【完結】悪役令嬢はご病弱!溺愛されても断罪後は引き篭もりますわよ?

鏑木 うりこ

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66 キノコの秘密

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 ぽこ

 この緊迫した場にそぐわない音が私の耳に飛び込んだ。間の抜けた音は足元から聞こえる。

「え……」

 私が立っていた場所はお屋敷の玄関前で靴が踏んでいる地面は石畳なのに、その隙間からなんとキノコが一つ生えている。さっきまでキノコなんてなかったのに。

 ぽこ、ぽこ

 キノコは二つ、三つと顔を出し遂には数えきれないほどの量になってゆく。

「アリシア……?」

 私の目が地面に釘付けになっているのを王太子殿下も気が付いたようで、視線の先を追い、今まさに生えてくるキノコを目撃した。

「キノコ?この時季外れになんで……」

 ぽこぽこ、ぽこぽこ

 王太子殿下の呟きも私の驚きもキノコたちには関係がないようで、どんどん増え続けキノコはとうとう見事な輪になった。

「まあ……」

 状況を忘れてキノコを見つめてしまう。キノコの輪は繋がり、そしてキノコたちはきらきらと輝き始めた、これは妖精の光……?よく目を凝らすとキノコの上に妖精達が立ったりジャンプしたりしている。でもみんな不機嫌そうで、怒っていた。
 怒りの理由を聞こうと声をかける前に妖精達の声が一つになる。

〈きた〉〈きたきた〉〈やっちゃえ!〉〈ちからをかすぞ〉

「アリー!! 」
「お、お兄様!? 」

 キノコが作った光の輪の中からエヴァンお兄様が飛び出してきて、王太子と私の間に飛び込んだ。

「アリー!無事か!! 」
「エヴァンお兄様ーー! 」

 まだ妖精の光を全身にまとったままのお兄様にぎゅっと抱き着いた。ああ、お兄様だ、私のお兄様!この人がいてくれれば大丈夫、私を絶対に守って助けて……愛してくれる!

「エヴァン?エヴァンなのか……?」
「……そうですよ、王太子殿下。アリシアは私の婚約者です。なぜ私や両親に断りもなく勝手に連れ出したのです?これは許されることではありませんよ」

 お兄様の声が鋭くとがって、王太子殿下を刺し殺しそうだ。いつもなら止めなくちゃと思うところだけれど、今日はそんな気持ちになれるわけがない。出来る事ならそのままとどめを刺してもらいたいくらいだもの!

〈やれってばー!俺達だって怒ってんだぞ〉〈アリシアを泣かすやつを生かしておくなー!〉

 妖精達の方が過激だったけれど、本当にたくさんの妖精が周りを取り囲んでくれている。皆、私を心配してきてくれたんだ!お兄様をここに連れて来てくれたのも妖精だったんだ!

「だ、黙れ!エヴァン!私はアリシアを妻にして妖精から加護を受けて王になるんだ!」
「……そんなくだらないものの為にアリシアを怖がらせるなんて……例え王太子殿下でも許せません」

 私をぎゅっと抱きしめたまま、強い口調で言い切るお兄様は……とても素敵だった。
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