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第6章 ダンジョンから始まる世界交流
第284話 ダンジョンの不具合
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「あの、アイカ様はパーティーでダンジョンに入るのではないのですか?」
「いえ、私は大体1人で行動しています」
アイカは修斗の命令で各国との調整に向かう事が多く、ほぼ1人で行動している。
今回は各ダンジョンで発生している、細かい不具合の調査のために来ていたのだ。
「そっか~、アイカは1人でダンジョンに入れるほど強いんだね!」
「それなりの強さがあると思いますよ? えっと、フィルヤールさんでしたか、随分と薄着ですが大丈夫ですか?」
「大丈夫大丈夫! 危なくなったら逃げるし!」
初対面ではあるが、フィルヤールは随分とフレンドリーだ。
アイカと年齢が近い事もあるだろうが、とても王族とは思えない。
フィルヤールはそれでいいだろうが、アイカは対応に困っているようだ。
相手がフレンドリーに接するのなら構わないが、他国の第3王女に大けがをさせては大変だからだ。
そう、アイカはフィルヤールの事を知っている。
メイドは商人の娘と紹介したのだが、その服装と顔つきは情報で聞いていた通りだったので、逆に目を疑ったほどだ。
なのでまずは、安全な第1階層で様子を見る事にした。
「あははははは! 何コレなにコレ! すっごい切れる!」
フィルヤールは細身の剣を振り回しているが、その動きは初心者丸出しで、相手が動きの鈍い昆虫系でなければ当たる事すらないだろう。
しかも剣は港町で買ったBランクの名刀だ。
メイドの2人も同じく初心者だが、こっちは虫が嫌いなのか悲鳴を上げるばかりだ。
「フィルヤールさん、あまり剣を振り回してばかりだと、体力が持ちませんよ?」
「だーいじょうぶだって! ウチは体力には自信があるし!」
楽しそうに剣を振り回しているが、間もなく体力が無くなり腕が上がらなくなるだろう。
大樹の地下迷宮は壁が木の根で出来ており、通路や広間は根の間を通って作られているため、同じ通路でも広さは場所によって変わる。
地面は土が多いが、所々で根が出ているため、常に足場には気を付けないといけない。
魔法のランタンがあちこちに掛けられているが、それでも薄暗い。
そしてアイカが注意した通り、フィルヤールは腕が動かなくなり、両腕をだらりとぶら下げていた。
「腕いたーい、疲れたぁ~、薄暗くて土臭ーい」
「それではそろそろ帰りましょうか。1階層もそろそろ全て周り終わりますから」
「でもでも~、1階層くらいは全部回りたいな」
「ではもう少しだけ。あと通路が2、3本分ですからスグです」
このダンジョンは木の下にあるせいか、昆虫が非常に多い。
昆虫・ミミズ・モグラなどが出てくるが、昆虫が半分以上だ。
1階層は全ての魔物の動きが遅いため、初心者でも大きさや嫌悪感が無ければ問題はない。
……あと体力と。
何とか1階層の探索が終わり、地上に戻ってきた一行。
アイカ以外の3人は疲労困憊で、メイド2人に関しては体よりも精神的に疲れている。
しかしその疲労は冒険者ギルドに行く事で一気に吹き飛んでしまった。
「おめでとうございます! Bランクの防具が入っていました!」
受付嬢に鑑定依頼を出していたが、その中にBランクの防具が含まれていたのだ。
残念ながらフィルヤール達には装備出来なさそうだが、それを売ればかなりの金になる。
そう、このダンジョンには1階層にもかかわらず、高ランクアイテムが出てしまうという不具合があるのだ。
修斗の設定では1~10階層はE・D・Cランク、11~20がBランク、21~35がB+、36~45階層がAランクのはずだった。
なので1階層でBランクが出るのは不具合なのだが、その調査に来たのがアイカだった。
