ステータスを好きにイジって遊んでたら、嫁たちが国造りを始めました

内海

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第7章 改変された世界

第313話 劇団員には申し訳ないが、こっちが優先なのだよ

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 楽屋でラグナとフローレンス小さな男装の麗人の目が合う。
 そして当たり前のように2人は頭を押さえて苦しみだす。

「え? え? なに!? 一体どうしたのラグナ!!」

 慌てふためくティナだが、キャロライン王女ナターシャ第1王子妃はラグナに、バーバラ聖女キャシー第2王子妃はフローレンスを支える。
 近くにあったソファーに2人を寝かせ、しばらく頭を押さえて苦しんでいたが、ラグナの方が少し早く回復したようだ。

「ぐぅぅ……またこれだ。一体これは何なんですか?」

「ラグナ、あなたの本来の姿を取り戻すためなのです。苦しいとは思いますが、我慢してください」

「しかしキャロライン様、私の本来の姿といわれても、ルネリッツ伯爵家に引き取られただけの捨て子ですよ?」

「いいえ、いいえ違うのですラグナ。あなたにはもっと素晴らしい、本来の役目があるのです。それは私達だけではなく、恐らくこの世界の為にもなる事。どうか信じて付いてきてくれませんか?」

 ソファーに座るラグナの前に座り、両手を持って優しくお願いをするキャロライン。
 以前から憧れていたキャロライン王女にこう言われては、反論する事が出来ない。
 それに自分の性欲が異常であることも理解しているため、本来の自分というのが気になるようだ。

「フローレンス、大丈夫かい?」

「フローレンス! さあ水をどうぞ!」

「う……今のは一体。申し訳ありません、4女傑の方々の前でこんな失態を……」

 フローレンス小さな男装の麗人の意識が戻り、ソファーで上半身を起こす。
 目頭を手で押さえ、何とか少し残る頭痛を押さえているようだ。

「フローレンス、あの方を覚えているかい?」

 キャシーに指さされ、ラグナを見るとラグナもフローレンスを見る。

「……シュウト様、ですよね? そんな当たり前のことをなぜ……なぜ!? なぜ僕はシュウト様の事を忘れていたのでしょうか!! 我が主! シュウト様!」

 記憶が戻ったようで、慌てて修斗の前でひざまずく。

「申し訳ございませんシュウト様! あなたの事を忘れるなど言語道断! どうか愚かな僕に罰をお与えくださいますようお願いいたします!」

 そう言われてもラグナはフローレンスの事を覚えていない。
 やはりまだ記憶は戻らないようだ。
 ただ茫然としているラグナを見て、放置されているのか怒りのあまり言葉がないのかと不安なフローレンスは、隣にいるナターシャの顔をチラリと見る。

「どうやらまだ記憶は戻っていないようですね。フローレンス、シュウト様、今はラグナですが、以前の記憶を失っておいでなのです」

「なん……ですって?」

 フローレンスに今判明している事、といってもザナドゥ王国が無い事、重鎮はおろか9人の悪夢の騎士トリプルナインすら存在していない事を説明する。
 そして自分たちの記憶と頭痛の事も。

「その様な事が……一体この世界では何が起きているというのか」

「だから私達はザナドゥ王国を目指しているわ。その途中で仲間を見つけて記憶を取り戻しているの」

「キャロライン様も記憶が失われていたのですか?」

「様はいらないわ。私達全員がそうだったわね」

「そうですか……わかりました、僕もその旅に同行しましょう」

「おや? フローレンスは公演が残っているのではないのですか!?」

「いいのだよバーバラ。シュウト様の記憶を取り戻す以上に大切な事など、今の世界にありはしないのだから」

 どうやら元の調子が戻ってきたようで、随分と厚底な靴を脱ぐと元通りのフローレンス小さな男装の麗人になった。
 ああ厚底の靴だったのか、と4女傑は納得し、いつもの様相を取り戻した。

 長い銀髪を後ろで纏め上げ、パッと見は短く見える。
 公演の途中のため男貴族の様な出で立ちで、一挙手一投足が大げさだ。白い手袋に白いズボン、勲章が沢山付いた華美な燕尾服。
 しかしとても姿勢が良く、常に微笑んでいるためかとても好感が持てる。
 服の上からでもとても細身で、本当に子どものように見える。
 大きいが鋭い目つきが女性に人気だったようだが、Aカップだ。

「では僕は劇団長に挨拶をしてこよう。短い間だったがお世話になったからね、退職金は辞退してこよう」

 そう言ってフローレンスは楽屋を出て行くと、しばらくして廊下がとても騒々しくなる。
 楽屋の扉が開くと、そこにはフローレンス以外にも沢山の劇団員らしき人物がいた。
 必死に辞めないでくれと引き留めているようだが、フローレンスの意思は固かった。

「さあみんな! ザナドゥ王国へ向かおう!」

 どうやら着替えて来たようだが、フローレンスの服装は演劇で使われている物と大差なかった。
 これが私服のようだ。

 9人の悪夢の騎士トリプルナインの1人を加え、7人での旅が再開された。
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