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3.やっぱり人よりモンスターが怖いです
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こっちの街のギルドで護衛完了の報告をした後で、盗賊の首領とモヒカンの首を見せると受付の女性にとてつもなく驚かれた。
ちなみに腰まである金髪でかわいらしい系の女の子だ。衣装は前の街の受付と同じだった。
ギルドの制服なのかな?
モヒカンは首の付け根から股まで真っ二つにしたので首が残っていてよかった。
どうやらここらでは有名な盗賊団らしく、アジトをころころ変えるために足取りがつかめなかったのだとか。
十~十三人ほど倒したと言ったら
「それって壊滅したんじゃぁ……」
そういって受付の子はどこかに連絡を始めると、別の受付の男性に盗賊を倒した正確な場所を聞かれた。俺には分からなかったから、一緒に居た冒険者が答えてくれた。
しばらく待っていてくれと言われギルド内でお茶していると、受付が騒がしくなってきた。
なにやら荷物が運び込まれているようだが、箱が沢山あるな……備品の搬入か?
「ユグドラさんと四人の冒険者さん、二階に来てください」
そう女性に言われて二階へと案内された。
案内された部屋に入ると中には白いあごひげの小さい爺さんが机の向こうで椅子に座り、その横に革鎧を着たごついおっさんが立っていた。
「君たちがE・D・Dを壊滅させた冒険者ですか」
俺達がソファーに座ると同時に革鎧のおっさんが聞いてきた。
「私達が、ではなくユグドラさんが、ですね」
リーダーの返答に三人はウンウンとうなずいている。
「ユグドラ君、君はついさっきギルドに登録したばかりじゃが、今までは何をやっていたのじゃ?」
あごひげ爺さんがひげを撫でながら聞いてきた。
ただの流れの旅人ですよ。あちこちでトラブルに巻き込まれましたがね、クックック。
という答えを用意していたのだが、いざ言おうとすると恥ずかしくてとても言えない。
「あの、ただの旅人です。田舎では木こりをしていました」
うわー!木こりって認めちゃったよ俺!
「ふむ、ピエロではないのか」
くたばれクソジジイ。
「君が瞬間移動をしたと商人が言っておったのじゃが本当かね?」
ああ商人にも話を聞いたのか。なんだか随分と大ごとになってしまったな。
適当に誤魔化しておいた方が良かったかな。
「はい、この指輪に瞬間移動の魔法が掛けられています。あと一~二回で使えなくなりますが」
多用はできない事をアピールしておこう。本当はバッグに沢山入っているけど。
「見せてもらってもいいかな」
「指から外さない状態でなら、どうぞ」
ジジイとオッサンは差し出した俺の左手の指輪を凝視している。こんなオッサンとジジイじゃなく受付の女の子に見つめられたい。
「これが……古文書に書いてあったテレポートリング……」
「まさか現存しているとは思いませんでした」
古文書?えっと、マジでやばい代物だったのかな。ちなみにゲームでは程々のモンスターがドロップして、テレポート回数によって金額が変わるが一回百GPが相場だった。
一番弱いゾンビを倒して十~二十GPドロップする事を考えると百GPが大したことない額だとわかる。
「その指輪、五千ゴールドで売ってはくれんか?」
「五千ゴールド!!!」
なぜか四人の冒険者が驚いた。ギルドに来る途中で宿一泊の値段を見てきたが、素泊まり四シルバーほどで、朝晩の飯付きで五~六シルバーだった。
多分一シルバーが千円ほどで、武器屋で買った剣のお釣りで考えると一ゴールドは一万円だろう。
つまり五千万円で売ってくれと言っているわけだ。高いのか安いのか分からない。古文書レベルはこれ位なのか?
「ダメかな」
「マスター、彼が悩むのも仕方ありません。モノがモノですから」
「すみませんが、これは祖父の形見でもありますので」
はいでまかせです!売らない方がいいと判断しました!金には多分困らないし、金を払えば古文書レベルが手に入ると思われたら困るからね。
手持ちのアイテムがどれほどの価値があるのか分かるまでは、売買禁止にしよう。
できれば今日は護衛の金をもらって街を見て回りたい。できればマジックアイテムの価格を知りたい。
「ふむそうじゃな、すまんかった」
「では今日は護衛任務の報酬を渡そう」
うし、どこを見て回ろうかな。
「E・D・Dを壊滅させた分の達成額と賞金首の分を上乗せし、少し色を付けておいた」
そういえばそんな話もありましたねぇ、すっかり忘れてた。
革鎧のおっさんは革袋を机の上に、重そうな音を立てて置いた。
「しめて五十ゴールドだ。これからも頼むよ」
たしか護衛の任務が一人五シルバーだったはず、五十ゴールド?五十万円?