なんと初日で不具合に出くわしたのだが、出たアイテムの場所や魔物などはすべて記録しており、それを修斗に報告しないといけない。
「え! マジで!? 凄いじゃないウチら!」
メイド達も喜んでおり、これでフィルヤールも満足してダンジョン探索を止めてくれることを願っているが……。
そうは問屋が卸さないようだ。
「明日は5階層まで行こうよ! したらもっと良い物が出るかもしれないし!」
やる気満々だった。
アイカとしては初心者と調査が出来るので、実際の探索に近い形で調査が出来るため、ある意味助かっているのだが、あまり調子に乗られると護衛がしにくくなる。
しかも王族なので傷を負わせるわけにもいかない。
「それでは明日も朝から潜りますか?」
「うん! あ、アイカアイカ、宿は取ったの? まだなら一緒の部屋で寝よ―よ」
「すみません、もう宿は取ってしまいました」
「え~、残念。じゃあさ、同じ宿にするね!」
ウキウキでアイカの後を付いてきて、同じ宿の近い部屋に泊まる様だ。
メイド達は当たり前のようにフィルヤールと同室に泊まるつもりだ。
「シュウト君聞こえる? うん、1階層でいきなりBランクが出たよ。そうそう、宝箱からBランクの防具だった。……そうね、明日は2階層を調べるんだけど、それよりも、アイン・アールの第3王女が来てるって知ってる? なんか偶然護衛を引き受けたんだけど」
夜になり、宿の部屋で1人でいる時に修斗に報告をしているようだ。
直径2センチメートルくらいの水晶玉を右耳にはめ、人差し指で押さえながら会話をしている。
どうやら修斗も第3王女が来ている事を知らなかったらしく、特に気にしてはいないがダンジョン探索に来ただけなら問題はないと判断したようだ。
しかし、アイカの報告によりそれも違うと判明する。
ド素人がダンジョン探索に来るはずがないからだ。
なのでただの観光旅行だと判断するしかない。
それにしては不用心だが。
そのあたりの情報収集はアイカに任せるようで、ダンジョン調査に加えてアイン・アール首長国の動向も探る事となった。
「いえ、私は大体1人で行動しています」
アイカは修斗の命令で各国との調整に向かう事が多く、ほぼ1人で行動している。
今回は各ダンジョンで発生している、細かい不具合の調査のために来ていたのだ。
「そっか~、アイカは1人でダンジョンに入れるほど強いんだね!」
「それなりの強さがあると思いますよ? えっと、フィルヤールさんでしたか、随分と薄着ですが大丈夫ですか?」
「大丈夫大丈夫! 危なくなったら逃げるし!」
初対面ではあるが、フィルヤールは随分とフレンドリーだ。
アイカと年齢が近い事もあるだろうが、とても王族とは思えない。
フィルヤールはそれでいいだろうが、アイカは対応に困っているようだ。
相手がフレンドリーに接するのなら構わないが、他国の第3王女に大けがをさせては大変だからだ。
そう、アイカはフィルヤールの事を知っている。
メイドは商人の娘と紹介したのだが、その服装と顔つきは情報で聞いていた通りだったので、逆に目を疑ったほどだ。
なのでまずは、安全な第1階層で様子を見る事にした。
「あははははは! 何コレなにコレ! すっごい切れる!」
フィルヤールは細身の剣を振り回しているが、その動きは初心者丸出しで、相手が動きの鈍い昆虫系でなければ当たる事すらないだろう。
しかも剣は港町で買ったBランクの名刀だ。
メイドの2人も同じく初心者だが、こっちは虫が嫌いなのか悲鳴を上げるばかりだ。
「フィルヤールさん、あまり剣を振り回してばかりだと、体力が持ちませんよ?」
「だーいじょうぶだって! ウチは体力には自信があるし!」
楽しそうに剣を振り回しているが、間もなく体力が無くなり腕が上がらなくなるだろう。
大樹の地下迷宮は壁が木の根で出来ており、通路や広間は根の間を通って作られているため、同じ通路でも広さは場所によって変わる。
地面は土が多いが、所々で根が出ているため、常に足場には気を付けないといけない。
魔法のランタンがあちこちに掛けられているが、それでも薄暗い。
そしてアイカが注意した通り、フィルヤールは腕が動かなくなり、両腕をだらりとぶら下げていた。
「腕いたーい、疲れたぁ~、薄暗くて土臭ーい」
「それではそろそろ帰りましょうか。1階層もそろそろ全て周り終わりますから」
「でもでも~、1階層くらいは全部回りたいな」
「ではもう少しだけ。あと通路が2、3本分ですからスグです」
このダンジョンは木の下にあるせいか、昆虫が非常に多い。
昆虫・ミミズ・モグラなどが出てくるが、昆虫が半分以上だ。
1階層は全ての魔物の動きが遅いため、初心者でも大きさや嫌悪感が無ければ問題はない。
……あと体力と。
何とか1階層の探索が終わり、地上に戻ってきた一行。
アイカ以外の3人は疲労困憊で、メイド2人に関しては体よりも精神的に疲れている。
しかしその疲労は冒険者ギルドに行く事で一気に吹き飛んでしまった。
「おめでとうございます! Bランクの防具が入っていました!」
受付嬢に鑑定依頼を出していたが、その中にBランクの防具が含まれていたのだ。
残念ながらフィルヤール達には装備出来なさそうだが、それを売ればかなりの金になる。
そう、このダンジョンには1階層にもかかわらず、高ランクアイテムが出てしまうという不具合があるのだ。
修斗の設定では1~10階層はE・D・Cランク、11~20がBランク、21~35がB+、36~45階層がAランクのはずだった。
なので1階層でBランクが出るのは不具合なのだが、その調査に来たのがアイカだった。
なんと初日で不具合に出くわしたのだが、出たアイテムの場所や魔物などはすべて記録しており、それを修斗に報告しないといけない。
「え! マジで!? 凄いじゃないウチら!」
メイド達も喜んでおり、これでフィルヤールも満足してダンジョン探索を止めてくれることを願っているが……。
そうは問屋が卸さないようだ。
「明日は5階層まで行こうよ! したらもっと良い物が出るかもしれないし!」
やる気満々だった。
アイカとしては初心者と調査が出来るので、実際の探索に近い形で調査が出来るため、ある意味助かっているのだが、あまり調子に乗られると護衛がしにくくなる。
しかも王族なので傷を負わせるわけにもいかない。
「それでは明日も朝から潜りますか?」
「うん! あ、アイカアイカ、宿は取ったの? まだなら一緒の部屋で寝よ―よ」
「すみません、もう宿は取ってしまいました」
「え~、残念。じゃあさ、同じ宿にするね!」
ウキウキでアイカの後を付いてきて、同じ宿の近い部屋に泊まる様だ。
メイド達は当たり前のようにフィルヤールと同室に泊まるつもりだ。
「シュウト君聞こえる? うん、1階層でいきなりBランクが出たよ。そうそう、宝箱からBランクの防具だった。……そうね、明日は2階層を調べるんだけど、それよりも、アイン・アールの第3王女が来てるって知ってる? なんか偶然護衛を引き受けたんだけど」
夜になり、宿の部屋で1人でいる時に修斗に報告をしているようだ。
直径2センチメートルくらいの水晶玉を右耳にはめ、人差し指で押さえながら会話をしている。
どうやら修斗も第3王女が来ている事を知らなかったらしく、特に気にしてはいないがダンジョン探索に来ただけなら問題はないと判断したようだ。
しかし、アイカの報告によりそれも違うと判明する。
ド素人がダンジョン探索に来るはずがないからだ。
なのでただの観光旅行だと判断するしかない。
それにしては不用心だが。
そのあたりの情報収集はアイカに任せるようで、ダンジョン調査に加えてアイン・アール首長国の動向も探る事となった。
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