64 / 78
64 秘密裏に来たのかしら
しおりを挟む
「さあ、降りるんだ」
「い、いやです……っ」
どの貴族か分からなかったけれど、屋敷の前に止まった馬車から引きづり下ろされた。
「……申し訳……ございませんっ」
王太子に手を貸す騎士が絞り出すような小さな謝罪をしているが、それを許してやることなんてできない。だって、この屋敷に連れ込まれたら私はどうなるの?王太子と結婚?嘘でしょう、そんなのしたくない。
「わ、私は……殿下とは結婚いたしません! 」
なんとか室内へ連れ込まれるのを阻止したくて、全力で抵抗する。
「いいえ、アリシアはヴィクターと結婚してもらうわ。そうしないと私達が王族としてやっていけないもの」
「やはりフェンルースの支援がなければこの国は安定せぬ……まったくアダムスやナリシアには困ったものだ。あの二人が素直に我々と結婚しておれば娘のアリシアがこのような目に合う事もなかったのにな」
「こ、国王……様、王妃、殿下……?」
「久しいな、アリシア。美しく成長した流石フェンルースの娘よ。我が息子の妻に相応しい」
屋敷の扉が開いて予想もしなかった人物が二人出て来た。どうして一介の貴族の屋敷に国王夫妻がいるのかしら!?
「ど、どういう事でございますか、父と母は……」
お父様とお母様が王家に迷惑をかける事なんてなかったはず、逆ならあったけれど。それなのに国王陛下たちはなぜそんなことをいうのかしら!
「お前達フェンルースは王族を支える為に存在しているのだ。それなのに、ワシに仕えずにあのような態度……近頃に至ってはワシではなくリッツプールの方へ出入りしおって!お陰でワシのいうことを聞く者が減ってしまった!」
そんなことはないはずだ。現在の国王陛下よりリッツプール大公が人気なのは……この国王陛下が前から人気のないせいだ。貴族界の仲良し夫婦と名高い我が家に何度も何度も不埒な手紙を送り、お母様に側妃になるように言い募り……大きな夜会や舞踏会ですり寄って来て、貴族達、特に貴族夫人から嫌われただけなのに。
あと国王としての能力も疑問を持つところが大きくて、年齢的なことで王太子になり、国王になったけれど、弟のリッツプール大公を王に推す派が多かったのだとお父様とエヴァンお兄様が話していたのを聞いたことがある。
「夫婦そろって王家に召しあげてやろうって言ってるのに、応じない方が悪いのだわ」
王妃殿下までそんなことを言うなんて。確かに王妃殿下もお父様に色目を使って来て大変だったとお父様がぐったり疲れ切って言っていたっけ。それに王妃殿下は……先日の手紙の件が貴族界に知れ渡ってしまい、立場がないらしい。「自分の息子と馬鹿な恋文を何年もやり取りし続けた」とか「よくもまああんなことを恥じらいもなく」なんてヒソヒソ噂をされて非常に心地が悪いらしい。
そうして地面まで落ちた二人の評判を他所にグングン上がるリッツプール大公の手柄。
元々国政にも見識が深いし、民の事を思う慈悲深さもある。そして奥様と仲も良い。並ぶとお似合いの夫婦だ。そしてお母様と仲も良いし。
言い寄ってきて困らされる国王夫妻より庇ってくれるリッツプール大公夫妻と仲良くするのは当たり前じゃない!
