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第7章 改変された世界
第319話 お人好しのキャロル
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奴隷商の代表を連れて、ダンスホールへと向かうキャロラインとナターシャ。
パッと見は特に怪しい所はないが、代表は洗脳され操られている。
しかし少し歩いているだけで、奴隷商の代表に声をかける衛兵と荒くれ者がとても多い。
新しい奴隷かい? などと聞いてくる者もおり、その都度否定するのがかなり面倒くさそうだ。
「ここね。キャロルを助けるわよ」
「ええ。人を殺してはいないと、伝えなければいけません」
「それではこちらでございます」
奴隷商の代表はダンスホールの裏口から入り、荷物が左右に積み重ねられた狭い通路を進んでいく。
狭い通路を進むと直ぐに扉があり、それを開けると踊り子達の休憩室になっていた。
何人もの胸の大きい踊り子が、大事な部分しか隠していない衣装で寝転んでおり、部屋に男が入ってきたというのに一瞥しただけで顔を逸らす。
「キャロルはいないのですか?」
「あの娘は支配人のお気に入りですから、支配人の部屋に居るはずです」
階段を上って3階に来ると部屋は2つあり、階段から遠い方の部屋の扉をノックする。
「支配人さん、話していた上玉が入りましたから、お持ちしましたよ」
部屋の中でガタガタと音がして扉が開く。
そこにはダンスホールの支配人が興奮した顔で立っており、奴隷商の後ろにいるキャロラインとナターシャを見てニンマリと笑う。
「随分と仕事が早いな!」
「ええ、支配人さんはお得意さんですからね」
そう言って支配人は3人を部屋に招き入れる。
すると中にはダンス衣装ではなく、きちんとした服を着たキャロルがいた。
きちんとした服といっても胸元は大きく開かれて、胴体と胸で生地の色が違うため、やたらと胸が強調されている。
キャロル、キャロライン、ナターシャは目を合わせると、2人は優しく微笑みかけ、1人は戸惑いの表情をしていた。
「よし! それでは早速衣装に着替えてもらおうか! なに、最初は恥ずかしいだろうがすぐにグヒャァ!?」
キャロラインの体を触ろうとした支配人は、空気の塊をぶつけられて壁まで吹き飛んだ。
「触らないで。私に触れていいのはシュウトさん、ラグナだけよ」
「キャロル、もうここで働く必要も奴隷である必要もありません。ここを出ましょう」
ナターシャがキャロルに駆け寄るが、キャロルは戸惑いながら奴隷商人を見る。
やはり人を殺した罪を償うまでは、辞めるつもりがないらしい。
「ワタシは……ヒトを殺してしまいマシた。なので、ツミをつぐなわないと、ダメなのデス」
「あなたは無実よ。あなたが殺したと思っている男は、今はピンピンして他の女性を騙しているわ」
「え?」
「本当ですよキャロル。あなたは騙されたのです、冤罪なんです」
2人の言葉に目を白黒させ、奴隷商人を見るとウンウンと頷いていた。
そして支配人を見るとオロオロしている。
「イキて……いる? ワタシはヒト殺しじゃ、ないデスか?」
「あなたの身は潔白です」
ポロポロと涙を流し、声を殺して泣き始める。
「よかった、よかったデス。あのヒトはイキていたんデスね」
この状況で自分が冤罪で奴隷になった事よりも、自分を騙した男の心配をするとは……どれだけお人好しなのだろうか。
しかし、だからといって直ぐに奴隷から解放されるのだろうか。
「奴隷商人、今すぐキャロルを解放なさい」
「残念ですが出来かねます」
「何ですって?」
「解放には現所有者である、支配人さんの同意が必要なのです」
全員が支配人を見る。
どうやら味方だと思っていた奴隷商人も敵であるため、もう逃げ場がないと悟っているようだ。
