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第7章 改変された世界
第318話 優しさに付け入る悪の手
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隠ぺい魔法を使い、キャロラインとナターシャは奴隷商人の倉庫に入る。
中は薄暗く、ガラの悪い10名程の男たちが牢屋のような馬車から奴隷を下す。
奴隷は老若男女様々だが、ガラの悪い男たちの奴隷の扱いを見るに、大した売値の付かない奴隷かもしれない。
キャロラインとナターシャは姿を消したまま奥に進むと、1人の恰幅の良い男が奥の扉から入ってきた。
「おい、そんな奴らは適当でいいから、さっき来た女達の方を手伝え。あっちの方が売れるんだからな」
へい、や、はいと返事をすると、ほとんどの男が奥へと消えていき、ここには3人だけが残った。
どうやら本当に大した額では売れない奴隷だったようだ。
2人は恰幅の良い男について奥へと進むと、そこには20名近い若い女達が薄いシャツ1枚で捕らえられている。
立っていれば股間は見えないが、座ると丸見えだ。
「へっへっへ、この女のチチは好みだなぁ」
「俺はこっちのデカイのがいいぜ」
「チチよりもシリだろ」
男たちは女達の体を平気で触っているが、それ以上はしていない。
どうやら売り物には手を出さない主義のようだ。
「お頭ぁ、さっき広場で捕まえてた女はいつごろ来やすかね」
「さあな。あの衛兵は女をすっ裸にひん剥いて、オナニーさせるのが好きな変態だ。明日には来るんじゃないか?」
「へへ、強気な女が屈辱にまみれた顔にさせるのが待ち遠しいぜ」
どうやらこの男も変態度では負けていないようだ。
しかし今の会話を聞いて、ナターシャは思い当たる事があった。
噴水のある広場でカップルが衛兵に捕らえられていたのだが、ひょっとしてあの女性の事を言っているのではないか、と。
「あんな女よりも、今日街に来た女の話を聞いてないのか?」
「知ってますとも! 7人の旅人で、魔道車に乗ってる女達でしょ? 質素から強気まで色とりどりじゃないですか! いつ決行するんで?」
「男1人は男娼にして、後の6人は貴族に売ってやろう。前に見つけた爆乳褐色の女程じゃないが胸も大きかったし、それぞれが貴族のボンボンや金持ちに高値で売れそうだ」
「確かもう動いてるんすよね」
「ああ、買収した衛兵たちが動いている。数日後にはここに来るだろうさ」
「へへ、あの子供みたいな女、多分誰にも相手されてないっすよ。手つかずの体を触れるのは役得ってもんでさぁ」
どうやらキャロライン達の事が話題になっているようだ。
自分達が性的な目で見られるのは慣れているが、ラグナ、修斗を男娼にすると聞いて一気に怒りのゲージがマックスになる。
しかし今は必死に怒りをこらえ、恰幅の良い男が部屋を出たのでついて行く。
どうやら隣の建物と繋がっていたようで、男は2階の部屋に入ると高級そうな机やイスが置いてある。
イスに座ってひじ掛けに手を置くと、一息ついて引き出しから書類を数枚出す。
奴隷リストの様で、今までに売った奴隷の名前と金額、売り先がかかれている。
この部屋にはこの男しかいないので、2人は怒りを抑える必要が無くなった。
「こんにちわ。奴隷のリストでしょうか?」
突然どこからともなく声がして、男はビクリと体を強張らせて周囲を見回す。
すると机の前に2人の女がスーッと姿を現した。
「な! なんだお前達は……は! お前達は!?」
どうやら目をつけていた女のうち2人が目の前に現れ、驚きというより喜んでいる。
男から見たら飛んで火にいる夏の虫だ。
「そのリストを頂けますか?」
ナターシャが優しく手を出すが、そんな事を聞く男ではない。
かと思いきや、男は紙をまとめてナターシャに手渡そうとした。
「随分と素直ですね。キャロライン、拷問は程々でいいかもしれま……!?」
ナターシャの体に電撃のような衝撃が走り、崩れ落ちる。
どうやらリストを渡すふりをして、2人を捕らえるつもりだったようだ。
リストの紙が床に散らばると、男の手から針金のような物が伸びている。
「はっはっは! しばらくは動けないぞ! さあお前もだ、なに、大人しくしていればコレは使わないさ」
イスから立ち上がり、キャロラインの前に立つと手を掴もうと腕を伸ばす。
「あ、ありました。キャロルの売り先はダンスホールになっていますね」
男は慌てて振り向くと、そこには床に散らばった奴隷リストを見ているナターシャがいた。
リストにキャロルを見つけて喜んでいる。
「な!? ば、バカな! アレを食らって平気だと!?」
「ええバカね。あなたは本当に」
後頭部をキャロラインにつかまれ、男は暴れるが全く手が離れる気配がない。
自分より細く背も小さな女に、完全に力負けしているのだ。
「な、なんだ一体! お前達は何なんだ!?」
「そんな事はどうでもいいの。知っている事を全て話してもわうわ」
手から魔法が発動し、男はだらりと体の力が抜ける。
キャロラインが手を離すと床に崩れ落ちそうなので、早速命令をする。
「自分で立ちなさい。そこのリストにあるキャロルという女性、どうやって捕まえたの?」
「あの女は……けんかの仲裁をしていて……殴られそうになった女をかばい……殴ろうとした男を……なぐった……男は大怪我をして……しんだ……」
「え? キャロルが人を殺したですって? 力加減はできるはずですよ?」
「死んだふりをさせた……衛兵がそれをもくげきし……捕まえた」
「完全に冤罪ね。その事はダンスホールの支配人も知っているの?」
「しって……いる。依頼主……だから」
なんと、ダンスホールの支配人はキャロルが欲しいがために、罠にはめたのだった。
根が素直なキャロルは人を殺した罪悪感で、奴隷として大人しく従っているのだろう。
「他の奴隷達も、同じような方法で捕まえたのですか?」
「俺達の奴隷は……ほとんどがそうだ」
2人は奴隷売買を否定するつもりはない。
むしろ修斗に会うまでは奴隷が居るのが当たり前だと思っていた。
しかし無罪の人間を犯罪者に仕立て上げ、奴隷落ちさせるのは立派な犯罪だ。
貴族だから王族だからと無視する事は出来ない。
「ならアナタにはしばらく働いてもらうわ。まずはダンスホールへ行くわよ」
中は薄暗く、ガラの悪い10名程の男たちが牢屋のような馬車から奴隷を下す。
奴隷は老若男女様々だが、ガラの悪い男たちの奴隷の扱いを見るに、大した売値の付かない奴隷かもしれない。
キャロラインとナターシャは姿を消したまま奥に進むと、1人の恰幅の良い男が奥の扉から入ってきた。
「おい、そんな奴らは適当でいいから、さっき来た女達の方を手伝え。あっちの方が売れるんだからな」
へい、や、はいと返事をすると、ほとんどの男が奥へと消えていき、ここには3人だけが残った。
どうやら本当に大した額では売れない奴隷だったようだ。
2人は恰幅の良い男について奥へと進むと、そこには20名近い若い女達が薄いシャツ1枚で捕らえられている。
立っていれば股間は見えないが、座ると丸見えだ。
「へっへっへ、この女のチチは好みだなぁ」
「俺はこっちのデカイのがいいぜ」
「チチよりもシリだろ」
男たちは女達の体を平気で触っているが、それ以上はしていない。
どうやら売り物には手を出さない主義のようだ。
「お頭ぁ、さっき広場で捕まえてた女はいつごろ来やすかね」
「さあな。あの衛兵は女をすっ裸にひん剥いて、オナニーさせるのが好きな変態だ。明日には来るんじゃないか?」
「へへ、強気な女が屈辱にまみれた顔にさせるのが待ち遠しいぜ」
どうやらこの男も変態度では負けていないようだ。
しかし今の会話を聞いて、ナターシャは思い当たる事があった。
噴水のある広場でカップルが衛兵に捕らえられていたのだが、ひょっとしてあの女性の事を言っているのではないか、と。
「あんな女よりも、今日街に来た女の話を聞いてないのか?」
「知ってますとも! 7人の旅人で、魔道車に乗ってる女達でしょ? 質素から強気まで色とりどりじゃないですか! いつ決行するんで?」
