【完結】その少年は硝子の魔術士

鏑木 うりこ

文字の大きさ
4 / 117

4 偉い人ですか?

しおりを挟む
 俺は無事に家につき、弟達にパンを食べさせてやる事が出来た。たくさんもらいすぎたパンは、アイテムボックスにしまっておけば良いことに俺は気づいた!

 腐んない!カビ生えない!これ、冬越す時にすごい便利じゃない??果物とか青葉の野菜とかいっぱい入れれる!

「今年の冬は勝ったな……!」

 俺のアイテムボックスが凄く広い事を望みます!神様!

 その夜はお肉の入った野菜スープにパンとウチとしては豪華なメニューで、お腹いっぱいご飯を食べた。
 俺が色々便利アイテムを持っていたとしても、急に暮らしが良くなる訳じゃない。それにうちは大家族。毎日食べる物を集めても、毎日どんどん減ってゆく。
 減るのより多く、冬の備えをしないといけないんだ。まあ加工しないでそのまま腐らず保存しておけるアイテムボックスは凄いけどね!

 太陽が沈むとうちは寝る。サラやんがいるから多少は明るいけど、灯代が勿体無いしね!

「すまん、良いだろうか?」

 建て付けの悪い扉がトントンとノックされた。

「母さん、俺が出る」

 強盗のたぐいでは無いだろうけど、こんな森の中のぼろ家を日が落ちてから訪ねるのはどうだろうか。

「えーと、どなた?」

 細ーく扉を開けて外の様子を見てみると、立派な鎧をつけた人が立っていた。

「すまない、この近辺を見回りしていたのだが、日が落ちてしまって難儀しておったのだ」

「ああ!人が来てるってパン屋のおばちゃんが言ってた!」

 俺は扉を開けた。

「家の中に、と言いたい所なんですが……家、ちいさくて……すいません」

 もう部屋いっぱいに布団がひいてある。

 騎士だろう三人は、その様子をみて微笑んだ。良い人だ!

「では庭先をお借りしてよろしいかい?」

「どうぞ!どうぞ!」

 俺達は三人の乗ってきた馬に水をあげたり、母さんが肉を多めに入れたスープを作った。

「あ、そうだ。俺達が使ったあとなんで申し訳ないんですが、風呂、入りますか?」

「風呂があるのか?!」

 騎士さん達は凄く驚いていた。うん、この世界風呂は物凄く贅沢なんだけど、俺がね?どうして入りたかったのよ!

 川から水を引いて……サラやんにも手伝って貰って、小さい風呂を作ってしまったんだ。
 まー露天風呂の気持ちいい事!マジで毎日の疲れが吹っ飛びますよ!

「今、熱くしますから、少し待っててくださいね。サラやん手伝って」

「きゅ!」

 サラやんはぴょんとかまどに飛び込んで丸くなる。薪をくべてやると、じゃれついて遊んでいた。

「!火の精霊じゃないか!君は火の精霊が使えるのか!」

 最初に扉を叩いた騎士が驚いている。あ、そうだった。魔法使いは珍しいんだった。あんまり人に合わない生活だからうっかりしてたよ。

「使うというか、手伝ってもらってます」

 頭をかきながら、俺は困ってしまった。

 その日はとりあえず眠りについた。


 俺の朝は早い。起きると騎士さん達はまだ寝ているようで、静かに行動する。川から引いた水で顔を洗い、森へ食べ物を探しに行く。
 野苺何かがあれば良いが、あんまり大きな期待はしない。猟師の真似事で仕掛けた罠に嵌っていた山鳥や兎を回収して、腹を裂き解体する。だんだん手慣れてきて、川で処理すると捨てた内臓を食べにきた魚も一石二鳥で捕まえる。
 兎の皮は今度街で売ってみよう、売れるかなぁ?
 すっかり処理が終わって、家に戻ろうとすると

「あ」

 人と会った。昨日の騎士さんだ。

「こちらから、音が聞こえたものでな」

「すいません、起こしちゃいましたか?静かにしてたつもりだったんですが」

 俺はぺこりと頭を下げた。

「あ、いや、そんな事はない。こちらこそ済まなかったな、夜中に突然」

 あ、良い人だ!俺は笑った。

「いいえ!困った時はお互い様です。でもなんのお構いも出来ずにすいません……」

 朝日の中でみると、物凄くカッコいい人だった。金の髪がサラサラしていて、紫の目がとてもきれい。
 服とか凄く良さそうだから、偉い人なのかも知れない。

「王子、ああ、こちらでしたか……」

?!王子?!王子って言った?!?!まさかね?

「ネリス」

「え!あ!エイム様、失礼しました!」

 まさかねー……?

「そういえば、君の名前を聞いてなかったな。私はエイムと言う。良ければ教えてくれないか?」

「俺ですか?俺はリトです。えーと、エイム様?」

 エイム様は満足そうににっこり笑った。ふへー……本当に王子様かもね。すんごいキラキラ笑顔だった。

「リト、リトね。リト」

「はい」

 確認するように何度も名前を呼ばれた。不思議な人だ。

「あ、リリーさんが朝ごはんは如何ですか?と呼んでましたよ」

 呼びにきた人、ネリスと呼ばれていた人が教えてくれた。

「手伝いに行かなくちゃ」

「戻ろうか」

 俺たちは急いで家に戻った。


「美味しいですね」

「粗末な物ですが、暖かい物は身体が暖まりますから」

 母さんはとっておきのベーコンを切ってくれた。うん、いい出来だ!焼いてあぶったパンに挟んで食べる。薄いスープも一緒に食べるととても美味しい。

 外でみんなで座って食べた。

「カレン、ザザのパン拾って。シュル、スープ残すな」

「にいちゃ、あーん」

「リン、どうぞ」

「おいち、にいちゃ」

「……見事なものだな」

 俺の兄弟捌きかな?

「慣れてますから」

 カレンは母さんの手伝いに行き、ほかのチビたちは騎士さん2人が遊んでくれている。今、この場には俺とエイム様しか残っていない。

「リトはいくつなのだ?」

「14です」

「そうなのか私と4つ違うのだな」

 エイム様は18歳か。18でもう魔物の調査をしているなんてすごいなぁ!強いんだろうな!

「リトはここの生活は好きか?」

「好きとか嫌いの前にここが家ですから……でもそんなに嫌じゃないです」

 前は飢えて死にそうになる時もあったが、今はなんとかなりそうな気がする。

「そうか……リト。また来ても良いかな?」

 ふふ、面白い人だな!

「なら今度は家の中にお招き出来る様に少し部屋を広くしておかないといけませんね!」

「ああ、是非そうしてくれ。また風呂にも入りたい。外で入るのは気持ち良いものだな」

 風呂を気に入ってくれたのか!作るの大変だったから、嬉しいな!

「お待ちしてますよ!」

 こんな山奥のぼろ家に騎士さんが何度もくるわけないのは勿論わかってるけれど、褒められて何だか嬉しくなった。

 エイム様は山を降りて行った。近くに魔物が出た気配がなかったので安心すると良いと教えてくれる。
 良かった!少し遠くまで出かけられそうだ。

 俺たちはせっせと食べ物を集める。全員で青々と茂ってきた野草を摘んだり、芋を植えたりしてみる。少し庭を広くし、木を切り乾燥させて薪にしたり……。

「家を足すか!」

「またくるっていってしな!」

 肩でサラやんが笑う。

「ふふ、そうだね!」

 カレンも大きくなったら部屋が欲しいっていうかもしれないし、俺も部屋が欲しいかもしれない。冬に備えて壁を厚くしておくのも良いだろう。

「俺、みんなの役に立ってるよな!」

「ああ!リトは頑張ってるよ!」

 今日も頑張るぞー!


しおりを挟む
感想 50

あなたにおすすめの小説

嘘はいっていない

コーヤダーイ
BL
討伐対象である魔族、夢魔と人の間に生まれた男の子サキは、半分の血が魔族ということを秘密にしている。しかしサキにはもうひとつ、転生者という誰にも言えない秘密があった。 バレたら色々面倒そうだから、一生ひっそりと地味に生きていく予定である。

転生して王子になったボクは、王様になるまでノラリクラリと生きるはずだった

angel
BL
つまらないことで死んでしまったボクを不憫に思った神様が1つのゲームを持ちかけてきた。 『転生先で王様になれたら元の体に戻してあげる』と。 生まれ変わったボクは美貌の第一王子で兄弟もなく、将来王様になることが約束されていた。 「イージーゲームすぎね?」とは思ったが、この好条件をありがたく受け止め 現世に戻れるまでノラリクラリと王子様生活を楽しむはずだった…。 完結しました。

公爵家の末っ子に転生しました〜出来損ないなので潔く退場しようとしたらうっかり溺愛されてしまった件について〜

上総啓
BL
公爵家の末っ子に転生したシルビオ。 体が弱く生まれて早々ぶっ倒れ、家族は見事に過保護ルートへと突き進んでしまった。 両親はめちゃくちゃ溺愛してくるし、超強い兄様はブラコンに育ち弟絶対守るマンに……。 せっかくファンタジーの世界に転生したんだから魔法も使えたり?と思ったら、我が家に代々伝わる上位氷魔法が俺にだけ使えない? しかも俺に使える魔法は氷魔法じゃなく『神聖魔法』?というか『神聖魔法』を操れるのは神に選ばれた愛し子だけ……? どうせ余命幾ばくもない出来損ないなら仕方ない、お荷物の僕はさっさと今世からも退場しよう……と思ってたのに? 偶然騎士たちを神聖魔法で救って、何故か天使と呼ばれて崇められたり。終いには帝国最強の狂血皇子に溺愛されて囲われちゃったり……いやいやちょっと待て。魔王様、主神様、まさかアンタらも? ……ってあれ、なんかめちゃくちゃ囲われてない?? ――― 病弱ならどうせすぐ死ぬかー。ならちょっとばかし遊んでもいいよね?と自由にやってたら無駄に最強な奴らに溺愛されちゃってた受けの話。 ※別名義で連載していた作品になります。 (名義を統合しこちらに移動することになりました)

寄るな。触るな。近付くな。

きっせつ
BL
ある日、ハースト伯爵家の次男、であるシュネーは前世の記憶を取り戻した。 頭を打って? 病気で生死を彷徨って? いいえ、でもそれはある意味衝撃な出来事。人の情事を目撃して、衝撃のあまり思い出したのだ。しかも、男と男の情事で…。 見たくもないものを見せられて。その上、シュネーだった筈の今世の自身は情事を見た衝撃で何処かへ行ってしまったのだ。 シュネーは何処かに行ってしまった今世の自身の代わりにシュネーを変態から守りつつ、貴族や騎士がいるフェルメルン王国で生きていく。 しかし問題は山積みで、情事を目撃した事でエリアスという侯爵家嫡男にも目を付けられてしまう。シュネーは今世の自身が帰ってくるまで自身を守りきれるのか。 ーーーーーーーーーーー 初めての投稿です。 結構ノリに任せて書いているのでかなり読み辛いし、分かり辛いかもしれませんがよろしくお願いします。主人公がボーイズでラブするのはかなり先になる予定です。 ※ストックが切れ次第緩やかに投稿していきます。

転生したら嫌われ者No.01のザコキャラだった 〜引き篭もりニートは落ちぶれ王族に転生しました〜

隍沸喰(隍沸かゆ)
BL
引き篭もりニートの俺は大人にも子供にも人気の話題のゲーム『WoRLD oF SHiSUTo』の次回作を遂に手に入れたが、その直後に死亡してしまった。 目覚めたらその世界で最も嫌われ、前世でも嫌われ続けていたあの落ちぶれた元王族《ヴァントリア・オルテイル》になっていた。 同じ檻に入っていた子供を看病したのに殺されかけ、王である兄には冷たくされ…………それでもめげずに頑張ります! 俺を襲ったことで連れて行かれた子供を助けるために、まずは脱獄からだ! 重複投稿:小説家になろう(ムーンライトノベルズ) 注意: 残酷な描写あり 表紙は力不足な自作イラスト 誤字脱字が多いです! お気に入り・感想ありがとうございます。 皆さんありがとうございました! BLランキング1位(2021/8/1 20:02) HOTランキング15位(2021/8/1 20:02) 他サイト日間BLランキング2位(2019/2/21 20:00) ツンデレ、執着キャラ、おバカ主人公、魔法、主人公嫌われ→愛されです。 いらないと思いますが感想・ファンアート?などのSNSタグは #嫌01 です。私も宣伝や時々描くイラストに使っています。利用していただいて構いません!

【完結】伴侶がいるので、溺愛ご遠慮いたします

  *  ゆるゆ
BL
3歳のノィユが、カビの生えてないご飯を求めて結ばれることになったのは、北の最果ての領主のおじいちゃん……え、おじいちゃん……!? しあわせの絶頂にいるのを知らない王子たちが、びっくりして憐れんで溺愛してくれそうなのですが、結構です! めちゃくちゃかっこよくて可愛い伴侶がいますので! ノィユとヴィルの動画を作ってみました!(笑)  インスタ @yuruyu0   Youtube @BL小説動画 です!  プロフのwebサイトから飛べるので、もしよかったらお話と一緒に楽しんでくださったら、とてもうれしいです! ヴィル×ノィユのお話です。 本編完結しました! 『もふもふ獣人転生』に遊びにゆく舞踏会編、完結しました! 時々おまけのお話を更新するかもです。 名前が  *   ゆるゆ  になりましたー! 中身はいっしょなので(笑)これからもどうぞよろしくお願い致しますー!

記憶を無くしたら家族に愛されました

レン
BL
リオンは第三王子で横暴で傲慢で侍女や執事が少しでも気に入らなかったら物を投げたり怒鳴ったりする。家族の前でも態度はあまり変わらない… 家族からも煩わしく思われたていて嫌われていた… そんなある日階段から落ちて意識をなくした…数日後目を覚ましたらリオンの様子がいつもと違くて…

妹を救うためにヒロインを口説いたら、王子に求愛されました。

藤原遊
BL
乙女ゲームの悪役令息に転生したアラン。 妹リリィが「悪役令嬢として断罪される」未来を変えるため、 彼は決意する――ヒロインを先に口説けば、妹は破滅しない、と。 だがその“奇行”を見ていた王太子シリウスが、 なぜかアラン本人に興味を持ち始める。 「君は、なぜそこまで必死なんだ?」 「妹のためです!」 ……噛み合わないはずの会話が、少しずつ心を動かしていく。 妹は完璧令嬢、でも内心は隠れ腐女子。 ヒロインは巻き込まれて腐女子覚醒。 そして王子と悪役令息は、誰も知らない“仮面の恋”へ――。 断罪回避から始まる勘違い転生BL×宮廷ラブストーリー。 誰も不幸にならない、偽りと真実のハッピーエンド。

処理中です...