そう大声で言ってやりたかったけど、ぐぐっと我慢した。この場に人間の私の味方はいないのだから。
「い、いやです……っ」
どの貴族か分からなかったけれど、屋敷の前に止まった馬車から引きづり下ろされた。
「……申し訳……ございませんっ」
王太子に手を貸す騎士が絞り出すような小さな謝罪をしているが、それを許してやることなんてできない。だって、この屋敷に連れ込まれたら私はどうなるの?王太子と結婚?嘘でしょう、そんなのしたくない。
「わ、私は……殿下とは結婚いたしません! 」
なんとか室内へ連れ込まれるのを阻止したくて、全力で抵抗する。
「いいえ、アリシアはヴィクターと結婚してもらうわ。そうしないと私達が王族としてやっていけないもの」
「やはりフェンルースの支援がなければこの国は安定せぬ……まったくアダムスやナリシアには困ったものだ。あの二人が素直に我々と結婚しておれば娘のアリシアがこのような目に合う事もなかったのにな」
「こ、国王……様、王妃、殿下……?」
「久しいな、アリシア。美しく成長した流石フェンルースの娘よ。我が息子の妻に相応しい」
屋敷の扉が開いて予想もしなかった人物が二人出て来た。どうして一介の貴族の屋敷に国王夫妻がいるのかしら!?
「ど、どういう事でございますか、父と母は……」
お父様とお母様が王家に迷惑をかける事なんてなかったはず、逆ならあったけれど。それなのに国王陛下たちはなぜそんなことをいうのかしら!
「お前達フェンルースは王族を支える為に存在しているのだ。それなのに、ワシに仕えずにあのような態度……近頃に至ってはワシではなくリッツプールの方へ出入りしおって!お陰でワシのいうことを聞く者が減ってしまった!」
そんなことはないはずだ。現在の国王陛下よりリッツプール大公が人気なのは……この国王陛下が前から人気のないせいだ。貴族界の仲良し夫婦と名高い我が家に何度も何度も不埒な手紙を送り、お母様に側妃になるように言い募り……大きな夜会や舞踏会ですり寄って来て、貴族達、特に貴族夫人から嫌われただけなのに。
あと国王としての能力も疑問を持つところが大きくて、年齢的なことで王太子になり、国王になったけれど、弟のリッツプール大公を王に推す派が多かったのだとお父様とエヴァンお兄様が話していたのを聞いたことがある。
「夫婦そろって王家に召しあげてやろうって言ってるのに、応じない方が悪いのだわ」
王妃殿下までそんなことを言うなんて。確かに王妃殿下もお父様に色目を使って来て大変だったとお父様がぐったり疲れ切って言っていたっけ。それに王妃殿下は……先日の手紙の件が貴族界に知れ渡ってしまい、立場がないらしい。「自分の息子と馬鹿な恋文を何年もやり取りし続けた」とか「よくもまああんなことを恥じらいもなく」なんてヒソヒソ噂をされて非常に心地が悪いらしい。
そうして地面まで落ちた二人の評判を他所にグングン上がるリッツプール大公の手柄。
元々国政にも見識が深いし、民の事を思う慈悲深さもある。そして奥様と仲も良い。並ぶとお似合いの夫婦だ。そしてお母様と仲も良いし。
言い寄ってきて困らされる国王夫妻より庇ってくれるリッツプール大公夫妻と仲良くするのは当たり前じゃない!
そう大声で言ってやりたかったけど、ぐぐっと我慢した。この場に人間の私の味方はいないのだから。
315
あなたにおすすめの小説
溺愛最強 ~気づいたらゲームの世界に生息していましたが、悪役令嬢でもなければ断罪もされないので、とにかく楽しむことにしました~
夏笆(なつは)
恋愛
「おねえしゃま。こえ、すっごくおいしいでし!」
弟のその言葉は、晴天の霹靂。
アギルレ公爵家の長女であるレオカディアは、その瞬間、今自分が生きる世界が前世で楽しんだゲーム「エトワールの称号」であることを知った。
しかし、自分は王子エルミニオの婚約者ではあるものの、このゲームには悪役令嬢という役柄は存在せず、断罪も無いので、攻略対象とはなるべく接触せず、穏便に生きて行けば大丈夫と、生きることを楽しむことに決める。
醤油が欲しい、うにが食べたい。
レオカディアが何か「おねだり」するたびに、アギルレ領は、周りの領をも巻き込んで豊かになっていく。
既にゲームとは違う展開になっている人間関係、その学院で、ゲームのヒロインは前世の記憶通りに攻略を開始するのだが・・・・・?
小説家になろうにも掲載しています。
【完結】悪役令嬢は3歳?〜断罪されていたのは、幼女でした〜
白崎りか
恋愛
魔法学園の卒業式に招かれた保護者達は、突然、王太子の始めた蛮行に驚愕した。
舞台上で、大柄な男子生徒が幼い子供を押さえつけているのだ。
王太子は、それを見下ろし、子供に向って婚約破棄を告げた。
「ヒナコのノートを汚したな!」
「ちがうもん。ミア、お絵かきしてただけだもん!」
小説家になろう様でも投稿しています。
〖完結〗死にかけて前世の記憶が戻りました。側妃? 贅沢出来るなんて最高! と思っていたら、陛下が甘やかしてくるのですが?
藍川みいな
恋愛
私は死んだはずだった。
目を覚ましたら、そこは見知らぬ世界。しかも、国王陛下の側妃になっていた。
前世の記憶が戻る前は、冷遇されていたらしい。そして池に身を投げた。死にかけたことで、私は前世の記憶を思い出した。
前世では借金取りに捕まり、お金を返す為にキャバ嬢をしていた。給料は全部持っていかれ、食べ物にも困り、ガリガリに痩せ細った私は路地裏に捨てられて死んだ。そんな私が、側妃? 冷遇なんて構わない! こんな贅沢が出来るなんて幸せ過ぎるじゃない!
そう思っていたのに、いつの間にか陛下が甘やかして来るのですが?
設定ゆるゆるの、架空の世界のお話です。
【完結】赤ちゃんが生まれたら殺されるようです
白崎りか
恋愛
もうすぐ赤ちゃんが生まれる。
ドレスの上から、ふくらんだお腹をなでる。
「はやく出ておいで。私の赤ちゃん」
ある日、アリシアは見てしまう。
夫が、ベッドの上で、メイドと口づけをしているのを!
「どうして、メイドのお腹にも、赤ちゃんがいるの?!」
「赤ちゃんが生まれたら、私は殺されるの?」
夫とメイドは、アリシアの殺害を計画していた。
自分たちの子供を跡継ぎにして、辺境伯家を乗っ取ろうとしているのだ。
ドラゴンの力で、前世の記憶を取り戻したアリシアは、自由を手に入れるために裁判で戦う。
※1話と2話は短編版と内容は同じですが、設定を少し変えています。
夫に顧みられない王妃は、人間をやめることにしました~もふもふ自由なセカンドライフを謳歌するつもりだったのに、何故かペットにされています!~
狭山ひびき
恋愛
もう耐えられない!
隣国から嫁いで五年。一度も国王である夫から関心を示されず白い結婚を続けていた王妃フィリエルはついに決断した。
わたし、もう王妃やめる!
政略結婚だから、ある程度の覚悟はしていた。けれども幼い日に淡い恋心を抱いて以来、ずっと片思いをしていた相手から冷たくされる日々に、フィリエルの心はもう限界に達していた。政略結婚である以上、王妃の意思で離婚はできない。しかしもうこれ以上、好きな人に無視される日々は送りたくないのだ。
離婚できないなら人間をやめるわ!
王妃で、そして隣国の王女であるフィリエルは、この先生きていてもきっと幸せにはなれないだろう。生まれた時から政治の駒。それがフィリエルの人生だ。ならばそんな「人生」を捨てて、人間以外として生きたほうがましだと、フィリエルは思った。
これからは自由気ままな「猫生」を送るのよ!
フィリエルは少し前に知り合いになった、「廃墟の塔の魔女」に頼み込み、猫の姿に変えてもらう。
よし!楽しいセカンドラウフのはじまりよ!――のはずが、何故か夫(国王)に拾われ、ペットにされてしまって……。
「ふふ、君はふわふわで可愛いなぁ」
やめてえ!そんなところ撫でないで~!
