ステータスを好きにイジって遊んでたら、嫁たちが国造りを始めました

内海

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第7章 改変された世界

第304話 記憶のキッカケ

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「シュウトさん!」

「シュウト様!」

 突如とした現れた2人の人物。
 ラグナは薄い青色の膜につつまれて、クリスタルベアーの攻撃から守られていた。
 
「……え? この青い光は一体? あ、アナタ達は!?」

「シュウトさんに何をするつもりですか? 低級な魔物の分際で! 火炎弾ファーバ!」

 長い銀髪の女性が指先から火炎弾を発射……かと思いきや、1本の線がクリスタルベアーの頭から尻まで貫通し、一瞬で燃え上がった。
 クリスタルベアーは暴れる事も無く、すでに肉が焼けた匂いが漂ってくる。

「キャロライン、能力が戻りましたね!」

「ええ、バーバラも戻ったのでは?」

「元通りです!」

 突如としてラグナの前に現れたのは、キャロライン姫とバーバラ聖女だった。
 もちろんラグナもその顔は知っているし、同時に頭痛で倒れた事は記憶に新しい。
 だからといって、突然現れた理由や助けられる理由にはなっていない。

「キャロライン姫! バーバラ聖女様! お助けいただきありがとうございます! どれだけお礼を申し上げても足りないくらいです!」

 馬車から出て来たルネリッツ伯爵は、しきりに頭を下げており、それに続いて執事ノーマンも立ち上がり深々と頭を下げる。
 しかしまだ状況が理解できていないのがラグナだ。
 なにせ助けてくれた2人が、国で知らない者などいない程の有名人が、ラグナに向かって片膝をつき、右手を胸に当てて頭を下げているのだから。

「あああありがとうございます! 助けて頂いたご恩はきっとお返しいたします!」

 キャロラインとバーバラに向かって土下座をして地面に頭を何度もぶつけるラグナ。
 立場が違いすぎるため、片膝をついた上位者に対してはこれしか思いつかなかったのだろう。
 だが2人はそんなラグナに優しく抱き付いた。

「シュウトさん……シュウトさん会いたかったです! 理由は分かりませんが、私達は、いえ、この世界は何かをされて、改変されてしまったのでしょう。たとえそうだとしても、私達の主は、夫はシュウトさんだけなんですよ?」

「そうですとも! シュウト様は私が尊敬し愛すべき夫なんです! その夫がこんな事をしていたら、力の限り止めるしかありません!」

 地面に何度も頭を打ち付けたため、額からは血が流れている。
 バーバラが魔法で治療し、額の傷はキレイに治った。
 だがラグナは余計に混乱しているようだ。

「思い出しては……いただけないんですね」

「私達は思い出しましたが、シュウト様は別のきっかけが必要、という訳ですか!」

 2人は納得できないまでも理解しているようだが、理解できているのは2人だけで他3人はチンプンカンプンだ。
 それもそうだろう、どういう繋がりかは知らないが、1国の姫と聖女がラグナに、だたの従者を主や夫と呼び、それはもう愛おしそうに抱きしめているのだから。

「あの、私はシュウトではなくラグナなのですが……似た人とお間違えではありませんか?」

「いいえ、間違えではありません……いえ、今のアナタにそれを言っても理解してもらえないでしょうね。しかしラグナ、あなたの本当の名前はシュウトというのです」

「シュウト様は私達9人のナイン・悪夢の騎士ナイトメア・ナイツを従え、ザナドゥ王国の国王であらせられます! ラグナは今の自分に違和感はありませんか?」

 違和感、と言われれば確かにあった。
 特にこの2人に会い頭痛がしてからは違和感ばかり感じている。
 それにシュウトという名前、以前頭の中に響いた知らない名前と同じものだ。
 だからといって、言われた事を全ては受け入れられない。

「そ、そんなはずはありません! 私は赤ん坊の頃スラムで生み捨てられ、こちらのルネリッツ伯爵に拾われたんです。それからずっとルネリッツ伯爵のお世話になっていますから」

 修斗がスラムで生み捨てられた事は、2人とも聞いていた。
 生み捨てられて『捨て子』という消えない称号が嫌で、ワザと死んで修斗が生まれ変わるのに付き合ったのだから。
 だが本来の記憶が戻っていないラグナに、何を言っても信じてもらえない事も理解している。
 ついさっきまで自分達もそうだったのだから。

 ラグナを立ち上がらせて、キャロラインとバーバラはラグナの服に着いた汚れを手で払う。
 あまりに当たり前にしているが、ラグナからしたら王女と聖女に何をさせているのかと卒倒しそうだ。

「シュウトさん、私達はあなたについて行きます。あなたの記憶が戻るまで、そばを離れません」

「シュウト様! ご安心ください、シュウト様の身の安全は私達が保証します!」

 何を言っているのかこれっぽっちも理解できないラグナだが、これだけは理解できた。
 お願いですから敬語を使わないでください、と。
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