305 / 373
第7章 改変された世界
第304話 記憶のキッカケ
しおりを挟む
「シュウトさん!」
「シュウト様!」
突如とした現れた2人の人物。
ラグナは薄い青色の膜につつまれて、クリスタルベアーの攻撃から守られていた。
「……え? この青い光は一体? あ、アナタ達は!?」
「シュウトさんに何をするつもりですか? 低級な魔物の分際で! 火炎弾!」
長い銀髪の女性が指先から火炎弾を発射……かと思いきや、1本の線がクリスタルベアーの頭から尻まで貫通し、一瞬で燃え上がった。
クリスタルベアーは暴れる事も無く、すでに肉が焼けた匂いが漂ってくる。
「キャロライン、能力が戻りましたね!」
「ええ、バーバラも戻ったのでは?」
「元通りです!」
突如としてラグナの前に現れたのは、キャロライン姫とバーバラ聖女だった。
もちろんラグナもその顔は知っているし、同時に頭痛で倒れた事は記憶に新しい。
だからといって、突然現れた理由や助けられる理由にはなっていない。
「キャロライン姫! バーバラ聖女様! お助けいただきありがとうございます! どれだけお礼を申し上げても足りないくらいです!」
馬車から出て来たルネリッツ伯爵は、しきりに頭を下げており、それに続いて執事ノーマンも立ち上がり深々と頭を下げる。
しかしまだ状況が理解できていないのがラグナだ。
なにせ助けてくれた2人が、国で知らない者などいない程の有名人が、ラグナに向かって片膝をつき、右手を胸に当てて頭を下げているのだから。
「あああありがとうございます! 助けて頂いたご恩はきっとお返しいたします!」
キャロラインとバーバラに向かって土下座をして地面に頭を何度もぶつけるラグナ。
立場が違いすぎるため、片膝をついた上位者に対してはこれしか思いつかなかったのだろう。
だが2人はそんなラグナに優しく抱き付いた。
「シュウトさん……シュウトさん会いたかったです! 理由は分かりませんが、私達は、いえ、この世界は何かをされて、改変されてしまったのでしょう。たとえそうだとしても、私達の主は、夫はシュウトさんだけなんですよ?」
「そうですとも! シュウト様は私が尊敬し愛すべき夫なんです! その夫がこんな事をしていたら、力の限り止めるしかありません!」
地面に何度も頭を打ち付けたため、額からは血が流れている。
バーバラが魔法で治療し、額の傷はキレイに治った。
だがラグナは余計に混乱しているようだ。
「思い出しては……いただけないんですね」
「私達は思い出しましたが、シュウト様は別のきっかけが必要、という訳ですか!」
2人は納得できないまでも理解しているようだが、理解できているのは2人だけで他3人はチンプンカンプンだ。
それもそうだろう、どういう繋がりかは知らないが、1国の姫と聖女がラグナに、だたの従者を主や夫と呼び、それはもう愛おしそうに抱きしめているのだから。
「あの、私はシュウトではなくラグナなのですが……似た人とお間違えではありませんか?」
「いいえ、間違えではありません……いえ、今のアナタにそれを言っても理解してもらえないでしょうね。しかしラグナ、あなたの本当の名前はシュウトというのです」
「シュウト様は私達9人の悪夢の騎士を従え、ザナドゥ王国の国王であらせられます! ラグナは今の自分に違和感はありませんか?」
違和感、と言われれば確かにあった。
特にこの2人に会い頭痛がしてからは違和感ばかり感じている。
それにシュウトという名前、以前頭の中に響いた知らない名前と同じものだ。
だからといって、言われた事を全ては受け入れられない。
「そ、そんなはずはありません! 私は赤ん坊の頃スラムで生み捨てられ、こちらのルネリッツ伯爵に拾われたんです。それからずっとルネリッツ伯爵のお世話になっていますから」
修斗がスラムで生み捨てられた事は、2人とも聞いていた。
生み捨てられて『捨て子』という消えない称号が嫌で、ワザと死んで修斗が生まれ変わるのに付き合ったのだから。
だが本来の記憶が戻っていないラグナに、何を言っても信じてもらえない事も理解している。
ついさっきまで自分達もそうだったのだから。
ラグナを立ち上がらせて、キャロラインとバーバラはラグナの服に着いた汚れを手で払う。
あまりに当たり前にしているが、ラグナからしたら王女と聖女に何をさせているのかと卒倒しそうだ。
「シュウトさん、私達はあなたについて行きます。あなたの記憶が戻るまで、そばを離れません」
「シュウト様! ご安心ください、シュウト様の身の安全は私達が保証します!」
何を言っているのかこれっぽっちも理解できないラグナだが、これだけは理解できた。
お願いですから敬語を使わないでください、と。
「シュウト様!」
突如とした現れた2人の人物。
ラグナは薄い青色の膜につつまれて、クリスタルベアーの攻撃から守られていた。
「……え? この青い光は一体? あ、アナタ達は!?」
「シュウトさんに何をするつもりですか? 低級な魔物の分際で! 火炎弾!」