夫(人間)妻(猫)の奇妙な共同生活がはじまる――
転生したら悪役令嬢だった婚約者様の溺愛に気づいたようですが、実は私も無関心でした
ハリネズミの肉球
恋愛
気づけば私は、“悪役令嬢”として断罪寸前――しかも、乙女ゲームのクライマックス目前!?
容赦ないヒロインと取り巻きたちに追いつめられ、開き直った私はこう言い放った。
「……まぁ、別に婚約者様にも未練ないし?」
ところが。
ずっと私に冷たかった“婚約者様”こと第一王子アレクシスが、まさかの豹変。
無関心だったはずの彼が、なぜか私にだけやたらと優しい。甘い。距離が近い……って、え、なにこれ、溺愛モード突入!?今さらどういうつもり!?
でも、よく考えたら――
私だって最初からアレクシスに興味なんてなかったんですけど?(ほんとに)
お互いに「どうでもいい」と思っていたはずの関係が、“転生”という非常識な出来事をきっかけに、静かに、でも確実に動き始める。
これは、すれ違いと誤解の果てに生まれる、ちょっとズレたふたりの再恋(?)物語。
じれじれで不器用な“無自覚すれ違いラブ”、ここに開幕――!
本作は、アルファポリス様、小説家になろう様、カクヨム様にて掲載させていただいております。
アイデア提供者:ゆう(YuFidi)
URL:https://note.com/yufidi88/n/n8caa44812464
前世の記憶が蘇ったので、身を引いてのんびり過ごすことにします
柚木ゆず
恋愛
※明日(3月6日)より、もうひとつのエピローグと番外編の投稿を始めさせていただきます。
我が儘で強引で性格が非常に悪い、筆頭侯爵家の嫡男アルノー。そんな彼を伯爵令嬢エレーヌは『ブレずに力強く引っ張ってくださる自信に満ちた方』と狂信的に愛し、アルノーが自ら選んだ5人の婚約者候補の1人として、アルノーに選んでもらえるよう3年間必死に自分を磨き続けていました。
けれどある日無理がたたり、倒れて後頭部を打ったことで前世の記憶が覚醒。それによって冷静に物事を見られるようになり、ようやくアルノーは滅茶苦茶な人間だと気付いたのでした。
「オレの婚約者候補になれと言ってきて、それを光栄に思えだとか……。倒れたのに心配をしてくださらないどころか、異常が残っていたら候補者から脱落させると言い出すとか……。そんな方に夢中になっていただなんて、私はなんて愚かなのかしら」
そのためエレーヌは即座に、候補者を辞退。その出来事が切っ掛けとなって、エレーヌの人生は明るいものへと変化してゆくことになるのでした。
大好きだった旦那様に離縁され家を追い出されましたが、騎士団長様に拾われ溺愛されました
Karamimi
恋愛
2年前に両親を亡くしたスカーレットは、1年前幼馴染で3つ年上のデビッドと結婚した。両親が亡くなった時もずっと寄り添ってくれていたデビッドの為に、毎日家事や仕事をこなすスカーレット。
そんな中迎えた結婚1年記念の日。この日はデビッドの為に、沢山のご馳走を作って待っていた。そしていつもの様に帰ってくるデビッド。でもデビッドの隣には、美しい女性の姿が。
「俺は彼女の事を心から愛している。悪いがスカーレット、どうか俺と離縁して欲しい。そして今すぐ、この家から出て行ってくれるか?」
そうスカーレットに言い放ったのだ。何とか考え直して欲しいと訴えたが、全く聞く耳を持たないデビッド。それどころか、スカーレットに数々の暴言を吐き、ついにはスカーレットの荷物と共に、彼女を追い出してしまった。
荷物を持ち、泣きながら街を歩くスカーレットに声をかけて来たのは、この街の騎士団長だ。一旦騎士団長の家に保護してもらったスカーレットは、さっき起こった出来事を騎士団長に話した。
「なんてひどい男だ!とにかく落ち着くまで、ここにいるといい」
行く当てもないスカーレットは結局騎士団長の家にお世話になる事に
※他サイトにも投稿しています
よろしくお願いします
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる