【完結】悪役令嬢はご病弱!溺愛されても断罪後は引き篭もりますわよ?

鏑木 うりこ

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54 秘密めいた手紙

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 エヴァンお兄様はこほん、と一つ咳払いをして、平静な顔を作ってから殿下に努めて冷静な声色で話しかけました。

「……宜しければその手紙とやらを見せていただけませんか?」
「構わぬ」

 許可を頂き、殿下からピンクの封筒とピンクの便箋を受け取る。あて先はもちろん殿下の名前がかいてあり、差出人にはただ「A」と表記があるだけ。

「……これがアリシアからの手紙だと殿下は仰るのですね?」
「間違いなかろう?」

 エヴァンお兄様が受け取った手紙を見る……手紙は蝋で封をされていたけれど、その印は百合の花かしら?ど、どこの家紋か分からない……。

「うん、封が解かれているからあれだが、百合?フェンルース家が使うなら百合に妖精の羽根の図案だからうちではないな」
「え、フェンルース家の封蝋ではないのか?!」
「違いますね、似てもいません。あと筆跡がアリシアの物ではありませんね」

 当然よ、私はこんな手紙書いてないもの。横にいたミオさんがお行儀悪く顔を出す。

「あら、本当だわ。アリシア様はもう少し個性的な字を書きますもんね。何というか……もう少しご年配の方が書いたような字です」
「ミ、ミオさん」

 うっ!私があまり字が上手じゃないことを何故知っているのかしら!?って勉強のノートかな?寝込んでばかりだったので……練習がんばります……。

「エヴァン様、なんて書いてあるんですか?偽アリシア様からの手紙~」
「開けてみましょう、聖女様」

 かさり、と紙特有の音がして、手紙が開かれる。人の手紙を読むのはなんだか罪悪感が芽生えそうになるのに、ミオさんは躊躇いがなかった。

「えーと、愛しい王太子殿下様、いかがお過ごしでしょうか?わたくしはあなた様のことを考えると夜も眠れず……、アリシア様、寝込んでました?」
「さ、最近はそのようなことはありませんよ」

 寮で暮らし始めてからは、かなり体力も付きましたし。

「ですよね、毎日学園に来られてますもの。えーと、続き……あなた様とお話をしたくとも周りの邪魔がはいり、とても残念で涙で枕を濡らす日々でございます。婚約の方はお母様より、是非にのことで、我が家から書類が届き次第ーー」
「そしてアリシアの母親のフェンルース夫人から手紙が来ておる!みろ」

 得意満面で次の手紙を差し出して来る殿下だが、私を含め、皆それを見て固まってしまった。

「……ピンクですね」
「ええ」

 ミオさんの呟きに返事をしたのはカタリナで目がものすごく冷たい。

「……何故不思議に思わないのかしら?」

 ブランシェ様も呆れているし、私とエヴァンお兄様もびっくりして目を丸くしてしまいました。

「あれ?さっきの偽アリシアとおんなじ封筒に見えるけど、そっちはフェンルース夫人からの手紙なんですか?親子で同じ物ってあんまり使わないですよね?」
「え?」
「や!王太子殿下に差し上げるお手紙でしょう?季節や年代に合わせて変えるのが当たり前だって習いましたもん。貴族はそういう気の使い方が大事だって。あれ?封蝋の印も一緒ですか?あれ?なんか字の感じも似てません?まるで同じ人が書いたような気がします」
「え?な、そ、そんなはずは」

 殿下は急いエヴァンお兄様から私が書いたと言われている封筒を受け取り、私のお母様が書いたと言われる封筒と見比べた。

「お、同じ……だ」

 封筒も同じなら、筆跡もほとんど同じの手紙を見比べて殿下は呆然としている。ここまで来たらよほどの殿下でも気がつくでしょうね、その手紙がフェンルースから送られたものでない事に。

 内容が事実ではない事に。


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