【完結】その少年は硝子の魔術士

鏑木 うりこ

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3 パンは美人がお得?

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「兄ちゃん、パン食べたい」

 弟からそう言われて頑張らない兄がいるだろうか!いや居ない!

「母さん、薪を売りに行ってくるよ!」

「リト……まだやめておきなさい」

 母さんは俺が足を滑らせて落ちてから、遠くへ行って欲しくないようだった。うん、怪我は治ったけど、確かにぶつけた所には大きなハゲが出来てしまった。坊主頭にゃできねぇぞ?

 でも、もう大丈夫だよ、母さん。

「サラやんも居るし、無理はしないよ。それに俺もパン食いたい!」

 この世界のパンは硬い。でもうちでは食べられないので街まで買いに行く必要がある。
 うちは木こり。森の中に住んでいるからね!俺とサラやんが頑張って色々な物を食べれるようになったけど、主食の確保はまだなんだ。
 どこかに小麦とか米とか芋とかあれば良いのになー。あ!芋なら買ってきて植えれば良いか!

 まあどっちにしてもパンはない。薪を売ってお金を稼いで買わなくちゃ!

 背中にどっさり薪を担いで街を目指す。

「荷車とか作れないかな?もっとたくさん乗せれるよ!」

「道幅ありそうだし、作ってみてもええんやないか?」

 肩に乗せたサラやんと話しながら進む。サラやんは俺以外とは喋らない。

「面倒なんや」

 サラやんはそう言う。そういうもんなら、それでいいと思う。

 久しぶりの街は結構かかったが、リトの体はなかなか丈夫だ。いつものお得意さんに声をかけてみる。

「すいませーん、薪、いりませんか?」

 パタパタと足音がして、宿屋の女将さんが出てくる。

「リト!久しぶり!どうしたの?しばらく来てなかったわね?」

「へへ……」

 女将さんはすごく優しい。俺が頭にハゲをこさえた事を教えると笑ってくれた。

「無理はしないでおくれよ。お前までいなくなっちまったら、リリーはどうなっちまうか……」

 リリーは俺の母さんの名前。そうだよな。

「わかってますよ!」

「……それにしてもリト、なんだか可愛くなったわね?」

はて?そんな事ないと思うのだが。

「最近、猟師の真似事して、たまに肉を食べてるから、栄養が回ってんじゃない?」

「そうかねぇ?」

 そう言いつつも女将さんは薪を買ってくれた。ありがとう!
 次は肉屋へ。

「リトォ?美人になったなぁ?俺と付き合うか?」

「気持ち悪りぃな!」

 でも薪を買ってくれたし、売れ残りのクズ肉もくれた。

「サンキュー!」

「おー!」

 次はパン屋だ。

「薪要らない?」

「リト!なかなか来ないから別のやつから買っちまったよ!……でもなーあんまり燃えねぇんだ」

「見てもいい?……乾燥が甘いんだ。これじゃだめだよ。サラやん」

 サラやんをそのしけった薪の上に乗せる。

「ちょっと待ってな。サラやんが今湿気を乾かしてくれるから」

「ひゃー!精霊かい!?リト!大したもんだねぇ!魔法使い様じゃないか!」

 パン屋のおばちゃんは驚いたけれど。

「いやぁ、俺は木こりのリトだよ」

「……そうさね、リリーを置いてはいけないものね」

 そうさ、俺は家族を幸せにしなくちゃならないからね!

「きゅ!」

「あ、サラやん。終わった?」

 うん、触った感じも悪くない。これならよく燃えるだろう。

「これで大丈夫だよ」

「そうかい!助かったよリト。リトの薪も買わせて貰うよ」

「ありがとう!おばちゃん。でもその金でパン売ってよ!ザザがパン食いたいって言うんだぜ!」

 任せときな!おばちゃんはパンを山盛りにしてくれた。ついでに昨日の残ったパンまでくれた!うおー!美味そう!この固いパンでも薄く切って炙ると美味いんだ!
 しかもベーコンとか乗せちゃおうかなーうひひ!うひひ!

「そういえば最近ここらに魔物の調査団が来てるらしいよ。リトの家の方に行くかもしれないねぇ」

「へえ!そうなんだ。うちに来たって何もないからなあ」

 ぼろ家と薫製小屋があるだけだ。

「まあ、パンありがとう!帰って弟達に食わせてやるよ!」

 俺は手を振って、パン屋のおばちゃんと別れた。

「なあ、あれリトか?」

「ああ、リトだけど。あの子あんなに可愛い顔してたっけ?」

 パン屋の主人は首をひねる。

「いやぁ……声はリトなんだが……なんていうか美人になったよなぁ」

 不思議だねぇ?でもリトなんだよなぁ?

 何も気づかないリトは薪を全部売り、八百屋で芋を買い、家路についた。

「なあ、サラやん。八百屋でも言われたよ。リトは美人になったって。俺、男だよ?どういう事だろう」

「多分あれだよ。神様だよ、愛と美の神様。あの2人と創造神様のせいでリトが落ちたから、加護をくれたんじゃないかな?」

 えー!全然気にしなくて良いのにな!

「なあ、サラやん!俺、美人?!」

「すまん、リト。精霊と人間の感覚違うから、分かんない!」

 あ、そかぁ……。

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