55 / 78
55 秘密の手紙の主は?
しおりを挟む
「お判りですよね」
「……ま、まさか」
むしろ今まで気が付いていない方が不思議でならない気がする。まさか母と娘が同じ封筒を使い……これはあり得るかもしれないが、同じ筆跡で手紙を書く事なんてあるだろうか。
「こ、このフェンルース夫人の手紙には、アリシアは私と婚約を熱望している、今は学園に通えるほどの体力もついたから王妃としてもやって行けるだろう。もし、子供を産むことが難しければ側妃として仲の良いブランシェ・ルストバーン嬢を、と……このことはルストバーン家にも確約済みと……」
とんでもない内容の上にブランシェ様にまで飛び火をしたわ……なんだか申し訳ない。
「恐れながら殿下、私はそのようなお話は一切聞かされておりませんし、我が家で私が側妃候補に上げられていることも伝わっておりませんね。私は別の殿方との婚約のお話が進んでおります。もちろん両親もそちらの方との婚約にはとても賛成しておりますから」
す、っとブランシェ様がほんの少しだけ前に歩み出て、殿下の訴えを真っ向から切り捨てた。そしてとどめを刺してゆく。
「まさかとは思いますが、その我が家からの手紙というのはそちらと同じくピンク色の封筒に入っていた訳ではございませんよね?それと我が家の封蝋は氷塊とドラゴンでございます。それ以外の封蝋は使用いたしませんし、それ以外のものは我が家からの正式な手紙ではないと断言できますわ」
「うっ……」
殿下の顔色が物凄く悪いけれど、きっとそうなのね。まったく一緒にピンクの封筒にピンクの便箋……もしかしたら封蝋も百合なのかもしれないし……きっと見比べたら文字もまったく同じなのかもしれない。そのことにやっと殿下はお気づきになられたようだった……。
でも「北のドラゴン」と呼ばれて恐れられるルストバーン家のご令嬢のドラゴンの尻尾を踏んでしまったのは大失敗だと思うわ。
「殿下、もしよろしければその我が家から送られたという手紙をお持ちではございませんか?できれば頂きたいのですが。我が家の名を語る不届き者は我が家の名において成敗せねばなりませんわ……そう、それが例え王妃様であろうとも」
「は、母上がそのようなことをするはずがない……」
ない、と言いながら語尾が力なく消えゆく殿下。流石にこれはここに集まった人全員が思ったことでしょう。こんなことをして得をするのは一体だれなのか。それは一つしかなくて、殿下と私を結婚させて手元に私を置きたい人……国王陛下と王妃殿下だろうということ。そして手紙は全部女性からのみ送られていること……手紙を書いた人は女性であること。
他の貴族達も私と殿下の結婚は反対している訳ではない。でも私が病弱であること考慮し、自分の家紋から未来の王妃をと願う方が多いので、策を弄してまで殿下の婚約者に私を宛がいたいと思っている人は誰一人としていないこと。
だからこんな小細工を考えるのはかなり人数が絞られている。
「ま、まさか……」
殿下は信じられない様子だけれど、エヴァンお兄様がはっきりと言い切る。
「ともかく、この手紙は我が家にはまったく関係のない事実無根。どなたかの創作であると考えられます。つまりアリシアは殿下のことをお慕いしたことは一度としてなく、私との婚約は本人も両親も歓迎している。故に私とアリシアの婚約は継続し、卒業後は結婚いたします」
「い、一度も……す、好きになったことがない……?そ、そうすると、ずっと……ずっと届いていた手紙は」
「アリシアは一度も殿下に手紙を書いたことはありませんよ、そうだよね、アリシア」
私は大きく頷いて肯定する。
「はい、私は殿下にこれまで一度も手紙を差し上げたことはございません。しかも恋文のようなものは絶対にありえませんわ」
「ぜ、絶対に……ありえない……」
「ええ、絶対に、ありえませんわ」
しっかりはっきり言い切ってやった。ついでに2回繰り返してあげたから、これでやっと私の真意は伝わったでしょう!