「男1人は男娼にして、後の6人は貴族に売ってやろう。前に見つけた爆乳褐色の女程じゃないが胸も大きかったし、それぞれが貴族のボンボンや金持ちに高値で売れそうだ」
「確かもう動いてるんすよね」
「ああ、買収した衛兵たちが動いている。数日後にはここに来るだろうさ」
「へへ、あの子供みたいな女、多分誰にも相手されてないっすよ。手つかずの体を触れるのは役得ってもんでさぁ」
どうやらキャロライン達の事が話題になっているようだ。
自分達が性的な目で見られるのは慣れているが、ラグナ、修斗を男娼にすると聞いて一気に怒りのゲージがマックスになる。
しかし今は必死に怒りをこらえ、恰幅の良い男が部屋を出たのでついて行く。
どうやら隣の建物と繋がっていたようで、男は2階の部屋に入ると高級そうな机やイスが置いてある。
イスに座ってひじ掛けに手を置くと、一息ついて引き出しから書類を数枚出す。
奴隷リストの様で、今までに売った奴隷の名前と金額、売り先がかかれている。
この部屋にはこの男しかいないので、2人は怒りを抑える必要が無くなった。
「こんにちわ。奴隷のリストでしょうか?」
突然どこからともなく声がして、男はビクリと体を強張らせて周囲を見回す。
すると机の前に2人の女がスーッと姿を現した。
「な! なんだお前達は……は! お前達は!?」
どうやら目をつけていた女のうち2人が目の前に現れ、驚きというより喜んでいる。
男から見たら飛んで火にいる夏の虫だ。
「そのリストを頂けますか?」
ナターシャが優しく手を出すが、そんな事を聞く男ではない。
かと思いきや、男は紙をまとめてナターシャに手渡そうとした。
「随分と素直ですね。キャロライン、拷問は程々でいいかもしれま……!?」
ナターシャの体に電撃のような衝撃が走り、崩れ落ちる。
どうやらリストを渡すふりをして、2人を捕らえるつもりだったようだ。
リストの紙が床に散らばると、男の手から針金のような物が伸びている。
「はっはっは! しばらくは動けないぞ! さあお前もだ、なに、大人しくしていればコレは使わないさ」
イスから立ち上がり、キャロラインの前に立つと手を掴もうと腕を伸ばす。
「あ、ありました。キャロルの売り先はダンスホールになっていますね」
男は慌てて振り向くと、そこには床に散らばった奴隷リストを見ているナターシャがいた。
リストにキャロルを見つけて喜んでいる。
「な!? ば、バカな! アレを食らって平気だと!?」
「ええバカね。あなたは本当に」
後頭部をキャロラインにつかまれ、男は暴れるが全く手が離れる気配がない。
自分より細く背も小さな女に、完全に力負けしているのだ。
「な、なんだ一体! お前達は何なんだ!?」
「そんな事はどうでもいいの。知っている事を全て話してもわうわ」
手から魔法が発動し、男はだらりと体の力が抜ける。
キャロラインが手を離すと床に崩れ落ちそうなので、早速命令をする。
「自分で立ちなさい。そこのリストにあるキャロルという女性、どうやって捕まえたの?」
「あの女は……けんかの仲裁をしていて……殴られそうになった女をかばい……殴ろうとした男を……なぐった……男は大怪我をして……しんだ……」
「え? キャロルが人を殺したですって? 力加減はできるはずですよ?」
「死んだふりをさせた……衛兵がそれをもくげきし……捕まえた」
「完全に冤罪ね。その事はダンスホールの支配人も知っているの?」
「しって……いる。依頼主……だから」
なんと、ダンスホールの支配人はキャロルが欲しいがために、罠にはめたのだった。
根が素直なキャロルは人を殺した罪悪感で、奴隷として大人しく従っているのだろう。
「他の奴隷達も、同じような方法で捕まえたのですか?」
「俺達の奴隷は……ほとんどがそうだ」
2人は奴隷売買を否定するつもりはない。
むしろ修斗に会うまでは奴隷が居るのが当たり前だと思っていた。
しかし無罪の人間を犯罪者に仕立て上げ、奴隷落ちさせるのは立派な犯罪だ。
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