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39 いい感じになる秘密
しおりを挟む「と、いう訳でもう絶対に歌わないって決めたので大丈夫です。あいつらは私が歌うと文句を言ってくるので私が歌わなきゃ声をかけてきませんから」
「……そ、そうなの? わ、私、妖精とおしゃべりしてみたいわ」
「お母様、罵詈雑言を聞かされるだけですわよ」
「そ、それは嫌だわ……」
ちょっとむっとして言い返すとお母様はしおしおと小さくなってしまった。私はあんなやつらともう関わりたくないですよ!
「でもアリー。妖精達は最後に何か後悔しているようだったんじゃなかったのかい?」
「知りませんよ、人を笑い者にして喜んでいるような奴らの後悔なんて」
「もしかして、やり過ぎたから謝りたいと思っていたら?」
「謝罪されても許しませんよ!」
「……何か対価を求めることができるかもよ? 見るだけで幸せを運んでくる妖精だ。そんな存在から対価を受け取れたら……」
「えっ……」
そ、それは凄くいい物が貰えるんじゃ……あっ、ダメダメ。こういう欲は良くないし、ゲームにこんな設定なかったもの、きっと違うわ。たまたまよ、たまたま。
「……」
「……」
「……」
「……」
いい物、貰えるかしら……?
「……ちょ、ちょっとだけなら……」
「お庭で試してみましょう!」
だ、だっていい物よ、いい物! 妖精から何かいい物貰えるのよ!? 気になるでしょう!!
気合を入れる為に朝食を皆で食べて、庭に出る。お父様は笛、お母様はハープを持っていてお兄様は私の傍にいて
「嫌になったらすぐやめるんだよ」
「分かりました」
絶対いい物貰ってやる! 気合を入れてメロディを拾い始める。
「やーい、下手……」「こらっ!やめろって言っただろ」「悪かった、とは思ってる」「言い過ぎた」
なんと、すぐに声が聞こえ始めたし、反省しているみたい!
「ずーっと俺達の声が聞こえる奴がいなかったから暇だったんだよ」「血が薄くなってるからしゃあねえんだけどなー」「せっかく妖精とつながる魔力持ってんのに、アリシア使わねーし」
〈知らないわよ。そんなの!何かいい物ちょうだいよ!〉
「うわ、俗物~」「いやでもそういうトコ嫌いじゃねえよ?」「人間っぽくっていいよねー分かる分かる」「何欲しいの?」
〈考えてなかった……〉
「これだからアリシアは!!」「いや、人間ってそういうとこあるよねー」「欲しい物くらい決めればいいのにさー」
〈じゃ、じゃあお兄様にもフェンルースの血筋みたいな力上げてよ。家族なのに除け者っぽくて嫌なの〉
「簡単じゃん」「でも血が違うから定着しないかもだぜ」「まーでも除け者良くないよな、家族なのに」「エヴァン別に嫌いじゃねえしな~」
「「「ほほいの、ほい」」」
〈変な掛け声~〉
「妖精伝統の掛け声だっつーの」「わかってねえなあ、アリシアはよお」「今度からヤジは飛ばさねえからたまに歌えよ、俺らとはなそーぜー」
〈しょーがねーなー〉
「アリシア、口わるっ」「良いぜいいぜ、それくらいがちょうどいいじゃん」「また来てやっから風邪ひくなよ」
ぽろん……最後にお母様のハープが終わって曲が終了した。いやだわ結構話せるやつらだった。
「アリシア、どうだった?」
「妖精は確かに沢山来ていたけれど、私達には何の声も聞こえなかったのよ」
お父様とお母様が私に聞いて来たけれど、私じゃなくて聞くべきはお兄様なのよね。
「お兄様、どうですか?」
「……なにか……変な感じがする。何だろう……視線を感じるんだ、あちこちから。アリーは何をお願いしたんだ?」
「お兄様にもフェンルースの血筋みたいな力を下さいって。家族なのにお兄様だけ合奏に入れないのは嫌だって言ったんです」
私の願いにお兄様は物凄く驚いて目を見開いている。お母様とお父様もびっくりしたようだけれど、柔らかく微笑んでくれた。
「確かにそうだね……私達もずっとそう思っていた。私達は家族なのに、全員でできないのは寂しいってね。そうだ、試してみようじゃないか。エヴァン、何の楽器を持ってこようか」
「リュートなんてどうかしら? エヴァンは何でもできるけれど、私は今はリュートが良いって思うわ」
お父様もお母様もとても楽しそうにしている。メイドが気を利かせてすぐにリュートを持ってきてお兄様に渡してくれた。
「もう、悪口は言わないって約束してくれたから大丈夫ですよ、きっと倒れませんわ、私」
「そ、そうなのかい……でも、私がいたら……」
「これで駄目なら妖精の力はそんなもんだったんだーって吹聴しなくてはいけませんね」
「アリー……」
この後4人で合奏してみると、きちんと妖精たちは現れてくれた。
「さっきのお別れなんだったの?」「呼ぶのはやくね?」「ちょっといい感じでサヨナラしたのによー」
〈貰った力を試してみたいのは当たり前でしょ〉
「そりゃそうだな」「信じたか?」「俺ら天才だかんな」
〈ばっちりね! 天才だわ〉
「だろー! あっはっは! もっと褒めていいのだよ」「ふふふ! ついでに病避けの期間を伸ばしておこう」「体力つけろよ、応援してるぞ」
「わ……私がいても……妖精は来てくれる」
「エヴァンは私達の大事な息子ですもの」
「ずっと一緒にいてくれよ、エヴァン」
「はい……!」
めでたしめでたし!
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