精々十ゴールド位かと思っていたが随分多いな。
五人居るから一人十ゴールドでいいのかな。
「じゃあ五人で山分けして一人十ゴールドですね」
そう提案すると四人は首を大きく横に振った。
「?」
「ユグドラさん流石に勘弁してくれ。俺たちは何もしてない上に怪我まで治してもらったんだぜ。護衛任務四人分の二ゴールドだけでいい」
そういう物なのかな。でも女冒険者ちゃんはカワイイし道中も楽しかったんだよな~……よく見ると四人の鎧が少し傷んでるみたいだし修理代も必要だろう。
「じゃあ私の初任務成功のお祝いとして四十ゴールド貰っておきます。十ゴールドは受け取ってくれませんか」
「しかし……」
「道中で色々教えてもらいましたしね。情報料とでも思って下さい」
「ありがとう。俺達にできる事があったら何でも言ってくれ、すぐに手伝いに行くよ」
そうして俺達は別れ、街の観光をする事にした。
街を見て回って分かったことは、マジックアイテムが一つも売っていない事だ。
魔術ギルドにでも売っていないかと思ったが、この街には魔術ギルドは無く、魔術ギルドは王都オンディーナにしかないらしい。
そういえばさっきの4人冒険者にも前の街にも、この街の冒険者ギルドにも魔法使いっぽい人は居なかった。
魔法が強くない世界なのかな?
鍛冶ギルドの近くには鍛冶屋が多く、冒険者ギルドの近くには武器や防具、道具屋が多い。大通りには色々な店が出ている。
食い物は分からないが、とにかく武器も防具も品質が悪い。チェインメイルやレザーアーマーにしても標準か低品質な物しかない。
そりゃー俺の鎧を見て驚く訳だ。
っと、暗くなってきたな。さっさと宿を決めて飯でも食うとしよう。
街に入ってすぐに目に入った木で建てられた宿屋に入ると、五シルバー支払い部屋に荷物を置いた。
ちょっと狭いビジネスホテルと言った感じの部屋で、俺は木製のベッドに座ると担いでいた斧を壁に立てかける。戦闘の後で手入れをしたから血はついていないが、少々切れ味が悪くなっていた。
メニュー画面のバッグを触るとバッグの中身が立体映像のように目の前に現れる。
何度か使っているがまだ慣れない。
寝る時に邪魔だろうから鎧を外してバッグに入れ、帽子とマントも片づけた。
青いローブを脱ごうか悩んだが、トレーナーを他の人に見られても大丈夫なのか分からないので、ローブは着たままにした。俺は裸族ではないのでな。
翌朝目が覚めると、宿の1階で朝食を取り、装備を整えて冒険者ギルドへ向かう。
今日は護衛以外の仕事をしようと思っている。
元気よくギルドに入り、受付の女の子の笑顔に癒されて一日の活力を得た俺は、手頃な依頼が無いか訊ねたのだがなにやら悩んでいるようだ。
「ユグドラさんの場合は初心者なのですが、E・D・Dを壊滅させた実績もありますので、果たしてどれが丁度いい依頼なのか分からないんです」
「そっか、じゃあE・D・Dより賞金の高いやつはいますか?」
「いるにはいますが、アジトの場所も分からないので長期間の任務になりますが、いいですか?」
「それは難しいな……じゃあ昨日の護衛よりも難易度の高い依頼は?」
「それですと、大手商会の護衛任務があります。もう少ししたら出発なので急いだほうがいいですよ」
「わっかりました!じゃあ今すぐ行ってきます!」
待ち合わせ場所に着くと大きな荷馬車が十台以上、冒険者らしいメンバーが二十人以上いた。
なるほど、これは昨日受けた午後の部の護衛とは規模が違うな。
依頼主らしい商人に話をすると、今回護衛をする冒険者のリーダーに紹介された。
「ん?ひょっとしてお前はE・D・Dを壊滅させた新人か?」
俺よりも随分と背が高く筋肉質、スキンヘッドの男だ。腰に下げられた剣は標準品、チェインメイルも標準品だ。
ちなみにこの街の鍛冶屋で手に入る物は九割が低品質で標準品質は一割しかない。つまりこの冒険者の装備はかなり良い部類に入る。
「壊滅させたのは他にも四人居たからですが、一応私も居ました」
「ははは、冒険者の癖に腰が低いな!もっと自信を持て自信を!」
バンバン背中を叩かれて少し前によろけてしまったが、他の冒険者にも紹介してくれたし皆いい人たちだった。この世界の冒険者はいい人が多くて助かる。
荷馬車には冒険者が二~三人乗り、先頭と中央、最後尾の馬車には腕の立つ冒険者が配置された。俺は中央の馬車に乗り熟練冒険者の庇護下でヌクヌクと街へ向かう事になった。
予想通りというか何というか、E・D・Dの事を沢山聞かれた。どうやらこの熟練冒険者(スキンヘッドリーダーほど筋肉質ではないが、もみ上げからアゴまで細いヒゲがつながっている)はE・D・Dを狙っていたらしく、この街道の護衛を繰り返し受けていたそうだ。
その他にも色々と話を聞いた。モンスターも朝は腹が減るらしく午前中は活動が活発になり、昼から夜は寝ている。夜は夜で夜行性のモンスターが活動するので昼間に行動するのが一番安全らしい。
ただし人間はその限りではない。E・D・Dの様に時間に関係なく襲ってくる。
「人間が一番こえーよ、ホント」
いやーホント人間は怖いですよね~などと話しを合わせましたが嘘ですごめんなさい。目の前に広がる光景を目の当たりにしたらやっぱりモンスターが怖いです。
遠くからゆっくりゆっくりと近づく無数の人影に囲まれ、気が付いた時には三百六十度ゾンビとスケルトンに囲まれていた。
正確な数なんて分からないが、例えるなら野球場のグラウンドと客席が満杯になるくらいのアンデッドの中心に俺達がいる様な状態?かな。
一匹一匹は弱いけど、これだけの数に囲まれては絶望しか見えない。アンデッドの仲間入りなんて御免だ。
そう、俺はメインヒロインに巡り合わずして死ぬつもりなど毛頭ない!
冒険者が荷馬車を囲むように円陣を組む。とにかく切って切って切りまくるしかない。
一時間ほどが経過しただろうか。流石に熟練冒険者だけあってまだ誰も脱落しておらず、荷馬車も襲われていない。
しかしスタミナが持たない。一時間でスタミナ切れしたわけでは無いようだが、どれだけ戦ってもゾンビが減っているようには見えない。
実際には減っているはずだ。なのだが元々の数が多すぎる。永遠とアンデッドの相手をしなくてはいけないのかと不安になり弱気にもなるだろう。
このままでは埒があかない。クソッ、せめて魔法キャラだったら範囲魔法で一網打尽にできるのに。
俺のアカウントにあった他のキャラはどうなってるんだ?せめて全キャラの能力を一人にまとめてくれればゾンビくらい簡単に倒せるのに!
何か手持ちの道具で役立つものが無いか探していたが、今まで無かったはずの表示が追加されていた。
キャラクターチェンジ
これは……そういう事なのか?もしそうなら魔法キャラに変更して範囲魔法を使えば、低級アンデッド程度簡単に倒せる。
人差し指で文字を触ると六つの名前が表示される。
一つは今の俺であるユウ、そしてその下にルリ子と書かれている。魔法使いだ。
だがどうする?ここでキャラが変わったら俺が怪しまれやしないか?
なら小芝居をうつことにしよう。
「ああ!あそこに味方がいるぞ!俺が行って呼んでくるからもう少し辛抱してくれー!」
そのままゾンビの大群の中に単身飛び込んでいく。まあゾンビの攻撃なんてダメージ通らないから実は一人なら何とかなる。
しかし今は護衛対象や冒険者を守らなくてはいけない。
よし、ここまで来たら大丈夫、俺の姿が見えないだろう。
上手くいってくれよ!ルリ子の文字をクリックした。
体が光る。段々と俺ではない姿に変わっていく。そう、やっとアタシの出番かい?