「……ま、まさか」
むしろ今まで気が付いていない方が不思議でならない気がする。まさか母と娘が同じ封筒を使い……これはあり得るかもしれないが、同じ筆跡で手紙を書く事なんてあるだろうか。
「こ、このフェンルース夫人の手紙には、アリシアは私と婚約を熱望している、今は学園に通えるほどの体力もついたから王妃としてもやって行けるだろう。もし、子供を産むことが難しければ側妃として仲の良いブランシェ・ルストバーン嬢を、と……このことはルストバーン家にも確約済みと……」
とんでもない内容の上にブランシェ様にまで飛び火をしたわ……なんだか申し訳ない。
「恐れながら殿下、私はそのようなお話は一切聞かされておりませんし、我が家で私が側妃候補に上げられていることも伝わっておりませんね。私は別の殿方との婚約のお話が進んでおります。もちろん両親もそちらの方との婚約にはとても賛成しておりますから」
す、っとブランシェ様がほんの少しだけ前に歩み出て、殿下の訴えを真っ向から切り捨てた。そしてとどめを刺してゆく。
「まさかとは思いますが、その我が家からの手紙というのはそちらと同じくピンク色の封筒に入っていた訳ではございませんよね?それと我が家の封蝋は氷塊とドラゴンでございます。それ以外の封蝋は使用いたしませんし、それ以外のものは我が家からの正式な手紙ではないと断言できますわ」
「うっ……」
殿下の顔色が物凄く悪いけれど、きっとそうなのね。まったく一緒にピンクの封筒にピンクの便箋……もしかしたら封蝋も百合なのかもしれないし……きっと見比べたら文字もまったく同じなのかもしれない。そのことにやっと殿下はお気づきになられたようだった……。
でも「北のドラゴン」と呼ばれて恐れられるルストバーン家のご令嬢のドラゴンの尻尾を踏んでしまったのは大失敗だと思うわ。
「殿下、もしよろしければその我が家から送られたという手紙をお持ちではございませんか?できれば頂きたいのですが。我が家の名を語る不届き者は我が家の名において成敗せねばなりませんわ……そう、それが例え王妃様であろうとも」
「は、母上がそのようなことをするはずがない……」
ない、と言いながら語尾が力なく消えゆく殿下。流石にこれはここに集まった人全員が思ったことでしょう。こんなことをして得をするのは一体だれなのか。それは一つしかなくて、殿下と私を結婚させて手元に私を置きたい人……国王陛下と王妃殿下だろうということ。そして手紙は全部女性からのみ送られていること……手紙を書いた人は女性であること。
他の貴族達も私と殿下の結婚は反対している訳ではない。でも私が病弱であること考慮し、自分の家紋から未来の王妃をと願う方が多いので、策を弄してまで殿下の婚約者に私を宛がいたいと思っている人は誰一人としていないこと。
だからこんな小細工を考えるのはかなり人数が絞られている。
「ま、まさか……」
殿下は信じられない様子だけれど、エヴァンお兄様がはっきりと言い切る。
「ともかく、この手紙は我が家にはまったく関係のない事実無根。どなたかの創作であると考えられます。つまりアリシアは殿下のことをお慕いしたことは一度としてなく、私との婚約は本人も両親も歓迎している。故に私とアリシアの婚約は継続し、卒業後は結婚いたします」
「い、一度も……す、好きになったことがない……?そ、そうすると、ずっと……ずっと届いていた手紙は」
「アリシアは一度も殿下に手紙を書いたことはありませんよ、そうだよね、アリシア」
私は大きく頷いて肯定する。
「はい、私は殿下にこれまで一度も手紙を差し上げたことはございません。しかも恋文のようなものは絶対にありえませんわ」
「ぜ、絶対に……ありえない……」
「ええ、絶対に、ありえませんわ」
しっかりはっきり言い切ってやった。ついでに2回繰り返してあげたから、これでやっと私の真意は伝わったでしょう!
378
あなたにおすすめの小説
【完結】赤ちゃんが生まれたら殺されるようです
白崎りか
恋愛
もうすぐ赤ちゃんが生まれる。
ドレスの上から、ふくらんだお腹をなでる。
「はやく出ておいで。私の赤ちゃん」
ある日、アリシアは見てしまう。
夫が、ベッドの上で、メイドと口づけをしているのを!
