お一人様冒険記(6人パーティー)~ゲームシステムに縛られてるけど嫁を見つけてハッピーになって見せる!~

内海

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2.強盗団E・D・D

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 扉を開けて入ると中は沢山の冒険者であふれかえっていた。随分と人が多いな、全員冒険者なのか?

 受付を探してうろついていると、いかついオッサンが声をかけてきた。

「おうお前、見ない顔だがいい鎧を持ってるな。俺と勝負しないか?俺が勝ったらその鎧をくれ」

 いきなり何言ってるんだこのオッサンは。そんなもの受けるはずないだろ。

「受け付けがどこか教えてくれませんか、ギルドに登録したいんです」

「ああん?お前登録してねーのかよ。チッ、あそこだよ」

 オッサンが面倒くさそうに親指で刺した先にはカウンターがあって女の人が書類仕事をしていた。

「ありがとう」

「あ?」

 なぜかオッサンは口をあんぐりと開けていたがまあいい。今は登録が先だ。

「こんにちは、冒険者の登録をしたいんですがここでいいですか?」

「え?あはい、こちらで大丈夫ですが……?」

 肩あたりまで伸びた銀色の髪と細長い眼鏡がとても知的な女性だ。白を基調とした服で青い装飾が数か所についている。

 しかしなにやら歯切れが悪い。

「では登録をお願いします」

「え、ああはいすみません!ではこの紙に名前とクラスを書いてください」

 差し出された紙に名前を……どうしよう、このゲームの時のユウにするか最近使っているユグドラにするか……ユグドラにしよう。

「クラスってなんですか?」

「そこは大雑把で構いません、戦士とか魔法使いとか」

 そういう事か、じゃあ戦士っと。

 紙を渡すと今度は水晶に手をかざす様に言われた。どうやら魔力やら何やらの生体情報を登録するらしい。すげぇ、日本より進んでる。

「はい、ではこちらがユグドラさんの冒険者カードになります。ギルドで依頼を受ける時や街に入る時に必要ですから無くさない様にお願いします」

「はーい」

「ちなみに使用する武器はなんですか?」

「私はこれを使っています」

 背中に担いでいた斧、60センチある柄の先が尖っている丸い両刃の巨大な斧を見せた。

「あの……木こりさんでしたら生産系ギルドの登録になるんですが」

「え?いえいえ冒険者になりたいんですけど」

 そこでギルド内に居る冒険者全員が大笑いした。

「おいおいボウズ、そんなデケー斧を振り回して何するつもりだ?敵は木と違って動いてるんだぜ~?ぶあっはっはっは」

 どうやら斧は武器と思われていないようだ。確かに俺が持っている伐採スキルは木を効率よく切るためのスキルだから間違いじゃないけど。

 くそう、この世界はとことん俺のスタイルを否定してくる!

「ユグドラさん、ギルドの向かいに武器屋がありますからそこで剣を購入してください。でないと依頼を回せなくなってしまいます」

「……ひゃい」

 はいという気力すらわかず、笑い声を背にして武器屋に入った。

「おうあんちゃん、ギルドで随分でけー声がしたが何があったんだ?」

 武器屋にまで響き渡っていたらしい笑い声の話題には何も答えず、剣を漁り始めた。

 うーん良いものが無いな。ここはあれか、RPGの最初の街だから大した物がないのかな。

 切れ味はどれも変わらない様に見えたから、ぶっ叩きやすい大きめの剣にしよう。

「これいくらですか?」

「んん?そいつは6シルバーだな」

 しるばー?えーっとたしかUO内での通貨はGPだったけどGPはゴールドポイントだったかな、シルバーって銀か?

