのでしょう」
特に武器には興味はないようだが、ランクの高い武器が多いようなので店に入っていく。
露店のように並べられた店もあるが、今入ったのはしっかりと構えられた店だ。
入口の張り紙には「1個から大量購入まで対応できます」と書かれている。
店内は木造りだが、棚や飾りつけはしっかりされており、少なくともしっかりと根を張って商売をしているように見える。
「ねぇねぇ店長さん、私は数年ぶりに来たんだけどさ、前は武器なんて売ってなかったよね?」
カウンターにいた男性は突然声をかけられて驚いているが、フィルヤールの格好を見て金があると判断したようだ。
「いらっしゃい。そうさな、聖キルリアン教会のはずれにダンジョンが見つかってね、そこのダンジョンがいいアイテムを出すってんで、特産品みたいになったのさ。いまじゃいろんな国から商人が買い付けに来てるよ」
そういって店長はいくつかの武器、剣やナイフ、ボウガンをカウンターに並べる。
フィルヤールはそれを手に取るのだが、どの武器もBランクやAランクのモノだった。
Aランクアイテムは国宝になっている国も多く、流石に数はまだ少ないようだが、Bランクの武器はかなりの数が並べられていた。
「へ~、ダンジョンが見つかったんだ。うん、わかった! じゃあこれとこれと、これも頂戴!」
「まいどありぃ!」
そういって自分とメイドに武器を買うと別の店に入り、今度は防具やアイテム類を買い始める。
「あ、あのお嬢様? まさかと思いますが、ダンジョンに入ろうなどと考えてはいませんよね?」
「もっちろん」
メイドはホッとしたようだが、言葉は続いていた。
「そんな面白そうなダンジョン、行かなきゃ損じゃん!」
ある日、フィルヤールは書いた手紙をザナドゥ王国へ届けるように男に差し出した。
それを苦虫を潰すような顔で受け取ると、一応役目として質問をした。
「確認だが、まさかシュウト国王にアイン・アール首長国に来いって内容じゃないよな?」
「まっさか。会いたいから来てねって手紙だよ」
「意味は同じだろうが! 命令かお願いかの違いなんて些末なもんだろうが! ウガー!」
手紙をビリビリにやぶり、フィルヤールに投げ捨てる。
「あー! 何すんのさ! せっかく書いた手紙なのに!」
「お前! 俺達の立場がわかってるのか!? 向こうは大陸の覇者、こっちはしがない小国なんだぞ!」
「え~? だって会ってみたいんだもん」
「それなら最低限こっちから手紙を出して、こっちから会いに行くのが礼儀だろうが」
「そうなの? じゃあ遊びに行くって手紙書くね!」
「ああ、せめてそうしてくれ。それなら俺も準備をしてついて行けるから」
そうしてフィルヤールは手紙を書き直し、男に渡すのだった。
その翌日の事だった。
「フィルヤール、いつまで寝てるんだ? もう食事の時間を随分と過ぎて……あれ?」
男がフィルヤールの部屋に入ると、ベッドには誰も居なかった。
ひょっとして着替えているのかと隣の部屋の扉をノックするも、何の反応もない。
慌てて扉を開けるがやはり誰もおらず、よく見るといくつかの衣装が無くなっていた。
「まさか!」
部屋に戻りベッドを触ると、ベッドはすでに冷えていた。
慌てて部屋の中を見回すと机の上に紙が置いてある。
『シュウトに会いに行ってくるね(ハート)』
「あんのクソガキー!」
「うっわ~! 海ってこんなに広いんだ!」
豪華な木造の客船の甲板で、フィルヤールは手すりを掴んで身を乗り出していた。
一応メイドを2名連れてきたようで、フィルヤールの後ろに控えている。
「お嬢様、本当によろしかったのですか?」
「何が?」
「だまって出て来た事です」
「大丈夫大丈夫、叔父さんにはシュウトに会いに行くって言っておいたし、父上は私に関心がないから」
後ろを向いて、手すりに寄りかかるようにしてメイドと話をしている。
このフィルヤール、1国の第3王女なのだが、随分と自由奔放に生きているようだ。
第3王女ともなれば国としては重要性が低く、誰も自分には期待をしていない。
……と思い込んでいる。
なにぶん判断基準が『自分にふさわしい男を紹介してくれない』なのだが、今までは散々各国の王子が紹介され、しかも切れ者や屈強な男など、それなりの男を紹介されてきた。
本人は気に入らなかったようだが。
「楽しみだな~。シュウトってどんな男なんだろう」
数日の船旅を終え、まずは聖キルリアン教会の港に到着した。
聖キルリアン教会は宗教国家で、キリアム法王(修斗の女)をトップに据える国だ。
元々海の向こうの国とは交易が盛んで、様々な国の船が行きかっている。
「ん~……っ! ふは~、やっと着いた。船は大きかったけど、やっぱり少し窮屈だったなぁ」
船を降りて桟橋に移ると、大きく背伸びをして街を眺める。
交易が盛んなだけあって色々な人種が働いており、フィルヤールの国の人間らしき者もいた。
「何回か来た事あるけど、あれは公務だったから遊べなかったんだよね~」
ふと、以前来た時とは違う空気を感じたのか、違和感を感じて首をひねる。
「ねぇねぇ、何か違うくない? 数年前に来た時のイメージと違うんだけど」
「ああ、それはアレではありませんか?」
メイドの1人が指さした先には、港には珍しい店があった。
武器屋、道具屋など、まるで今から冒険に向かう冒険者のための店が数件並んでいる。
「あれ? なんで武器なんて売ってんの? 海で剣なんて……ひょっとして海賊が多くなった?」
「いえ、あれはダンジョンから出たアイテムです。ランクが高いので、ああやって港でも売られているのでしょう」
特に武器には興味はないようだが、ランクの高い武器が多いようなので店に入っていく。
露店のように並べられた店もあるが、今入ったのはしっかりと構えられた店だ。
入口の張り紙には「1個から大量購入まで対応できます」と書かれている。
店内は木造りだが、棚や飾りつけはしっかりされており、少なくともしっかりと根を張って商売をしているように見える。
「ねぇねぇ店長さん、私は数年ぶりに来たんだけどさ、前は武器なんて売ってなかったよね?」
カウンターにいた男性は突然声をかけられて驚いているが、フィルヤールの格好を見て金があると判断したようだ。
「いらっしゃい。そうさな、聖キルリアン教会のはずれにダンジョンが見つかってね、そこのダンジョンがいいアイテムを出すってんで、特産品みたいになったのさ。いまじゃいろんな国から商人が買い付けに来てるよ」
そういって店長はいくつかの武器、剣やナイフ、ボウガンをカウンターに並べる。
フィルヤールはそれを手に取るのだが、どの武器もBランクやAランクのモノだった。
Aランクアイテムは国宝になっている国も多く、流石に数はまだ少ないようだが、Bランクの武器はかなりの数が並べられていた。
「へ~、ダンジョンが見つかったんだ。うん、わかった! じゃあこれとこれと、これも頂戴!」
「まいどありぃ!」
そういって自分とメイドに武器を買うと別の店に入り、今度は防具やアイテム類を買い始める。
「あ、あのお嬢様? まさかと思いますが、ダンジョンに入ろうなどと考えてはいませんよね?」
「もっちろん」
メイドはホッとしたようだが、言葉は続いていた。
「そんな面白そうなダンジョン、行かなきゃ損じゃん!」
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