ちなみに腰まである金髪でかわいらしい系の女の子だ。衣装は前の街の受付と同じだった。
ギルドの制服なのかな?
モヒカンは首の付け根から股まで真っ二つにしたので首が残っていてよかった。
どうやらここらでは有名な盗賊団らしく、アジトをころころ変えるために足取りがつかめなかったのだとか。
十~十三人ほど倒したと言ったら
「それって壊滅したんじゃぁ……」
そういって受付の子はどこかに連絡を始めると、別の受付の男性に盗賊を倒した正確な場所を聞かれた。俺には分からなかったから、一緒に居た冒険者が答えてくれた。
しばらく待っていてくれと言われギルド内でお茶していると、受付が騒がしくなってきた。
なにやら荷物が運び込まれているようだが、箱が沢山あるな……備品の搬入か?
「ユグドラさんと四人の冒険者さん、二階に来てください」
そう女性に言われて二階へと案内された。
案内された部屋に入ると中には白いあごひげの小さい爺さんが机の向こうで椅子に座り、その横に革鎧を着たごついおっさんが立っていた。
「君たちがE・D・Dを壊滅させた冒険者ですか」
俺達がソファーに座ると同時に革鎧のおっさんが聞いてきた。
「私達が、ではなくユグドラさんが、ですね」
リーダーの返答に三人はウンウンとうなずいている。
「ユグドラ君、君はついさっきギルドに登録したばかりじゃが、今までは何をやっていたのじゃ?」
あごひげ爺さんがひげを撫でながら聞いてきた。
ただの流れの旅人ですよ。あちこちでトラブルに巻き込まれましたがね、クックック。
という答えを用意していたのだが、いざ言おうとすると恥ずかしくてとても言えない。
「あの、ただの旅人です。田舎では木こりをしていました」
うわー!木こりって認めちゃったよ俺!
「ふむ、ピエロではないのか」
くたばれクソジジイ。
「君が瞬間移動をしたと商人が言っておったのじゃが本当かね?」
ああ商人にも話を聞いたのか。なんだか随分と大ごとになってしまったな。
適当に誤魔化しておいた方が良かったかな。
「はい、この指輪に瞬間移動の魔法が掛けられています。あと一~二回で使えなくなりますが」
多用はできない事をアピールしておこう。本当はバッグに沢山入っているけど。
「見せてもらってもいいかな」
「指から外さない状態でなら、どうぞ」
ジジイとオッサンは差し出した俺の左手の指輪を凝視している。こんなオッサンとジジイじゃなく受付の女の子に見つめられたい。
「これが……古文書に書いてあったテレポートリング……」
「まさか現存しているとは思いませんでした」
古文書?えっと、マジでやばい代物だったのかな。ちなみにゲームでは程々のモンスターがドロップして、テレポート回数によって金額が変わるが一回百GPが相場だった。
一番弱いゾンビを倒して十~二十GPドロップする事を考えると百GPが大したことない額だとわかる。
「その指輪、五千ゴールドで売ってはくれんか?」
「五千ゴールド!!!」
なぜか四人の冒険者が驚いた。ギルドに来る途中で宿一泊の値段を見てきたが、素泊まり四シルバーほどで、朝晩の飯付きで五~六シルバーだった。
多分一シルバーが千円ほどで、武器屋で買った剣のお釣りで考えると一ゴールドは一万円だろう。
つまり五千万円で売ってくれと言っているわけだ。高いのか安いのか分からない。古文書レベルはこれ位なのか?
「ダメかな」
「マスター、彼が悩むのも仕方ありません。モノがモノですから」
「すみませんが、これは祖父の形見でもありますので」
はいでまかせです!売らない方がいいと判断しました!金には多分困らないし、金を払えば古文書レベルが手に入ると思われたら困るからね。
手持ちのアイテムがどれほどの価値があるのか分かるまでは、売買禁止にしよう。
できれば今日は護衛の金をもらって街を見て回りたい。できればマジックアイテムの価格を知りたい。
「ふむそうじゃな、すまんかった」
「では今日は護衛任務の報酬を渡そう」
うし、どこを見て回ろうかな。
「E・D・Dを壊滅させた分の達成額と賞金首の分を上乗せし、少し色を付けておいた」
そういえばそんな話もありましたねぇ、すっかり忘れてた。
革鎧のおっさんは革袋を机の上に、重そうな音を立てて置いた。
「しめて五十ゴールドだ。これからも頼むよ」
たしか護衛の任務が一人五シルバーだったはず、五十ゴールド?五十万円?