長い銀髪の女性が指先から火炎弾を発射……かと思いきや、1本の線がクリスタルベアーの頭から尻まで貫通し、一瞬で燃え上がった。
クリスタルベアーは暴れる事も無く、すでに肉が焼けた匂いが漂ってくる。
「キャロライン、能力が戻りましたね!」
「ええ、バーバラも戻ったのでは?」
「元通りです!」
突如としてラグナの前に現れたのは、キャロライン姫とバーバラ聖女だった。
もちろんラグナもその顔は知っているし、同時に頭痛で倒れた事は記憶に新しい。
だからといって、突然現れた理由や助けられる理由にはなっていない。
「キャロライン姫! バーバラ聖女様! お助けいただきありがとうございます! どれだけお礼を申し上げても足りないくらいです!」
馬車から出て来たルネリッツ伯爵は、しきりに頭を下げており、それに続いて執事ノーマンも立ち上がり深々と頭を下げる。
しかしまだ状況が理解できていないのがラグナだ。
なにせ助けてくれた2人が、国で知らない者などいない程の有名人が、ラグナに向かって片膝をつき、右手を胸に当てて頭を下げているのだから。
「あああありがとうございます! 助けて頂いたご恩はきっとお返しいたします!」
キャロラインとバーバラに向かって土下座をして地面に頭を何度もぶつけるラグナ。
立場が違いすぎるため、片膝をついた上位者に対してはこれしか思いつかなかったのだろう。
だが2人はそんなラグナに優しく抱き付いた。
「シュウトさん……シュウトさん会いたかったです! 理由は分かりませんが、私達は、いえ、この世界は何かをされて、改変されてしまったのでしょう。たとえそうだとしても、私達の主は、夫はシュウトさんだけなんですよ?」
「そうですとも! シュウト様は私が尊敬し愛すべき夫なんです! その夫がこんな事をしていたら、力の限り止めるしかありません!」
地面に何度も頭を打ち付けたため、額からは血が流れている。
バーバラが魔法で治療し、額の傷はキレイに治った。
だがラグナは余計に混乱しているようだ。
「思い出しては……いただけないんですね」
「私達は思い出しましたが、シュウト様は別のきっかけが必要、という訳ですか!」
2人は納得できないまでも理解しているようだが、理解できているのは2人だけで他3人はチンプンカンプンだ。
それもそうだろう、どういう繋がりかは知らないが、1国の姫と聖女がラグナに、だたの従者を主や夫と呼び、それはもう愛おしそうに抱きしめているのだから。
「あの、私はシュウトではなくラグナなのですが……似た人とお間違えではありませんか?」
「いいえ、間違えではありません……いえ、今のアナタにそれを言っても理解してもらえないでしょうね。しかしラグナ、あなたの本当の名前はシュウトというのです」
「シュウト様は私達9人の悪夢の騎士を従え、ザナドゥ王国の国王であらせられます! ラグナは今の自分に違和感はありませんか?」
違和感、と言われれば確かにあった。
特にこの2人に会い頭痛がしてからは違和感ばかり感じている。
それにシュウトという名前、以前頭の中に響いた知らない名前と同じものだ。
だからといって、言われた事を全ては受け入れられない。
「そ、そんなはずはありません! 私は赤ん坊の頃スラムで生み捨てられ、こちらのルネリッツ伯爵に拾われたんです。それからずっとルネリッツ伯爵のお世話になっていますから」
修斗がスラムで生み捨てられた事は、2人とも聞いていた。
生み捨てられて『捨て子』という消えない称号が嫌で、ワザと死んで修斗が生まれ変わるのに付き合ったのだから。
だが本来の記憶が戻っていないラグナに、何を言っても信じてもらえない事も理解している。
ついさっきまで自分達もそうだったのだから。
ラグナを立ち上がらせて、キャロラインとバーバラはラグナの服に着いた汚れを手で払う。
あまりに当たり前にしているが、ラグナからしたら王女と聖女に何をさせているのかと卒倒しそうだ。
「シュウトさん、私達はあなたについて行きます。あなたの記憶が戻るまで、そばを離れません」
「シュウト様! ご安心ください、シュウト様の身の安全は私達が保証します!」
何を言っているのかこれっぽっちも理解できないラグナだが、これだけは理解できた。
お願いですから敬語を使わないでください、と。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
友人(勇者)に恋人も幼馴染も取られたけど悔しくない。 だって俺は転生者だから。
石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていた魔法戦士のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもない状態だった。
だが、此の状態は彼にとっては『本当の幸せ』を掴む事に必要だった
何故なら、彼は『転生者』だから…
今度は違う切り口からのアプローチ。
追放の話しの一話は、前作とかなり似ていますが2話からは、かなり変わります。
こうご期待。
セクスカリバーをヌキました!