 分からないからすっとぼけて6GP渡した。

「あんちゃん、このコインは見た事がねーな。金に間違いない様だが……ちょっと待ってろ、重さを量る」

 カウンターの真横に置いてある天秤で量り始めた。

「うーん少し重いか?まあ大体1ゴールドだな。5ゴールドは返すよ。あとお釣りの4シルバーだ。ありがとよ」

「どーも」

 よかった、手持ちの金は使えるようだ。正直数億GPあるから無駄にならなくてホッとしている。

 さて、斧は背中のマントの内側に担いで剣を左腰に下げた。冒険者ギルドで依頼を受けようと中に入ると相変わらず全員がニヤニヤしていたのは逆に驚いた。

「初心者向けの仕事はありますか?」

 受付のお姉さんにたずねると今からなら馬車の護衛の任務があると教えてくれた。

 護衛はもっと慣れた冒険者向けじゃないのかと思ったが、どうやら午前中に大きな商会の護衛があったらしく、そこでほとんどモンスターは倒してしまって昼からの護衛は大体暇なんだそうだ。

 午前中は熟練者向け、昼からは初心者向けと別れているらしい。

 ならばと早速依頼を受け、隣町への護衛をする事にした。

 集合場所に行くと荷馬車が二台と冒険者が四人いた。本当は護衛を六人依頼していたらしいが、毎回暇なので五人でもいいそうだ。

 あれ?これフラグか???

 とはいうものの本当に暇だった。街道は整備されているし商人も冒険者もいい人で話をしていて楽しい。



 馬車で半日の距離らしいけど、これは確かに初心者に丁度いいかもしれない。

 前方には女性冒険者と男性冒険者が馬車の後ろに腰をかけ、俺と二人の若い冒険者は後ろの馬車に腰かけている。なかなかに尻が痛い。

 初心者だからと色々教えてもらっている最中にとても気になる情報を入手した。

 どうやら斧を使って戦う人など聞いたこともなく、赤青黄の衣装を着たピエロがいるらしい。マジかよ。

 唯一の苦痛である尻の痛さを我慢しつつ、陽気に当てられウトウトしていると馬車が止まった。

 あれ?目的地の街までやっと中間地点かどうかという場所のはずだけど、何かトラブルがあったのかな?

「へっへっへ、馬車と有り金を置いていきな。そうすれば命は助けてやるよ」

 という定型文が耳に入ってきた。

 馬車を降りて前に行くと盗賊らしき男が十人ほどいた。恐らく他にも隠れている盗賊がいるはずだ。きっと木の上で弓を構えているはずさ。これもお決まりだ。

「お前たちのような賊に渡すものなど何もない!大人しく引き下がるならよし、さもなくば痛い目を見るぞ!」

 冒険者のリーダーらしき人物が剣を抜いて盗賊に言い放つ。

 ああ定型文。

 つまり定型文通りならばこれで引き下がるはずもなく、次に訪れる定型文は状況によって変わってくる。

 1、実は四人の冒険者は超強くて軽く盗賊を撃退する。

 2、盗賊は高額の賞金首で俺達を皆殺しにしてさらに賞金が上がる。

 3、通りすがりの勇者様が助けてくれる。

 お願いだから1か3であってください冒険者様。という願いも空しく、やはりこの依頼を受けたのは初心者だった。

 人数でも腕でも場数でも負けており、四人とも手も足もでない。俺はというと、剣の扱い方が分からずに護衛対象の商人並みに役立っていない。

「へっへっへ、やっぱりこの時間の馬車を襲って正解だぜ。護衛なんてあって無いのと同じだ!」

「お頭ぁ!あのピエロもどき貰ってもいいですかい?」

 一人のモヒカン盗賊が俺を指さし、首領らしき人物に話しかけている。

「かまわねぇが、お前そっちの趣味があったのか?」

「違いますよ、わざわざ金払ってサーカス見に行ったのに、ピエロがとんでもなくつまらなかったから腹いせでさぁ」

 とんだとばっちりだ!

「なら好きにしろ。あのピエロはオレも嫌いだ」

 他の人を不幸にするなよピエロ!

「へっへっへ、とりあえず下手なジャグリングが出来ない様に腕を……あん? ぷっ、くわっはっはっは! こいつ斧なんて持ってやがるぜ! 木こりちゃ~ん、あの世で思う存分木をきっ」

 木こりちゃ~ん、あたりでキレた。

 モヒカン盗賊が縦に真っ二つになった。いや斧で真っ二つにしてやった。ついでに青いローブも着てやった。

「なんなんだよこの世界は……俺は斧が好きだしピエロでもない! このシグナルスタイルも俺がオリジナルだ!!」

 剣を盗賊に向けて投げ捨てて一人二人と順番に斧で切り殺す。

「な、なんだこいつギャッ」

 多分今切った奴は剣でガードしたつもりだったろうが、剣ごと切ってやった。

 全員が俺に襲い掛かってきたが、距離がバラバラなため近いやつから順番に倒していく。

 そして予想通り矢が飛んで来た。真後ろから一本、左から二本、三人潜んでいたのか。だが巨大な斧は盾にも使える、三本とも斧で弾いた。

 完全に頭に血が昇っていたせいか何人盗賊を倒したか覚えていない、とりあえず目の前に立っている盗賊の姿は無くなった。なので矢を撃ってきた三人を始末しようと振り向くと慌てて木から降りて逃げようとしていた。

 かなり離れていたので瞬間移動をして真後ろに居た一人を、もう一度瞬間移動をして二人を斬った。

 最初のモヒカン盗賊を斬ってから十分も経っていないだろうか、他に気配がないようなので盗賊の鎮圧を完了した。

「斧は強いんだぞ……バカにすんなよ」

 初陣を勝利で飾った時の決めゼリフを考えてあったのだが、いまは本当に素直な感情が出てしまった。

「す、すげぇ……あんたなにもんだよ」

 冒険者のリーダーが最初に声をだした。

 それからは商人も含めて質問攻めだ。

「一瞬で離れた場所に行ったように見えたけどあれはなんですか!」

「あ、あれはアイテムに瞬間移動の魔法が掛かってて」

「でっかい斧を片手で振り回してたけどひょっとして軽いのかアレ!」

「えと、持ってみます?」

 手渡すと肩が抜けそうな勢いで地面に落とした。

「名のある冒険者なんだろう? 本名を教えてくれよ!」

「いや本当にユグドラっていうんですけど」

「じゃあ百戦錬磨の傭兵か!?」

「今日が初陣です」

 その後も馬車の中で質問攻めにあった。嬉しさもあったがゲームのスキルやステータスが役に立った事に一番安堵していた。

 必殺技も無い、ただ斧の扱いがうまく、戦い方を考える力がある。そういったスキルはきちんと機能していたという事は、プレイヤーによってさらに強くなることが出来るからだ。

 この世界の戦いに慣れる。それが死なないための近道なのかもしれない。



 そろそろ目的の街が見えてきたころ、寝ていた冒険者リーダーがうめき声をあげた。

 他の三人はかすり傷程度だが、リーダーは深手を負ってしまったのだ。

 三人が応急処置をしたが容態はよくない。あれ、そういえば俺治療のスキルもってるな。

 ゲームでは包帯を巻くだけだったが、ここではどうなんだろう。バッグの中を探してみると見慣れないアイテムがあった。

 治療セット。まんまな名前だが、使い方はどうするんだ?ゲームではアイテムをダブルクリックしてカーソルを治療対象に左クリックだったけど……

 とりあえず治療セットをダブルクリックした。対象を選択してくださいと表示がでて右手に丸いカーソルがくっついてきたからリーダーの傷口に手を当てた。

 すると二秒からカウントダウンが始まり0になって治療が終わったらしい。見た目では……リーダーの顔色が良くなっている。

「なんだ、なにをしたんだ?全然痛くなくなったぞ」

 リーダーは何があったのか理解できず、傷口があった付近をなでている。まだ乾いていない血をふき取ると完全に傷口が無くなっていた。塞がっているわけではなく、傷そのものが無くなっていた。

「あなたは医療の心得もあったのね。ありがとう、本当にありがとう」

 そういって女性冒険者は涙を流しながらリーダーに抱き付いている。

 ちょっと可愛いなと思っていたけど、リア充爆発しろ。

 あ、治療セットが百十個から百九個になってた。一個の消費で済むのか。



 街に到着し、護衛依頼の紙に商人のサインをもらって四人の冒険者と一緒にギルドへ向かった。

 ついでに途中で倒した盗賊の身元が分かる様に生首を二つ持っている。ひょっとしたら賞金が掛かっているかもしれないらしい。



「これはE・D・Dの首領ではありませんか!」
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