精々十ゴールド位かと思っていたが随分多いな。
五人居るから一人十ゴールドでいいのかな。
「じゃあ五人で山分けして一人十ゴールドですね」
そう提案すると四人は首を大きく横に振った。
「?」
「ユグドラさん流石に勘弁してくれ。俺たちは何もしてない上に怪我まで治してもらったんだぜ。護衛任務四人分の二ゴールドだけでいい」
そういう物なのかな。でも女冒険者ちゃんはカワイイし道中も楽しかったんだよな~……よく見ると四人の鎧が少し傷んでるみたいだし修理代も必要だろう。
「じゃあ私の初任務成功のお祝いとして四十ゴールド貰っておきます。十ゴールドは受け取ってくれませんか」
「しかし……」
「道中で色々教えてもらいましたしね。情報料とでも思って下さい」
「ありがとう。俺達にできる事があったら何でも言ってくれ、すぐに手伝いに行くよ」
そうして俺達は別れ、街の観光をする事にした。
街を見て回って分かったことは、マジックアイテムが一つも売っていない事だ。
魔術ギルドにでも売っていないかと思ったが、この街には魔術ギルドは無く、魔術ギルドは王都オンディーナにしかないらしい。
そういえばさっきの4人冒険者にも前の街にも、この街の冒険者ギルドにも魔法使いっぽい人は居なかった。
魔法が強くない世界なのかな?
鍛冶ギルドの近くには鍛冶屋が多く、冒険者ギルドの近くには武器や防具、道具屋が多い。大通りには色々な店が出ている。
食い物は分からないが、とにかく武器も防具も品質が悪い。チェインメイルやレザーアーマーにしても標準か低品質な物しかない。
そりゃー俺の鎧を見て驚く訳だ。
っと、暗くなってきたな。さっさと宿を決めて飯でも食うとしよう。
街に入ってすぐに目に入った木で建てられた宿屋に入ると、五シルバー支払い部屋に荷物を置いた。
ちょっと狭いビジネスホテルと言った感じの部屋で、俺は木製のベッドに座ると担いでいた斧を壁に立てかける。戦闘の後で手入れをしたから血はついていないが、少々切れ味が悪くなっていた。
メニュー画面のバッグを触るとバッグの中身が立体映像のように目の前に現れる。
何度か使っているがまだ慣れない。
寝る時に邪魔だろうから鎧を外してバッグに入れ、帽子とマントも片づけた。
青いローブを脱ごうか悩んだが、トレーナーを他の人に見られても大丈夫なのか分からないので、ローブは着たままにした。俺は裸族ではないのでな。
翌朝目が覚めると、宿の1階で朝食を取り、装備を整えて冒険者ギルドへ向かう。
今日は護衛以外の仕事をしようと思っている。
元気よくギルドに入り、受付の女の子の笑顔に癒されて一日の活力を得た俺は、手頃な依頼が無いか訊ねたのだがなにやら悩んでいるようだ。
「ユグドラさんの場合は初心者なのですが、E・D・Dを壊滅させた実績もありますので、果たしてどれが丁度いい依頼なのか分からないんです」
「そっか、じゃあE・D・Dより賞金の高いやつはいますか?」
「いるにはいますが、アジトの場所も分からないので長期間の任務になりますが、いいですか?」
「それは難しいな……じゃあ昨日の護衛よりも難易度の高い依頼は?」
「それですと、大手商会の護衛任務があります。もう少ししたら出発なので急いだほうがいいですよ」
「わっかりました!じゃあ今すぐ行ってきます!」
待ち合わせ場所に着くと大きな荷馬車が十台以上、冒険者らしいメンバーが二十人以上いた。
なるほど、これは昨日受けた午後の部の護衛とは規模が違うな。
依頼主らしい商人に話をすると、今回護衛をする冒険者のリーダーに紹介された。
「ん?ひょっとしてお前はE・D・Dを壊滅させた新人か?」
俺よりも随分と背が高く筋肉質、スキンヘッドの男だ。腰に下げられた剣は標準品、チェインメイルも標準品だ。
ちなみにこの街の鍛冶屋で手に入る物は九割が低品質で標準品質は一割しかない。つまりこの冒険者の装備はかなり良い部類に入る。
「壊滅させたのは他にも四人居たからですが、一応私も居ました」
「ははは、冒険者の癖に腰が低いな!もっと自信を持て自信を!」
バンバン背中を叩かれて少し前によろけてしまったが、他の冒険者にも紹介してくれたし皆いい人たちだった。この世界の冒険者はいい人が多くて助かる。
荷馬車には冒険者が二~三人乗り、先頭と中央、最後尾の馬車には腕の立つ冒険者が配置された。俺は中央の馬車に乗り熟練冒険者の庇護下でヌクヌクと街へ向かう事になった。
予想通りというか何というか、E・D・Dの事を沢山聞かれた。どうやらこの熟練冒険者(スキンヘッドリーダーほど筋肉質ではないが、もみ上げからアゴまで細いヒゲがつながっている)はE・D・Dを狙っていたらしく、この街道の護衛を繰り返し受けていたそうだ。
その他にも色々と話を聞いた。モンスターも朝は腹が減るらしく午前中は活動が活発になり、昼から夜は寝ている。夜は夜で夜行性のモンスターが活動するので昼間に行動するのが一番安全らしい。
ただし人間はその限りではない。E・D・Dの様に時間に関係なく襲ってくる。
「人間が一番こえーよ、ホント」
いやーホント人間は怖いですよね~などと話しを合わせましたが嘘ですごめんなさい。目の前に広がる光景を目の当たりにしたらやっぱりモンスターが怖いです。
遠くからゆっくりゆっくりと近づく無数の人影に囲まれ、気が付いた時には三百六十度ゾンビとスケルトンに囲まれていた。
正確な数なんて分からないが、例えるなら野球場のグラウンドと客席が満杯になるくらいのアンデッドの中心に俺達がいる様な状態?かな。
一匹一匹は弱いけど、これだけの数に囲まれては絶望しか見えない。アンデッドの仲間入りなんて御免だ。
そう、俺はメインヒロインに巡り合わずして死ぬつもりなど毛頭ない!
冒険者が荷馬車を囲むように円陣を組む。とにかく切って切って切りまくるしかない。
一時間ほどが経過しただろうか。流石に熟練冒険者だけあってまだ誰も脱落しておらず、荷馬車も襲われていない。
しかしスタミナが持たない。一時間でスタミナ切れしたわけでは無いようだが、どれだけ戦ってもゾンビが減っているようには見えない。
実際には減っているはずだ。なのだが元々の数が多すぎる。永遠とアンデッドの相手をしなくてはいけないのかと不安になり弱気にもなるだろう。
このままでは埒があかない。クソッ、せめて魔法キャラだったら範囲魔法で一網打尽にできるのに。
俺のアカウントにあった他のキャラはどうなってるんだ?せめて全キャラの能力を一人にまとめてくれればゾンビくらい簡単に倒せるのに!
何か手持ちの道具で役立つものが無いか探していたが、今まで無かったはずの表示が追加されていた。
キャラクターチェンジ
これは……そういう事なのか?もしそうなら魔法キャラに変更して範囲魔法を使えば、低級アンデッド程度簡単に倒せる。
人差し指で文字を触ると六つの名前が表示される。
一つは今の俺であるユウ、そしてその下にルリ子と書かれている。魔法使いだ。
だがどうする?ここでキャラが変わったら俺が怪しまれやしないか?
なら小芝居をうつことにしよう。
「ああ!あそこに味方がいるぞ!俺が行って呼んでくるからもう少し辛抱してくれー!」
そのままゾンビの大群の中に単身飛び込んでいく。まあゾンビの攻撃なんてダメージ通らないから実は一人なら何とかなる。
しかし今は護衛対象や冒険者を守らなくてはいけない。
よし、ここまで来たら大丈夫、俺の姿が見えないだろう。
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