桂
ファンタジー
とある世界の森の奥地に真の勇者だけに抜けると言い伝えられている聖剣「セクスカリバー」が岩に刺さって存在していた。
国一番の剣士の少女ステラはセクスカリバーを抜くことに成功するが、セクスカリバーはステラの膣を鞘代わりにして収まってしまう。
ステラはセクスカリバーを抜けないまま武闘会に出場して……
男女比がおかしい世界の貴族に転生してしまった件
美鈴
ファンタジー
転生したのは男性が少ない世界!?貴族に生まれたのはいいけど、どういう風に生きていこう…?
最新章の第五章も夕方18時に更新予定です!
☆の話は苦手な人は飛ばしても問題無い様に物語を紡いでおります。
※ホットランキング1位、ファンタジーランキング3位ありがとうございます!
※カクヨム様にも投稿しております。内容が大幅に異なり改稿しております。
※各種ランキング1位を頂いた事がある作品です!
JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――
のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」
高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。
そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。
でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。
昼間は生徒会長、夜は…ご主人様?
しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。
「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」
手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。
なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。
怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。
だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって――
「…ほんとは、ずっと前から、私…」
ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。
恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。
戦場帰りの俺が隠居しようとしたら、最強の美少女たちに囲まれて逃げ場がなくなった件
さん
ファンタジー
戦場で命を削り、帝国最強部隊を率いた男――ラル。
数々の激戦を生き抜き、任務を終えた彼は、
今は辺境の地に建てられた静かな屋敷で、
わずかな安寧を求めて暮らしている……はずだった。
彼のそばには、かつて命を懸けて彼を支えた、最強の少女たち。
それぞれの立場で戦い、支え、尽くしてきた――ただ、すべてはラルのために。
今では彼の屋敷に集い、仕え、そして溺愛している。
「ラルさまさえいれば、わたくしは他に何もいりませんわ!」
「ラル様…私だけを見ていてください。誰よりも、ずっとずっと……」
「ねぇラル君、その人の名前……まだ覚えてるの?」
「ラル、そんなに気にしなくていいよ!ミアがいるから大丈夫だよねっ!」
命がけの戦場より、ヒロインたちの“甘くて圧が強い愛情”のほうが数倍キケン!?
順番待ちの寝床争奪戦、過去の恋の追及、圧バトル修羅場――
ラルの平穏な日常は、最強で一途な彼女たちに包囲されて崩壊寸前。
これは――
【過去の傷を背負い静かに生きようとする男】と
【彼を神のように慕う最強少女たち】が織りなす、
“甘くて逃げ場のない生活”の物語。
――戦場よりも生き延びるのが難しいのは、愛されすぎる日常だった。
※表紙のキャラはエリスのイメージ画です。
戦場の英雄、上官の陰謀により死亡扱いにされ、故郷に帰ると許嫁は結婚していた。絶望の中、偶然助けた許嫁の娘に何故か求婚されることに
千石
ファンタジー
「絶対生きて帰ってくる。その時は結婚しよう」
「はい。あなたの帰りをいつまでも待ってます」
許嫁と涙ながらに約束をした20年後、英雄と呼ばれるまでになったルークだったが生還してみると死亡扱いにされていた。
許嫁は既に結婚しており、ルークは絶望の只中に。
上官の陰謀だと知ったルークは激怒し、殴ってしまう。
言い訳をする気もなかったため、全ての功績を抹消され、貰えるはずだった年金もパー。
絶望の中、偶然助けた子が許嫁の娘で、
「ルーク、あなたに惚れたわ。今すぐあたしと結婚しなさい!」
何故か求婚されることに。
困りながらも巻き込まれる騒動を通じて
ルークは失っていた日常を段々と取り戻していく。
こちらは他のウェブ小説にも投稿しております。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる