幻の不安と恋人の愛

うたん

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幻の不安と恋人の愛

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この世には、手を出してはいけないものが存在する。
手を出してしまえば最後、多額の財を払わされるか、身元を割られ追われるか。
自分には関係ない、そう思っていたのに。

僕「ん?」

ある一件の通知が来た。
いつ追加したかわからない公式LINEからだ。
トークを開くと、そこには

僕「当選?……って、150万?!」

なんと、数万人の中から選ばれ、150万円が配布されるイベントに当たったのだ。

僕はそこに記載されたURLをタップし、新しく受け取り用のトークアカウントを追加した。
そして、そこに送られてきたURLからサイトに飛び、銀行名、支店、名義、電話番号を入力した。
そして

僕「1500円のギフトカードで支払い?」

本人確認のための手数料として、ギフトカードで支払いをしなければいけないようだった。

僕はこの時に思った、詐欺では無いかと。
テレビやネットで散々みてきた詐欺の手口、だから僕はこういう時のための対策を常に考えていた。

無視することだ。
無視していれば、相手は諦めて違う人の所へ行くからである。

数分後

スマホに通知が来る。
開けてみると、そこには

[このまま放置されますと、法的措置を取らせていただく可能性があります]

と書かれていた。
その下には、なにやら難しそうな法律が並べられていて、さらに下には差押え予告や告訴などの言葉も書かれていた。

僕「詐欺…だから」

詐欺だから大丈夫、そんなことできない、こっちのことは何も知らないんだ。
そう思っていたが、僕はふと先程入力した内容を思い出した。

僕「あ…あ…」

怖くなった僕は、何もできずにただ眺めることしか出来なかった。

それから30分~1時間のペースで通知が来ていた。
その度、内容は怖くなっていき、警察からの出頭命令の簡易はがきが来るとか、訪問者が向かうとか、そんな事を言われ、僕はもう既に泣く寸前だった。

そんな時だった。

葵「ただいまー」
僕「葵…」
葵「え?!どうしたの?!何があったの?!」

同棲している彼女の葵が帰ってきた、僕の涙目を見るや否やすぐ駆け寄ってきた彼女に、僕は全てを話した。

葵「そっか…怖かったね」

そういうと彼女は、僕の頭をぎゅっと抱きしめてくれた。

葵「大丈夫、私がいるよ、私が守るから」
僕「でも…電話番号入力しちゃったし…名前も…」

電話番号も名前も知られている、そこから住所を特定され、誰かが来る、そう考えたら怖くてたまらなかった。

葵「じゃあ茅斗…携帯変えよっか」
僕「え…?」

僕を抱きしめながら優しくそういう彼女に、僕は困惑していた。

葵「携帯変えて、電話番号も変えたら大丈夫でしょ?」
僕「あ…そっか…でも…」
葵「でも?」
僕「住所も知られてるかも…」
葵「住所は書いたの?」
僕「書いてないけど…でも、電話番号と名前書いたし…」
葵「そっか、じゃあ、念の為お外に出ちゃダメだよ?私が全部やってあげる、だから安心して?」

僕の頬を撫で、優しくそう言う彼女、僕は、先程までの不安も相まって今安心をした事で再び涙が溢れていた。
そんな僕を、彼女は何も言うことなく、ただただ僕の頭を撫でてくれていた。

数日後、あのメールにあったような訪問者や簡易はがきなどは来ていなかった。
なので安心してきた僕は、久しぶりに外に出ようと、玄関で靴を履いていた。

葵「何してるの!」

後ろから声をかけられた。
普段叫ぶことのない彼女の、叫び声に近い声だった。

僕「え…外に出ようかなって…買い物とか」
葵「住所知られてるんだよ?もし見つかったら、追いかけられて捕まるかもしれないんだよ?」
僕「でも結局来てないし…」
葵「そんなの関係ないの、住所知られてるんだよ?」
葵「見つかっちゃったら、私と離れないといけないんだよ?それでもいいの?嫌でしょ?」
僕「それは…嫌だ」

葵と離れるなんて、嫌だ。
葵と離れるくらいなら、外に出なくていい、見つかって、この生活が壊れるくらいなら。

葵「…うん、それでいいよ」

葵は、いつもと変わらない優しい声でそう言って、そっと抱きしめてくれた。

葵「私が全部やる、だから、なんでも欲しいものがあったら言ってね、私がするから、あなたと離れるのは嫌なの」
僕「うん…」

どこまでも優しい彼女、僕は彼女の事が大好きだ、今回の件の不安も、彼女がいれば怖くなかった。
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