しかし。
「そ、その女は俺が買ったものだ! 誰にも売るものか!」
余程キャロルが気に入っているのか、この状況でも売る気はないらしい。
キャロラインとナターシャが手の平に魔法の渦を作り、支配人に投げる仕草をするのだが、目をきつく閉じるだけで首を縦に振らない。
「ふぅ、まあいいわ、同意なら全員分をしてもらうから」
魔法を解いて支配人に近づくと、目の前で指先に光をともして支配人に命令をする。
「あなたが不正な手段で手に入れた奴隷を、全て解放なさい」
「……はい、全員を解放……します」
トロンとした虚ろな目になると、踊り子全員を解放すると宣言した。
全員が冤罪で奴隷になっていたようだ。
1階に降りて踊り子達に説明をすると、最初は喜ぶのだが直ぐに元気がなくなる。
踊り子を辞めても行くアテが無いのだ。
別の街や国から連れてこられたため、知り合いはおらず当てもない。
なので暫らくはこの店で踊り子を続けさせることにした。
支配人を衛兵に突き出そうかと思ったが、踊り子達の為にもうひと働きしてもらうようだ。
もちろん待遇は正当なものに改善させる。
踊り子たちは修斗の記憶が戻った際、修斗に仕えさせるつもりなのだろう。
なにせ全員の見た目がとても良いので、何なら今からラグナを連れてきてもいい程だ。
「キャロル、あなたには会ってもらいたい御方がいらっしゃるの。付いてきて」
宿に戻り、いつものようにラグナとキャロルを会わせると、キャロルは頭を抱えて叫びだし、ラグナは両手で頭を押さえて唸りだす。
どうやらラグナ、この痛みに慣れてきたようだ。
「シュウト……サマ? シュウトサマ! シュウトサマー!」
ラグナに飛びついて抱き付いたため、キャロルの豊満すぎる胸がラグナの顔に直撃する。
思わずよろけてしまったが、何とか抱きかかえてこらえたようだ。
そしてラグナとしてはまた知らない美しい女性が仲間になり、夜の営みが充実していくのだった。
すでにラグナの股間はそれを想像して、ズボンがはち切れそうになっていたのだから。
パッと見は特に怪しい所はないが、代表は洗脳され操られている。
しかし少し歩いているだけで、奴隷商の代表に声をかける衛兵と荒くれ者がとても多い。
新しい奴隷かい? などと聞いてくる者もおり、その都度否定するのがかなり面倒くさそうだ。
「ここね。キャロルを助けるわよ」
「ええ。人を殺してはいないと、伝えなければいけません」
「それではこちらでございます」
奴隷商の代表はダンスホールの裏口から入り、荷物が左右に積み重ねられた狭い通路を進んでいく。
狭い通路を進むと直ぐに扉があり、それを開けると踊り子達の休憩室になっていた。
何人もの胸の大きい踊り子が、大事な部分しか隠していない衣装で寝転んでおり、部屋に男が入ってきたというのに一瞥しただけで顔を逸らす。
「キャロルはいないのですか?」
「あの娘は支配人のお気に入りですから、支配人の部屋に居るはずです」
階段を上って3階に来ると部屋は2つあり、階段から遠い方の部屋の扉をノックする。
「支配人さん、話していた上玉が入りましたから、お持ちしましたよ」
部屋の中でガタガタと音がして扉が開く。
そこにはダンスホールの支配人が興奮した顔で立っており、奴隷商の後ろにいるキャロラインとナターシャを見てニンマリと笑う。
「随分と仕事が早いな!」
「ええ、支配人さんはお得意さんですからね」
そう言って支配人は3人を部屋に招き入れる。
すると中にはダンス衣装ではなく、きちんとした服を着たキャロルがいた。
きちんとした服といっても胸元は大きく開かれて、胴体と胸で生地の色が違うため、やたらと胸が強調されている。
キャロル、キャロライン、ナターシャは目を合わせると、2人は優しく微笑みかけ、1人は戸惑いの表情をしていた。
「よし! それでは早速衣装に着替えてもらおうか! なに、最初は恥ずかしいだろうがすぐにグヒャァ!?」
キャロラインの体を触ろうとした支配人は、空気の塊をぶつけられて壁まで吹き飛んだ。
「触らないで。私に触れていいのはシュウトさん、ラグナだけよ」
「キャロル、もうここで働く必要も奴隷である必要もありません。ここを出ましょう」
ナターシャがキャロルに駆け寄るが、キャロルは戸惑いながら奴隷商人を見る。
やはり人を殺した罪を償うまでは、辞めるつもりがないらしい。
「ワタシは……ヒトを殺してしまいマシた。なので、ツミをつぐなわないと、ダメなのデス」
「あなたは無実よ。あなたが殺したと思っている男は、今はピンピンして他の女性を騙しているわ」
「え?」
「本当ですよキャロル。あなたは騙されたのです、冤罪なんです」
2人の言葉に目を白黒させ、奴隷商人を見るとウンウンと頷いていた。
そして支配人を見るとオロオロしている。
「イキて……いる? ワタシはヒト殺しじゃ、ないデスか?」
「あなたの身は潔白です」
ポロポロと涙を流し、声を殺して泣き始める。
「よかった、よかったデス。あのヒトはイキていたんデスね」
この状況で自分が冤罪で奴隷になった事よりも、自分を騙した男の心配をするとは……どれだけお人好しなのだろうか。
しかし、だからといって直ぐに奴隷から解放されるのだろうか。
「奴隷商人、今すぐキャロルを解放なさい」
「残念ですが出来かねます」
「何ですって?」
「解放には現所有者である、支配人さんの同意が必要なのです」
全員が支配人を見る。
どうやら味方だと思っていた奴隷商人も敵であるため、もう逃げ場がないと悟っているようだ。
しかし。
「そ、その女は俺が買ったものだ! 誰にも売るものか!」
余程キャロルが気に入っているのか、この状況でも売る気はないらしい。
キャロラインとナターシャが手の平に魔法の渦を作り、支配人に投げる仕草をするのだが、目をきつく閉じるだけで首を縦に振らない。
「ふぅ、まあいいわ、同意なら全員分をしてもらうから」
魔法を解いて支配人に近づくと、目の前で指先に光をともして支配人に命令をする。
「あなたが不正な手段で手に入れた奴隷を、全て解放なさい」
「……はい、全員を解放……します」
トロンとした虚ろな目になると、踊り子全員を解放すると宣言した。
全員が冤罪で奴隷になっていたようだ。
1階に降りて踊り子達に説明をすると、最初は喜ぶのだが直ぐに元気がなくなる。
踊り子を辞めても行くアテが無いのだ。
別の街や国から連れてこられたため、知り合いはおらず当てもない。
なので暫らくはこの店で踊り子を続けさせることにした。
支配人を衛兵に突き出そうかと思ったが、踊り子達の為にもうひと働きしてもらうようだ。
もちろん待遇は正当なものに改善させる。
踊り子たちは修斗の記憶が戻った際、修斗に仕えさせるつもりなのだろう。
なにせ全員の見た目がとても良いので、何なら今からラグナを連れてきてもいい程だ。
「キャロル、あなたには会ってもらいたい御方がいらっしゃるの。付いてきて」
宿に戻り、いつものようにラグナとキャロルを会わせると、キャロルは頭を抱えて叫びだし、ラグナは両手で頭を押さえて唸りだす。
どうやらラグナ、この痛みに慣れてきたようだ。
「シュウト……サマ? シュウトサマ! シュウトサマー!」
ラグナに飛びついて抱き付いたため、キャロルの豊満すぎる胸がラグナの顔に直撃する。
思わずよろけてしまったが、何とか抱きかかえてこらえたようだ。
そしてラグナとしてはまた知らない美しい女性が仲間になり、夜の営みが充実していくのだった。
すでにラグナの股間はそれを想像して、ズボンがはち切れそうになっていたのだから。
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