「どうして、メイドのお腹にも、赤ちゃんがいるの?!」
「赤ちゃんが生まれたら、私は殺されるの?」
夫とメイドは、アリシアの殺害を計画していた。
自分たちの子供を跡継ぎにして、辺境伯家を乗っ取ろうとしているのだ。
ドラゴンの力で、前世の記憶を取り戻したアリシアは、自由を手に入れるために裁判で戦う。
※1話と2話は短編版と内容は同じですが、設定を少し変えています。
【完結】悪役令嬢は3歳?〜断罪されていたのは、幼女でした〜
白崎りか
恋愛
魔法学園の卒業式に招かれた保護者達は、突然、王太子の始めた蛮行に驚愕した。
舞台上で、大柄な男子生徒が幼い子供を押さえつけているのだ。
王太子は、それを見下ろし、子供に向って婚約破棄を告げた。
「ヒナコのノートを汚したな!」
「ちがうもん。ミア、お絵かきしてただけだもん!」
小説家になろう様でも投稿しています。
虚弱体質?の脇役令嬢に転生したので、食事療法を始めました
たくわん
恋愛
「跡継ぎを産めない貴女とは結婚できない」婚約者である公爵嫡男アレクシスから、冷酷に告げられた婚約破棄。その場で新しい婚約者まで紹介される屈辱。病弱な侯爵令嬢セラフィーナは、社交界の哀れみと嘲笑の的となった。
【完結】記憶喪失の令嬢は無自覚のうちに周囲をタラシ込む。
ゆらゆらぎ
恋愛
王国の筆頭公爵家であるヴェルガム家の長女であるティアルーナは食事に混ぜられていた遅延性の毒に苦しめられ、生死を彷徨い…そして目覚めた時には何もかもをキレイさっぱり忘れていた。
毒によって記憶を失った令嬢が使用人や両親、婚約者や兄を無自覚のうちにタラシ込むお話です。
一級魔法使いになれなかったので特級厨師になりました
しおしお
恋愛
魔法学院次席卒業のシャーリー・ドットは、
「一級魔法使いになれなかった」という理由だけで婚約破棄された。
――だが本当の理由は、ただの“うっかり”。
試験会場を間違え、隣の建物で行われていた
特級厨師試験に合格してしまったのだ。
気づけばシャーリーは、王宮からスカウトされるほどの
“超一流料理人”となり、国王の胃袋をがっちり掴む存在に。
一方、学院首席で一級魔法使いとなった
ナターシャ・キンスキーは、大活躍しているはずなのに――
「なんで料理で一番になってるのよ!?
あの女、魔法より料理の方が強くない!?」
すれ違い、逃げ回り、勘違いし続けるナターシャと、
天然すぎて誤解が絶えないシャーリー。
そんな二人が、魔王軍の襲撃、国家危機、王宮騒動を通じて、
少しずつ距離を縮めていく。
魔法で国を守る最強魔術師。
料理で国を救う特級厨師。
――これは、“敵でもライバルでもない二人”が、
ようやく互いを認め、本当の友情を築いていく物語。
すれ違いコメディ×料理魔法×ダブルヒロイン友情譚!
笑って、癒されて、最後は心が温かくなる王宮ラノベ、開幕です。
公爵家の末っ子娘は嘲笑う
たくみ
ファンタジー
圧倒的な力を持つ公爵家に生まれたアリスには優秀を通り越して天才といわれる6人の兄と姉、ちやほやされる同い年の腹違いの姉がいた。
アリスは彼らと比べられ、蔑まれていた。しかし、彼女は公爵家にふさわしい美貌、頭脳、魔力を持っていた。
ではなぜ周囲は彼女を蔑むのか?
それは彼女がそう振る舞っていたからに他ならない。そう…彼女は見る目のない人たちを陰で嘲笑うのが趣味だった。
自国の皇太子に婚約破棄され、隣国の王子に嫁ぐことになったアリス。王妃の息子たちは彼女を拒否した為、側室の息子に嫁ぐことになった。
このあつかいに笑みがこぼれるアリス。彼女の行動、趣味は国が変わろうと何も変わらない。
それにしても……なぜ人は見せかけの行動でこうも勘違いできるのだろう。
※小説家になろうさんで投稿始めました
〖完結〗死にかけて前世の記憶が戻りました。側妃? 贅沢出来るなんて最高! と思っていたら、陛下が甘やかしてくるのですが?
藍川みいな
恋愛
私は死んだはずだった。
目を覚ましたら、そこは見知らぬ世界。しかも、国王陛下の側妃になっていた。
前世の記憶が戻る前は、冷遇されていたらしい。そして池に身を投げた。死にかけたことで、私は前世の記憶を思い出した。
前世では借金取りに捕まり、お金を返す為にキャバ嬢をしていた。給料は全部持っていかれ、食べ物にも困り、ガリガリに痩せ細った私は路地裏に捨てられて死んだ。そんな私が、側妃? 冷遇なんて構わない! こんな贅沢が出来るなんて幸せ過ぎるじゃない!
そう思っていたのに、いつの間にか陛下が甘やかして来るのですが?
設定ゆるゆるの、架空の世界のお話です。
【完結】転生したら悪役継母でした
入魚ひえん@発売中◆巻き戻り冤罪令嬢◆
恋愛
聖女を優先する夫に避けられていたアルージュ。
その夜、夫が初めて寝室にやってきて命じたのは「聖女の隠し子を匿え」という理不尽なものだった。
しかも隠し子は、夫と同じ髪の色。
絶望するアルージュはよろめいて鏡にぶつかり、前世に読んだウェブ小説の悪妻に転生していることを思い出す。
記憶を取り戻すと、七年間も苦しんだ夫への愛は綺麗さっぱり消えた。
夫に奪われていたもの、不正の事実を着々と精算していく。
◆愛されない悪妻が前世を思い出して転身したら、可愛い継子や最強の旦那様ができて、転生前の知識でスイーツやグルメ、家電を再現していく、異世界転生ファンタジー!◆
*旧題:転生したら悪妻でした
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる